5回立ち上がりテスト(5STS)|測定方法・カットオフ・改善量と脳卒中リハでの使い方
STROKE LAB / TRANSFER ASSESSMENT
5回立ち上がりテスト
Five Times Sit-to-Stand Test / 5STS
5回の立ち座りを、
秒数と動作で読み解く。
測り方をそろえ、変化の意味を臨床につなぐ。

01|5回の速さから、立ち座りのどこを読むか
椅子から一度は立てる。でも、何度も立ち座りすると時間がかかる。5回立ち上がりテストは、座位と立位を5回繰り返す所要時間を測り、立ち座りの機能を数値で追う評価です。Five Times Sit-to-Stand Test、5STS、5xSTS、FTSSTなどの名称が使われます。
同じ測定条件なら、所要時間の短縮は課題遂行が速くなったことを示します。ただし、秒数には下肢筋力だけでなく、体重移動、バランス、動作の協調、痛み、恐怖、理解なども関わります。「遅いから大腿四頭筋が弱い」と決めず、どの局面で時間を使うかまで観察します。[1], [2]
02|まず統一する:5回目の立位か、着座か
本記事とイラストは、神経疾患の臨床ガイドラインで説明される「合図から5回目の着座まで」を基本にします。一方、SPPB型のRepeated Chair Standsなどには、5回目に完全に立った時点で止める方法があります。最後の下降動作を含むかどうかが違うので、数値はそのまま比較できません。[1], [3]
| 方式 | 開始 | 終了 | 記録例 |
|---|---|---|---|
| 本記事の基本:5回着座で終了 | 開始の合図 | 5回目の立位の後、臀部が座面につく | 5STS 14.2秒/5回目着座 |
| 5回立位で終了する方式 | 採用した手順の開始合図 | 5回目の完全立位 | 5回椅子立ち上がり 12.8秒/5回目立位 |
03|準備:椅子と身体条件を再現できるようにする
43〜45cm程度の標準的な座面高が文献で用いられています。高さは「だいたい」ではなく実測し、再評価で同じ椅子を使います。背もたれのある安定した椅子、ストップウォッチ、記録用紙を準備します。[1], [2]
| 確認項目 | 具体的に記録すること |
|---|---|
| 座面 | 高さ、硬さ、肘掛けの有無、固定の有無 |
| 足元 | 靴・装具、両足の位置、床面 |
| 上肢 | 胸の前で腕を組めるか。麻痺・肩痛による変更 |
| 姿勢 | 開始時の背中の位置、足底接地、立位の伸展 |
| 体調 | 痛み、めまい、息切れ、直前の運動と休息 |
| 見守り | 側方からすぐ支えられ、臀部と座面が見える位置 |
RehabMeasuresは自立設置の椅子を指定しています。転倒や椅子の滑りが懸念される場合には安全確保を優先し、固定などの変更を記録します。安全な実施ができない人に、速さを競う課題をそのまま行わせません。[2]
腕組みが難しい脳卒中患者では、麻痺側上肢を体側やスリングに置く方法がガイドラインに記載されています。これは腕で押して立つことの許可ではありません。支持に使った手や身体介助の有無を分けて記録します。[1]
04|実施手順:説明から最後の着座まで
① 説明と見本。まず動作を示し、腕組みのまま立って座れるかを確認します。本記事では「5回立って、5回目に座ったところで終了」と最初に伝えます。
② 練習。RehabMeasuresは練習試行を設け、疲労が心配なら見本と2回の反復で理解を確認する方法も示しています。練習でできるかを見極め、休息してから計時します。練習回数を再評価でもそろえます。[2]
③ 開始姿勢。腕を胸で組み、足底を床につけます。開始時は背中を背もたれに置く手順です。足は安定して立てる位置に置き、位置を記録します。
④ 合図と同時に開始。毎回、股関節・膝が伸びた立位に達し、臀部が座面に戻ることを見ます。測定中に姿勢を誘導したり、毎回違う励まし方をしたりせず、説明条件をそろえます。
⑤ 5回目の着座で停止。5回目に立った瞬間ではなく、その後の臀部の座面接触で時計を止めます。秒数と、上肢支持・介助・途中の停止・不完全な反復の有無を記録します。[1]


05|途中で止まる・腕を使う・完遂できないとき
| 起きたこと | 記録と対応 |
|---|---|
| 手で膝・座面・肘掛けを押した | 標準の無支持条件で完遂できなかったと記録。上肢支持での結果は修正条件として別記 |
| 療法士が身体を持ち上げた | 介助した場所と程度を記録。無介助の基準値に直接当てはめない |
| 3回までで中止 | 3/5回、中止時刻と理由を残す。5回分の秒数へ換算しない |
| 立位が浅い・座面に戻らない | 規定の反復として成立しているか確認。無理に有効値として採用せず、再説明・休息後の再測定を検討 |
| 痛み・めまい・胸部症状・強い息切れ・転倒しかける | 中止し状態を確認。中止理由と症状を記録 |
| 説明を理解できない/安全に開始できない | 未実施と理由を記載。0秒や便宜的な最大秒数で埋めない |
検査の途中で休止した場合は、その事実と採用した手順を記録します。休止時間だけを引くと、同じ5STSではなくなります。「できない」が評価上の重要な情報になるため、秒数を作ることを優先しません。
06|12秒・15秒・年齢別の値は、それぞれ意味が違う
| 値・出典 | 対象と目的 | 読み違えないこと |
|---|---|---|
| 約12秒/Mongら(2010) | 健康高齢者群と慢性期脳卒中群の判別。感度83%、特異度75% | 脳卒中患者の転倒や歩行自立を予測した境界ではない |
