LSA(生活空間評価)とは?評価方法・採点・計算例と記録PDF
LSA(生活空間評価)の評価方法暮らしは、どこまで
広がっていますか。
家の中から町の外まで。過去4週間の移動を「範囲・頻度・自立度」で捉えるLSA。採点表、補正の手順、計算例、外出支援へのつなげ方をイラストとともに解説します。

支援を使って行きたい場所へ出かけることにも意味があります。LSAは実際の生活を記録する評価です。高得点を目指して無理な外出を促すものではありません。
LSAとは|実際の生活空間を評価する
LSA(Life-Space Assessment)は、一定期間に生活の中でどこまで移動したか、その頻度と自立度を組み合わせる尺度です。本記事はUAB Study of AgingのLSAと、日本語版の原田ら(2010)の報告を基盤に解説します。[1, 2, 3]
例えば、診察室では歩ける方でも、冬の凍結路や交通手段の不足で外出していないことがあります。逆に、歩行が難しくても、車いすや人的支援で生活範囲を保つ方もいます。「歩ける能力」と「実際に移動している生活」を分けて捉えることが大切です。
| 評価 | 中心となる視点 | LSAとの組み合わせ |
|---|---|---|
| 歩行速度・TUG | 決められた条件での移動能力 | 能力が生活の外出につながっているか |
| Barthel Index・FIM | 日常生活動作や介助量 | 家の中の自立と生活範囲を分けて確認 |
| LSA | 実際の移動範囲・頻度・支援 | 行き先と移動手段を含めた生活像 |
| QOL尺度 | 本人の健康・生活への実感 | 広い範囲に移動できても満足しているとは限らない |
生活空間レベル|家の中から町外へ
起点は寝ている場所(レベル0)。採点するのは、それを越えたレベル1〜5です。下の図は説明用の場面です。本人の自宅や地域を基準に分類し、施設の種類だけでレベルを決めません。[2]
1|家の中

寝室で起きて過ごすだけではレベル1への到達とは区別します。住居内の別室に移動したかを聞きます。
2|自宅のすぐ外・敷地内

建物の外へ出たかという一言だけでは、共用廊下や敷地内を取りこぼすことがあります。具体的な場所を確認します。
3|自宅近隣

近所の公園や店でも、自宅との位置関係を確認して区分します。名称ではなく、その人の生活空間として整理します。
4|近隣を越えた町内

同じスーパーでも、自宅の隣にあれば別のレベルになり得ます。町内・近隣の範囲を評価者間でそろえます。
5|町外

旅行だけでなく、通院や親族訪問なども対象になり得ます。4週間に1回でも到達は「あり」ですが、頻度は毎日と異なります。
地域や研究によって距離の目安を用いることがありますが、本記事では800m・16kmを全員共通の必須境界とはしていません。原田らの日本語版は近隣・町内・町外という区分です。使用票の定義と具体的な行き先を記録し、再評価時も同じ基準を使います。[2]
実施手順|行き先から、頻度と支援を聞く

| 順序 | 確認すること |
|---|---|
| 1.期間を決める | 評価日からさかのぼる4週間。具体的な開始日・終了日を記録 |
| 2.場所を整理する | 家の中、すぐ外、近隣、町内、町外への到達の有無 |
| 3.頻度を選ぶ | 各範囲にどのくらい移動したか。最も活動した週だけで判断しない |
| 4.支援を確認する | 補助具と人的介助を別々に聞く。屋内と屋外で異なる場合も記録 |
| 5.整合と補正を確認 | 元の回答を保存し、使用版の採点アルゴリズムに沿って整理 |
| 6.合計と背景を残す | 総点、最大範囲、主な行き先、交通手段、天候や入院等 |
LSAは距離をその場で歩かせる検査ではありません。本人の回答を基本とし、必要に応じて家族・記録で補います。本人の記憶が不確かで家族から確認した場合は、情報源を明記します。未確認を「行かなかった」と置き換えません。
採点表|範囲・頻度・自立度を掛け合わせる
L:生活空間レベル(1〜5)
A:到達あり1/なし0
F:頻度(1〜4)
I:自立度(1・1.5・2)
5つのレベルの点数を足し、0〜120点で記録します。
以下は配点の整理です。計算前に、次節の補正と欠測の確認を行います。[2, 4, 6]
| F:頻度 | 配点 |
|---|---|
| 週1回未満(4週間に移動はあった) | 1 |
| 週1〜3回 | 2 |
| 週4〜6回 | 3 |
| 毎日 | 4 |
「4週間に一度も行っていない」は、週1回未満の1点とは異なり、到達A=0のためそのレベルは0点です。1日に何往復しても頻度の上限は4です。
| 補助具 | 人の介助 | I:自立度 |
|---|---|---|
| 不要 | 不要 | 2 |
| 使用 | 不要 | 1.5 |
| 使用の有無を問わない | 必要 | 1 |

