FGA(Functional Gait Assessment)|10項目の実施方法・採点・カットオフと脳卒中リハでの活用 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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FGA(Functional Gait Assessment)|10項目の実施方法・採点・カットオフと脳卒中リハでの活用

STROKE LAB / WALKING BALANCE

FGA 歩行バランス評価
Functional Gait Assessment

まっすぐ歩ける。
その先の対応力へ。

振り向く・またぐ・止まる。10の課題から生活を読み解く。

10項目・30点実施と解釈をつなぐ2026年の研究まで確認
歩行中の条件変化に対応する力を、10項目で確認する
歩行中の条件変化に対応する力を、10項目で確認する(説明用オリジナルイラスト)

01|まっすぐ歩ける。その先の「対応力」を見る

廊下は歩けるのに、呼ばれて横を向くと足が止まる。段差をまたいだ直後にふらつく。駅の階段では急に見守りが必要になる。FGAは、歩行に条件が加わったとき、姿勢を保ちながら動作を調整できるかを見る評価です。

Functional Gait Assessmentは、Dynamic Gait Index(DGI)をもとに開発された10項目の検査です。各項目0〜3点、合計30点で、高いほど課題中の歩行バランスが良好です。前庭障害を対象とした開発研究から、脳卒中などの歩行評価へ利用が広がっています。[1], [5]

この記事の読み方:まず実施条件をそろえ、10項目で「どの場面が難しいか」を確認します。その後に合計点・変化量・生活での様子を合わせて解釈します。点数から原因の診断や屋外歩行の許可が自動的に決まるわけではありません。

02|対象者・所要時間・準備するもの

確認事項 実施前にそろえる内容
対象 歩行中のバランスを調べたい成人。補助具の使用は可能。常時身体介助が必要な人は、実施可能性を先に判断する。
時間 慣れた評価者で5〜10分、新人では20分未満が目安。移動・説明・休息は別に余裕を取る。
歩行路 硬い平面に長さ6m・幅30.48cmの目印。開始前後と左右に安全な余地を確保する。
道具 ストップウォッチ、巻尺、床テープ、規定の障害物、手すりのある階段、記録用紙。
再評価 同じ場所、靴、装具、杖などを基本にする。変更した場合は内容を残す。

[2], [12]

階段は段の高さ・段数・手すり条件を実測して記録します。箱や階段の条件を施設都合で変えた場合、元の条件と同一として扱わないことが重要です。評価者は先導して速度を作らず、歩行中は少なくとも半歩後方を基本に、安全を確保できる位置で見守ります。[12]

初回は痛み・めまい・体調、最近の転倒、説明の理解を確認します。パーキンソン病では服薬からの時間やON/OFF、脳卒中では装具や麻痺側を記録すると、次回の違いを読み取りやすくなります。これは点数とは別に残す臨床情報です。

03|10項目の流れをつかむ

以下は実施内容の要約と、STROKE LABによる観察の視点です。厳密な採点には、リンクしたANPTの項目別基準を併用してください。声かけや練習で課題を変えてしまわないよう、実施前に説明方法をそろえます。[2]

項目 行うことの要約 臨床で一緒に見ること
1|平面歩行 普段の速さで6m歩く。 直線歩行の基準。速度・偏り・足の運びを記録。
2|速度変更 通常→速い→遅い歩行へ切り替える。 加速より減速で崩れるか。指示と動作に間があるか。
3|左右を向く歩行 歩きながら左右へ頭を向ける。 頭だけでなく体幹ごと曲がるか。足が止まるか。
4|上下を向く歩行 歩きながら上・下へ頭を向ける。 上を見ると後方へ揺れるか。下を見ると減速するか。
5|方向転換と停止 歩行から反対向きに回り、止まる。 何歩で回るか。回転後も足が動き続けるか。
6|障害物またぎ 箱をよけず、またいで歩き続ける。 先に出す足と、後から越える足のどちらが引っかかるか。
7|狭い支持基底面 腕を胸で組み、踵とつま先をつなぐ継ぎ足歩行。 連続歩数と、横へ踏み出す場面。
8|閉眼歩行 目を閉じて6m歩く。 偏る方向・速度低下・開眼や介助の必要性。
9|後方歩行 後ろ向きに歩く。 一歩が出るまでの間、左右の歩幅、つま先の引っかかり。
10|階段 階段を上り、向きを変えて下りる。 交互の足か一段ずつそろえるか。手すり・下りの調整。

