パーキンソン病の栄養と食事|良い食べ物・避けるべき食品を徹底解説
レボドパが効かない午後は、食事で変えられるのか。
パーキンソン病(PD)の栄養管理は、薬物療法・リハビリと並ぶ柱です。この記事では「何を・いつ・どのように食べるか」を整理します。評価の採点基準から多職種連携まで、明日の臨床で使える形にまとめました。
— パーキンソン病の栄養管理・食事療法の全体像を動画で確認できます
要点5項目。
臨床現場でこう出会う。
68歳・男性。PD診断から6年の生活期(外来)。重症度はHY(Hoehn-Yahr重症度分類)3度。主訴は「昼食後のオフがひどい」「半年で3kg減った」です。
初回評価:体重58kg(半年前61kg)、BMI 20.5。MNA-SFは10点で低栄養リスク。タンパク質摂取は60g/日(1.0g/kg)。ホモシステイン18μmol/L。嚥下機能は問題なし。3日間の食事記録で高タンパクの昼食直後にレボドパを服用していました。
このような場面は珍しくありません。「今日は動きが悪い」の裏に食事と服薬の時間関係が隠れています。患者さんと最も長く接するセラピストが、最初に気づける立場にいます。本記事では、この症例を手がかりに評価と介入を整理します。経過は第9章で紹介します。
つまり臨床では:運動症状の変動を見たら、まず食事と服薬の時刻を聞きます。
定義と疫学。
PDの栄養管理とは、食事の内容・時間・形態を病態と服薬に合わせて調整することです。単なる「バランスの良い食事」とは目的が違います。薬効の安定と合併症の予防が主なねらいです。

— PDで栄養管理が重要となる5つの理由を1枚にまとめた図
・低栄養:0〜24%、低栄養リスク:3〜60%(Sheard 2011、系統的レビュー)
・嚥下障害:自覚35%、客観的検査82%(Kalf 2012、メタ分析)
・ビタミンD不足(30ng/mL未満):55%(Evatt 2008、PD群n=100)
・体重減少:既存の総説では約50〜60%が経験するとされます(Poewe 2017)
栄養がPDの経過に関わる3つの経路
レボドパは食事の内容と時間に敏感です。タンパク質と重なると吸収が落ち、オフが延びます。薬の量を変えずに改善できる余地があります。
体重減少・骨粗鬆症・嚥下障害・便秘・口腔乾燥が重なります。転倒、骨折、誤嚥性肺炎へつながるため、早期の把握が重要です。
抗酸化食品や食物繊維が病態に良い影響を与える可能性があります。ただし根拠の多くは観察研究と基礎研究です。患者さんへの説明では断定を避けます。
つまり臨床では:嚥下障害は自覚が乏しい前提で、訴えを待たずにスクリーニングします。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、脳神経疾患・整形外科疾患を専門とする自費リハビリ施設です。神経疾患に精通した理学療法士・作業療法士が担当します。初回20分の無料体験があり、保険リハビリとの併用も可能です。
メカニズム:競合吸収とホモシステイン。
高タンパク食 → 消化でアミノ酸が放出 → 輸送体LAT1(大型中性アミノ酸の運び役)で競合 → レボドパ血中濃度の低下 → オフ時間の延長。この競合は小腸だけでなく、血液脳関門でも起こります。

— レボドパとタンパク質の競合吸収と、服薬タイミングの関係
「植物性なら大丈夫」は正確ではない
競合の強さを決めるのは、動物性か植物性かではありません。分岐鎖アミノ酸(ロイシンなど)の量です。大豆やレンズ豆も相当量を含みます。タンパク質食品は種類を問わず、服薬と時間をずらすのが原則です。
長期服用で上がるホモシステイン
ホモシステインは、アミノ酸代謝の途中でできる物質です。レボドパが酵素COMTで代謝されるとき、副産物として増えます。処理には葉酸・ビタミンB12・B6が必要です。高値は血管障害や認知機能低下との関連が報告されています。目安は15μmol/L以上です。

競合吸収 [観察研究]:Nutt JGら(N Engl J Med, 1984, n=9)。高タンパク食と中性アミノ酸の負荷で、レボドパの臨床効果が低下しました。
ホモシステイン上昇 [観察研究]:Müller Tら(Neurosci Lett, 1999)、Rogers JDら(Arch Neurol, 2003, n=235)。レボドパ服用群で血中ホモシステインが有意に高値でした。
ビタミン補充 [単独RCT]:Postuma RBら(Neurology, 2006, n=35)。葉酸とビタミンB12の補充でホモシステインが低下しました。