杖を使うだけで0点になることはありません。補助具のみで移動するならI=1.5です。人の介助が必要な場合はI=1となります。付き添いの存在だけで決めず、実際に必要だった支援を確認します。
車・公共交通などによる移動も、生活範囲を捉える際に確認します。移動手段の名称だけで補助具・人的介助を自動判定せず、乗降や移動に必要な支援、使用版の規則を確認し、交通手段を別欄に残します。
採点前の補正|内側と外側の整合を取る
原田ら(2010)の付録2には、初期配点に続いて補正する手順が示されています。聞き取り値を消さず、「補正前」と「補正後」を区別します。[2]
| 対象 | 方向 | 補正の要点 |
|---|---|---|
| 到達A | 外側 → 内側 | 上位レベルに到達していれば、下位レベルも到達ありにする |
| 頻度F | 外側 → 内側 | 内側の頻度が外側より低ければ、外側の頻度まで引き上げる |
| 自立度I | 内側 → 外側 | 内側で必要な支援を外側に反映。人的介助1を優先し、補助具のみなら外側は最大1.5 |
補正の小さな例
頻度:レベル4の頻度が2、レベル3が1なら、レベル3の頻度を2に補正します。さらに内側にも同じ順序で確認します。
自立度:レベル2で補助具が必要(1.5)なのに、レベル3を支援なし(2)としていた場合は、アルゴリズム上はレベル3を1.5にそろえます。レベル3で人の介助が必要(1)なら、1を維持します。
生活状況が入り組んでいるときは、回答を再確認し、どの規則を使ったか残します。単に値を都合よく変更するための処理ではありません。
到達していないことが確認できたレベルは0点です。到達したか分からない、頻度や支援が不明な場合は、未確認を0にせず採点を保留します。原田らの付録2は、欠測がないデータを前提にした方法です。
計算例|最大範囲が同じでも点数は変わる
家では毎日移動し、近隣は杖で週2回、町内へ月2回。
下表は、回答確認と補正後の値です。レベル4への移動には人的介助が必要で、レベル5への到達はありません。
| L:範囲 | A | F | I | 計算・点数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 家の中 | 1 | 4 | 2 | 1×1×4×2=8 |
| 2 すぐ外 | 1 | 4 | 1.5 | 2×1×4×1.5=12 |
| 3 近隣 | 1 | 2 | 1.5 | 3×1×2×1.5=9 |
| 4 町内 | 1 | 1 | 1 | 4×1×1×1=4 |
| 5 町外 | 0 | — | — | 未到達のため0 |
最大到達レベルは4ですが、総点は4点でも32点でもありません。各レベルの頻度と支援を含めた合計です。
次の4週間で近隣への移動が週4〜6回になり、他の条件が同じなら、レベル3は3×1×3×1.5=13.5点、合計は37.5点です。最大到達範囲が変わらなくても、頻度の変化が得点に表れます。
33→37.5点は説明用の架空例です。4.5点を普遍的な改善基準として示しているわけではありません。
結果の解釈|点数だけで閉じこもりを決めない
60点未満の扱い
60点未満を生活空間の制限ありとして扱った研究があります。ただし、60点を外出の安全性や個人の診断の一律基準にはしません。原田らの研究では最大到達レベル3以下という別の定義も使われています。何の指標・定義を使っているかを明示します。[2, 4]
点数と最大範囲は、別の情報
町外へ一度出かけた人と、毎日近隣へ出かける人では、最大範囲と頻度が違います。合計点から行き先を一意に推測せず、元の内訳を確認してください。
身体機能以外の変化も残す
積雪、猛暑、交通機関の変更、家族の都合、入院、感染対策、買い物の宅配化などにより、生活範囲は変わります。低下をすぐに筋力低下や意欲低下と決めず、生活の背景を確かめます。
研究から分かることと、適用の限界
原著では地域在住高齢者306人を対象に検討し、初回と2週間後の各LSA採点法の相関は0.86を超えていました。6か月の変化も観察されています。測定方法の有用性を示す結果ですが、同じ点数なら誰でも同じ生活状態という意味ではありません。[1]
日本語版の検討では、介護予防支援を受ける地域高齢者2,147人を解析し、妥当性を支持する結果が得られました。対象条件があるため、そこでの平均値を全高齢者の標準値として使いません。[2]
日本の慢性期脳卒中者46人を対象にした横断研究では、LSAはADL、歩行速度、転倒への懸念と関連しました。横断研究であり、「歩行速度だけを上げれば生活空間が広がる」という因果関係までは示しません。[4]
本記事の方法は地域生活を基盤としたLSAです。入院中・施設内の生活空間評価では、設定や評価期間の異なる版との混同に注意します。4週間未満の退院直後の状況を、そのまま通常の4週間評価と同等に比較しないようにします。
評価PDF|聞き取りから補正・経過記録まで
聞いた値を残して、正しく集計。
A4縦・3ページ/印刷・手書き用
01 4週間の聞き取り・配点早見表
02 補正の方向・計算欄・合計
03 前回比較・外出の背景・生活目標
LSA採点・記録PDFをダウンロード ↓日本語版の原著・付録を確認 ↗
配点と計算を整理した独自の補助シートです。原票の逐語転載・公式認証版ではありません。質問の詳細と研究利用時の条件は原資料をご確認ください。
記録と支援|次に行きたい場所へつなぐ

