【2026年版】扁桃体の役割とは?:情動、記憶への影響と鎮めるための最新リハビリガイド – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2026年版】扁桃体の役割とは?:情動、記憶への影響と鎮めるための最新リハビリガイド

Clinical Neuroscience for Rehabilitation
“

扁桃体は、脳卒中後の感情をどう支配するのか。

感情失禁、脳卒中後うつ、意欲低下——臨床でよく出会うこれらの症状の背景には、側頭葉深部にある小さな構造物「扁桃体」のネットワーク障害が関わっています。解剖から評価、介入まで、新人が明日から使える形で整理しました。

UPDATED2026
READ約18分
FORPT / OT / ST
BYSTROKE LAB

— 扁桃体の解剖・機能・臨床応用(リハビリテーションのための臨床脳科学シリーズ)

PREVALENCE
30-40%
脳卒中患者に生じる脳卒中後うつ(PSD)の割合(Robinson, 2003)
SIZE
1-1.5cm
アーモンド大の扁桃体が、脳内の主要ネットワークほぼ全てに影響を及ぼす
ROUTINE
3分
セッション冒頭の傾聴・呼吸法ルーティンの目安時間(専門家合意)
Quick Reference
忙しい臨床家のための
要点5項目。
01
扁桃体は側頭葉内側、海馬前方に位置する皮質下構造で、体表からは確認できません。
02
脳卒中後うつ(PSD)は30〜40%に生じ、ADLと生存率に影響する重大な合併症です。
03
感情失禁とPSDは異なる病態です。混同すると対応を誤ります。
04
傾聴・呼吸法は「気配り」ではなく、扁桃体機能を整える神経科学的介入です。
05
PHQ-9等の定期スクリーニングと多職種連携が、予後を大きく左右します。

01
Case Vignette

臨床現場でこう出会う。

Case Vignette
石川さん(62歳・男性)、右中大脳動脈梗塞発症後3週間・回復期リハビリ病棟入院中。

左上下肢に軽度片麻痺(Brunnstrom Stage 上肢V・下肢V)が残存するものの、歩行は近位監視レベルまで改善しています。主訴は「また倒れるかもしれない」という強い不安と、突発的な易怒性です。初回評価ではPHQ-9が14点(中等度)、IES-Rでは侵入症状の項目が高値を示しました。

初回評価所見として、会話中に急にイライラする様子、夜間に発症時の夢を見て目覚めるとの訴え、新しい音や環境への過敏な反応が観察されました。身体機能の回復は良好でも、感情面のつまずきがリハビリ参加を妨げている典型例です。

新人のうちは、こうした患者を前にすると「早く運動療法のメニューを進めなければ」と焦りがちです。しかし、感情処理の中枢である扁桃体(Amygdala:側頭葉深部にあるアーモンド型の構造物で、恐怖・不安などの感情処理を担う脳部位)が過活動している状態では、前頭前野の機能が低下し、運動学習の効率そのものが落ちることが知られています。この記事では、石川さんのようなケースにどう向き合うかを、解剖から評価、多職種連携まで順を追って整理します。

02
Definition & Epidemiology

扁桃体とは何か、どれだけ多くの患者に関係するのか。

扁桃体は側頭葉の内側深部に埋め込まれた、約1〜1.5cmのアーモンド型構造物です。左右半球に一対存在し、大脳辺縁系(Limbic System:感情・記憶・動機付けを担う脳内の関連構造群)の中核として機能します。「感情の中枢」と呼ばれることもありますが、正確には「感情ネットワークの重要なノード」であり、単独で感情を生み出すわけではありません。

脳の機能解剖とリハビリテーション 金子唯史 医学書院 書影
— 本記事はSTROKE LAB代表・金子唯史著『脳の機能解剖とリハビリテーション』(医学書院、2024年)の内容を基盤に構成しています。
Anatomy
解剖学的位置と血液供給