腸内細菌(基礎研究):Maini Rekdal Vら(Science, 2019)。腸内細菌Enterococcus faecalisがレボドパを腸内で分解します。Sampson TRら(Cell, 2016)はマウスで腸内細菌と運動障害の関連を示しました。薬効の個人差を説明する一因と考えられています。
つまり臨床では:「食後に効きが悪い」は競合吸収を第一に疑い、食事記録で確かめます。
鑑別:食後の不調を見分ける。
「食後に調子が落ちる」原因は競合吸収だけではありません。似た訴えでも対応する職種と手段が変わります。下の表で当たりをつけ、主治医へ報告します。食後低血圧の定義は、食後2時間以内の収縮期20mmHg以上の低下です(Jansen & Lipsitz, Ann Intern Med, 1995, 総説)。
| 鑑別する状態 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| タンパク質との競合吸収 | 食後に動きが悪い | 高タンパク食の日だけ悪化。低タンパク食の日は効く | 3日間食事記録、症状日誌 |
| ウェアリングオフ(薬効時間の短縮) | オフ時間の延長 | 食事内容に関係なく、次の服薬前に規則的に切れる | 症状日誌、MDS-UPDRS Part IV |
| 胃排出遅延・便秘 | 薬が効くまで遅い | 早期満腹感、膨満感、排便回数の低下を伴う | 排便記録、主治医による消化管評価 |
| 食後低血圧 | 食後にふらつく、動けない | めまい・眠気が主体。固縮や振戦は変わらない | 食前・食後の血圧測定、起立試験 |
| 抑うつ・アパシーによる食欲低下 | 食事量と体重の減少 | むせはない。意欲や興味の低下が食事以外にも及ぶ | GDS-15などの抑うつ尺度 |
評価尺度と採点基準。
栄養状態は病期や薬の変更で変わり続けます。セラピストはスクリーニングを担い、基準を超えたら専門職へつなぎます。中心になるのはMNA-SF(簡易栄養状態評価:6項目・14点満点)です。5分以内で実施できます。
採点基準の一覧(MNA-SF全6項目+関連指標)
| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| MNA-SF A:食事量の減少(過去3ヶ月) | 0=著しい減少/1=中等度の減少/2=減少なし | 合計14点満点 12〜14点:良好 8〜11点:低栄養のおそれ 0〜7点:低栄養 |
食欲低下、嚥下・咀嚼の問題を反映 |
| B:体重減少(過去3ヶ月) | 0=3kg以上/1=わからない/2=1〜3kg/3=なし | PDでは最も早く動く項目 | |
| C:移動能力 | 0=寝たきり・車椅子/1=離床可能だが外出不可/2=自由に外出 | 活動量と買い物・調理能力の目安 | |
| D:精神的ストレス・急性疾患(過去3ヶ月) | 0=あり/2=なし | 入院や肺炎の後は再評価する | |
| E:神経・精神的問題 | 0=強度の認知症またはうつ/1=中等度の認知症/2=問題なし | PDの非運動症状と重なる | |
| F1:BMI(測定不可ならF2:下腿周囲長) | F1:0=19未満/1=19〜21未満/2=21〜23未満/3=23以上 F2:0=31cm未満/3=31cm以上 |
立位困難例は下腿周囲長で代用 | |
| EAT-10(嚥下の自記式質問票) | 10項目×各0〜4点(0=問題なし、4=ひどく問題)。合計40点 | 3点以上 | 嚥下障害の疑い。STへ精査を依頼 |
| 体重変化 | 月1回、同条件で測定 | 1ヶ月2kg以上、または6ヶ月5%以上の減少 | 早期介入のサイン。管理栄養士へ紹介 |
| BMI | 体重(kg)÷身長(m)² | 18.5未満 | 低体重。目標は18.5〜24.9 |
| 血清アルブミン | 血液検査(3〜6ヶ月ごと) | 3.5g/dL以下 | 低栄養の参考所見。炎症でも下がる点に注意 |
| 血中ホモシステイン | 血液検査 | 15μmol/L以上 | 高値。葉酸・B12の確認を主治医へ相談 |
| 25-OH-ビタミンD | 血液検査 | 20ng/mL未満:欠乏 30ng/mL未満:不足 |
骨折予防の観点で補充を医師が判断 |
| 食後血圧 | 食前と食後(30〜60分)に同じ姿勢で測定 | 収縮期20mmHg以上の低下 | 食後低血圧。立位練習は延期する |
