vol.387:電気刺激療法(NMES)が痙縮筋に及ぼす効果とは?? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
神経系
タイトル|痙縮筋に対する機能的電気刺激(FES)のシステマティックレビュー
Effects of Electrical Stimulation in Spastic Muscles After Stroke Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled TrialsPubMed Stein C et al.(2015)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・電気刺激を併用する事があり、痙縮筋の一時的な筋緊張の変化を体験する。研究的にどのような報告が上がっているか興味を持ち本論文に至る。
内 容
背景・目的
●神経筋電気刺激(NMES)は、痙縮を軽減し、脳卒中者の運動範囲を改善するために使用されてきました。しかし、相反する結果が臨床試験によって報告されています。
●今回は脳卒中後の痙縮筋に対する別の治療との関連有り無しでのNMESによる治療効果を評価するため、ランダム化された臨床試験のシステマティックレビューを行った。
方法
●以下の電子データベースを検索した(開始から2015年2月):Medline(PubMed)、EMBASE、Control TrialsおよびPhysiotherapy Evidence Database(PEDro)
●抽出された主要アウトカムは痙縮であり、【Modified Ashworth Scale】によって評価され、抽出された二次アウトカムはゴニオメータによって評価された【ROM】であった。
結果 | 痙縮筋に対する電気刺激療法
●NMESは、CON群と比較し、脳卒中後の痙縮の低下および運動範囲の増加をもたらした。
●22件の研究では、NMESによる刺激頻度は18〜50Hzの範囲、pulse durationは0.1〜0.4msの範囲であった。3つの研究では、NMESによる刺激頻度は80〜100Hzであり、pulse durationは0.1〜0.3msであった。4つの研究は刺激特性を記載していない。
●このレビューでは、30〜50Hzの周波数および0.1〜0.5msの間のパルス幅を有するNMESの使用を5セット・3〜4週間にわたって行う事が効果的であったことが分かった。
●他の介入と組み合わせたNMESの適用は、対照群と比較した場合の痙縮の減少および運動範囲の改善と関連していた。(Bobath、Active leg サイクリング、SMART Arm、作業療法、Botulinium Toxin A、固有感覚神経筋facilitationを用いたストレッチングなどの比較試験が行われたが、測定を組み合わせることが常に可能ではなかった。)
●NMESの使用は、非麻痺手の過使用を阻害することはできませんでしたが、日常生活で麻痺手を使用しやすくなり、動作範囲が改善されました。
●ボツリヌス毒素併用NMESに関する3つの研究では、痙性の有意な低下は見られなかった。
私見・明日への臨床アイデア
●持続的な電気刺激は、痙縮の減少、それに伴う関節可動域の拡大、そして可動範囲が増える事での日常生活上での使用機会が増える事が分かった。しかし、反応としては一時的である印象がある。練習時のコンディショニングとしては有用と思われる。
電気刺激療法(NMES)に関する質問コーナー
質問1:肩関節の亜脱臼には電気刺激は有効ですか??
肩関節亜脱臼を有する患者では、そもそも肩関節周囲筋の筋出力の低下に伴う不安定性を有しています。自身の腕の重みをコントロールできず、練習が進まない患者に対して、電気で運動単位の動員(筋出力)を補助し課題を遂行しやすくしてあげることは有用です。
関連論文はこちら→●Vol.514.肩関節亜脱臼を軽減!?上腕二頭筋長頭に対する電気刺激治療の効果
質問2:具体的に上肢のリハビリ中にどのように電気刺激を使用すればよいですか?
●全て電気で行ってしまっては受動的な訓練となってしまうため、あくまで運動単位の動員を補助するという視点、上肢課題のなかで使用しその課題が達成できるということが重要と思います。
●臨床的には重度麻痺の患者ではスリングセラピーと併用すると効果的です。それ以上の機能を有する患者では筋電駆動型の電気刺激で課題を遂行するのが良いかと思います。学習性の不使用に至らなくするため、電気の力を借りることは有用と実際臨床で感じています。
関連論文はこちら→●Vol.500.上肢に対する機能的電気刺激のレビュー:効果的な使用法の理解
氏名 覚正 秀一
職種 理学療法士
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
痙縮のセラピーに役立つ動画
上肢のリハビリに役立つ動画
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 4万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)