vol.136:集団体操と自己満足感 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル
慢性期脳卒中者の自己満足感に対する課題指向型集団トレーニングの効果
The effect of class-based task-oriented circuit training on the self-satisfaction of patients with chronic stroke.
?PubMed Song HS, J Phys Ther Sci. 2015 Jan;27(1):127-9. 1
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・デイサービスなどで行う集団での運動は高齢者の身体能力や日常生活動作の維持改善を図るうえで必要なものであるが、利用者様からの声を聞くと「つまらない」といった意見を頂くこともある。
・運動に対する満足感はこうした集団体操を継続するための一要因だと考える。
・本論文は課題指向型の集団トレーニングが被験者の自己満足感に与える影響を検証しており、興味深かったため読むこととした。
内 容
背景・目的
・脳卒中者は身体機能面だけでなく、感情面での障害(セルフエスティーム、モチベーションなど)もみられることが多い。しかし、これらの感情面に着目した論文は少ない。
・同時に、課題指向型の集団トレーニングをどう臨床に適応するか、明確な方法も決まってはいない。
・したがって、本論文では課題指向型集団トレーニングが自己満足感にどう影響を及ぼすか検討することを目的とする。。
方法
・発症から半年以上経過した脳卒中者30名
・グループ1:一般的介入9名
・グループ2:一般的介入+個別課題指向型トレーニング10名
・グループ3:一般的介入+集団課題指向型トレーニング11名
・介入期間は1日30分、週3回、4週間
・課題指向型トレーニングは椅子座位、歩行、障害物をまたいで歩く、ものを運ぶ、ものを持ち上げる・下す、速く歩くを行った。
・一般的介入は何を行っていたか記載なし。
・自己満足感はself-esteem scale(SES), motivation of rehabilitation(MR), relationships change scale(RCS)の3つを使用した。
結果
・群間に有意差なし
・SESとRCSに関して、グループ1と3の間に有意差あり。その他の群間に有意差はなかった。
・MRに関して、グループ1と3、1と2の間に有意差があった。
表:実験結果
Song HS (2015)より引用
私見・明日への臨床アイデア
・集団での課題指向型トレーニングが3つの心理的なアウトカムに対し効果があるとの結果だった。
・セルフマネジメントプログラムを提唱するLorig (2003)は、運動の継続のために他者との良好な関係性が重要であると述べている。これは他者と自分を比較することで、「あのひとが熱心にやっているから私も」と良い影響を受ける場合や、「相手より自分の方が動けている、ちゃんとやっている」といった優越感がさらに運動を続けるモチベーションになるからである。本論文の結果はこれらの心理的側面が働いた結果、生じたのではないだろうか。
・発症から期間が経つほど運動に対するモチベーションの維持は難しくなってきてしまう。他者との関係性に着目し、プラグラムを提供すると継続を促すことができるかもしれない。
参考文献
Lorig, K. R. and Holman, H. R. (2003) ‘Self-Management Education: History, Definition, Outcomes, and Mechanisms’, Annals of Behavioral Medicine, 26(1), pp.1-7
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)