脳卒中後の肩はなぜ動き出しから崩れる?肩甲骨周囲筋の収縮タイミングと評価・介入
脳卒中後の肩は、なぜ動き出しの順番から崩れるのか。
肩を屈曲するとき、健常者では僧帽筋上部線維と前鋸筋が三角筋より先に働きます。脳卒中後はこの順番が崩れ、肩痛のある人では僧帽筋下部線維と棘下筋の遅れも目立ちました。De Baetsらの研究(2014)をもとに、評価と介入の要点を新人セラピスト向けに整理します。

要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
62歳男性。右中大脳動脈領域の脳梗塞で、左片麻痺です。発症から10週の回復期です。BRS(ブルンストロームステージ:回復段階を示す6段階尺度)は上肢Ⅲ・手指Ⅲ・下肢Ⅳです。主訴は「腕を前に上げると肩の前が痛い」で、NRS(痛みを0〜10で答える尺度)は6/10です。
初回評価では、座位の自動屈曲が約80°で止まります。他動屈曲は150°まで可能で、80〜120°で痛みが出ます。動き出しで肩をすくめる動きが先に出ます。肩甲骨下角の浮き上がりも見られます。
こんな方を担当したことはありませんか。肩が痛いと言われると、まず肩関節そのものを疑います。でも、痛い場所だけを見ていると、原因を見誤ります。
肩は、肩甲骨と上腕骨が協調して動く関節群です。腕を上げる前に、肩甲骨周囲筋(肩甲骨を胸郭に固定し、動かす筋群)が先に働く必要があります。
この記事では、De Baetsらの研究(2014)をもとに、脳卒中後にその順番がどう乱れるかを整理します。評価から介入、多職種連携まで、先輩から後輩への引き継ぎのつもりで書きました。
肩甲骨周囲筋の「動き出し」とは何か。
肩甲骨周囲筋の「収縮タイミング」とは、筋が動き出す順番のことです。筋活動が立ち上がる時点を、発火(オンセット)と呼びます。
研究では、肩屈曲の主動作筋である三角筋前部線維を基準にしました。安定化に働く筋が、それより先か後かを比べています。
登場する筋を整理します。僧帽筋上部線維は、肩甲骨を持ち上げる筋です。僧帽筋下部線維は、肩甲骨を引き下げる筋です。前鋸筋は、肩甲骨を胸郭に押さえて前へ動かす筋です。棘下筋は腱板(肩関節を支える筋群)の一つで、外旋に働きます。
健常者では、僧帽筋上部線維と前鋸筋が三角筋前部線維より先に発火します。肩甲骨を胸郭に固定し、腕を上げる土台をつくるためです。

疫学[観察研究]:脳卒中後の肩痛は、臨床でよく出会う問題です。ただし、報告される頻度は研究ごとに差があります。Gambleら(Eur J Pain, 2002)は、脳卒中205例の連続コホートのうち152例を前向きに追跡しました。肩痛の発生と関連因子を検討した研究です。
病態の広がり:肩痛の原因は単一ではありません。整理したのは、Kalichmanらのレビュー(Am J Phys Med Rehabil, 2011)です。背景の病態と関連因子がまとめられています。だから鑑別が大切です。第04章で扱います。
先に肩甲骨が安定するから、三角筋が効率よく力を出せます。順番が乱れると、三角筋に負担が集まりやすくなります。だから臨床では、力の強さより先に、順番を見ます。
この論文を読む3ステップ[観察研究]
対象は健常成人14名と脳卒中者30名です。うち10名は、インピンジメント様の肩痛がありました。座位で肩屈曲を45°と全可動域の2パターンで行い、各12回反復しました。肘伸展位、前腕は回内外中間位です。
測定した筋は、僧帽筋上部・下部線維、前鋸筋、棘下筋、三角筋前部線維です。三角筋前部線維の発火を基準に、他の筋の発火時刻を比べます。三角筋より遅ければ負の値、早ければ正の値(ミリ秒)で表します。
①健常者と脳卒中者、②肩痛の有無、③活動が出なかった割合、の3層で見ます。層を分けると、どの所見が痛みと関係しそうかが整理できます。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、脳卒中に専門特化した自費リハビリ施設です。肩甲骨の動きを含めて丁寧に評価し、一人ひとりに合わせたプログラムをご提案します。まずは無料相談で、今のお困りごとをお聞かせください。
遅れるのは、どの筋か。
45°と全可動域の屈曲ともに、健常者では僧帽筋上部線維と前鋸筋が三角筋前部線維より先に発火しました。脳卒中者は、肩痛の有無に関係なく前鋸筋の発火が遅れていました。僧帽筋上部線維も、全可動域の屈曲では遅れが認められました。

