vol.334:股関節骨折後の立ち上がりと上肢支持の有無 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
バイオメカニクス
タイトル
股関節骨折後患者の立ちあがり動作の対称性に対する上肢支持の影響 Influence of upper extremity assistance on lower extremity force application symmetry in individuals post-hip fracture during the sit-to-stand task. ?PubMed Kneiss JA J Orthop Sports Phys Ther. 2012 May;42(5):474-81. doi: 10.2519/jospt.2012.3562.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・立ち上がりにおける上肢の影響を別な視点から読みたかったため。
内 容
背景・目的
・上肢は立ち上がりにおいて下肢伸展モーメントの補助と離殿時の安定性を提供することができる。 ・離殿後に上肢伸展の最大値を記録すると報告されているが、上肢の役割は伸展モーメントより身体重心を支持基底面内に収めるために働くとも言われている(床反力の成分が鉛直下方向より後方に強いため)。 ・股関節骨折後の患者は筋力低下とバランス障害を合併することが多い。動作は非対称的で患側の活動が少ないとも言われている。 ・本研究は上肢の有無による下肢活動の対称性を比較する。
方法
・28名の地域在住の高齢者 ・14名は股関節骨折歴のある被験者 ・実験方法を以下に示す。 図:実験方法Kneiss JA (2012)より引用 ・可能な限り速く立ち上がるよう指示し、上肢支持あり3回、支持なし3回実施した。 ・椅子、左足、右足の下にフォースプレートを置き、垂直方向の床反力を検出した。 ・力の上昇率(rate per second: RFD)と垂直方向床反力(vGRF)を患側、健側、患側健側比のそれぞれ3つで算出した。
結果
表図:実験結果 実験方法Kneiss JA (2012)より引用 ・上肢の使用に関わらず、骨折群患側の下肢の各データは対照群より有意に低い値を示した。 ・骨折群患側のRFDは対照群と比して群間の差があったが、骨折群健側と対照群には見られなかった。そのため、RFD対称性は有意な差があり、骨折群に非対称性が強かった。 ・骨折群患側のvGRFは対照群に比して有意に小さい値を示した。 ・骨折群健側vGRFでは条件間の有意差が得られた。 ・上肢非使用では、骨折群患側のvGRFは対照群に比して有意に高い値を示した。 ・vGRFにおいて、左右対称性に群間差が見られた。
私見・明日への臨床アイデア
・立ち上がり時、患側は対照群に比して垂直上向きの床反力が弱いという論文だった。上肢非使用であれば全体的に床反力は増加した。 ・立ち上がりでは屈曲相から伸展相にかけて強い上向きの床反力が記録されており、その大きさは体重のラインを少し越える値を示すことがわかった。下肢は体重分の伸展モーメントを出す必要があることを改めて理解できた。
職種 理学療法士
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023)