脳卒中リハビリでやる気を引き出すには?意欲を高める関わり方と評価
「やる気がない」は、本当に患者の問題なのか。
脳卒中患者の「やる気がない」の裏には、うつ・アパシー・疲労・疼痛、そして周囲の関わりが隠れています。Maclean らの質的研究(BMJ 2000)を軸に整理しました。切り分け・評価・介入・多職種連携まで、明日から使える形にまとめます。

要点5項目。
「意欲が低い」と書く前に、見ておくこと。
68歳男性。左MCA領域の脳梗塞による右片麻痺で、発症6週の回復期です。BRS(ブルンストロームステージ:麻痺の回復を6段階で示す指標)は、上肢Ⅲ・手指Ⅲ・下肢Ⅳ。FIM(機能的自立度評価法)の運動項目は52点。主訴は「早く帰りたい」です。
初回評価では、訓練へは促されて向かう状態でした。Vitality Index(意欲の指標)は10点中6点。「寝ていたほうが治ると娘が言う」と話します。病棟スタッフの声かけも食い違っていました。
カルテに「意欲低下」と書いたことはありませんか。新人のころ、私もよく書きました。でも、その一言で患者さんの何が分かったのでしょうか。
この患者さんに「もっと頑張りましょう」と伝えるだけで、状況は変わるでしょうか。おそらく変わりません。原因が、本人の外にあるかもしれないからです。
この記事は、Maclean らの質的研究(BMJ 2000)を軸にしています。質的研究とは、数値ではなく患者の言葉から現象を読み解く研究です。
出発点は、素朴な疑問です。「脳卒中患者のモチベーションは、リハビリの効果に大きく影響するのではないか」。この疑問を、要因・評価・介入まで掘り下げます。
ゴールは3つです。意欲低下の要因を整理すること。評価で捉えること。明日の臨床で使える関わりを持ち帰ること。
意欲とは何か。下げる要因は3群に整理できる。
まず言葉を揃えます。リハビリ意欲(モチベーション)とは、患者が訓練に向かう方向・強さ・持続を左右する心理状態です。
大切なのは、意欲を「性格」ではなく「状態」として見ることです。状態なら、要因を探して動かせます。

