vol.124:脳卒中者の退院後生活 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
目次
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カテゴリー
神経系
タイトル
地域在住の脳卒中者:機能がQOLの全てではない Community-dwelling stroke survivors: function is not the whole story with quality of life. ?PubMed White JH, Arch Phys Med Rehabil. 2007 Sep;88(9):1140-6.
本論文を読むに至った思考・経緯
タイトルは機能面以外がQOLに関与することを示唆しており、日々臨床で感じることである。文献上でどう立証するのか興味を持ったため読むことにした。
論文内容
研究背景・目的
地域に在住している脳卒中者の機能面や服薬、社会サービスの利用などをコホート間で比較する。
研究方法
・後ろ向きコホート研究。発症時期により3つの集団に分ける。
①コホート1:1年前に脳卒中を発症した集団
②コホート3:3年前脳卒中を発症した集団
③コホート5:5年前に脳卒中を発症した集団
・それぞれの集団に30名ずつを目安に被験者を集めた。
・アウトカムは障害(Modified Rankin Scale)、認知機能(MMSE)、健康度(Stroke Impact Scale)、QOL(HRQOL)、社会サービス(Multidimensional Scale of Perceived Social Support)。
研究結果
・脳卒中再発につながる疾患を1つ以上有する被験者はコホート1で97%、コホート3で97%、コホート5で87%だった。
・抗凝固薬を服薬しているのはコホート1で73%、コホート3で63%、コホート5で58%だった。降圧剤はコホート1で80%、コホート3で80%、コホート5で61%だった(どちらも退院時の処方)。
・社会サービスの利用はコホート1で60%、コホート3で45%、コホート5で50%だった。
・内容はヘルパー21%、ガーデニング24%、食事作り19%だった。理学療法は19%の利用だった。
・全自立の利用者はコホート1で63%、コホート3で74%、コホート5で73%だった。
・機能面に関してはコホートごとの記録はなく、3コホートを合わせたものをグラフとしている。筋力や感情面が低いことがわかる(図)。
White (2007) より引用
本論文を読み考えたこと
・服薬に関して、発症から時間を経るごとに値が低下している。退院時の処方と記載があったため、比較的服薬に頼らなくてもよい症例(障害の程度が軽い)がより長く生存するからではないだろうか。
・コホート間での比較はサンプルサイズが少なかったため出来なかったと記載があった。コホート間で数字の変化はあったが、これらの変化が大きいのか、または誤差の範囲かどうかはわからない。
・機能面の変化が経時的にどうなるか興味があったが、3コホート合わせたものであるためわからない。ただ、感情面の値が最も小さく、満足した生活が遅れていないことが伺える。
・機能面とQOLの相関は記載されていなかった。タイトルとの不一致を感じる。
・理学療法を利用している脳卒中者が2割と少ない。訪問リハスタッフが介入することでQOLの向上に役立てることがあるため、より多くの方に利用してもらえるようにケアマネや病院MSWと連携を取ることが必要と感じる。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)