体表からは視認も触知もできない皮質下構造で、海馬の前方(吻側)、側脳室下角の上部、尾状核尾部の近傍に位置します。主要な血液供給は中大脳動脈(MCA)の側頭極動脈で、内頸動脈から分枝する前脈絡叢動脈も一部を担います。MCA領域や前脈絡叢動脈の梗塞・出血では扁桃体が障害され、感情処理・記憶形成に影響しうることを念頭に置いてください。

扁桃体の解剖学的位置(海馬・側脳室下角との関係)
— 図1:扁桃体の解剖学的位置。海馬前方・側脳室下角上部に位置する皮質下構造。
扁桃体の血液供給(中大脳動脈・前脈絡叢動脈)
— 図2:扁桃体への血液供給。中大脳動脈の側頭極動脈と前脈絡叢動脈が主な供給源。

なぜ新人がこの疫学を知っておくべきか

脳卒中後うつ(PSD:Post-Stroke Depression)は脳卒中患者の30〜40%に生じるとされ[観察研究](Robinson RG, Biol Psychiatry, 2003)、ADL改善や生存率に直結する重大な合併症です。前頭葉と辺縁系の回路が断絶し、モノアミン神経伝達系が障害されることが主要な機序と考えられています。「意欲が出ないのは気持ちの問題」と片付けず、神経学的背景を持つ症状として捉える視点が、若手臨床家には特に求められます。

扁桃体は「感情の器官」ではなく、脳内ネットワークの交差点として理解する。
STROKE LABでの無料相談の様子

— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします

Free Consultation
感情面の変化に、ご家族だけで向き合っていませんか。

STROKE LABでは身体機能だけでなく、脳卒中後の感情・意欲の変化にも神経科学の知見を踏まえて向き合います。週2回の保険リハビリだけでは物足りないと感じる方は、まず無料相談でご相談ください。

無料相談を予約する→

03
Neural Mechanism

神経メカニズムと責任病巣を、回路レベルで理解する。

Internal Structure
3つの主要核群

基底外側核群(BLA)は感覚情報と皮質情報を統合する「感情の統合ハブ」で、恐怖条件付けの記憶形成に重要です。中心核(CeA)は扁桃体の主要な出力核で、視床下部・脳幹に投射し心拍増加や凍りつき反応を制御します。皮質核・副嗅核は嗅覚情報を感情・記憶と結びつけ、匂いで記憶が鮮明に蘇る現象の神経基盤になります。

求心性経路:ローロードとハイロード

LeDoux(1996)が提唱した二経路モデルでは、危険を知らせる刺激は「ローロード(視床から扁桃体への直接経路)」により、大脳皮質での意識的処理より先に扁桃体へ届きます。これが「考える前に体が動く」現象の神経学的根拠です。一方「ハイロード(視床→皮質→扁桃体)」は精緻ですが反応が遅く、両経路の並行動作が速さと精度を両立させています[専門家合意]。

扁桃体のローロードとハイロード経路(LeDoux 1996)
— 図3:視床から扁桃体への「ローロード(高速・直接)」と皮質経由の「ハイロード(精緻・遅い)」。出典:LeDoux JE, 1996。
前頭前野・帯状皮質から扁桃体への制御回路
— 図4:前頭前野・帯状皮質から扁桃体への制御性入力。前頭葉は扁桃体の「ブレーキ」として機能する。

前頭前野、特に内側前頭前野(vmPFC)は扁桃体をトップダウンに抑制します。脳卒中・外傷性脳損傷で前頭葉が損傷されると、この制御が低下し、感情の過剰反応や情動失禁が生じます。患者が「ちょっとしたことで涙が出る」と訴えるとき、多くはこの前頭葉—扁桃体制御回路の障害が背景にあります。

扁桃体から視床下部・脳幹への遠心性投射
— 図5:扁桃体から視床下部・脳幹への遠心性投射。ストレス反応・心拍・呼吸変化の神経基盤。

3大機能ネットワーク:SN・DMN・CEN

扁桃体はサリエンスネットワーク(SN:重要な刺激を選び出し脳のモードを切り替えるネットワーク)の主要ノードです。SNの中核は前島皮質(AI)と背側前帯状皮質(dACC)であり、扁桃体と連携してデフォルトモードネットワーク(DMN:内的思考・自己参照時に活性化)からセントラルエグゼクティブネットワーク(CEN:外部タスク遂行時に活性化)への切り替えを担います[複数RCT・観察研究の統合](Seeley et al, J Neurosci, 2007; Menon V, Trends Cogn Sci, 2011)。

