4AT-Jの実施方法とカットオフ|せん妄評価・他尺度との使い分け【PDF評価付き】
4AT-J
せん妄スクリーニング
「昨日と違う」を、見逃さない。
静かに眠っている人にも、せん妄は起こります。4項目の内訳と「いつから変わったか」を合わせ、原因の評価とケアへつなぐための実践ガイドです。



最初に、点数と次の行動を結びつける
| 合計 | 意味 | その場で行うこと |
|---|---|---|
| 4〜12点 | せん妄の可能性。認知機能障害を伴うこともある。 | 内訳と急性変化を医療チームへ共有し、診察・原因評価につなぐ。 |
| 1〜3点 | 認知機能障害の可能性。 | 普段の状態と比較。急な変化があれば点数に関係なく評価を続ける。 |
| 0点 | この時点では示唆する所見が乏しい。 | 項目④の情報が十分か確認。新しい変化があれば再評価する。 |
準備|普段の状態を知る人につながる
眼鏡・補聴器を確認し、一人ずつ話しかけます。失語・難聴・使用言語など、回答に影響する条件は得点と一緒に記録してください。
本人への評価は約2分が目安です。家族や病棟から普段の様子を確認する時間は別に確保します。確認が後になる場合も、情報不足を「変化なし」に置き換えません。[2]
4項目の実施と採点
日本語版Ver 1.0に沿って、観察した反応と配点を照合します。画像の番号は場面の順序、以下の①〜④は採点項目です。[1]


① 覚醒度
眠っていれば話しかけるか、やさしく肩に触れて起こします。氏名・住所を尋ねるときも、答えの正誤だけでなく覚醒の様子を観察します。
氏名の誤答だけを理由に、覚醒度を4点にしません。


② AMT4
年齢・生年月日・場所(病院または建物の名前)・今日の日付を尋ね、回答をそのまま残します。
③ 注意力
「セカイチズ」
評価者確認用の正答はズ・チ・イ・カ・セ。患者さんに正答を見せず、文字カードの並べ替え課題にも変更しません。
②・③の実施困難には、日本語版原票で気分不良・活気のなさ・注意不足・拒否が挙げられています。「途中で辞退」と「始められなかった」を分け、理由と実際の発言を残します。



④ 急な変化または変動する経過
覚醒・認知・その他の精神機能(妄想・幻覚など)の著しい変化や変動について、2週間以内に生じ、直近24時間にも明らかに残っているかを確認します。
「昨日は会話が続いた」「昨夜は病室を自宅と思っていた」など、具体的な出来事と情報源・確認時刻を残します。未確認ならその旨を記載し、合計点だけで陰性と決めません。
3つの採点例|合計と内訳を一緒に読む
日中は答えられるが、昨夜から混乱
- 内訳
- 覚醒0+AMT4 0+注意0+急性変化4=4点。
- 読み方
- 今の受け答えが良くても、直近24時間の明らかな変動を拾った結果。
- 次の行動
- 夜間の言動、開始時刻、持続時間、薬の変更や身体症状をまとめて報告。日中の正常な回答だけで終了しません。
認知症があり、普段から回答が難しい
- 内訳
- 0+2+2+0=4点。
- 読み方
- 慢性の認知障害が加点へ影響した可能性。
- 次の行動
- 「いつもと同じ」を家族・記録で確認。普段より食べない、反応が遅いなどの新情報がないか照合します。
昨日から眠気が強く、課題を始められない
- 内訳
- 4+2+2+4=12点。
- 読み方
- 覚醒低下と急性変化が重なる。静かな低活動型でも迅速な評価が必要。
- 次の行動
- 全身状態を確認して連絡。予定していた高負荷の練習を進める前に、原因と実施可能な活動を医療チームで判断します。
陽性後の対応|連絡・原因確認・ケアを並行する



