vol.282:運動と神経成長因子 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
変形性関節症を呈するラット脊髄内の神経成長因子に対する運動の効果
Effect of exercise on the expression of nerve growth factor in the spinal cord of rats with induced osteoarthritis.?PubMed Park SJ J Phys Ther Sci. 2015 Aug;27(8):2551-4. doi: 10.1589/jpts.27.2551
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・関節症による炎症性神経損傷に対して、運動が有効であることをラットを用いて研究した論文を見つけた。慢性疼痛に対する改善の糸口に感じ、読もうと思った。
内 容
背景・目的
・変形性関節症では関節軟骨の剥離と骨棘の形成が見られる。これらの変性は荷重時に軟骨下骨の神経に機械的刺激を加え、膝痛につながる。さらに関節周囲の軟骨や軟部組織に炎症性サイトカインを発現させる。このサイトカインによりさらなる疼痛物質(ブラジキニン、セロトニン、ヒスタミンなど)が出現し、膝痛の一因となる。
・疼痛物質が継続的に脊髄に流れると、末梢の侵害受容器は活性化され脊髄後角に炎症反応が生じ、グリア細胞(アストロサイト、ミクログリア)の活性化から大量のサイトカインの分泌につながる(脊髄の炎症)。この一連の反応が痛覚過敏などの神経性疼痛のメカニズムと言われている。
・神経成長因子(NGF)は神経栄養因子のひとつで、感覚神経と交感神経の区別、脳脊髄幹の成長、神経信号の移動などに関わる。また、関節症の早期、NGFは炎症性神経損傷に対して保護的な働きをすると報告されている。
・本研究は運動によりNGFの発現が生じるか、ラットを使用して検討する。
方法
・ラットの右膝に注射(MIA注射)を行い関節症様の変化を加え、3週間後にトレッドミルでの運動を行わせた。トレッドミルの速度は分速8m、20分を2日間、また分速16mを30分間、4週間行った。
・ラットは4群に分けた。
①シャム群(SG):生理食塩水注射処理3週後のラット
②コントロール群(CG):MIA注射処理3週後のラット
③4週休息群(NEG):MIA注射し3週後、4週間の休息を与えたラット
④運動群(EG):MIA注射し3週後、4週間のトレッドミル歩行を行ったラット
・各条件のラットの脊髄を抜き出し、腰髄の神経に対し免疫組織化学的検査を行いNGF発現量を調べた。
結果
表:実験結果 Park SJ (2015)より引用
・SG群に比してCG群はNGFの発現量が有意に多かった。
・NEG群はSGよりNGFの発現量が大きかったが、NEGとCGの間に差は見られなかった。
・EG群はSG、CG、NEG群に比して有意にNGFの発現量が多かった。。
私見・明日への臨床アイデア
・運動によってNGFの発現量が増加することがラットの研究により示唆された。関節症の疼痛緩和において、運動が効果的である一つの理由になると思う。人体では同様の結果が得られるのかとても興味がある。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)