サリエンスネットワークの構成(前島皮質・dACC・扁桃体)
— 図6:サリエンスネットワーク(SN)の主要構成。前島皮質(AI)・dACC・扁桃体が中核を担う。
扁桃体による感情的顕著性の検出
— 図7:扁桃体による感情的顕著性の検出。脅威・報酬刺激への迅速な反応のイメージ。
デフォルトモードネットワーク(DMN)の構成
— 図8:デフォルトモードネットワーク(DMN)。休息・内省・自己参照時に活性化する(Buckner et al, 2008)。
セントラルエグゼクティブネットワーク(CEN)の構成
— 図9:セントラルエグゼクティブネットワーク(CEN)。外部タスク・問題解決・作業記憶の実行に関与。
SN・DMN・CENの動的切替
— 図10:SN・DMN・CENの動的切替。SNが「スイッチャー」として内的思考と外部タスクを切り替える。
EVIDENCE
ネットワーク切替障害がリハビリに与える影響

[複数RCTの統合的知見]:課題遂行中もDMN(自己批判・失敗の反芻)が抑制されずCENへの切替が不十分だと、集中困難・意欲低下・疲弊感が生じます(Menon V, Trends Cogn Sci, 2011)。療法士が安心感や達成感を意図的に提供することは、SNからCENへの切替を促す神経学的介入という側面を持ちます。

責任病巣の画像同定(MRI読影の要点)

扁桃体は皮質下構造のため、T1強調冠状断像での確認が基本です。海馬吻側の直前、側脳室下角の上部、嗅内皮質の外側という位置関係を順に確認します。正常サイズは1〜1.5cmで、左右非対称性や萎縮(アルツハイマー病・うつ病との関連が報告)、体積増大(PTSDとの関連が報告)を評価しますが、個人差が大きく画像単独での診断には限界があります[観察研究]。

扁桃体が関与する主な疾患の全体像
— 図11:扁桃体の過活動(PTSD・不安障害)と機能低下・萎縮(アルツハイマー・うつ)が関与する主な疾患の全体像。
MRI冠状断での扁桃体の同定
— 図12:MRI冠状断での扁桃体の同定。海馬(吻側)の前方、側脳室下角の上部に位置する。
扁桃体のサイズ・左右差の評価
— 図13:扁桃体のサイズ・左右差の評価。萎縮と体積増大の読影ポイント。
MRI冠状断での扁桃体・海馬・嗅内皮質・側脳室の位置関係
— 図14:T1強調冠状断MRIでの扁桃体・海馬・嗅内皮質・側脳室下角の位置関係。

04
Differential Diagnosis

似て見える症状を、どう見分けるか。

扁桃体ネットワークの障害は、運動・感覚障害と比べて見落とされやすく、かつ互いに似た症状として現れます。特に新人が混同しやすい4つの鑑別ポイントを整理します。

情動調節の変化(臨床観察)
— 情動調節の変化。些細な刺激への過敏反応、他者の感情の誤認などが現れることがある。
鑑別疾患 共通点 鑑別ポイント 参考検査
感情失禁(PBA) vs 脳卒中後うつ(PSD) 突発的な情動表出 PBAは状況と不一致な短時間の笑い・泣き。PSDは持続的な気分の落ち込みと意欲低下を伴う PHQ-9、GDS、CNS-LS
PTSD様反応 vs 全般不安障害 過覚醒・回避行動 PTSD様反応は発症時の恐怖体験に結びついた再体験症状(フラッシュバック)を伴う。全般不安はより漠然とした心配が中心 IES-R、PCL-5、GAD-7
前頭葉性アパシー vs うつ病 意欲低下・無関心 アパシーは主観的苦痛を伴わない無関心が中心。うつ病は悲哀感・自己否定的思考を伴う Apathy Scale、PHQ-9
bvFTDの社会的行動障害 vs 右半球損傷の感情認識障害 対人関係の変化・共感低下様の見え方 bvFTDは進行性で人格変化が先行。脳卒中後は病巣に一致した急性発症 MRI/CT病巣確認、MET、MINI-SEA
扁桃体による痛みの情動的修飾
— 扁桃体による痛みの情動的修飾。不安・恐怖は痛みを増幅し、安心感は痛みを軽減しうる(恐怖回避モデル)。
「なんとなく元気がない」で終わらせず、病態を分けて考えることが、適切な介入の第一歩。