Maclean らは別の研究で、専門職が動機づけを患者の内的な特性と捉えがちだと報告しています(Stroke 2002)。「あの人はやる気がない人」という見方は、要因探しを止めてしまいます。
意欲を下げる3つの要因群
要因は、神経学的・身体的・社会的の3群に整理できます。順に見ましょう。
うつと不安は、意欲を大きく下げます。うつは、脳卒中後に約31%で認められます。
前頭葉が傷つくと、注意・計画・実行の機能(遂行機能)が落ちます。すると、リハビリの意味を理解しにくくなり、続けにくくなります。
アパシー(意欲・関心・自発性が低下した状態)も、約3分の1にみられます。うつとは別の状態です。
疼痛は、運動意欲を下げ、訓練の継続を難しくします。脳卒中後の疼痛は、約4割で報告されています。
疲労は、約50%にみられます。身体の疲れだけでなく、精神的な疲れも含みます。
家族や友人の支援が少ないと、患者は孤立します。意欲も下がりやすくなります。
Maclean 2000 では、家族の過保護や、病院スタッフの関わりが意欲に影響していました。
経済的負担も見逃せません。費用や交通費が重いと、訓練の継続が難しくなります。ただし、この点は出典が乏しく、専門家合意の水準です。
Maclean 2000[観察研究:質的研究]:Maclean N, Pound P, Wolfe C, Rudd A. BMJ. 2000;321:1051-1054. 目的は、高い・低いモチベーションの脳卒中患者の、態度や考え方を調べることです。対象は入院中の脳卒中患者22人(検者の分類で高モチベーション群14人・低モチベーション群8人)。発症から平均6週の時点で、半構造化面接を行いました。半構造化面接とは、質問をある程度用意し、自由に語ってもらう面接です。1人が面接と分析を担当し、別の検者が、2群間で面接や分析方法に違いがないかを評価しました。面接で出てきた【テーマ】を抽出しています。
うつの頻度[SR/MA]:Hackett ML, Pickles K. Int J Stroke. 2014;9(8):1017-1025. 観察研究61件の統合で、脳卒中後うつの頻度は31%でした。
疲労の頻度[SR/MA]:Cumming TB, Packer M, Kramer SF, English C. Int J Stroke. 2016;11(9):968-977. 脳卒中後疲労の統合有病率は、約50%でした。
疼痛の頻度[観察研究]:Jönsson AC, et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2006;77(5):590-595. 地域住民ベースの調査で、約4割が痛みを報告しました。
世界の発症数[観察研究]:Feigin VL, et al. Int J Stroke. 2022;17(1):18-29(WSO Global Stroke Fact Sheet 2022). 2019年の新規発症は、世界で約1,220万人と推計されています。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、脳卒中に特化した自費リハビリ施設です。脳の機能と動作を丁寧に評価し、いまの状態に合った訓練をご提案します。無料相談では、ご本人・ご家族の不安やご希望をお伺いします。
意欲は、脳のどこで支えられているのか。
意欲低下の原因は、一つに決まりません。それでも、脳の中で何が起きているかを知ると、関わり方の見通しが立ちます。
アパシーは、前頭前野・前部帯状回・大脳基底核・視床などを結ぶ回路の障害と関連するとされます(Tay 2021)。ただし、病巣が分かっても、意欲の回復を正確に予測できるわけではありません。
うつとアパシーは、別のもの
うつは、悲しみや罪責感が中心です。アパシーは、関心や自発性そのものが乏しくなる状態です。
アパシーの患者は、悲しんでいるようには見えません。促されれば動けることもあります。両者は併存することもあります。
この違いは、関わり方を変えます。うつが疑われれば、医師と連携して治療を検討します。アパシーなら、外からの構造化と声かけが手がかりになります。
認知機能と意欲の関係
前頭葉が傷つくと、注意・計画・実行の機能が落ちます。その結果、訓練の目的を理解できず、参加が続かないことがあります。
これは「やる気がない」のではなく、「始め方が分からない」状態かもしれません。だから臨床では、手順を短く区切って示します。
アパシーの頻度[SR/MA]:Caeiro L, Ferro JM, Costa J. Cerebrovasc Dis. 2013;35(1):23-39. 脳卒中後アパシーの統合頻度は、約3分の1でした。
診断・機序・治療[専門家合意]:Tay J, Morris RG, Markus HS. Int J Stroke. 2021;16(5):510-518. アパシーの診断・機序・帰結・治療を整理したレビューです。回路障害モデルを提示しています。
認知機能と意欲[専門家合意]:前頭葉損傷と遂行機能低下の関係は、原記事に出典がありませんでした。ここでは臨床的な通説として扱います。
「意欲低下」に見える状態を、切り分ける。
「意欲低下」は、症状の名前であり、原因ではありません。励ます前に、原因になりうる5つの状態を除外します。

| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 脳卒中後うつ | 訓練への参加が減る。表情が乏しい | 抑うつ気分・罪責感・悲観が中心。睡眠や食欲の変化を伴う | PHQ-9(9項目のうつ病質問票)、GDS、SDS。失語がある場合は観察式の尺度 |
| アパシー | 自発性が低下する。訓練に向かわない | 悲しみが乏しく、関心・自発性が低下する。促せば動けることがある | やる気スコア、Apathy Evaluation Scale、Vitality Index |
| 脳卒中後疲労 | 午後に参加が落ちる。休みたがる | 意欲はあるが、身体・精神の消耗で続かない。休息で回復する | Fatigue Severity Scale(FSS:疲労を9項目で評価)、疲労VAS |
| 疼痛 | 動きたがらない。動作を避ける | 特定の動作や関節で痛みが誘発される。部位を訴える | NRS(痛みを0〜10で答える尺度)、関節可動域・触診 |
| 認知機能低下・遂行機能障害 | 開始できない。続けられない | 目的の理解が乏しく、計画が難しい。手順を示すと改善する | MoCA-J、MMSE、FAB(前頭葉機能評価)、TMT |
脳卒中後うつのスクリーニング[専門家合意]:Towfighi A, Ovbiagele B, El Husseini N, et al. Stroke. 2017;48(2):e30-e43. AHA/ASAの科学声明です。脳卒中後うつを見逃さないよう、系統的なスクリーニングを勧めています。
うつとアパシーの区別[専門家合意]:Tay 2021(前章参照)。両者は臨床的に区別すべき状態として整理されています。
意欲を、どう測るか。採点基準まで押さえる。
意欲は、面接と尺度の両方で見ます。まず面接です。Maclean 2000 の結果は、そのまま質問リストになります。

