パーキンソン病で電動ベッドは必要か|原因と対策・自宅でできる工夫
道具の前に、原因を見ましょう。
「そろそろ電動ベッドを」とすすめられて、迷っている方へ。パーキンソン病で寝返りや起き上がりが難しくなる原因は一つではありません。原因を整理し、自宅の工夫を試したうえで、それでも難しいときに道具で支える。その順番と考え方を整理します。

「そろそろ電動ベッドを」と、言われた。
パーキンソン病のご家族を介護されている方から、こうした相談をよく受けます。夜中に寝返りが打てず助けを求める、朝どうしても一人で起き上がれない、介助する側の体も限界に近づいている——。ケアマネジャーから電動ベッドをすすめられ、必要なのか、大げさなのか、判断がつかないという声も多く聞きます。
大切なのは、道具の前に、何がその人の動きを妨げているのかを、一つひとつ確かめることです。
パーキンソン病では、寝返りや起き上がりが少しずつ難しくなることがあります。ただし、その背景には一つではなく、いくつもの症状が重なっていることがほとんどです。原因を分けて考えることで、電動ベッド以外にもできる工夫が見えてきます。まずはリハビリの全体像を知りたい方はリハビリ完全ガイドもあわせてご覧ください。
寝返り・起き上がりが難しくなる、7つの背景。
「ベッドで動きにくい」とひとくちに言っても、パーキンソン病ではその中身がさまざまです。原因によって、有効な対策も変わります。代表的な7つを整理します。
| 背景にある症状 | ベッドで起こること |
|---|---|
| 動作緩慢 | 寝返りや起き上がりの一連の動きが小さく・遅くなり、途中で止まってしまう |
| 筋強剛 | 体幹や股関節がこわばり、体をひねる・丸める動きに大きな力と時間が必要になる |
| 姿勢反射障害 | 起き上がる瞬間にバランスを立て直しにくく、転倒への不安が動作をさらに慎重・緩慢にする |
| 夜間のオフ症状 | 睡眠中に薬の効果が薄れ、日中よりも体が動かしにくい「夜間無動」の状態になることがある |
| レム睡眠行動障害 | 夢の内容にあわせて手足が動いたり大声を出したりし、本人も家族も睡眠が妨げられる |
| 起立性低血圧 | 急に上体を起こすと血圧が下がり、めまいやふらつきで座位保持が難しくなる |
| 夜間頻尿 | 夜に何度もトイレへ起きる必要があり、そのたびに動きにくい動作を繰り返すことになる |
こうして分けてみると、「動けない」の中身は一様ではないとわかります。筋肉のこわばりが主なら体の使い方の工夫が効きますし、夜間のオフ症状が強いなら服薬タイミングの相談が先になります。次の章から、電動ベッドとの向き合い方を整理していきます。

STROKE LABの視点:電動ベッドは「最後の一手」でよい。
電動ベッドは、背もたれや高さを機械の力で調整できる、頼りになる道具です。ただし、「動けない原因」を確かめずに導入すると、本来引き出せたはずの本人の動きまで機械任せにしてしまうことがあります。私たちがすすめる順序は、次の3段階です。
第1段階:原因を分ける。日中も夜間も動きにくいのか、夜だけ強く動きにくいのか。ふらつきが主なのか、こわばりが主なのか。まずここを見極めます。
第2段階:環境と動作の工夫を試す。シーツの素材、手すりの位置、起き上がりの手順など、お金をかけずに試せる工夫から始めます。
第3段階:それでも難しい場面に、道具で支える。工夫を重ねても一人での起居動作や介助の負担が解消しない場合に、電動ベッドや周辺の福祉用具を検討します。
この順序を守ることで、「本人の動きを最後まで引き出しながら、無理のない範囲を道具で補う」というバランスが取れます。電動ベッドを入れること自体は、決して悪いことでも、あきらめでもありません。次の章では、道具を使う前に試せる具体的な工夫を紹介します。

自宅でできる工夫。
原因ごとに、今日から試せる工夫があります。すべてを一度に行う必要はありません。困っている場面に近いものから、少しずつ試してみてください。
摩擦を減らす。シルキーな肌触りのシーツやパジャマに変えるだけで、寝返りに必要な力が減ることがあります。逆にタオル地は摩擦が強く、寝返りを妨げやすい素材です。
つかまる場所をつくる。ベッドの片側を壁につける、突っ張り棒タイプの手すりを設置するなど、体を引き上げる支点があると起き上がりやすくなります。
起き上がりの手順を体で覚える。横向きになる、ひざを立てる、腕で支えながら上体を起こす、という一連の流れを、あわてず一つずつ区切って練習します。
起き上がる前に一呼吸おく。起立性低血圧が疑われる場合は、上体を起こしてから少し待つ、ゆっくり時間をかけて座位になるだけでも、ふらつきが軽くなることがあります。
服薬タイミングを相談する。夜間のオフ症状が強い場合、就寝前後の薬の調整で夜間の動きやすさが変わることがあります。自己判断で量や時間を変えず、必ず主治医に相談してください。
日中に体を大きく動かしておくことも、夜間の寝返りのしやすさにつながります。体操や自主トレの内容は体操・自主トレ大全にまとめています。
パーキンソン病診療ガイドラインでは、運動療法が症状の管理やADL(日常生活動作)の維持に役立つとされており、寝返りや起き上がりといった起居動作も、動作を区切って繰り返し練習することで、動きやすさが保たれやすいという考え方が、リハビリテーションの現場で広く用いられています。
限界:効果や続けやすさには個人差があり、病期の進行によって変動します。起居動作の練習は、薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて行うものです。転倒の危険がある動作は、必ず専門家の評価のもとで行ってください。
脳リハ.comのYouTubeでは、体を大きく動かす体操を配信しています。日中の運動量を保つことは、夜間の寝返りのしやすさにもつながります。