-
原因を調べる情報を集める
職種の範囲でバイタル、呼吸状態、発熱、食事・水分、排尿・排便、痛み、睡眠、薬の変更を確認します。診断と治療は医療チームへつなぎます。
-
その人が参加できる条件をつくる
短い説明、時計・カレンダー、なじみのある人、眼鏡・補聴器を活用。睡眠を妨げる刺激を減らし、水分・栄養は嚥下や循環の制約に合わせます。全員を一律に臥床させず、状態に応じた離床を検討します。
これらはNICEの多面的な予防・管理の推奨に沿う対応です。[4]
14:00:4AT-J 8点(覚醒0/AMT4 2/注意2/急性変化4)。昨日は会話が続いたが、本日は応答が途切れる。昨夜からの混乱を病棟看護師に確認。
対応:担当看護師へ14:05に共有し、医師の評価を依頼。予定していた高負荷練習は保留。指示された対応後、覚醒・会話・食事の様子と4項目の内訳を再確認する。
点数が予測すること/しないこと
4AT-Jの4点以上は、現在のせん妄の可能性を評価するための境界です。「せん妄になる未来の確率」や「退院までの日数」の点数ではありません。8点から4点への低下も、障害が50%改善した意味にはなりません。内訳のどこが変化し、普段の活動にどれだけ戻ったかを追います。
日本語版の検証:65歳以上150人
Hasegawaら(2022)は日本語版を検証し、4点を閾値とする妥当性を報告しました。日本語版を使う直接の根拠です。海外版の研究値は、別の集団・言語の情報として読み分けます。[3]
4AT全般の診断精度:感度・特異度とも約88%
Tiegesら(2021)の17研究・3,702評価のメタ解析では、統合感度88%、特異度88%でした。感度88%は「陽性者の88%がせん妄」という意味ではありません。[5]
2026年巻の認知症集団のメタ解析
Keaneらの5研究のメタ解析には1,304人(うち認知症482人)が含まれ、認知症集団の統合感度88%・特異度79%でした。陽性だけで確定せず、普段からある障害との違いを確かめる必要があります。日本語版だけの性能ではありません。[6]
他尺度との使い分け・再評価
| 評価 | 4AT-Jと違う役割 |
|---|---|
| CAM | 急性発症・変動、注意障害などの特徴の組み合わせで判定。単純合計ではない。 |
| CAM-ICU/ICDSC | NICEがICU・術後回復室で推奨する評価経路。 |
| RASS | 興奮・鎮静の程度を共有。0だからせん妄なし、ではない。 |
| HDS-R・MMSE・MoCA | 認知機能の評価。急性期の低値から慢性の認知症の程度を決めない。 |
| CAT-R | 状態が安定してから、注意をさらに詳しく調べる。 |
ICUでの使い分けはNICEに従います。[4]
再評価では時刻、睡眠、薬剤・処置、補聴器、急性変化の情報源をそろえて記録します。日常観察と状態変化時の評価を組み合わせ、合計が下がったかだけでなく、食事・会話・睡眠が普段へ戻ったかを確認します。
反復評価を支える2025年の研究
McCartneyらは、せん妄のある70歳以上の入院患者120人を9日以内に2〜4回評価しました。反復評価でも診断精度が保たれ、経過観察への活用が示唆されています。ただし、日本語版の「何点改善すれば回復」という基準を定めた研究ではありません。[7]
反応を採点し、変化を残す。
A4縦・2ページ
1枚目:4項目の実施・配点・合計
2枚目:普段との差・情報源・対応・再評価
日本語版Ver 1.0の項目・配点を保持し、説明・レイアウト・記録欄を編集。追加の臨床記録は得点に含めません。
参考文献・実施資料
- 4AT公式.日本語版Ver 1.0(配布ページ・原票).
- 4AT公式.User guide and scoring.
- Hasegawa T, et al. Reliability and validity of the Japanese version of the 4A’s Test for delirium screening in the elderly patient. Asian J Psychiatr. 2022;67:102918.
- NICE. Delirium: prevention, diagnosis and management. CG103, Recommendations(2023年更新).
- Tieges Z, et al. Diagnostic accuracy of the 4AT for delirium detection in older adults: systematic review and meta-analysis. Age Ageing. 2021;50:733–743.
- Keane A, et al. 4AT screening for delirium in dementia: meta-analysis of diagnostic performance. Dement Neuropsychol. 2026;20:e20250378.
- McCartney H, et al. Validation of the 4AT for assessing recovery from delirium in older hospital patients. Age Ageing. 2025;54:afaf166. 2026年訂正(共同筆頭著者表記)

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)