— 表:屈曲時の各筋の発火時間(De Baets ら, 2014から引用)。図の赤枠が健常者の先行発火、青枠が前鋸筋の遅延、緑枠が僧帽筋上部線維の遅延です。
肩痛の有無で比べる[観察研究]
肩痛のある脳卒中者では、棘下筋と僧帽筋下部線維の遅れが目立ちました。負の値は、三角筋前部線維より遅いことを示します。
棘下筋:45°屈曲では、痛みあり−8ミリ秒、痛みなし8ミリ秒でした。全可動域の屈曲では、痛みあり−19ミリ秒、痛みなし5ミリ秒でした。
僧帽筋下部線維:45°屈曲では、痛みあり−135ミリ秒、痛みなし−35ミリ秒でした。全可動域の屈曲では、痛みあり−398ミリ秒、痛みなし−140ミリ秒でした。
活動なし:肩痛を有する脳卒中者の屈曲のうち、30%で僧帽筋下部線維の発火を伴いませんでした。37%で前鋸筋の活動が見られませんでした。

考えられる機序と責任病巣
ここからは、論文の結果をもとにした仮説です。健常者の先行発火は、フィードフォワード制御(動く前に予測して筋を働かせる制御)の一例と考えられます。上位中枢の障害で、この予測的な制御が乱れる可能性があります。
ただし、本記事で扱った結果に、病巣別の解析は含まれていません。責任病巣は、この研究からは特定できません。麻痺の重さだけで、肩の問題を予測しないでください。
だから臨床では、麻痺の程度に関わらず、肩屈曲の動き出しの順番を毎回確認します。前鋸筋と僧帽筋下部線維が「いつ」「どのくらい」働くかを見ます。
主論文[観察研究]:De Baets L, Jaspers E, Janssens L, Van Deun S. Front Hum Neurosci. 2014;8:933. 健常成人14名と脳卒中者30名(うち10名がインピンジメント様の肩痛)。座位で肩屈曲45°と全可動域を各12回。三角筋前部線維を基準に、他の筋の発火時刻を比較しました。
補強[SR/MA]:De Baets L, Jaspers E, Desloovere K, Van Deun S. J Electromyogr Kinesiol. 2013;23(1):3-13. 脳卒中者と対照者の腕挙上時の、肩甲骨3次元運動と筋活動を整理した系統的レビューです。採択研究数は原著で確認してください。
限界:横断的な観察研究で、対象数も小さい研究です。遅れが痛みの原因かどうかは示せません。
肩の痛みは、本当にタイミング異常か。
肩が痛いと訴える脳卒中者が、すべて収縮タイミングの異常とは限りません。原因は複数が重なることも多いです。Kalichmanらのレビュー(Am J Phys Med Rehabil, 2011)も、同じ整理をしています。
先に原因を切り分けると、介入の安全性が上がります。下の表は、臨床でよく候補になる5つです。

| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 肩関節亜脱臼(上腕骨頭が下方へずれた状態) | 麻痺側の肩痛。弛緩性麻痺で多い。 | 肩峰と上腕骨頭の間に指が入る(指幅で評価)。腕の重みで痛みが増す。 | X線、超音波 |
| 腱板損傷・インピンジメント | 挙上時の痛み。今回の論文の肩痛群も、インピンジメント様でした。 | 痛みが出る角度が決まっている(有痛弧)。他動運動でも痛む。 | 超音波、MRI |
| 複合性局所疼痛症候群(CRPS:痛み・腫れ・皮膚変化を伴う疼痛) | 肩の痛み。可動域制限。 | 手の腫れ、皮膚温・色の変化、触れるだけの痛み(アロディニア)がある。 | ブダペスト基準、骨シンチグラフィー |
| 痙縮・筋短縮に伴う疼痛 | 他動運動で痛む。外旋や挙上が制限される。 | 他動運動の速度で抵抗が変わる。大胸筋や肩甲下筋の短縮がある。 | MAS(修正Ashworthスケール)、他動ROM測定 |
| 中枢性脳卒中後疼痛(CPSP:中枢神経の障害による慢性疼痛) | 麻痺側の慢性的な痛み。 | 灼熱感やしびれ様の痛み。運動との関係が薄い。感覚障害を伴う。 | 感覚検査、神経障害性疼痛のスクリーニング |
動き出しの順番を、臨床でどう評価するか。
論文では、表面筋電図(sEMG:皮膚の上から筋の電気活動を記録する方法)で発火時刻を測っています。臨床では、同じ精度は得られません。
だから臨床では、視診と触診で「動き出しの順序」を粗く捉えます。そのうえで、MRCで筋力、NRSで痛みを数値に残します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| MRC 0(前鋸筋・僧帽筋下部線維) | 収縮を触れず、見えない | — | 完全麻痺。肩甲骨内側縁の触診で確認する。 |
| MRC 1 | 収縮は触れるが、関節運動はない | — | わずかな随意収縮がある。促通の入口。 |
| MRC 2 | 重力を除いた条件で、全可動域を動く | — | 抗重力は不可。重力を除いた姿勢での練習が中心。 |
| MRC 3 | 重力に抗して、全可動域を動く | 3以上で抗重力運動あり | 座位での屈曲練習に進める目安。 |
| MRC 4 | 中等度の抵抗に抗して、全可動域を動く | — | 軽い抵抗を加えた課題が可能。 |
| MRC 5 | 強い抵抗に抗して、全可動域を動く(正常) | — | 筋力は正常。それでも動き出しの順番は別に確認する。 |
| NRS 0 | 痛みなし | 0 | 運動を進められる。 |
| NRS 1〜4 | 軽度の痛み | 1〜4 | 運動は可能。運動中はNRS3以下を目安にする。 |
| NRS 5〜6 | 中等度の痛み | 5〜6 | 運動の量と範囲を減らし、原因を再評価する。 |
| NRS 7〜10 | 重度の痛み | 7〜10 | 運動を中止し、医師へ相談する。 |
MRC scale:Medical Research Council(1976)の0〜5の6段階です。3以上を抗重力運動ありと判断します。脳卒中では痙縮や共同運動が混在し、解釈に注意が必要です。確立したMCIDは、本記事では確認できていません。
NRSのMCID[複数RCT]:Farrar JT, Young JP Jr, LaMoreaux L, Werth JL, Poole RM. Pain. 2001;94(2):149-158. 慢性疼痛の複数の臨床試験データの解析です。約2点、または約30%の低下が、臨床的に意味のある変化とされました。
NRSのカットオフ値[観察研究]:Serlin RC, Mendoza TR, Nakamura Y, Edwards KR, Cleeland CS. Pain. 1995;61(2):277-284. がん患者を対象とした研究で、1〜4を軽度、5〜6を中等度、7〜10を重度としました。脳卒中後の肩痛に特化した基準値は、確立していません。
NRSの信頼性・妥当性:Hawker GAら. Arthritis Care Res. 2011;63(S11):S240-S252. 成人の疼痛尺度を整理した総説です。数値は原典で確認してください。
運動学的評価[SR/MA]:脳卒中者の肩甲骨運動と筋活動は、系統的レビューで整理されています。出典はDe Baetsら(J Electromyogr Kinesiol, 2013)です。臨床の視診や触診の信頼性は、本記事の根拠範囲では確認できていません。
肩甲骨周囲筋への介入を、どう組み立てるか。
先に大事な前提を伝えます。De Baetsらの研究は、介入を検証した研究ではありません。以下の手順は、論文の所見から導いた臨床的な発展です。
回数や強度は、臨床でよく使われる目安です。個別化が前提で、痛みの反応を見ながら調整してください。

目的は、僧帽筋上部線維と前鋸筋が働きやすい土台をつくることです。座位で、肩甲骨の前傾・後傾・翼状化(内側縁が浮く状態)を確認します。ハンドリングで正しい知覚を促しながら、肩甲骨が安定する位置へ修正します。目安は、姿勢ごとに1〜2分の観察と、5〜10分の修正です。
目的は、僧帽筋上部・下部線維、前鋸筋、棘下筋の協調的な活動です。軽負荷(自重〜0.5kg)で肩屈曲を行い、肩甲骨の内転や上方回旋を意識させます。前鋸筋には、手を壁に押し付ける動作や、軽い抵抗のプッシュ動作を使います。目安は、8〜12回を2〜3セット、週3〜5日です。強度は修正Borg(疲労感を0〜10で答える尺度)で3〜4、痛みはNRS3以下にします。
目的は、棘下筋と僧帽筋下部線維の活動を促し、肩痛を和らげることです。痛みがあるときは、まず疼痛管理を行います。冷却は1回10〜15分が目安です。感覚障害があると危険なので、皮膚の色を必ず確認します。軽いマッサージは3〜5分にとどめます。その後、痛みのない範囲で安定化運動を行います。
目的は、肩甲骨が安定した状態で、日常の動作に使えるようにすることです。机上でのリーチや、物を移す課題を使います。目安は、10〜15回を2〜3セット、1日1〜2回です。三角筋だけが頑張る代償が出たら、範囲か負荷を下げます。
上位根拠[SR/MA]:Veerbeek JM, van Wegen E, van Peppen R, et al. PLoS One. 2014;9(2):e87987. 脳卒中後の理学療法を統合した系統的レビューとメタ分析です(467研究・25,373例)。介入の種類と量ごとの効果を整理しています。数値は原著で確認してください。
本記事の手順:肩甲骨の協調性訓練そのものを直接検証したSR/MAやRCTは、本記事の根拠範囲では確認できていません。上の4ステップは、観察研究の所見にもとづく仮説的な手順です。
パラメータの位置づけ:8〜12回×2〜3セット、週3〜5日、修正Borg3〜4、NRS3以下は、臨床の目安です。研究で検証された用量ではありません。

