30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)|実施方法・年齢別の目安・脳卒中リハでの読み方
STROKE LAB / FUNCTIONAL ASSESSMENT
30秒椅子立ち上がりテスト
30-second Chair Stand Test / CS-30
何回立てるか。
どう立ち続けられるか。
30秒の回数を、動作の理由と生活の変化につなぐ。

01|回数の先にある「立ち座りの余力」を見る
食卓の椅子からは立てる。でも何度も立ち座りすると、途中から動きが遅くなる。CS-30は、30秒間に椅子から立ち上がれる回数を記録し、下肢の機能的な力と反復する能力を捉える検査です。回数が多いほど、その条件で立ち座りを繰り返せています。
Jonesらは地域在住高齢者76名で検証し、再検査のICCは男性0.84、女性0.92でした。日本では中谷らが座面高40cmの方法を検証しています。筋力だけを直接測る検査ではありません。脳卒中後では、荷重の偏り、バランス、動作の組み立て、痛み、理解、疲労などを併せて見ます。[1], [2]
02|最初に決める:日本語原著の方法か、CDCの方法か
同じ名前でも測定条件が異なります。「40cmで測定し、43cmの基準表で判定する」「終了時の端数だけ別の方法を使う」ことを避けます。本記事は国内で参照される中谷らの方法を中心に説明し、CDCの方法を別枠で示します。
| 条件 | 中谷ら(2002)のCS-30 | CDC STEADI |
|---|---|---|
| 座面・椅子 | 40cmの踏み台、または肘掛け・背もたれのない頑丈な椅子 | 17インチ(約43.2cm)、背もたれあり・肘掛けなし |
| 上肢 | 胸の前で腕を組む | 手を反対側の肩に置き、胸の前で交差 |
| 終了時 | 立ち上がり途中で30秒に達した場合も1回に含める | 半分を超えて立ち上がっていれば1回に含める |
| 練習・本測定 | 5〜10回の練習後、休息して本測定1回 | 公式1枚票には練習回数の指定なし |
| 腕の支持が必要 | 原法の腕組み条件を満たさないことを記録 | 中止して0回と記録する規定 |
国内の資料も統一されていません。厚生労働省掲載資料は終了時の立ち上がり途中を加算しますが、岐阜県掲載資料は「立って座って1回」、終了時の途中は加算しない方法です。記録には参照した資料名とカウント規則を残してください。[4], [5]
03|準備:椅子・足・腕・測定者の位置をそろえる
ストップウォッチ、安定した座面、記録用紙を準備します。椅子が滑ったり倒れたりしない環境にし、周囲の障害物を除きます。患者の足が床に接地できるか、腕組みで立ち上がれるかを先に確認します。壁で椅子を固定する場合も、頭が壁に当たらない位置が必要です。[2], [3], [4]
| 確認すること | 再評価でも記録すること |
|---|---|
| 座面 | 床から座面までの実測高、椅子の種類・硬さ |
| 足元 | 靴・装具、足の幅と前後位置、床面 |
| 上肢 | 腕組みを保持できるか。肩痛・麻痺で難しい場合の変更 |
| 状態 | 痛み、息切れ、めまい、直前の運動・疲労 |
| 見守り | 測定者がすぐ支えられる側方に位置。動作や足を遮らない |
脳卒中後に転倒しそうな場合は安全を優先し、必要な支えを入れます。その場合は「無介助の標準条件」から変わったことを明記します。医学的に運動が許可されていない場合や、安静時から強い症状がある場合には、反復テストを開始しません。
04|実施手順:新人が迷いやすい場面を順番に
① 姿勢を作る。国内原著では座面の中央よりやや前に座り、胸の前で腕を組みます。脚は肩幅程度、足底を接地し、膝は約90度よりやや曲げた位置にします。[2]
② 動作を練習する。立位で膝・股関節が伸びること、座面に臀部が戻ることを確認します。国内原著の練習は5〜10回で、休息後に本測定1回です。練習だけで疲れる人に無理に回数を課さず、変更した回数と理由を記録します。[2]
③ 合図と同時に計時する。測定者は回数と姿勢を一緒に確認します。速く数えることに集中しすぎず、不完全な伸展、臀部の座面接触、手を使っていないかを見ます。
④ 30秒で終了し、最後の動作を判定する。中谷らの方法では立ち上がり途中も加算します。すでに数えた立位から座る途中なら、同じ動作をもう一度加算しません。最後の状態を「立位」「立ち上がり途中」「着座中」などと残すと確認できます。[2]
⑤ 回数と理由をセットで記録する。「12回」だけでなく、「40cm、腕組み、靴あり、最終立ち上がり途中を含む、後半に右への偏り」のように残します。

05|数え方と中止:曖昧なまま進めない
| 場面 | 扱い |
|---|---|
| 通常の反復で膝や体幹が伸びない | 完全な立位として数えない。繰り返すなら説明・理解・運動能力を確認 |
| 終了時だけ立ち上がり途中 | 選んだ方法の端数規定を適用。通常の不完全な立位と区別 |