MNA-SF [観察研究]:Rubenstein LZら(J Gerontol A, 2001)。完全版MNAとの相関はr=0.945でした。カットオフ(12〜14/8〜11/0〜7)はKaiser MJら(J Nutr Health Aging, 2009)で検証されています。
EAT-10 [観察研究]:Belafsky PCら(Ann Otol Rhinol Laryngol, 2008, n=482)。内的整合性はCronbach α=0.96、再検査信頼性は0.72〜0.91。3点以上を異常としています。
MCID(臨床的に意味のある最小変化量):MNA-SF・EAT-10ともに、PDでの確立した値は見当たりません。点数の変化だけでなく、体重と食事量を合わせて判断します。
つまり臨床では:体重とMNA-SFを定点観測し、基準を超えたらその日のうちに報告します。
介入のエビデンス。
介入は「いつ食べるか」から始めます。効果が早く、確かめやすいからです。食事内容の見直しはその次です。服薬の変更は医師、食事計画は管理栄養士の領域です。セラピストは観察と報告で支えます。
・食前30〜45分の空腹時、または食後30〜60分以上空けて服用
・水は約200mL。牛乳やヨーグルトでの服用は避ける
・吐き気には無塩クラッカー2〜3枚やバナナ半分を添える
・鉄剤とカルシウム剤はレボドパと2時間以上空ける

PRDは、日中のタンパク質を抑えて夕食に集める方法です。体重60kgの例を示します。
・1日の目標:72〜90g(1.2〜1.5g/kg)
・朝食・昼食:各7〜10g(ごはん、麺、野菜、果物中心)
・夕食:55〜76g(魚、肉、卵、大豆、乳製品)
総量は減らしません。必ず管理栄養士と計画します。
地中海食は、野菜・魚・オリーブオイル・全粒穀物が中心の食事です。MIND食はその神経疾患向けの改良版です。
・毎食:野菜、全粒穀物、オリーブオイル大さじ1〜2/日
・青魚:週3〜4回(夕食に)
・ナッツ:30g/日、ベリー類:100〜200g/日
・発酵食品と食物繊維20〜25g/日、水分1.5〜2L/日

・少量頻回食:1日5〜6回に分ける
・食前に水200〜250mLを飲む
・食後30〜45分は座位を保ち、急に立たない
・一度に多い炭水化物、熱い飲食物、アルコールを避ける
・塩分は一律に減らさず、主治医の指示を確認する

食品の交通整理
| 区分 | 食品 | 伝え方のポイント |
|---|---|---|
| 積極的に | 緑黄色野菜、ベリー類、オリーブオイル、ぬか漬け・味噌、ごぼう・玉ねぎ・バナナ、全粒穀物 | 低タンパクなので服薬時刻を気にせず摂れる。葉物は葉酸の供給源 |
| タイミングに注意 | 肉、魚、卵、牛乳・ヨーグルト・チーズ、大豆・豆腐・納豆、ナッツ | 「食べない」ではなく「ずらす」。夕食中心に計画する |
| 適量に | コーヒー・緑茶(1〜2杯/日)、塩分 | 3杯以上は脱水・不眠の恐れ。午後3時以降は控える。塩分は血圧の状態で個別に判断 |
| 控える | 超加工食品、加工肉、砂糖入り飲料、揚げ物、アルコール | アルコールは脱水と転倒のリスク。可否は主治医に確認 |
| 薬剤師に確認 | グレープフルーツ、鉄・カルシウムのサプリ、高用量ビタミンB6(50mg/日以上) | グレープフルーツは併用薬との相互作用が問題。B6はレボドパ単剤の場合のみ注意。配合剤では通常問題なし |
押さえておきたい栄養素と目安量
| 栄養素 | 1日の目安 | 食品と注意点 |
|---|---|---|
| 葉酸 | 240μg | ほうれん草、ブロッコリー、枝豆、アスパラガス |
| ビタミンB12 | 2.4μg | しじみ、あさり、さんま、卵、のり。高齢者は吸収が落ちやすい |
| ビタミンB6 | 1.2〜1.4mg | まぐろ、かつお、バナナ、アボカド。食事量なら問題なし |
| ビタミンD | 食事+日光浴30分 | サーモン、卵黄、干しシイタケ。欠乏時の補充は医師が判断 |
| カルシウム | 700〜800mg | 小魚、乳製品、ひじき。サプリはレボドパと2時間以上空ける |
| EPA+DHA | 1,000〜2,000mg | サバ、イワシ、サーモン。缶詰でもよい |
| ビタミンE・C | E:6〜7mg/C:100mg以上 | アーモンド、アボカド、赤ピーマン、キウイ。高用量サプリは勧めない |
PRD [SR/MA]:Cereda Eら(Mov Disord, 2010)の系統的レビュー。症状変動のある患者でオフ時間の改善が報告されています。体重減少への注意も指摘されています。
