vol.384:神経学的障害者の歩行における運動制御 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!!
PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
神経系
タイトル
神経学的障害者の歩行におけるmodular control
Plasticity and modular control of locomotor patterns in neurological disorders with motor deficits Frontiers Y. P. Ivanenko et al.(2013)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中者の運動モジュール変化とその結合・分解に興味があり本論文に至る。
内 容
背景
●人間の歩行は、かなりの変動性を示し、神経活性化および生体力学的出力の両方において非常に複雑である。
●人の歩行の生体力学的および神経的側面は、正常および病的歩行の両方における多くの研究で証明されているが、神経回路の構造および歩行運動制御に関与する下降神経シグナルの性質は依然として分かり難い。
●脳-神経病変後による歩行の反応を調べることは、より改善されたリハビリテーション戦略の開発・運動機能の改善のメカニズムの探索にとって重要である。
●多くの研究では、解剖生理学的な再編に基づき、脳損傷後の運動活動は損傷部位に隣接する領域で起こり得ることを示している。それにも関わらず、様々な運動感覚障害を有する神経学的障害を有する患者においても中枢神経系が構築する運動パターンの基礎構築ブロックは保存されているようである。
●いくつかの研究は、筋活動の機能的単位で活性する組織化を強調した。筋活性化パターンが脊髄病変、脳損傷および他の運動障害によって損なわれ得る場合、リズムパターン形成要素が不変であるかどうかについての疑問が生じる。
目的
●この問題を脊髄損傷や切断者・脳卒中者などの患者における歩行パターンの適応の様々な例に重き置いて検討し論議する。(ここでは健常者と脳卒中者についてのみふれる)
議論
●正常歩行中の筋活動は、不変性および変性の両方の特徴を有する。各ステップにおいて、制御システムは体重を補償し、前方および側方の安定性を提供し、前方への推進を維持する必要がある。
●筋肉骨格系と非線形性と多自由度との協調は複雑であり、数十の下肢筋活動を必要とする。歩行中の主な筋活動は、二足歩行の生体力学によって指示される特定の機能を実行するため、歩行周期の特定の瞬間に群発的に組織される傾向がある。
●歩行周期の神経と生体力学的制御との間には関係があるが、複数の身体セグメントの動的結合のために、システムははるかに複雑である。
『正常歩行に関して』
●本研究では、トレッドミル上で健常被験者8名の5・7・9km/hでの歩行における同側筋(EMG貼付部位:ST・BF・TFL・SART・G-med・RF・VM・VL・MG・LG・SOL・TA)からEnsemble averaged EMGs 空間平均EMG記録を行っている。9km/hではいくつかの大腿部の筋から脹脛の筋のpeak活動と同期した『非定型atypical』の活動の群発活性があります。
●歩行中の筋活動には個人差が顕著である。最も可変性のパターンは、近位および二関節筋、特により低速度歩行で観察される。例えば、大腿四頭筋の活動は、速度が遅い(<4 km / h)被験者では事実上非活動的であるが、他の被験者には存在する。
●EMGの統計分析を用いた最近の数多くの研究は、神経系が比較的単純な制御戦略を採用する可能性があることを示唆している。
●パターン認識数学を使用して、ステレオタイプの活性化パターンおよびこれらのパターンの幅広い変動性の両方を、基本的な活性化成分の小さなセットを組み合わせてスケーリングすることによって説明することができる。
●直感的には、患者のEMG活動のいくつかの変化が期待されるが、現在の問題は、基本的なモジュールパターンまたは筋肉の機能的分類が病理学的参加者に保存されているかどうかである。
『脳卒中患者の特徴と治療』
●脳卒中後の歩行障害は、しばしば異常な時空間的な筋協調パターンと関連している。脳卒中後の歩行の協調性障害は、最近の研究ではGizzi ら(2011)は、亜急性脳卒中者の歩行において筋シナジーよりもむしろ活動電位の活性化が保存されていると主張している。
●適切な運動モジュールのニューロリハビリテーションの主要な意味は、脳卒中患者の歩行中の異常に発達したステレオタイプの運動の発現を正すことである。上肢制御に関する最近の研究においても同様の結論が得られている。
●脳卒中後の歩行リハビリに有効なアプローチの1つは、下肢筋のステップと同期したFESを用いることである。FESは、筋力増強、関節における運動範囲の増加、および脳神経疾患患者における歩行の改善のための有効なツールであることが示されている。
●FESは、運動中の本来活動すべき自然な筋の興奮タイミングで提供されることでhebb型の学習を促進する。このアプローチは、歩行プログラムの時空間構造を利用し、患者の機能的能力およびリハビリの有効性を高める。
私見・明日への臨床アイデア
●正常歩行というと頭に思い浮かぶ筋活動の図があるが、それは速度や方向・環境・免荷量等でも異なってくることを再認識した。研究下では、その辺りの条件は考慮する必要がある。訓練においては、異なる環境での歩行訓練は異なるパターンの筋活動を誘発し得る。
●筋活動は群発的であるということを考慮した介入は必要である。脳卒中者では、FES+機能的単位をタイミングよく使用する事(能動的要素と合わさる)が有効である。
氏名 shuichi kakusho
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)