| 腕で座面・膝・肘掛けを押した | 上肢支持の使用を記録。CDC法は中止して0回。継続した修正条件の回数は別記 |
| 痛み・めまい・胸部症状・強い息切れ、転倒しかける | 中止して状態を確認。実施秒数、途中回数、理由を記録。30秒の値へ換算しない |
| 説明を理解できない/安全上開始しない | 未実施と理由を記録。自動的に0回としない |
中谷らの付録には、不十分な伸展で中断・再測定する記載と、その回数を減じる記載の両方があります。本記事では、単発の不完全動作は除外し、課題自体が成立していなければ中断して再説明する運用とします。再測定する場合は十分に休息し、再測定した事実も残します。これは本文・付録を踏まえた運用上の整理です。[2], [3]
06|年齢別の目安:CDCの表はCDC条件で使う
以下はCDCが「平均以下」として転倒リスクの評価につなげる回数です。日本の40cm法の標準値でも、脳卒中患者の歩行自立の境界でもありません。表の「未満」を「以下」に読み替えないでください。[3]
| 年齢 | 男性:この回数未満 | 女性:この回数未満 |
|---|---|---|
| 60〜64歳 | 14回 | 12回 |
| 65〜69歳 | 12回 | 11回 |
| 70〜74歳 | 12回 | 10回 |
| 75〜79歳 | 11回 | 10回 |
| 80〜84歳 | 10回 | 9回 |
| 85〜89歳 | 8回 | 8回 |
| 90〜94歳 | 7回 | 4回 |
たとえばCDC条件で測った72歳女性の9回は、この表では平均以下に該当します。転倒歴、歩行・方向転換、服薬、視覚、住環境などの確認へ進むきっかけです。10回以上なら転倒しない、という意味ではありません。
国内40cm法では、中谷らの性・年齢別評価を参照します。対象は自立した高齢者で、脳卒中後の重度麻痺者を基準化したものではありません。比較対象の異なる表を並べて「どちらか良い方」を採用せず、採用した資料と条件を固定します。[2]
07|2026年の日本語研究:新しい基準も対象集団を確認する
岩﨑らは65歳以上の外来患者1,753名を対象に、年齢・性別別の5段階評価を作成し、基本チェックリスト(KCL)によるフレイル分類との関連を報告しました。40cmの台、腕組み、練習5回後の本測定1回という条件です。[8]
ただし、単一の生活習慣病外来を受診し、測定可能と判断された人の横断研究です。「最新だから全国の高齢者や脳卒中患者へそのまま適用できる」とは考えません。将来の転倒や要介護化の予測を直接検証した研究でもありません。新基準の全表は原著にリンクし、本記事では全国共通の合否表として転載しません。
08|脳卒中では「何回できたか」と「どちらで立ったか」を見る
回数が増えても、非麻痺側へ強く寄りかかって達成しているかもしれません。一方、回数が同じでも、麻痺側に体重を受けられる、着座が静かになる、後半の崩れが減るといった変化があります。CS-30を繰り返す能力の指標として使い、運動麻痺や左右の支持能力は別に確認します。
| 観察 | 追加で確かめること |
|---|---|
| 開始直後から離殿できない | 足の位置、前方への体重移動、股・膝の伸展、痛み、恐怖 |
| 非麻痺側へ大きく偏る | 麻痺側の荷重受容、感覚、膝の支持、足関節の可動性 |
| 立てるが座るときに落ちる | 下降を調節する力、椅子の位置の認識、疲労 |
| 後半だけ遅くなる | 反復による疲労、息切れ、姿勢変化、痛み |
| 回数は多いが歩行でふらつく | 歩行・方向転換・片脚支持など、検査に含まれない課題 |

09|何回増えたら改善? 測定誤差と意味のある変化を分ける
2016年の入院脳卒中患者62名の研究では、個人の変化を測定誤差から区別する指標として3回が示されました。ただし、43cm・腕組みの方法に加え、立てない場合は46cm・肘掛け使用の修正法も含まれています。国内40cm法で全員に使えるMCID「3回」ではありません。[6]
同じ椅子・腕・練習条件で8回から11回へ増えたなら、変化を詳しく確認する価値があります。8回から9回でも切り捨てず、次回の再現性と、着座の安定性・必要な介助・生活場面の変化を確認します。測定誤差を超えることと、本人にとって生活上の意味があることは別の問いです。
2025年の脳卒中67名を対象とした遠隔実施の研究では、軽度〜中等度の対象者で妥当性と反応性が支持され、開始時のTUGとの相関はr=-0.64でした。ただしこれは遠隔版の検証で、重症者の単独実施や、対面版との無条件な互換性を保証するものではありません。[7]
10|5回立ち上がり・TUG・PASSとの使い分け
| 評価 | 主に記録するもの | 選ぶ場面 |
|---|---|---|
| CS-30 | 30秒での回数 | 反復する能力を追いたい。5回に届かなくても回数として記録可能 |
| 5回立ち上がり | 5回に要する時間 | 一定回数を行う速さを追いたい。5回完遂できることが前提 |