タンパク質量 [複数の観察研究にもとづく提言]:Bauer Jら(J Am Med Dir Assoc, 2013)。慢性疾患をもつ高齢者に1.2〜1.5g/kg/日を推奨しています。
地中海食 [観察研究]:Alcalay RNら(Mov Disord, 2012, PD 257名・対照198名)。遵守度が高いほどPDのオッズが低値でした。Metcalfe-Roach Aら(Mov Disord, 2021, PD 167名)はMIND食の遵守と発症年齢の遅さの関連を報告しました。
地中海食 [単独RCT]:Paknahad Zら(Complement Ther Med, 2020, n=80)。10週間の地中海食で認知機能スコアが改善しました。
プロバイオティクスと便秘 [複数RCT]:Barichella Mら(Neurology, 2016, n=120)、Tan AHら(Neurology, 2021, n=72)。いずれも4週間の毎日摂取で排便回数が増えました。
高用量サプリは無効 [単独RCT]:CoQ10はQE3試験(Beal MFら, JAMA Neurol, 2014, n=600)。1,200・2,400mg/日で進行抑制を示せませんでした。ビタミンEはDATATOP試験(Parkinson Study Group, N Engl J Med, 1993, n=800)。2,000IU/日で効果を認めませんでした。
コーヒー [観察研究]:Ross GWら(JAMA, 2000, n=8,004, 追跡30年)。摂取量が多いほどPD発症率が低値でした。発症後の治療効果を示すものではありません。
ポリフェノール、糞便微生物移植、間欠的断食は研究段階です。糞便微生物移植は症例報告レベル(Huangら, 2019)にとどまります。断食は体重減少のリスクがあり、一般には勧めません。
つまり臨床では:まず時間をずらし、効果を症状日誌で確かめてから次の手を考えます。

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多職種連携と環境調整。
栄養の問題は一職種では解決しません。総説でも多職種での包括的管理が推奨されています(Barichella Mら, Mov Disord, 2009, 総説)。セラピストの役割は「最初に気づき、正しい相手に渡す」ことです。
口腔から栄養不良への連鎖を断つ
口腔の問題は、次の順で栄養不良につながります。早い段階で気づけば止められます。
食事環境で整えること
報告は「事実+時刻」で伝えると動いてもらいやすくなります。たとえば「昼食は12時、服薬は12時10分、13時から動作が緩慢でした」と書きます。
「食事指導は栄養士の仕事」と線を引かないでください。気づく役目は、毎回会っているあなたにしかできません。
| 職種 | 評価項目 | 主な介入内容 | 連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 運動症状の日内変動、食後血圧、体重、筋力 | オン時間に合わせた運動設定。食後は座位課題から開始 | 変動と食事時刻の関係を医師・管理栄養士へ報告 |
| OT | 食事動作、上肢機能、調理・買い物、歯磨き動作 | 自助具と食器の選定、食事姿勢の調整 | 口腔ケア用具を歯科と相談。家族へ介助方法を共有 |
| ST | EAT-10、嚥下スクリーニング、嚥下造影の所見 | 食形態ととろみの決定、嚥下練習、姿勢指導 | 食形態の変更を管理栄養士・看護師へ即日共有 |
| 看護師 | 食事摂取量、服薬時刻、血圧、排便、口腔内 | 服薬管理、口腔ケア、食事介助 | 服薬と食事の時刻記録をチームで使える形に残す |
| 医師 | 診断、病期、血液検査、血圧、薬剤の評価 | 処方と服薬時刻の調整、ビタミン補充、塩分の指示 | セラピストからの変動報告を処方調整の材料にする |
| MSW | 生活環境、介護力、経済面、利用中のサービス | 配食サービスや訪問歯科などの社会資源の調整 | 退院前に食事の準備者と方法を確認する |
| 管理栄養士 | 3日間食事記録、摂取エネルギー・タンパク質量 | PRDの計画、エネルギー密度の調整、献立提案 | 体重推移とMNA-SFを全職種で共有 |
| 歯科 | 口腔乾燥、むし歯、歯周病、義歯の適合 | 治療、義歯調整、専門的口腔ケア | 噛める範囲をSTへ伝え、食形態に反映する |
