vol.122:脳卒中者の失禁 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
目次
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タイトル
脳卒中者の失禁-質的研究- (Can) Not talk about it – Urinary incontinence from the point of view of stroke survivors: a qualitative study. ?PubMed Kohler M, Scand J Caring Sci. 2017 May 24. doi: 10.1111/scs.12471.
本論文を読むに至った思考・経緯
•失禁は自尊心を傷つけQOLを低下させるものであるが、患者は恥ずかしさなどもあり訴えることができず、問題として認識されないことも多い。質的研究で脳卒中者の失禁に対する認識などをまとめた論文を見つけたため、読んでみようと思った。また、本ブログに掲載することで問題提起にもつながると思ったため。
論文内容
研究背景・目的
•脳卒中者が実際に経験した失禁と入院時の治療について、インタビューを通して理解すること。
研究方法
・半構造化面接法(質問をある程度用意し、インタビュー形式で対象の態度や考え方を調査)。
・失禁に悩む入院中の脳卒中者10名(女性7名、男性3名、37歳~95歳)
・インタビューで出てきた発言をグループ分けしまとめる。
研究結果
【失禁について話せない】
・失禁を話題にすることに抵抗を覚える患者が多く、また、対応してくれるスタッフの対応にも不満がみられた。
「もしもスタッフが聞いてくれれば私は答えられるけど、そうでなければ言えない」
「看護師にとってオムツ交換はただのルーティンかもしれない。でも私には違う」
・スタッフからより詳細な情報を求める声があった
「確かにグーグルを使えばわかることもあるけど、私はもっと深いレベルの情報がほしい」
・リハビリテーションでは失禁に対する優先順位は下がってしまう。
「スタッフが失禁に対し高い優先度を与えてくれるとうれしい。私はいつも失禁の気にかけているのに」
【失禁をコントロールしようとする】
・失禁をコントロールできなかったとき、患者は恥ずかしさ、絶望、不快を感じる
「あぁ、してしまった後に恥ずかしくてたまらなくなる。でも僕にできることは何もないんだ」
・十分な時間がなくて失禁してしまう。身体機能の問題からトイレに時間がかかることが予想され、病棟のスケジュールによってはトイレをあきらめることがある。
・トイレに行くタイミングがわからない。
「一番な嫌いなことは、お腹に圧迫感があってもこれがトイレに行くべきタイミングなのかがわからない。これは膀胱からなのかな?それとも何か別の?これがすごく腹立たしいんだ」
・失禁を減らそうとして飲水量を減らす
「朝から夜まで、トイレに行かなかった。いいや、なにも飲まなかったんだ。そのあと、頭が痛くなった。のども乾いていたけど、飲まなかった。」
興味深かったこと
・「恥ずかしい」感情のため、失禁を問題として取り上げることが遅れてしまう。飲水を我慢して脱水症状になることも示唆されており、気を付けなければならないと感じた。
私見・明日への臨床アイデア
・看護師と情報交換の際に失禁の有無を確認し、リハビリスタッフとしてできることを模索する。骨盤底筋に対するアプローチなど問題が認識できれば対応できることもあると思う。
・スタッフの性別でも話しやすさは変わると思われる。相手の感情に配慮しつつ、他のセラピスト、看護師と協力して対応できるようになりたい。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018)