左右・上下の頭部運動は3歩ごとに切り替え、各方向2回を行う手順です。速度変更は通常・速い・遅い各1.5mが指定されています。継ぎ足歩行は最大10歩を数えます。[2]

顔を横へ向けても、足は直進できるかを観察する
顔を横へ向けても、足は直進できるかを観察する(説明用オリジナルイラスト)

04|採点で迷いやすいところ

0・1・2・3点は「できた/できない」だけの区分ではありません。項目ごとに時間、進路のずれ、補助具、歩数、介助などの条件が組み合わされています。見た目の印象だけで「少しふらついたから2点」と決めないでください。[2]

よくある迷い 記録・判断のしかた
杖を使って歩けた 杖使用は検査を受けられない理由ではない。ただし補助具の使用が採点条件に入る項目がある。
時間は速いが、壁に触れた 速さだけで上位点を付けない。進路の逸脱や接触、支えの必要性も基準に照合する。
合図を何度も追加した ANPTは必要最小限の声かけ・実演を認めている。内容と回数を条件として記録し、次回もそろえる。
危険なので途中で支えた 身体介助が必要な項目はANPTの補足指示では0点。介助内容を残し、介助後の遂行を独力と扱わない。
階段がなく未実施 未実施は能力による0点とは違う。9項目の点数を30点満点へ換算しない。
検査を拒否した/開始できない 理由を記録し、当該項目の規定を確認。未実施を一律0点で埋めない。

階段の採点を例にすると、左右の足を交互に出して手すりなしなら3点、交互だが手すりが必要なら2点、一段ごとに両足をそろえて手すりが必要なら1点、安全に遂行できない場合は0点です。図の手すり使用は、減点を避けるために外すものではありません。[2]

原票の境界値にも注意:ANPT公開PDFの継ぎ足歩行では「7歩」が1点欄と2点欄の両方に記載されています。境界で迷った記録を無断で書き換えず、採用する原票・採点方針を施設内で確認し、再評価でも統一してください。本資料はこの重複を隠して独自の正式基準を作りません。[2]

05|障害物・閉眼・階段は、設定と見守りが重要

規定の箱をまたぎ、先行脚だけでなく後続脚の通過も確認する
規定の箱をまたぎ、先行脚だけでなく後続脚の通過も確認する(説明用オリジナルイラスト)

障害物では、高さを変えると課題の意味が変わります。原法には約22.86cmと11.43cmの条件があります。低い箱でできた結果を、高い箱の課題成功として採点しないでください。初めから身体介助が必要と判断される場合は、安全確保を優先し、その条件を記録します。[2]

腕を胸で組み、踵とつま先をつなぐ継ぎ足歩行
腕を胸で組み、踵とつま先をつなぐ継ぎ足歩行(説明用オリジナルイラスト)

継ぎ足歩行は「細い線の上を普通に歩く」課題とは異なります。腕を広げる、足を横へ離す、途中で壁に触るといった変化を見落とさず、何歩続いたかと一緒に残します。

閉眼歩行は評価者が近接して見守る。家庭で一人では行わない
閉眼歩行は評価者が近接して見守る。家庭で一人では行わない(説明用オリジナルイラスト)

閉眼では普段使っている視覚の助けが減ります。蛇行や停止が増えたら、その現象を記録し、別途、感覚・前庭機能・姿勢制御などを確かめます。閉眼歩行の低得点だけで「前庭障害」と診断しないことが大切です。痛み、強いめまい、転倒しかけるなどがあれば中止し、状態を確認します。

階段は上りと下りを観察し、手すり使用も記録する
階段は上りと下りを観察し、手すり使用も記録する(説明用オリジナルイラスト)

階段で手すりを使うことは、生活では有効な安全対策です。高得点を得るために必要な手すりを外すのではなく、使用した条件で採点し、本人が生活で使える方法につなげます。

06|22点以下は何を予測するのか

Wrisley・Kumar(2010)は60〜90歳の地域在住高齢者35名を6か月追跡し、22点以下を将来の転倒を拾い上げる目安として報告しました。原著抄録の前向き転倒予測では感度100%、特異度72%です。少数例の結果であり、全員に同じ精度が保証されるわけではありません。[3]

数値 対象・研究上の目的 臨床での扱い
22点以下 地域在住高齢者/将来の転倒(2010) 転倒歴と生活場面を詳しく確認するきっかけ。脳卒中の屋外自立基準ではない。
15点以下 特発性正常圧水頭症188名/過去6か月の転倒歴との判別(2025) 感度などが良好でも、別疾患や将来の転倒へそのまま適用しない。
20点付近 脳卒中群63名と健康高齢者30名の判別(2026) 疾患群と対照群を分ける研究上の値。転倒予測や退院基準とは別。