導入のタイミングと、選び方。
工夫を重ねても、次のような状態が続く場合は、電動ベッドの導入を前向きに検討してよい時期です。夜間に一人で起き上がれない日が続く、介助する家族の体に負担が蓄積している、起き上がりの際に転倒の危険を感じる——こうしたサインが重なってきたら、無理に自宅の工夫だけで乗り切ろうとしなくて大丈夫です。
| 確認したい機能 | パーキンソン病の方に大切な理由 |
|---|---|
| 背もたれの角度調整速度 | 急に起こすと起立性低血圧でふらつきやすいため、ゆっくり角度が変わる機種が向くことがある |
| リモコンの操作性 | 指先の細かい動作がしにくい方でも押しやすい、大きめのボタン配置か確認する |
| 高さ調整の範囲 | 立ち上がりやすい高さに合わせられると、姿勢反射障害があっても転倒の危険を減らしやすい |
| 柵・手すりとの相性 | 寝返りの支えになる柵の位置が、体の使いやすい側にあるかを確認する |
電動ベッドは、条件を満たせば介護保険でレンタルできる場合があります。対象となる要介護度や、例外的に認められる条件は、制度の見直しや自治体の運用によって変わることがあります。正確な条件は、担当のケアマネジャーまたは地域包括支援センターに確認してください。福祉用具の専門相談員に自宅で試乗(試座)させてもらいながら選ぶと、実際の動きやすさを確認できて安心です。

専門リハと、受診の目安。
専門リハビリでは、寝返りや起き上がりの動作を、原因ごとに分解して練習します。こわばりが強い体幹をやわらかく使う練習、バランスを立て直す練習、起き上がりの流れを繰り返し体で覚える練習など、その人の背景に合わせて組み立てます。
また、ご家族への介助方法の指導も行います。力任せに引き上げる介助は、介助者の腰への負担が大きいだけでなく、本人の残っている力を引き出しにくくします。少ない力で、本人の動きに合わせて手伝うコツを、実際の場面で一緒に確認します。
薬の調整や、夜間のオフ症状・レム睡眠行動障害の評価は主治医・神経内科の役割です。私たちは、動作の側から生活を支えます。効果には個人差があり、病期の進行によって変動します。
受診の目安は、夜間に手足が大きく動いてけがをしそうになる、急に立ちくらみを繰り返す、寝返りや起き上がりの難しさが急に進んだ、といったときです。「年齢のせい」と自己判断せず、神経内科で原因を確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 電動ベッドは、パーキンソン病になったら必ず必要ですか?
Q. なぜパーキンソン病だと寝返りや起き上がりが難しくなるのですか?
Q. 電動ベッドを使わずにできる工夫はありますか?
Q. 電動ベッドはどのタイミングで検討すればよいですか?
Q. 夜中に何度も目が覚めて動けなくなるのも、パーキンソン病と関係がありますか?
Q. 電動ベッドを選ぶときに、パーキンソン病の人が気をつけることはありますか?
寝返り・起き上がりの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。寝返りや起き上がりで困っている場面を実際に確認し、原因を分けたうえで、動作の練習・環境の工夫・ご家族への介助指導までを組み立てます。電動ベッドの導入を検討されている方には、福祉用具の視点も踏まえてご相談に応じます。薬の調整は主治医を尊重し、私たちは動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
きっとあります。

「電動ベッドを入れるべきか」というご相談の裏には、たいてい「夜、家族に何度も助けを求めるのがつらい」「介助する側の体ももう限界」という、切実な思いがあります。
お伝えしたいのは、動けない理由を分けて考えるだけで、道具に頼らずに済む場面が意外と多いということです。そして、それでも道具が必要になったときは、それは決して後退ではなく、無理なく生活を続けるための、賢い選択です。
寝返り・起き上がりでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを一緒に確認し、その方に合う工夫と支え方を見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。介護保険の対象条件・給付内容は自治体や制度改定により異なります。気になる症状や制度の詳細は、必ず主治医・神経内科、担当のケアマネジャーにご相談ください(最終確認日:2026年9月9日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- 厚生労働省:介護保険における福祉用具貸与(特殊寝具等)の制度概要(対象要件は自治体・制度改定により変動するため、担当ケアマネジャーへの確認を推奨)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)