次に、尺度です。日本で開発された Vitality Index(意欲の指標)を、採点基準ごと押さえます。日常の5場面を観察して採点します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 1. 起床(Wake up) | 2点:いつも定時に起床している 1点:起こさないと起床しないことがある 0点:自分から起床することがない |
項目単位のカットオフは示されていない | 0〜1点なら、生活リズム・睡眠・うつ・疲労を確認する |
| 2. 意思疎通(Communication) | 2点:自分から挨拶する、話しかける 1点:挨拶や呼びかけに、返答や笑顔が見られる 0点:反応がない |
同上 | 0点は、意識・失語・重度のうつを鑑別する |
| 3. 食事(Feeding) | 2点:自分から進んで食べようとする 1点:促されると食べようとする 0点:食事に関心がない、全く食べようとしない |
同上 | 嚥下・食欲低下・うつも合わせて確認する |
| 4. 排泄(On and off toilet) | 2点:いつも自ら便意・尿意を伝える、または自分で排泄する 1点:時々、便意・尿意を伝える 0点:排泄に全く関心がない |
同上 | 尿意の認識・失禁・認知機能を確認する |
| 5. リハビリ・活動(Rehabilitation, activity) | 2点:自らリハビリに向かう、活動を求める 1点:促されて向かう 0点:拒否、無関心 |
同上 | 0〜1点なら、本記事の第4章の5項目を除外する |
| 合計 | 0〜10点(各項目0〜2点の合計) | 統一されたカットオフ値は示されていない(研究により設定が異なる) | 点数が低いほど意欲低下。合計より、項目別のプロファイルで要因を推定する |
Vitality Index[観察研究]:Toba K, et al. Geriatr Gerontol Int. 2002;2(1):23-29. 高齢者(認知症を含む)を対象に開発された尺度です。信頼性・妥当性の検討が報告されています。MCID(臨床的最小変化量)は、確認できた範囲では報告がありません。脳卒中に特化した尺度ではない点に注意してください。
やる気スコア(Apathy Scale日本語版)[観察研究]:Okada K, et al. Stroke. 1997;28(12):2437-2441. 14項目・各0〜3点(0〜42点)で、16点以上を意欲低下の目安とする報告があります。利用時は、原著でカットオフ値を確認してください。
意欲を引き出す関わりを、4つに整理する。
意欲への介入は、薬や機器ではなく、関わり方の設計です。ただし、動機づけ介入の質の高い試験は、まだ多くありません。
そこで、Maclean 2000 の所見を出発点に、臨床で使える4つの関わりに整理しました。頻度や時間は、専門家合意にもとづく運用の目安です。

Maclean 2000 では、家族の過保護を「ばからしい」と語る患者がいました。低モチベーション群には、「寝ていることが1番の回復法」と娘に言われた人もいました。
対策は、家族面談です。いまできること、予後、具体的な目標、必要な関わり方を、順に説明します。
目安:初回は入院後1〜2週以内・30分。以後は2〜4週ごと、または目標を変えるときに行います。
他の患者の回復は、励みにも不安にもなります。両方の反応が、論文に記録されています。
回復の速さは人それぞれです。比較ではなく、本人の目標にもとづく計画を示します。
目安:目標は1〜3個に絞り、2週ごとに見直します。週1回、同じ指標(FIM・10m歩行・Vitality Indexなど)で数値を示します。
高モチベーション群の多くは、セラピストの助言を「魔法の解決法」のように感じていました。助言によって、回復や効果を実感していました。
毎回、「何がうまくいったか」「次に何を目指すか」を言葉にして返します。最新の知見で根拠を添えると、助言の信頼性が高まります。
目安:各セッションの最後に1〜2分。週1回は、5〜10分の振り返りを設けます。
低モチベーション群は、家で暮らせるか不安でした。希望を伝えると否定されそうで、言い出せない人もいました。ほぼ全員が、早期の帰宅を望んでいました。
退院後の支援プランと、地域サービスの使い方を早めに説明します。個別面談で、希望を安心して話せる場を作ります。
目安:週1回・30分の多職種カンファレンスで方針を揃えます。退院先の意向確認は、入院2週以内に行います。方針は文書にして共有します。
ゴール設定[SR/MA]:Levack WMM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(7). 後天性障害の成人リハビリで、ゴール設定と目標追求の戦略を検討したレビューです。効果の確実性は低く、標準化された手法は確立していません。
脳卒中の患者中心ゴール設定[SR/MA]:Rosewilliam S, Roskell CA, Pandyan AD. Clin Rehabil. 2011;25(6):501-514. 量的・質的エビデンスを統合したSRです。量的な効果は限定的で、質的には参加や意欲との関連が示唆されています。
動機づけ面接[SR/MA]:Cheng D, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(6). 脳卒中後の回復に対する動機づけ面接を検討しました。質の高い十分なエビデンスは、現時点では不足しています。
パラメータの位置づけ[専門家合意]:面談の頻度・回数・時間は、試験で確立した値ではありません。STROKE LABの運用にもとづく目安です。患者の状態に合わせて調整してください。