つまり臨床では:気づいた変化を時刻つきで記録し、誰に渡すかを決めておきます。
つまずきポイントと臨床判断のコツ。
栄養の失敗は「一般論をそのまま当てはめる」ことで起こります。高齢者の常識がPDでは逆になる場面があるからです。たとえば飲水は自律神経障害のある人で血圧を上げます(Jordan Jら, Circulation, 2000, 観察研究、480mLの飲水)。背景の病態を踏まえて判断します。
ほかにも気をつけたい4つの場面
すぐSTへつなぐ嚥下の危険サイン
迷ったら「いつ食べて、いつ飲んで、いつ動けなくなったか」を紙に書いてもらってください。3日分あれば、たいていの傾向は見えてきます。
自分で食事や薬を変える提案はしません。見えた事実を主治医と管理栄養士へ渡すのが、私たちの仕事です。
予後とゴール設定。
栄養のゴールは病期で変わります。初期は習慣づくり、中期は薬効の安定、進行期は安全な摂取が中心です。嚥下障害は進行とともに増えます(Kalf 2012 [SR/MA])。早い段階から先を見て準備します。
| 病期 | 栄養のゴール | 重点 | 食形態の目安(学会分類2021) |
|---|---|---|---|
| HY 1〜2(軽度) | 習慣づくりと基準値の把握 | 服薬タイミングの指導、体重とBMIの記録、MNA-SF(6ヶ月ごと)、骨密度の確認 | コード3〜4、普通食 |
| HY 2.5〜3(中等度) | 薬効の安定と体重維持 | PRDの検討、EAT-10、食後低血圧対策、歯科受診 | コード2〜3、とろみの検討 |
| HY 4〜5(重度) | 誤嚥性肺炎の予防と必要量の確保 | 口腔ケアの徹底、エネルギー密度の強化、経腸栄養の検討、意思決定支援 | コード0〜2 |
・医師:服薬タイミングの再指導、葉酸・B12・ビタミンD3の補充
・管理栄養士:タンパク質を75g/日(1.25g/kg)へ増量し、PRDを導入
・PT:服薬60分後からを主な運動時間に再設定
・結果:午後のオフがほぼ消失。体重58→60kg。ホモシステイン18→13μmol/L
1例の経過であり、同じ結果を保証するものではありません。
・主訴:食事に1時間以上、食後のむせ、3ヶ月で4kg減、口の乾き
・評価:EAT-10は16点、MNA-SFは8点、アルブミン3.0g/dL。食後45分で収縮期24mmHg低下。義歯不適合と多発むし歯
・対応:コード2食と中間とろみ(ST)。1日5回の少量頻回食で1,600kcal・タンパク質78g(管理栄養士)。義歯調整(歯科)。食後45分は座位での上肢運動(PT)
・12週後:体重+3kg、アルブミン3.5g/dL。誤嚥性肺炎の発症なし
つまり臨床では:病期が進む前に体重・嚥下・口腔の基準値を取り、変化を比べられるようにします。
よくある質問。
いいえ。調整するのは量ではなくタイミングです。目標量は体重1kgあたり1.2〜1.5g/日です。レボドパの服用と30〜60分以上ずらして摂ります。量を減らすとサルコペニアや骨折のリスクが上がります。
血中ホモシステインが上がりやすくなります。15μmol/L以上が高値の目安です。葉酸・ビタミンB12・B6を食事で確保します。測定や補充の判断は主治医に相談します。
目安は1日1〜2杯です。3杯以上は脱水・不眠・起立性低血圧の悪化につながる恐れがあります。午後3時以降は睡眠への影響を避けるため控えます。発症リスクとの関連は観察研究の結果で、治療効果を示すものではありません。
食後30〜60分以内の症状なら食後低血圧を疑います。食前後の血圧を測り、収縮期が20mmHg以上下がるかを確認します。少量頻回食(1日5〜6回)、食前の飲水、食後30〜45分の座位保持が対策です。症状が明らかな場合は主治医へ報告します。
和食をベースに少しずつ置き換えます。油はオリーブオイルに、白米の一部は玄米や麦に替えます。青魚を週3〜4回、発酵食品と緑葉野菜を毎日、間食は無塩ナッツにします。完璧を求めず、続けられる変更から始めます。
1ヶ月で2kg以上または6ヶ月で5%以上の体重減少、MNA-SF 11点以下が目安です。タンパク質再配分食の検討時、嚥下障害の出現時、腎臓病や糖尿病の合併時も紹介します。迷った時点で早めに相談するのが安全です。
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代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)