| 15秒超/Buatoisら(2008) | 65歳以上の地域在住高齢者で反復転倒と関連。感度55%、特異度65% | 脳卒中専用基準ではなく、15秒以下でも転倒を否定しない |
| 11.4/12.6/14.8秒/Bohannon(2006) | 60〜69/70〜79/80〜89歳の年齢別参考値 | 診断・歩行許可・転倒の合否とは別 |
MongらのPubMed抄録は12秒、日本理学療法士協会の解説は12.2秒と記載しています。本記事では「約12秒」とし、脳卒中群と健康高齢者群を分ける研究上の値として紹介します。少数の対象者による結果で、個人の転倒確率を計算する値ではありません。[4], [5]
Buatoisらの研究は45cmの椅子を使用し、追跡時の転倒情報を得た1,958名で検討しています。15秒超と反復転倒の関連は調整後リスク比1.74でした。これは「15秒を超えた人は74%の確率で転ぶ」という意味ではありません。[7]
07|年齢別の目安をどう使うか
| 年齢 | 平均より遅い遂行を考える参考値 |
|---|---|
| 60〜69歳 | 11.4秒を超える |
| 70〜79歳 | 12.6秒を超える |
| 80〜89歳 | 14.8秒を超える |
Bohannon(2006)の記述的メタ解析に基づく参考値です。日本人脳卒中患者だけの標準値ではなく、測定条件が完全に統一された単一研究の正常範囲でもありません。元文献と実施条件を確認したうえで、年齢を踏まえた大まかな位置づけに使います。[6]
たとえば74歳の人が16秒だった場合、同年代の参考値より時間を要することを説明できます。しかし、その理由が麻痺、痛み、恐怖、低い椅子、腕の置き方のどれかは、秒数から決まりません。次の観察・追加評価につなげます。
08|脳卒中で見るべきこと:秒数と動作の内訳
Mongらの慢性期脳卒中研究では、5STSと両側の膝屈筋力に関連がみられましたが、BBSや安定性限界との有意な関連は示されませんでした。5STSを「総合バランス検査の代わり」にしないことが大切です。[4]
| 観察した特徴 | 次に確認すること |
|---|---|
| 離殿前に何度も揺り戻す | 足の位置、前方への重心移動、恐怖、課題理解 |
| 非麻痺側へ強く偏る | 麻痺側の荷重受容、感覚、足部の安定、膝・股関節の支持 |
| 立ち上がれるが着座で落ち込む | 下降局面の制御、椅子の位置認識、痛み・疲労 |
| 4〜5回目だけ遅い | 反復による疲労、息切れ、注意の持続、筋出力の変化 |
| 秒数は良好だが方向転換で不安定 | TUGや歩行場面など、回転・移動を含む評価 |
2025年の慢性期脳卒中54名の研究では、足関節底屈筋の痙縮の程度によって方向転換を含む課題に差がみられた一方、5xSTSでは有意差がみられませんでした。「5STSが速いから足関節機能も良好」とは判断できません。[9]
09|何秒の短縮を改善と考える? MDCとMCID・MIC
MDCは測定誤差を超える変化量の目安、MCID・MICは選んだ基準に照らして臨床的に重要な変化を考える目安です。異なる研究の値を、一人の患者に共通の合格ラインとして使うことはできません。
| 研究 | 報告された値 | 臨床での位置づけ |
|---|---|---|
| 2021年/脳卒中 | 限定的地域歩行群で約3秒。屋内歩行群では評価期間によって1.9秒から0.72秒 | MCIDは歩行能力・回復段階で変わる。原著抄録の要約値 |
| 2025年/慢性期脳卒中54名 | 5xSTSのMDC95:4.56/4.26/5.51秒(MAS 0/1〜1+/2以上の各群) | 当該研究の測定誤差の指標。MCIDではなく、別の手順・患者に無条件で適用しない |
| 2025年/フレイルを有する訪問リハ利用者142名 | 3か月のFTSSTのMICadj:5.9秒 | 脳卒中だけの値ではない。訪問リハの当該対象・推定法での結果 |
| 2026年10月/地域在住高齢者96名 | QOL改善の識別に対応した短縮:1.48秒 | 12週間の変化を検討した研究。脳卒中の普遍的なMCIDではない |
2021年研究は4週・8週で再評価し、GROCを外的基準に推定しています。同じ5STSでも、歩行能力と評価期間によって意味のある変化が異なることを示します。2026年研究も、QOLを基準とした地域高齢者の値を、脳卒中の麻痺回復へそのまま置き換えない読み方が必要です。
10|CS-30・SPPB・TUG・PASSとどう使い分けるか
| 評価 | 記録するもの | 選ぶ目的 |
|---|---|---|
| 5STS | 5回の所要時間。短縮を追う | 規定回数を行う速さ・立ち座り能力 |
| CS-30 | 30秒間の反復回数。回数増加を追う | 一定時間内の反復能力。5回未満でも回数を残せる |
| SPPB | バランス・歩行・椅子立ち上がりを得点化 | 下肢機能を複数の課題で評価。立ち上がりの終了位置・得点表を統一 |
| TUG | 起立・歩行・方向転換・着座の所要時間 | 移動全体の課題を確認 |
| PASS | 姿勢保持・姿勢変換の遂行と介助 | 腕組みでの反復が困難な段階から評価 |
CS-30の回数を5STSの秒数に換算しません。5STSを完遂できない人では、無理に速度課題を続けず、単回の立ち上がりや必要な介助を確認する方法へ切り替えます。
11|臨床ストーリー:次の練習をどう決めるか
以下は臨床推論を説明するための架空例です。回数や負荷の標準処方ではありません。
20秒。足が前に残り、体幹を前へ動かしても臀部が浮きません。測定後、足の配置と前方移動を別に確認します。高めの座面で立てる条件を探し、必要な介助を減らしていきます。再評価は元の座面高へ戻し、練習条件の違いを持ち込まないようにします。