脳卒中のあとは、不安や疲れ、痛みが重なり、気持ちが前に向かない時期があります。ご本人だけで抱え込まず、ご家族と一緒に、いまの状態を整理してみませんか。無料相談でお話をお聞きします。
指示の食い違いが、意欲を削ぐ。
Maclean 2000 では、低モチベーション群が「指示の不一致」に混乱していました。セラピストには励まされてリハビリをする。看護師にはベッドで寝ているよう言われる。「どちらを信じていいか分からない」という訴えです。

指示の不一致が起きる3つの理由
- 目標が、職種間で共有されていない
- 「できる動作」と「している動作」が、区別されていない
- 安静度や予後の説明が、職種ごとに違う
統一のための3つの約束
- 週1回・30分の多職種カンファレンスで、ケア方針を揃える
- リハビリの方針と活動内容を文書にして、全員が同じ情報を見る
- 環境も整える。個別のリクエストに応じた室内調整や、くつろげる場所を用意する
「看護師さんに、『できる動作は病棟でも自分でやってもらいましょう』と、理由つきで伝えてみてください。」
「指示が食い違っても、責めないでください。まず事実を書き出して、カンファレンスに出しましょう。」
| 職種 | この症状における評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 起居・移乗・歩行の自立度、Vitality Index、疼痛・疲労 | 目標に沿った動作訓練。進捗を数値で示す | 「できる動作」を、写真や文書で看護師と共有する |
| OT | ADL・IADLの自立度、注意・遂行機能、本人の関心や役割 | 意味のある作業を訓練に取り入れる。自助具の提案 | 病棟でのADL自立範囲を、看護師と揃える |
| ST | コミュニケーション手段、失語・構音、嚥下 | 意思表示の手段を確保する(選択肢の提示など) | 患者の意思表出の方法を、全スタッフに周知する |
| 看護師 | 病棟での起床・食事・排泄・活動、夜間睡眠、疼痛、気分 | できるADLは自分で行う関わり。生活リズムの調整 | 病棟での様子をリハビリ側へ共有する |
| 医師 | 診断・合併症、うつやアパシーの鑑別、服薬状況 | 薬物調整と医学的リスクの管理。予後の説明 | 安静度・予後を、全職種へ明確に示す |
| MSW | 経済状況、家族背景、利用可能な制度、退院先の意向 | 介護保険・障害福祉サービスの調整。経済的負担の相談 | 退院時期と受け皿の見通しを、早めに共有する |
脳卒中ユニット[SR/MA]:Langhorne P, Ramachandra S; Stroke Unit Trialists’ Collaboration. Cochrane Database Syst Rev. 2020;(4). 組織化された入院ケア(脳卒中ユニット)は、一般病棟より、死亡や要介護のリスクを下げます。
国内ガイドライン[専門家合意]:日本脳卒中学会. 脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]. 脳卒中ユニットでの多職種チーム医療を推奨しています。
新人がつまずく3つの場面。
ここからは、私が新人に必ず伝えている内容です。知識より先に、見方の癖でつまずくことが多いからです。
臨床判断のコツ:3つの問いを立てる
意欲が低いと感じたら、3つの問いを順に立てます。「身体は動けるか」「頭は理解できているか」「周りの関わりは揃っているか」です。
この順に確認すると、レッテルを貼る前に、動かせる要因が見つかります。
石川さん「意欲が低い患者さんには、どう声をかければいいですか。」
田中先生「声かけの前に、要因を探しましょう。うつ、疲れ、痛み、そして周りの関わりです。原因が本人の外にあることも多いのです。」
この論文を臨床で使うときの注意
質的研究は、因果関係を示せません。「過保護だから意欲が下がる」とは、言い切れません。
高・低の分類は、検者の判断にもとづきます。対象は22人と少なく、海外の入院場面の研究です。
対象は、発症から平均6週の入院患者です。生活期の患者には、そのまま当てはまらない可能性があります。
専門職の動機づけ観[観察研究:質的研究]:Maclean N, Pound P, Wolfe C, Rudd A. Stroke. 2002;33(2):444-448. 脳卒中を扱う専門職の、患者の動機づけに対する認識を質的に分析した研究です。動機づけを患者の内的な特性と捉える傾向が示されています。
退院を見据えて、ゴールをどう共有するか。
Maclean 2000 では、ほぼ全員が、できるだけ早く自宅に帰りたいと答えました。多くが、病棟に不満を抱いていました。
高モチベーション群は、リハビリの進歩を「ADLを自立して行えること」と捉えていました。低モチベーション群も「自立」を挙げましたが、行動には反映されませんでした。
つまり、ゴールは「言葉」だけで確認してはいけません。日々の行動で確認します。予後の説明は、根拠のある範囲で、医師と揃えて行います。
患者・家族・多職種が、同じ1文のゴールを持ちます。例:「3か月後に、杖で近所のスーパーまで歩く」。期限・場所・手段を入れると、日々の行動に落とせます。
運動リハビリの枠組み[専門家合意]:Kwakkel G, Stinear C, Essers B, et al. Eur Stroke J. 2023;8(4):880-894. 欧州脳卒中機構(ESO)による合意文書です。運動リハビリの定義と、評価・目標設定・介入・再評価を循環させる枠組みが示されました。
患者中心のゴール設定[SR/MA]:Rosewilliam 2011(第6章参照)。患者中心の目標設定と、参加・意欲との関連が示唆されています。
よくある質問。
目安は、悲しみや罪責感の有無です。うつは抑うつ気分が中心で、睡眠や食欲の変化を伴います。アパシーは、悲しみが乏しく、関心や自発性が低下します。両者は併存することもあります。うつが疑わしいときは、PHQ-9などで確認し、医師と連携します。
日常の観察で採点できるVitality Indexが使いやすい尺度です。起床・意思疎通・食事・排泄・リハビリ活動の5項目を各0〜2点で採点し、合計10点です。うつ・疲労・疼痛の除外には、PHQ-9・FSS・NRSなどを併用します。
うつは約31%(Hackett 2014)です。アパシーは約3分の1(Caeiro 2013)、疲労は約50%(Cumming 2016)と報告されています。疼痛は約4割の報告があります(Jönsson 2006)。研究ごとに対象や定義が異なるため、目安として扱ってください。
責めずに、家族面談で説明します。現在できること、予後、具体的な目標、必要な関わり方を順に伝えます。医師やセラピストが、根拠に基づく回復の考え方を家族と共有することが大切です。
一概に避ける必要はありません。Maclean 2000では、他の患者の回復が励みになる人と、不安になる人の両方がいました。本人の目標に基づく計画を立て、進捗を数値で見せると、比較に左右されにくくなります。
自分の判断で相手を否定せず、まず事実を記録します。いつ・誰が・何を言ったかを整理し、カンファレンスや上司を通じて方針を確認します。決まった方針は文書にして、全員で共有します。
STROKE LABのプログラム。
退院後のリハビリは、STROKE LABへ。当施設は、脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが、皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。