| TUG | 起立・歩行・方向転換・着座の時間 | 移動全体の課題を含めて確認したい |
| PASS | 姿勢保持・姿勢変換の遂行と介助 | 腕組みでの反復が難しく、寝返りや起き上がりから把握したい |
CS-30の回数を5回立ち上がりの秒数へ換算したり、別の検査のカットオフを持ち込んだりはしません。歩行許可や介助の要否は実際の歩行場面を確認して決めます。
11|臨床ストーリー:同じ8回でも、次の一手は違う
以下は解釈を練習するための架空例です。介入量の標準処方ではありません。
40cm・腕組みで8回。足が前に残り、離殿前に後ろへ戻る動きが見られます。測定後に足の配置と前方移動を別課題として確認します。高めの座面で成功しやすい条件を作り、立ち座りを少数回ずつ練習。練習で変えた条件と、再評価の40cm条件を分けて記録します。
同じ8回でも、前半は滑らかで後半は座面へ落ち込みます。痛み・息切れ・疲労を聞き取り、短い反復と休息を組み合わせます。回数を急いで増やす前に、座る局面を調節できる範囲を確認します。
8回から11回へ増加。反復能力の改善は認めつつ、麻痺側の支持は別に評価します。必要に応じて介助下で麻痺側荷重と立ち座りを練習し、支持を減らした場面で変化を確かめます。
評価中は毎回同じ説明と条件にそろえます。細かな姿勢の修正や介助による学習は、測定を終えてからの練習として分けると、点数の意味が明確になります。

12|記録PDF:条件・回数・動作の理由を一緒に残す
中谷ら(2002)の座面高40cmの方法に沿ったA4・2ページの記録票です。準備・練習・30秒間の計測、終了時の数え方、回数・条件・生活動作の観察をまとめました。CDCの約43.2cm法とは椅子と終了時の数え方が異なるため、再評価でも採用する方法をそろえます。
出典をもとに、記録しやすい形式に整理しています。実施・採点の詳細は原版をご確認ください。追加の臨床記録は得点に含めません。
家族への説明例:「今日は同じ椅子から○回立てました。後半に座る動きが急になるので、家庭では急がず、少ない回数で安定して座る練習をしましょう。」家庭の椅子の高さが違う場合は、検査結果と同じ条件ではないことも共有します。
13|参考文献・確認範囲
- Jones CJ, Rikli RE, Beam WC. A 30-s chair-stand test as a measure of lower body strength in community-residing older adults. Res Q Exerc Sport. 1999;70:113–119. 原著抄録確認。
- 中谷敏昭ほか.日本人高齢者の下肢筋力を簡便に評価する30秒椅子立ち上がりテストの妥当性.体育学研究.2002;47:451–461.公開本文・付録確認。
- CDC. STEADI Assessment: 30-Second Chair Stand. 2017. 公式実施票。
- 厚生労働省掲載資料.30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト).実施要領。
- 岐阜県掲載資料.椅子からの立ち上がりテスト(下肢筋力の代替えテスト:CS-30).p.54。
- Lyders Johansen K, et al. Absolute and Relative Reliability of the Timed Up & Go Test and 30second Chair-Stand Test in Hospitalised Patients with Stroke. PLoS One. 2016;11:e0165663. 公開本文確認。
- Noguchi KS, et al. Measurement Properties of a Virtually Administered 30-Second Chair Stand Test in People With Stroke. J Neurol Phys Ther. 2025. doi:10.1097/NPT.0000000000000520. 原著抄録確認。
- 岩﨑孝俊ほか.外来高齢者における30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30)の新たな5段階評価基準の構築と基本チェックリスト(KCL)によるフレイル層別化との関連性の検討.理学療法学.2026;53:103–110.公開本文確認。
確認日:2026年10月29日。日本語原著の本文・付録、CDC公式資料、日本語の公的掲載資料、脳卒中の信頼性研究と2025〜2026年の研究を照合しました。Jonesら(1999)とNoguchiら(2025)は原著抄録で確認した範囲を記載。声かけ・観察表・介入例は、読者の臨床判断を助けるための本記事の提案です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)