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肩を守るのは、リハ室の中だけではない。
環境調整の基本
肩痛の予防と管理は、日本のガイドライン(脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023])でも扱われています。具体的な推奨内容は、原典で確認してください。Turner-StokesとJackson(Clin Rehabil, 2002)のレビューも参考になります。統合的なケアの枠組みづくりに役立ちます。
- 移乗や介助で、麻痺側の腕を引っ張らない。腋窩を持ち上げず、体幹から支える。
- 車椅子では、アームサポートやテーブルで麻痺側の肩を支える。
- ベッド上では、肩が後ろへ引かれない位置で保持する。
- 同じ姿勢を続けない。1〜2時間ごとに、体位と支持を見直す。
「肩の話は、PTだけで完結しません。移乗の介助方法が違えば、リハ室の成果が消えてしまいます。」
「病棟の看護師さんと、最初に『引っ張らない・支える』を共通言語にしてください。」
| 職種 | この症状における評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 肩甲骨アライメント、他動・自動ROM、動き出しの視診と触診、NRS | 姿勢調整、前鋸筋・僧帽筋下部線維の協調運動(8〜12回×2〜3セット) | 移乗とポジショニングの方法を、看護師・OTと統一する。 |
| OT | ADL場面での上肢の使い方、更衣・整容時の痛み、座位での上肢の支持 | ADLでの麻痺側上肢の扱い、机上のリーチ課題、アームサポートの設定 | PTの評価所見をもとに、運動を生活場面へ移す。 |
| ST | 失語や注意障害による、痛みの訴え方と意思疎通の手段 | 表情・ジェスチャー・指さしなど、痛みを伝える手段の確保 | 痛みのサインをチームに共有し、見逃しを防ぐ。 |
| 看護師 | 夜間・移乗時の痛み、皮膚の状態、体位変換時の上肢の位置 | 麻痺側上肢を守るポジショニング、介助方法の統一 | 痛みが出る時間帯と動作を記録し、PTへ伝える。 |
| 医師 | 痛みの原因の鑑別(画像・CRPSなど)、痙縮、合併症の有無 | 薬物療法などの医学的管理、リハビリの中止基準の指示 | NRS7以上や急な増悪は、すぐに相談する。 |
| MSW | 退院後の生活環境、介護保険などの制度、家族の状況 | 退院後の継続リハ(訪問・通所・外来・自費など)の調整 | 退院前に、肩の注意点を次の支援先へ引き継ぐ。 |
新人がつまずく、肩甲帯評価の落とし穴。
ここからは、先輩として伝えたい失敗パターンです。多くの新人が、同じところでつまずきます。先に知っておけば、遠回りせずに済みます。
臨床判断のコツ:肩痛を切り分ける4ステップ
- どの角度・どの動きで痛むかを再現する(例:屈曲80〜120°)。
- 他動と自動で痛みが違うかを比べる。他動でも痛めば、関節や軟部組織を疑う。
- 肩甲骨の動き出しを観察する。前鋸筋と僧帽筋下部線維が関与しているかを見る。
- 手の腫れ、皮膚温の変化、触れるだけの痛みがあれば、すぐ医師へ相談する。
初回セッション前の事前準備
石川さん(新人療法士):「田中先生、収縮タイミングの異常は、どの筋から見ればいいですか?」
田中先生(リハビリテーション医師):「まず前鋸筋と僧帽筋下部線維です。論文で遅れが目立ったのは、この2つと棘下筋でした。」
田中先生:「タイミングの改善は、筋力強化とは別の話です。まず評価して、実際の動作に合わせて順番を練習します。」
田中先生:「論文で測っていない筋は、根拠を分けて考えてください。鏡やセンサーで、収縮の様子を確認するのも一つの方法です。」
予後とゴールを、どう置くか。
期待される効果は、肩の安定性の向上、痛みの軽減、動作の改善です。ただし、これらは今回の論文が示した効果ではありません。論文の所見から導いた、臨床的な仮説です。
予後の見通し[観察研究]:Nijlandら(Stroke, 2010)のEPOSコホートは、次の関連を示しました。発症72時間以内の肩関節外転と手指伸展の有無が、6か月後の機能回復を予測します。対象は154例です(数値は原著で確認してください)。
介入の時期[単独RCT]:Dromerickら(PNAS, 2021)のCPASS試験は、72例を対象にしました。上肢の追加訓練(20時間/4週)を始める時期を、急性期・亜急性期・慢性期で比べています。亜急性期の開始が有望と示唆されました。詳細は原著で確認してください。
枠組み:目標設定と再評価には、KwakkelらのESOコンセンサス(Eur Stroke J, 2023)が参考になります。運動リハビリテーションの定義と、臨床の指針となる枠組みが示されています。
機能:4週でNRSを2点以上下げる(MCIDの目安)。
活動:痛みなく、肩屈曲90°まで上げられる。
参加:食卓で、麻痺側の手を机上に添えて食事をする。期間と数値を入れると、再評価しやすくなります。
「痛みなく使えるか」で決める。
よくある質問。
健常者では、肩屈曲時に僧帽筋上部線維と前鋸筋が三角筋前部線維より先に発火します。De Baetsらの研究(2014)では、脳卒中者は肩痛の有無に関係なく前鋸筋の発火が遅れていました。僧帽筋上部線維も、全可動域の屈曲では遅れが認められました。
棘下筋と僧帽筋下部線維の遅れが目立ちました。全可動域の屈曲では、僧帽筋下部線維の発火が痛みあり群で−398ミリ秒、痛みなし群で−140ミリ秒でした。負の値は、三角筋前部線維より遅いことを示します。棘下筋の群間差は、最大でも約24ミリ秒と小さい点に注意してください。
あります。肩痛を有する脳卒中者では、屈曲の30%で僧帽筋下部線維の発火を伴わず、37%で前鋸筋の活動が見られませんでした。ただし小規模な観察研究の結果であり、そのまま一般化はできません。
論文では表面筋電図で測定されています。臨床では、座位の肩屈曲で肩甲骨の動き出しを視診と触診で確認します。前鋸筋と僧帽筋下部線維が動き出しに関与しているかを見ます。ミリ秒単位の差は目視で判別できないため、順序の乱れや非関与を粗く捉えます。
まず姿勢と肩甲骨のアライメントを評価し、痛みのない範囲で協調的な筋活動を促します。目安は、軽負荷で8〜12回を2〜3セット、週3〜5日です。痛みはNRS(0〜10の数値評価)3以下に抑えます。これらは参考値で、介入効果を直接検証した研究ではありません。
当てはまるとは言えません。対象は健常成人14名と脳卒中者30名(うち10名が肩痛)で、観察研究です。遅れが痛みの原因かどうかは示されていません。病期や重症度別の結果は、原著で確認してください。
STROKE LABのプログラム。
STROKE LABは、脳卒中に専門特化した自費リハビリ施設です。脳神経疾患や整形外科疾患のスペシャリストが、退院後のお悩みに向き合います。
肩の痛みや、腕の使いにくさでお困りの方へ。動きの順番や肩甲骨の使い方まで丁寧に評価し、ご本人の目標に合わせたプログラムをご提案します。詳しくはHPメニューをご覧ください。