— STROKE LABの施設紹介(原記事のバナー画像)
代表の金子唯史が執筆した「脳の機能解剖とリハビリテーション」(医学書院)があります。その内容をもとに、具体的なトレーニングをご提示します。

「回復期で、低モチベーションとされた60代の男性を担当しました。訓練を拒む理由を聞くと、『何のための運動か分からない』との答えでした。そこで毎回、開始前に『今日は立ち上がりを10回します。トイレ動作のためです』と目的を1文で伝えました。2週間ほどで自分から訓練室へ向かうようになり、説明不足が意欲を下げていたと学びました。」— 理学療法士・経験10年台・回復期リハ
「『寝ていたほうが治る』と話す息子さんがいた、60代の女性です。家族面談を30分設け、できている動作を動画で見てもらいました。見守るだけで待つ関わり方を、一緒に練習しました。1か月後、更衣を見守る場面が増え、本人が自分で動く時間も増えました。家族には、具体的な関わり方を見せる必要があると学びました。」— 作業療法士・経験8年目・生活期リハ
あわせて読みたい:【2026年版】脳卒中後のアパシー(無気力)とは?原因・評価・リハビリテーション戦略を徹底解説【論文サマリー】
諦めないでください。

脳卒中のあと、リハビリに気持ちが向かない時期は、誰にでもあります。それは、ご本人の弱さではありません。
気分の落ち込み、疲れ、痛み、不安。さまざまな理由が重なって、意欲は揺れます。理由を一つずつ見つければ、道は開けます。
私たちは、ご本人とご家族のお話を丁寧に伺い、いま何が必要かを一緒に整理します。まずは無料相談で、お気持ちをお聞かせください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)