05
Assessment

評価尺度と採点基準を、迷わず使えるようにする。

扁桃体そのものの機能を直接測る臨床尺度はなく、下流に現れる症状(抑うつ・不安・意欲低下)を複数尺度で評価します。ここでは臨床現場で最も使用頻度の高いPHQ-9(Patient Health Questionnaire-9:9項目のうつ症状自己記入式尺度)を中心に解説します。

PHQ-9
9つの評価項目
— 過去2週間の頻度を0〜3点で自己記入
→興味・喜びの喪失
→気分の落ち込み・絶望感
→睡眠障害(入眠困難・過眠)
→疲労感・気力低下
→食欲の変化
続き
残り4項目
— 自己評価・希死念慮まで含む
→自己否定感・罪悪感
→集中困難
→精神運動制止または焦燥
→希死念慮・自傷念慮
項目(合計点) 採点基準 カットオフ値 解釈
合計0〜4点 9項目それぞれ0(まったくない)〜3(ほぼ毎日)で自己記入 0〜4点 症状なし〜最小
合計5〜9点 同上 5〜9点 軽度。経過観察・非薬物介入を検討
合計10〜14点 同上 10点以上でスクリーニング陽性 中等度。精神科・心理士への紹介を検討
合計15〜19点 同上 15〜19点 中等度〜重度。精神科紹介を推奨
合計20〜27点 同上 20点以上 重度。速やかな精神科連携が必須
MEASUREMENT PROPERTIES
PHQ-9の測定特性

信頼性・妥当性[単独RCT/大規模検証研究]:内的一貫性はCronbach’s α .86〜.89、カットオフ10点で大うつ病性障害に対する感度88%・特異度88%と報告されています(Kroenke K, Spitzer RL, Williams JB, J Gen Intern Med, 2001;16(9):606-613)。

MCID(臨床的最小変化量)[専門家合意を含む複数研究の統合]:臨床的に意味のある改善の目安はおおむね5点前後とされています(Löwe et al, 2004)。単発の点数だけでなく、経時変化を追うことが重要です。

06
Interventions

扁桃体を意識した介入を、パラメータ付きで実践する。

扁桃体が脅威を感知している状態では前頭前野機能が低下し、運動学習・認知課題の効率が下がります。身体機能訓練の前に「感情的安全性」を確立することが、リハビリ効果を最大化する第一歩です。

01
傾聴とラポール形成専門家合意

セッション冒頭5〜10分を傾聴・雑談・感情確認に充てます。安心感はオキシトシン等の社会的結合ペプチドの放出を促し、扁桃体の過剰な脅威反応を和らげると考えられています。

療法士による傾聴・ラポール形成の場面
— 患者の話に耳を傾け、感情的安全性を確立することは、扁桃体レベルで機能する神経学的介入である。
02
腹式呼吸法観察研究

吸気4秒・止息7秒・呼気8秒を1セット、5回反復。セッション開始時に毎回3分実施します。迷走神経を活性化し、扁桃体の過剰活動を抑制する即効性のある技法です。

腹式深呼吸の実施場面
— 腹式深呼吸は迷走神経を活性化し、扁桃体の過剰活動を抑制する。
03
マインドフルネス・グラウンディング単独RCT

「5-4-3-2-1グラウンディング(見えるもの5・触れるもの4・聴こえるもの3・匂い2・味1を順に確認)」を不安増強時に実施。MBSR(マインドフルネスに基づくストレス低減法、週1回90分×8週間が標準プロトコル)は扁桃体の構造的結合性を変化させ得ることが報告されています(Hölzel BK et al, Soc Cogn Affect Neurosci, 2010;5(1):11-17)。