[3], [7], [10]

2026年の脳卒中研究は本文に「≥20」と記載する一方、脳卒中群の得点が低いという結果も示しています。方向の読み違いを避けるため、本記事では「20点以上なら転倒する/安全」といった判定式を提示しません。群間判別を行った研究であることと、信頼性・測定誤差の情報を中心に利用します。[7]

患者さんへの説明例:「22点という数字だけで、外出ができる・できないは決まりません。今回は横を向くときと階段で不安定さが出ました。実際に通る場所で、どんな支えがあると安全かを一緒に確認しましょう。」

07|何点上がれば、変化したといえるか

前回18点、今回22点なら4点の増加です。ただし、変化が測定誤差を超えたかを扱うMDCと、本人や評価者にとって重要な変化を扱うMCIDは別の概念です。同じ「4点」でも根拠の対象と目的を確認します。

研究 変化量 対象・解釈
Beninatoら(2014) MCID 4点 地域在住高齢者135名。療法士の変化評定を基準に算出。患者本人の評定からは適切な値を確定できなかった。
Van Bloemendaalら(2019) MDC 6点 歩行自立した脳卒中者52名。発症後期間の中央値6週。測定誤差を考慮する目安。
Ngら(2026) MDC 5.02点 歩行可能な脳卒中者63名を対象とする研究。重要な変化量・転倒回避の保証ではない。

[4], [6], [7]

たとえば4点増えても、脳卒中者に「必ず誤差を超えた」とは言い切れません。一方、合計点の増加が小さくても、玄関の段差を身体介助なしで越えられた変化は生活上重要です。合計点、項目別の変化、本人の困りごとをセットで追います。

再評価で杖や装具を変えた場合は、補助条件の効果と本人の機能変化が混ざります。変更後の生活能力を記録する評価と、前回と同条件で比較する評価を、目的に応じて区別してください。

08|BBS・TUG・10m歩行と、どう使い分けるか

評価 主に知りたいこと FGAとの組み合わせ
BBS 立位保持や移乗を含む機能的バランス 基本動作が安定しても歩行の条件変化で困る場合にFGAを追加。
TUG 立つ・歩く・回る・座る一連動作の所要時間 遅さの内訳を観察し、歩行中のどの課題で崩れるかをFGAで具体化。
10m歩行 歩く速さ 直進速度が良くても、頭部回旋や障害物で不安定さがないかを見る。
6分間歩行 歩行の持続・距離 短い課題の安定性に加え、疲労が出た後の歩行を検討。
ABCなどの質問紙 本人のバランスへの自信 検査得点と本人の不安の差を対話で確認。
DGI 歩行中の課題への対応 FGAは難しい課題を含む。DGIの点数をFGA点へ換算しない。

脳卒中を対象にしたLinら(2010)の比較では、FGAはDGIなどと比べて床・天井効果が小さい結果でした。神経疾患のコアアウトカムに関するガイドラインも、歩行中のバランス、速度、距離を異なる測定で捉える考え方を示しています。[5], [11]

日本の慢性期めまい・平衡障害52名の研究でも、TUG、DGI、FGA、ABCでリスクありと判断される人数は一致しませんでした。どれか一つを「正解」とせず、実際の動作と本人の認識を合わせる必要があります。[8]

09|新人が結果を介入につなぐ、3つの臨床例

以下は評価から介入を考えるための架空例です。FGAの得点だけで特定の治療法の効果を保証するものではありません。採点が終わった後に、仮説を確かめる追加観察・練習へ進みます。

例1|呼ばれると止まる人
直線歩行は安定していますが、左右を向くと歩みが止まります。「右を見たときだけか」「頭と体幹が一緒に回るか」「めまいがあるか」を確かめます。練習では安全な立位で小さく視線・頭を動かし、短い直線歩行と組み合わせます。生活ではまず立ち止まって確認する方法を共有し、最終的に人の呼びかけに対応できるかを確かめます。

例2|後ろの足が箱に当たる人
先行脚は越えますが、後続脚が接触します。後続脚の屈曲だけでなく、先に着いた脚へ体重を受け渡せているか、障害物からの距離を保てるかを観察します。練習は低い障害物や床の印から開始し、必要に応じて支持を設けます。検査と練習の高さを混同せず、生活では玄関や敷居で同じ問題が出るかを確認します。

