パーキンソン病の診断を受け入れられない|原因と対策・自宅でできる工夫
認められなくて、当たり前です。
パーキンソン病だと言われても、どうしても信じられない。そんな気持ちを持つのは、決して弱さではありません。受け入れがたさには、心の反応だけでなく、病気そのものが関わっていることもあります。原因を知り、今日から自宅でできる小さな工夫を整理します。

「まだ、信じられない」。
診断からしばらく経つのに、本人は病名を口にしようとしない。リハビリや薬の話になると、話をそらしてしまう。ご家族からは、そんな戸惑いの声をよく聞きます。本人自身も、頭ではわかっていても心がついていかない、というもどかしさを抱えていることが少なくありません。
大切なのは、「受け入れられないこと」自体を問題視せず、その背景にある理由を知ることです。
パーキンソン病は、体の動きに影響する病気であると同時に、気持ちのありように直接関わることが少なくない病気でもあります。診断を受け入れられない背景には、多くの場合、いくつもの要因が重なっています。まずはそのしくみを知ることから始めましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
受け入れられない、4つの原因。
「受け入れられない」とひとくくりにされがちですが、その背景は一つではありません。心の反応、生活への不安、病気そのものの影響、周囲との関係。この4つの角度から見ていくと、対応のヒントが見えてきます。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 心を守る自然な反応 | 大きな衝撃を一度に受け止めきれず、一時的に否認するのは心の防御反応 |
| 将来への不安 | 仕事、家族の役割、これからの生活が見えないことへの恐れ |
| 病気そのものの影響 | 脳内の変化による気分の落ち込みや意欲低下が、切り替えを難しくすることがある |
| 周囲との温度差 | 家族が先に先回りして動くことで、本人が向き合う機会を持てないこともある |
なかでも見落とされやすいのが、病気そのものが、受け入れる力そのものに影響しうるという点です。次の章で、この視点を詳しく見ていきます。

パーキンソン病は、体の動きだけでなく、気分や意欲に関わる脳内の伝達物質にも影響します。そのため、診断の衝撃とは別に、うつ症状、不安、アパシー(やる気の出にくさ)が、病気の経過の中で表れることがあります。
これらが強いと、「認めたくない」というより「事実と向き合う気力そのものが湧きにくい」状態になっていることもあります。本人の意志の弱さではなく、病気の症状の一つとして理解することが、本人にとってもご家族にとっても救いになります。気になる場合は、遠慮なく主治医に伝えてください。
STROKE LABの視点:「受け入れる」の本当の意味。
「受け入れる」というと、病気を前向きに捉え、明るく振る舞うことだと思われがちです。しかし、臨床の現場で出会う多くの方を見ていると、実際はそうではありません。受け入れるとは、病気とともにある生活を、少しずつ自分のものとして扱えるようになる過程です。
よく知られる心理学の枠組みでは、大きな喪失や困難な知らせに対する心の動きは、否認、怒り、取り引き、落ち込み、そして受容へと段階的に進むとされます。ただし実際には、一直線には進まず、行きつ戻りつしながら進むことがほとんどです。調子の良い日に「大丈夫」と思えても、翌日には落ち込む。それは後退ではなく、自然な過程の一部です。

自宅でできる、3つの工夫。
気持ちの整理は、一度の会話や決意で終わるものではありません。毎日の小さな積み重ねが、少しずつ心の置き場所を作っていきます。今日から試せる3つの工夫を紹介します。
1. 気持ちをノートに書き出す。頭の中だけで抱えていると、不安は膨らみやすくなります。「今日感じたこと」を短くでよいので書き出すと、気持ちが少し外に出て、客観的に眺められるようになります。誰かに見せる必要はありません。
2. 情報との付き合い方を、自分で決める。病気について調べすぎると、かえって不安が強まることがあります。信頼できる情報源を一つ二つに絞り、「今日はここまで」と量とタイミングを自分で決めることで、情報に振り回されにくくなります。
3. 「できていること」に、目を向ける。できなくなったことばかりに気持ちが向きやすい時期こそ、今日できた小さなこと(着替えができた、散歩に出られた)を意識的に数えてみてください。小さな達成の積み重ねが、生活の手応えを取り戻す助けになります。
加えて、規則正しい生活リズムと軽い運動は、気分の安定にもつながりやすいとされています。無理のない範囲で体を動かす習慣は、心の面でも支えになります。体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。また、同じ病気を経験している方々とつながる患者会も、「自分だけではない」と感じられる貴重な場になります。
パーキンソン病に関する国内外の総説では、うつ症状や不安、アパシーといった非運動症状が、経過のさまざまな時期に一定の割合でみられることが報告されています。これらは診断への心理的な反応とは別に、病気そのものの症状として生じうるとされています。
限界:報告される頻度は研究によって幅があり、個人差も大きい領域です。気分の変化がすべて病気の症状というわけではなく、生活状況や性格などほかの要因も関わります。気になる症状があれば、自己判断せず主治医に相談してください。