— 退院後のリハビリに取り組むSTROKE LABの紹介です。
— STROKE LABでのリハビリの様子です。
「回復期を退院された方が、腕を上げると肩が痛いと来所されました。肩そのものを疑いましたが、座位で動き出しを見ると、肩甲骨が先に動いていませんでした。そこで、痛みのない範囲で前鋸筋を意識する練習から始めました。痛みなく上げられる範囲が少しずつ広がり、痛い場所より動き出しを見る大切さを学びました。」— 理学療法士・臨床経験○年・脳卒中の上肢リハビリ
「移乗のたびに麻痺側の腕を引っ張られ、肩を痛めそうな方がいました。私は介助者の手の位置を変え、麻痺側の腕を体幹から支える方法をご家族と一緒に確認しました。その後は、移乗時の痛みの訴えが減りました。リハ室の外の環境が、成果を左右すると実感しました。」— 作業療法士・臨床経験○年・生活期の上肢・ADL
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諦めないでください。

脳卒中のあと、肩の痛みや腕の動かしにくさに悩む方は少なくありません。「もう仕方ない」と思ってしまう方もいらっしゃいます。
しかし、痛みの原因は一つではありません。動きの順番や肩甲骨の使い方を見直すことで、できることが見えてくる場合があります。
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代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)