食事場面でのマインドフルネス実践
— 食事中の感覚への意識づけは、マインドフルネスの実践として注意力の訓練と感情安定に直結する。
04
有酸素運動療法SR/MA

中等度強度の有酸素運動を20〜30分、週3〜5回実施すると脳卒中後の抑うつ症状軽減に寄与する可能性が報告されています(Eng JJ, Reime B, Clin Rehabil, 2014;28(8):731-739)。達成感の記録と組み合わせることで報酬系の活性化も期待できます。

STROKE LAB代表 金子唯史
Message from CEO
身体機能と感情、両方を診るのがSTROKE LABです。

扁桃体ネットワークへの理解は、運動療法の効果を底上げする土台になります。保険リハビリでは踏み込みにくい感情面のサポートも含め、オーダーメイドでプログラムを組み立てます。

無料相談を予約する→

07
Team Approach

一人で抱えず、多職種で支える。

環境調整の基本方針

扁桃体が過活動な患者には、予測可能な構造化された環境が安心感を生みます。急な音・照明変化を避ける、リハビリの流れを事前に説明する、選択肢を提示するといった配慮が、扁桃体の警戒レベルを下げる助けになります。

Clinical Insight

「感情面の変化に気づいたら、抱え込まずにその日のうちに看護師・主治医へ共有してください。PHQ-9の点数だけでなく、表情や会話量の変化もカルテに残すと、多職種での判断材料になります。」

職種 評価項目 主な介入内容 連携ポイント
PT 運動時の不安・回避行動、痛みの訴え方 呼吸法・段階的曝露を組み込んだ運動療法 痛みの急な悪化はOT・医師に即共有
OT ADL場面での感情反応、社会的認知(MET・MINI-SEA) 感情認識訓練、生活場面での段階的曝露 家族への対応方法の共有窓口を担う
ST 表情・声調の理解、コミュニケーション意欲 表情カード訓練、会話シミュレーション 高次脳機能評価の結果をPT・OTと共有
看護師 夜間の睡眠状況、日常的な情動変化 PHQ-9・GDSの定期スクリーニング スクリーニング陽性時は速やかに医師へ報告
医師 画像所見、薬物療法の必要性判断 抗うつ薬等の処方判断、精神科紹介 セラピストからの日常観察報告を診断材料にする
MSW 家族の介護負担感、退院後の生活環境 社会資源の紹介、家族相談窓口 感情面の課題を退院支援計画に反映

08
Pitfalls

つまずきポイントと臨床判断のコツ。

扁桃体ネットワークを理解しても、臨床の現場では焦りから同じ失敗を繰り返しがちです。よくある3つのパターンを整理します。

Pitfalls — よくある失敗パターン
新人臨床家が陥りやすい3つのつまずきポイント
!
傾聴を軽視して技術優先してしまう:「早く運動を進めなければ」という焦りから感情確認を省略すると、前頭前野機能が低下したまま訓練を始めることになり、学習効率が落ちます。セッション冒頭5分は必ず傾聴に充てましょう。
!
感情失禁とうつを混同してしまう:突発的な笑い・泣きを「悲しくて泣いている」と解釈すると対応がずれます。持続時間と状況との整合性を確認し、判断に迷う場合はPHQ-9・CNS-LSなど尺度で客観化してください。
!
感情認識障害を「性格が変わった」と誤解する:右半球損傷後の表情読み取り障害は器質的な問題です。家族が「怒りっぽくなった」と誤解する前に、社会的認知評価を行いOT・STと連携して説明を行いましょう。