脳リハ.comのYouTubeでは、自宅でできる体操を配信しています。気持ちが沈みがちなときこそ、無理のない範囲で体を動かしてみてください。
支えとなる専門職と、相談先。
気持ちのつらさは、一つの窓口だけで抱える必要はありません。それぞれの専門職が、違う角度から支えてくれます。
| 相談先 | どんなときに |
|---|---|
| 主治医(神経内科) | 気分の落ち込みや意欲低下など、病気の症状として気になるとき |
| 精神科・心療内科 | つらさが長く続く、眠れない日が続くなど、心の状態を専門的にみてほしいとき |
| 臨床心理士・カウンセラー | じっくり気持ちを言葉にする時間がほしいとき |
| 作業療法士などリハビリスタッフ | 生活の中でできることを増やし、手応えから気持ちを立て直したいとき |
| 患者会・家族会 | 同じ経験をした人の話を聞きたい、孤立感を和らげたいとき |
受け入れがたさは、言葉だけで解消しにくいことがあります。私たちが大切にしているのは、生活の中の「できた」を一緒に見つけ、積み重ねていく関わり方です。大きく3つの方向から組み立てます。
1. 小さくても確実な成功体験。難しすぎない課題を設定し、「できた」という感覚を積み重ねることで、生活への手応えを取り戻していきます。
2. 困っている場面そのものを題材にする。署名、着替え、散歩など、実際に困っている生活場面を練習に取り入れ、本人の言葉で目標を一緒に決めていきます。
3. ご家族への情報共有。本人の気持ちの状態や、病気そのものが関わっている可能性について、ご家族にも丁寧にお伝えし、無理な励ましではなく寄り添い方を一緒に考えます。
効果には個人差があり、進行や体調によって変動します。心の状態が強くつらいときの治療は、精神科・心療内科や主治医の領域です。私たちはあくまで、生活と運動の側から支えます。

よくある質問。
Q. パーキンソン病と診断されて、まだ受け入れられません。これは普通のことですか?
Q. 本人がパーキンソン病であることを認めず、治療や運動を拒否します。家族はどうすればよいですか?
Q. 受け入れられない気持ちは、病気そのものが関係していることもありますか?
Q. 自宅でできる、気持ちを整理する工夫はありますか?
Q. 「受け入れる」とは、病気を前向きに捉えることですか?
Q. 気持ちのつらさは、誰に相談すればよいですか?
気持ちのご相談も、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。体の機能だけでなく、診断後の気持ちの揺れにも向き合いながら、生活の中の小さな成功体験を一緒に積み重ねていきます。ご本人の言葉を大切にし、ご家族への情報共有や関わり方の相談にも応じます。心の状態が強くつらいときの治療は主治医・精神科の領域を尊重し、私たちは生活と運動の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
それも、大切な過程です。

診断を受けたご本人、そしてそれを支えるご家族。どちらにとっても、パーキンソン病という言葉は重く響きます。「早く受け入れて、前を向いてほしい」と願う気持ちも、「そんなに簡単じゃない」という戸惑いも、どちらも自然なものだと、臨床の現場で何度も教えられてきました。
受け入れることを急がなくていいと、私たちは思っています。今日できたことを一つ見つける。それだけで、生活は少しずつ、自分のものに戻っていきます。
気持ちのことでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。体のリハビリと同じように、時間をかけて、一緒に向き合っていきます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。個々の研究の詳細は、AIによる要約であり誤りを含む可能性があるため、正確な内容は原著や主治医にご確認ください。気持ちのつらさが強い、または長く続く場合は、自己判断せず必ず医療専門職にご相談ください(最終確認日:2026年9月15日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Kübler-Ross E. On Death and Dying. 1969.(喪失や困難な知らせへの心理的段階の枠組みとして、第3章で参考にした一般的な理論の出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)