18秒から14秒へ短縮。しかし着座で衝撃が大きくなっています。速さの変化と下降の制御を分けて評価し、少数回の立ち座りで安定して座る練習を組み込みます。本人には「速さは上がりました。次は静かに座れるかを見ましょう」と伝えます。
12秒でも麻痺側足部がほとんど使われません。速度の良さは認めつつ、麻痺側の支持・感覚と移乗場面を追加評価します。介助下で荷重を受ける課題を練習し、支持を減らしたときの立ち座りへつなげます。

12|記録PDFと再評価のチェック
5回目の着座で終了する方法を採用したA4・2ページの記録票です。実施手順、座面高、腕の位置、試行時間・採用値、未完遂の理由と、生活動作・再評価を記録できます。
出典をもとに、記録しやすい形式に整理しています。実施・採点の詳細は原版をご確認ください。追加の臨床記録は得点に含めません。
最終確認は「同じ条件か」「完全立位・着座が成立しているか」「生活での変化と一致するか」の3点です。秒数が同じでも介助が減った、着座が安定した、本人の恐怖が減ったなら、その変化を言葉で残します。
13|参考文献・確認範囲
- Moore JL, et al. A Core Set of Outcome Measures for Adults With Neurologic Conditions Undergoing Rehabilitation: A Clinical Practice Guideline. J Neurol Phys Ther. 2018;42:174–220. 5TSTS実施条件の公開記載を確認。
- Shirley Ryan AbilityLab. Five Times Sit to Stand Test. RehabMeasures Database. 実施方法・記録上の注意。
- Framingham Heart Study. Clinic Exam, Original Cohort, Exam 28: Protocol. Repeated Chair Stands. NCBI dbGaP公開手順。
- Mong Y, Teo TW, Ng SS. 5-repetition sit-to-stand test in subjects with chronic stroke: reliability and validity. Arch Phys Med Rehabil. 2010;91:407–413. 原著抄録確認。
- 日本理学療法士協会.慢性期脳卒中後遺症者を対象とした5回反復立ち上がりテスト:信頼性と妥当性.2012.Mongらの日本語解説。
- Bohannon RW. Reference values for the five-repetition sit-to-stand test: a descriptive meta-analysis of data from elders. Percept Mot Skills. 2006;103:215–222. 抄録確認。
- Buatois S, et al. Five times sit to stand test is a predictor of recurrent falls in healthy community-living subjects aged 65 and older. J Am Geriatr Soc. 2008;56:1575–1577. 公開本文確認。
- Martín-San Agustín R, et al. Responsiveness and Minimal Clinically Important Difference of the Five Times Sit-to-Stand Test in Patients with Stroke. Int J Environ Res Public Health. 2021;18:2314. 原著抄録確認。
- Differences in Functional Performance and Minimal Detectable Change According to Levels of Ankle Plantar Flexor Spasticity in Patients with Chronic Stroke. 2025. 原著抄録・公開本文の検索表示確認。
- 中口拓真ほか.フレイル高齢者における訪問リハビリテーション開始から3か月後の身体機能アウトカムのMinimal Important Change―レトロスペクティブ縦断研究―.地域理学療法学.2025;5:25–34.原著抄録確認。
- Low DC, et al. Construct validity, responsiveness, and minimal important change of the 5 times sit-to-stand test when used with healthy community-living older adults. Scientific Reports. 2026年10月7日先行公開.doi:10.1038/s41598-026-75092-0.出版社公開抄録確認。
確認日:2026年10月29日。原著抄録、公開実施手順、日本語解説・日本語原著、2025〜2026年の研究を照合しました。全文を取得できなかった資料は全文確認済みとは表記していません。本文の声かけ・観察・介入例は臨床理解のための提案です。PDFは原資料に基づき、測定手順と記録欄を整理しています。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)