迷ったときの判断軸

Mentor’s Voice

「訓練メニューを進める前に『この患者は今、安全と感じているか』を自分に問いかける癖をつけてください。それだけで介入の質が変わります。」

技術より先に、安全の確認を。それが扁桃体を意識した臨床の第一歩。

09
Prognosis & Goal Setting

予後を見立て、現実的なゴールを共有する。

PSDや扁桃体機能障害由来の症状は、早期に発見し介入すれば改善が期待できる一方、放置すると慢性化しADL・認知機能の回復を妨げます(Robinson RG, Biol Psychiatry, 2003)。予後は病巣の大きさ・部位、既往のストレス脆弱性、社会的サポートの有無によって大きく左右されます。

Goal Setting
SN→CEN切替を意識したゴール設定

「不安をゼロにする」ではなく、「不安を感じても課題に取り組める状態」を目標にします。小さな成功体験を積み重ねることが、SNからCENへの切替を促し、DMN優位の反芻思考から患者を引き戻す助けになります[専門家合意]。目標は患者・家族と一緒に、達成可能な小さな単位で設定してください。

予後は病巣だけで決まらない。日々の関わり方が回復曲線を変える。

10
FAQ

よくある質問。

Q.扁桃体が「感情の中枢」と呼ばれるのはなぜですか?
A.

扁桃体には視覚・聴覚・嗅覚・体内感覚などほぼすべての感覚情報が集まり、皮質での意識的処理より先に反応が生じる速い経路(ローロード)を持ち、視床下部・脳幹・前頭前野・海馬・側坐核へ広く投射するためです。ただし近年は感情ネットワークの一ノードとする理解が主流であり、扁桃体単独の器官として捉えるのは正確ではありません。

Q.PTSD様反応を示す患者のリハビリで扁桃体の過活動を考慮すべき理由は何ですか?
A.

扁桃体の慢性的な過活動は痛みの増幅、前頭前野機能抑制による集中力低下、運動学習の障害を引き起こすためです。段階的曝露と心理的安全性の確立、呼吸法の併用、精神科・心理士との連携が重要になります。

Q.脳卒中後うつ(PSD)と扁桃体の関係を教えてください。
A.

PSDは脳卒中患者の30から40パーセントに生じ、前頭葉と辺縁系回路の断絶、モノアミン神経伝達系の障害、HPA軸の調節不全が絡み合って発症します。PHQ-9などによる定期スクリーニングと早期の精神科連携が予後を左右します。

Q.アルツハイマー病で扁桃体が早期に障害されるのはなぜですか?
A.

神経原線維変化は嗅内皮質と扁桃体領域(Braak stage I からII)から始まり、その後海馬・大脳新皮質へ広がるためです。言語記憶が失われても音楽や親しい声への情動反応は比較的保たれるため、音楽療法や回想法の理論的根拠になります。

Q.傾聴がなぜ神経科学的な治療行為といえるのですか?
A.

傾聴による安心感はオキシトシン等の放出を促し扁桃体の脅威反応を和らげ、前頭前野による扁桃体への制御を強め、迷走神経を介して心拍・血圧を安定させます。感情的安全性の確立は身体訓練の効果を高める準備段階として機能します。

Q.扁桃体機能障害の評価に使える尺度はありますか?
A.

抑うつ症状にはPHQ-9、外傷性ストレス症状にはIES-RやPCL-5、意欲低下にはApathy Scale、社会的認知にはMETやMINI-SEAが臨床で使われます。単一の尺度で扁桃体機能そのものを直接測ることはできず、複数尺度の組み合わせによる評価が必要です。

11
Our Program

STROKE LABのプログラム。

STROKE LABでは、扁桃体をはじめとする神経科学の最新知見を基盤に、感情・認知・身体機能を統合したオーダーメイドのリハビリを提供しています。週2回の保険リハビリだけでは物足りない方、退院後に感情面の変化を感じている方も歓迎です。

Strength
STROKE LABの強み
— 神経科学に基づく個別プログラム
→身体機能と感情面を統合したアセスメント
→1回ごとの予約・支払い制で継続しやすい
→医療保険リハビリとの併用が可能
Access
拠点・アクセス
— 東京・大阪、訪問リハビリにも対応
→東京院(御茶ノ水駅より徒歩6分)
→大阪院(南森町駅より徒歩8分)
→訪問リハビリ(往復30分以内〜対応)