例3|回った後に止まれない人
方向転換後も小刻みに足が出て、停止位置が定まりません。回転方向、回転前の速さ、最後の一歩の位置を記録します。練習ではゆっくりした方向転換と停止を分け、安定してから連続動作へつなげます。狭いトイレや椅子の前で、必要な手すり・支持位置も調整します。

記録は「方向転換が苦手」で終わらせず、「右回りの停止後に3歩追加、左回りは停止できる」のように書きます。次の評価者も同じ場面を再現しやすくなります。

10|初回から再評価までの進め方

初回:「どこで困るか」を聞き、検査条件をそろえて実施します。合計点に加え、低得点項目と生活の困りごとが重なる部分を一つ選びます。

介入:選んだ課題について、支持、速度、距離、視線など一つずつ条件を調整し、何を変えると安定するかを確認します。検査中に繰り返し練習して良い点だけを採用する方法とは分けます。

生活で確認:屋内廊下だけでなく、必要な場所で観察します。駅へ行きたい人なら階段や人の動き、家庭内で困る人なら狭い方向転換や足元の障害物が確認対象になります。

再評価:同じ測定条件で項目別得点と合計点を比較し、介助量、転倒・つまずき、外出への自信も聞きます。点数だけが上がり、生活上の不安が残るなら、その場面を次の課題にします。

11|PDF臨床記録ノートと、正式な採点手順

配布PDFは、10項目の点数と観察、測定条件、再評価、生活目標をまとめるSTROKE LAB独自の記録補助票です。全採点基準を再配布する公式日本語版ではありません。採点時はANPTの公開プロトコルを併用してください。

臨床記録ノート PDFを開く

ANPTの実施・採点プロトコル(英語PDF)を開く

日本語の理解を補う資料として、日本めまい平衡医学会誌の解説・原著にもリンクしています。翻訳・改変された表は、英語原票と細部が異なる場合があります。使用した版を記録することで、施設内の判定のずれを減らせます。[8], [9]

12|参考文献・確認した資料

  1. Wrisley DM, et al. Reliability, internal consistency, and validity of data obtained with the functional gait assessment. Physical Therapy. 2004;84:906–918. 原著抄録。
  2. Academy of Neurologic Physical Therapy. Core Measure: Functional Gait Assessment (FGA). 公開実施・採点プロトコル。
  3. Wrisley DM, Kumar NA. Functional gait assessment: concurrent, discriminative, and predictive validity in community-dwelling older adults. Physical Therapy. 2010;90:761–773. 原著抄録。
  4. Beninato M, Fernandes A, Plummer LS. Minimal clinically important difference of the functional gait assessment in older adults. Physical Therapy. 2014;94:1594–1603. 原著抄録。
  5. Lin JH, et al. Psychometric comparisons of 3 functional ambulation measures for patients with stroke. Stroke. 2010;41:2021–2025. 原著抄録。
  6. Van Bloemendaal M, et al. Validity and reproducibility of the Functional Gait Assessment in persons after stroke. Clinical Rehabilitation. 2019;33:94–103(オンライン公開2018年). 原著抄録。
  7. Ng SSM, et al. Psychometric properties of functional gait assessment in people with stroke. BMC Neurology. 2026;26:83. 公開本文。
  8. 荻原啓文ほか.慢性期めまい平衡障害患者における転倒リスクの評価~複数の評価ツールによる検討~.Equilibrium Research. 2020;79:218–229. 日本語評価表は一部改変の記載あり。
  9. 跡見友章,松村将司.2.転倒およびバランス能力に関する質問紙法およびパフォーマンステスト.Equilibrium Research. 2024;83:461–472. 日本語解説。
  10. Role of the Functional Gait Assessment in Validating Item Difficulty Hierarchy and Fall Risk for Idiopathic Normal Pressure Hydrocephalus. 2025. 原著抄録。
  11. Moore JL, et al. A Core Set of Outcome Measures for Adults With Neurologic Conditions Undergoing Rehabilitation: A Clinical Practice Guideline. J Neurol Phys Ther. 2018;42:174–220.
  12. Shirley Ryan AbilityLab. Functional Gait Assessment. RehabMeasures Database. 実施環境・補助具・評価者位置の確認。

資料確認:2026年10月29日。数値は対象・研究目的を併記。イラストは説明用のオリジナルで、縮尺や器具寸法の測定図ではありません。手順はANPT公開資料、数値は原著抄録・公開本文に照合しました。

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