カルテ記載例(架空例)
LSA 33/120点。評価対象は直前4週間、本人から聞き取り。原田ら(2010)方式で回答の整合と補正を確認。最大到達レベル4。住居内は毎日支援なし、すぐ外は毎日補助具のみ、近隣は週1〜3回で補助具のみ、町内は週1回未満で人的介助あり。町外への移動なし。
本人は「図書館へ行く機会を増やしたい」と希望。移動経路、休憩場所、補助具、同行支援を確認する。次回も4週間の同じ範囲定義で再評価する。
| 背景 | 支援の検討例 |
|---|---|
| 歩行は可能だが外出が少ない | 目的、転倒不安、疲労、交通手段を確認 |
| 補助具があれば移動できる | 適合と使い方、環境を確認。得点のために外さない |
| 家族の予定で頻度が変わる | 同行・送迎・サービス等を含めて現実的に調整 |
| 冬季に生活範囲が縮小 | 屋内活動や安全な経路、移動手段を検討。季節差も記録 |
目標は「120点」だけではなく、「休憩を入れて図書館へ週1回」など生活の内容で設定します。練習の安全性と医学的な制限は、別途確認してください。
よくある質問
車や車いすで出かけた場合も含めますか?
実際の生活範囲として確認します。徒歩だけに限定せず、移動手段と補助具・人的介助の内容を記録します。
4週間に1回だけ町外へ行った場合は?
町外への到達はあり、頻度は週1回未満の1です。他のレベルの情報も確認し、必要な補正後に合計します。
杖を使うと0点になりますか?
なりません。補助具のみなら自立度は1.5です。人的介助も必要なら1となります。
一度も行かなかった場合も頻度1ですか?
違います。到達なしはA=0で、そのレベルは0点です。移動ありで週1回未満のF=1と区別します。
60点以上なら一人で外出して安全ですか?
そのようには判断できません。歩行・認知・症状・交通環境などの安全性評価は別に必要です。
施設や病院でも同じ用紙で採点できますか?
地域生活を基盤とするLSAと、入院・施設向けの別版を区別します。自宅を病室に置き換えるなど独自変更をした値を、そのまま同じ尺度として比較しません。
STROKE LAB|生活範囲を広げる相談
「近所の店に行きたい」「家族との外出を再開したい」。現在の動作と生活環境、主治医からの注意事項を共有し、ご本人が望む行き先に必要な準備を考えます。
行きたい場所から、リハビリを考える。
医学的に状態が安定した方の動作・練習方法・環境について、ご本人・ご家族からご相談いただけます。
参考資料・原著論文
- Baker PS, Bodner EV, Allman RM. Measuring life-space mobility in community-dwelling older adults. J Am Geriatr Soc. 2003;51:1610–1614. 原資料を確認 ↗
- 原田和宏ほか.介護予防事業に参加した地域高齢者における生活空間(life-space)と点数化評価の妥当性の検討.日本公衆衛生雑誌.2010;57:526–537.付録1・2(p.536)を含む。 原資料を確認 ↗
- University of Alabama at Birmingham. UAB Study of Aging. 原資料を確認 ↗
- Tashiro H, et al. Life-Space Mobility and Relevant Factors in Community-dwelling Individuals with Stroke in Japan: A Cross-sectional Study. Prog Rehabil Med. 2019;4:20190014. 原資料を確認 ↗
- 日本理学療法士協会.障害者における支援機器の活用による効果検証およびシームレスな支援体制の在り方に関する調査研究事業報告書.2017.厚生労働省公開資料。 原資料を確認 ↗
- The Life-Space Assessment Measure of Functional Mobility Has Utility in Community-Based Physical Therapist Practice in the United Kingdom. Phys Ther. 2019;99(12). 原資料を確認 ↗
資料確認:2026年11月。原尺度:UAB Study of Aging Life-Space Assessment。日本語版と採点アルゴリズムは原田ら(2010)を参照。説明と記録欄を独自に編集しており、公式票・公式認証を示すものではありません。イラストは概念説明用、計算例・臨床例は架空です。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)