— STROKE LABのリハビリ紹介動画。実際の介入と変化の様子をご覧ください。

Voice from Mentors

「感情失禁を訴える利用者さんを担当したとき、最初は泣かれるたびに訓練を中断していました。しかし記録をつけると、笑いと泣きが数十秒で切り替わるパターンに気づき、これは感情失禁だと判断しました。そこで訓練は止めず、短く声をかけて見守る対応に切り替えたところ、ご本人も『驚くけど大丈夫』と落ち着いて取り組めるようになりました。」— 理学療法士・経験4年目・脳卒中急性期担当

「右半球損傷の利用者さんのご家族が『急に冷たくなった』と悩んでいました。社会的認知評価を行うと表情の読み取りに明らかな低下があり、性格ではなく症状だと分かりました。ご家族に評価結果を共有し、伝え方を工夫してもらったところ、関係性の誤解が解け、面会時の雰囲気が大きく変わりました。」— 作業療法士・経験6年目・高次脳機能障害担当

こんなお悩みをお持ちの方へ

週2回の通院リハだけでは回復が頭打ちになってきた
退院後、感情のコントロールが難しくなったと感じる
脳卒中後のうつ・無気力で、リハビリへの意欲がわかない
通院が大変なので、訪問リハビリも検討したい

リハビリ料金(自費・税込)

60分 19,800円
延長30分 +9,900円
訪問(往復30分以内〜) +5,500円

1回ごとのご予約・お支払い制。初回のみのご利用も歓迎です。医療保険リハビリとの併用も可能です。

Message from CEO
扁桃体を理解したら、次は「どう回復させるか」です。
諦めないでください。
STROKE LAB代表 金子唯史 ポートレート

脳卒中後のリハビリでは、身体機能の回復にばかり目が向きがちです。しかし、感情・認知・身体は互いに影響し合っており、どれか一つだけを診ていては本当の回復にたどり着けません。

「まだ回復できるかもしれない」という直感を、神経科学の知見に基づいた具体的な計画に変えるお手伝いをします。

感情面の変化にご家族だけで向き合うのは大変なことです。まずは無料相談で、今の状況をお聞かせください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する→

References

参考文献。

01LeDoux JE. The Emotional Brain. New York: Simon & Schuster; 1996.
02Phelps EA, LeDoux JE. Contributions of the amygdala to emotion processing: from animal models to human behavior. Neuron. 2005;48(2):175-187.
03Seeley WW, Menon V, Schatzberg AF, et al. Dissociable intrinsic connectivity networks for salience processing and executive control. J Neurosci. 2007;27(9):2349-2356.
04Menon V. Large-scale brain networks and psychopathology: a unifying triple network model. Trends Cogn Sci. 2011;15(10):483-506.
05Buckner RL, Andrews-Hanna JR, Schacter DL. The brain’s default network. Ann N Y Acad Sci. 2008;1124:1-38.
06Robinson RG. Poststroke depression: prevalence, diagnosis, treatment, and disease burden. Biol Psychiatry. 2003;54(3):376-387.
07Braak H, Braak E. Neuropathological stageing of Alzheimer-related changes. Acta Neuropathol. 1991;82(4):239-259.
08Kroenke K, Spitzer RL, Williams JB. The PHQ-9: validity of a brief depression severity measure. J Gen Intern Med. 2001;16(9):606-613.
09Eng JJ, Reime B. Exercise for depressive symptoms in stroke patients: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2014;28(8):731-739.
10Hölzel BK, Carmody J, Evans KC, et al. Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala. Soc Cogn Affect Neurosci. 2010;5(1):11-17.
11Bratman GN, Hamilton JP, Hahn KS, et al. Nature experience reduces rumination and subgenual prefrontal cortex activation. Proc Natl Acad Sci USA. 2015;112(28):8567-8572.
12金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院; 2024.

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