エプロンやスモックを着られない子|園生活で困る着脱動作の支援
園でスモック・エプロンを着られない子|「袖を通す・向きを合わせる・留める」をどう支える?
家では着られることもあるのに、園でスモックを着ると止まる、遅れる、先生の手が必要になる。そんなときは「着替えが苦手」と一括りにせず、どの工程で、どの条件を加えると成功が崩れるのかを見ます。向きの確認、袖通し、両手の協調、姿勢、時間、一斉指示まで、園生活に絞って整理します。

家でできても、園では条件が変わる。
家庭では、時間をかけられる、いつもの場所で着られる、大人が一対一で声をかけられるなど、成功しやすい条件がそろっています。一方、園では「スモック着てね」という一斉指示のあと、友だちが動き始め、限られた時間の中で準備します。
そのため、園での着脱は単なる「服を着る動作」ではありません。姿勢・視覚探索・両手協調・手順・時間制限・周囲刺激が同時に求められる生活課題です。
| 園で変わる条件 | 家庭との違い | 動作に出やすい変化 |
|---|---|---|
| 時間 | ゆっくり待てる | 急ぐと袖がねじれる、順番を飛ばす、助けを求める |
| 姿勢 | 座って着られることが多い | 立位では身体が揺れ、両手を服に使えない |
| 指示 | 一対一で短く伝えられる | 一斉指示では「次に何をするか」が抜けやすい |
| 周囲刺激 | 人や物が少ない | 友だち・音・移動で視線が逸れ、袖口探索が止まる |
| 道具・配置 | 服の置き方が一定 | ロッカーから取り出した向きのままでは前後が分かりにくい |
「スモックを着る」を、7つの工程で見る。
| 工程 | 子どもがしていること | 止まりやすいポイント |
|---|---|---|
| 1. 向きを見る | 襟・タグ・柄から前後を判断する | 前後が決まらず、何度も回転させる |
| 2. 服を広げる | 袖口が見える形に整える | 生地が重なり、袖口が隠れる |
| 3. 1本目の袖 | 片手で服を保持し、反対腕を袖へ入れる | 袖口は見えるが腕を合わせにくい |
| 4. 2本目の袖 | 服が回転した状態で反対袖を探す | 片腕を入れたあとに袖の位置を再探索できない |
| 5. 肩まで引く | 腕と体幹を動かして衣服を身体へ引き上げる | 身体が傾く、服がねじれる、片側だけ止まる |
| 6. 裾を整える | 前後左右へ生地を引いて形を整える | 背中側が残る、左右差に気づきにくい |
| 7. 留める | ボタン・スナップ・ひも等を操作する | 着用中は見えにくく、保持する手も必要になる |

失敗した動作より、「成功が崩れ始めた瞬間」を見る。
「袖に腕を通せない」と見えても、袖そのものが問題とは限りません。服を広げた時点で前後が分からない、袖口は見つけているが身体へ近づけると視野から消える、片腕を通した瞬間にスモック全体が回って反対袖を見失う、といったことがあります。
さらに、ゆっくりならできるのに、「早く着よう」「みんな終わったよ」と声がかかると崩れる子もいます。そこで重要になるのが、どの負荷を境に正確性が落ちるかを見ることです。
| 見える困り | 考えられるボトルネック | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 袖口を何度も探す | 服の向き・視覚探索 | タグ、襟、色の目印を変えると探索時間が変わるか |
| 片腕は入るが反対腕で止まる | 衣服回転後の再探索、両手協調 | 机上・膝上・空中で成功率が違うか |
| 立つと着られない | 上肢操作と姿勢制御の同時処理 | 座位と立位で介助量・動作時間がどう変わるか |
| 急ぐと崩れる | 時間制限・注意分配 | 時間制限なし→軽い制限→園に近い条件で比較する |
| 最後のボタンだけできない | 巧緻性だけでなく前工程の疲労・保持 | 机上ボタンと着用中のボタンで差があるか |
子どもを変える前に、スモック・場所・時間を変えられないか。

先生には、「苦手」より「成功する条件」を伝える。
このように、「できない」ではなく、どの工程は自分でできるか/どの条件なら成功するか/どこだけ手伝ってほしいかを伝えると、園側も支援方法を共有しやすくなります。
研究でわかっていること。
DCDの支援では、身体機能だけを練習するより、着替え・食事・学校活動など本人が実際に必要とする課題そのものに焦点を当てる、活動指向・参加指向のアプローチが重視されています。課題を小さく分け、必要な手がかりを調整し、実生活で再現できるかを確認する考え方が中心です。
また、訓練課題で上手になったことと、園生活の中で実際にできるようになったことは同じではありません。時間制限や周囲刺激を含む生活場面で再評価する必要があります。
限界:スモック着脱そのものを対象にした高品質研究は限られます。DCDや小児作業療法の研究知見を、園の着脱動作へ直接的に効果断定することはできません。臨床では、子どもの実際の困りと園環境を観察した上で方法を選びます。
専門施設では、「着られない原因」を工程ごとに分ける。
| 園で見える姿 | 考える仮説 | 条件を変えて確認 | 専門施設での支援設計 | 園で確認するアウトカム |
|---|---|---|---|---|
| 袖口を何度も探す | 服の向き・袖位置の視覚探索が不安定 | 袖口の色、タグ、置く向きを変える | 最小限の手がかりから、自分で見つける方法を比較 | 最初の袖へ入るまでの時間・声かけ回数 |
| 片腕は入るが反対腕で止まる | 衣服回転後の再探索+両手協調 | 机上・膝上・空中で成功率を比較 | 「保持する手」と「通す手」の役割を課題内で練習 | 両袖を自力で完了できる割合 |
| 立位だと着られない | 姿勢制御と上肢操作の同時処理 | 座位と立位で成功率・介助量を比較 | まず座位で動作を安定させ、必要に応じ立位へ般化 | 園の着替え場所で必要な介助 |
| 家ではできるが園では遅い | 時間制限・一斉指示・周囲刺激 | 静かな条件→園に近い条件へ段階化 | 刺激量・指示量・時間制約を一つずつ調整 | 集団場面で時間内に終わる工程数 |
| ボタンだけ最後に残る | 巧緻性に加え、前工程の疲労・衣服保持 | 机上ボタンと着用中ボタンを比較 | 実際のスモックで支持・大きさ・位置を調整 | 園で最後の留め具まで完了できるか |
机の上でボタンを留められても、実際のスモックではできないことがあります。着用中は、服が身体に沿って動く、自分の胸元は見えにくい、片手で生地を保持する必要がある、時間がかかるほど姿勢が崩れるなど、課題条件が大きく変わるためです。
そのため、専門施設では「ボタンができた」で終えず、実際のスモックで、園に近い条件まで戻して再評価します。能力が上がったことと、園生活で使えるようになったことを分けて見るのがポイントです。

STROKE LABでは、園での実際の着脱を想定し、姿勢・服の向き・袖口探索・両手操作・手順・時間制限まで分けて確認します。必要に応じて園へ伝えやすい形に整理し、生活場面で再現できる支援方法を一緒に考えます。
よくある質問。
Q. 家では着られるのに、園だとスモックを着られないのはなぜですか?
Q. 袖に腕を通せないときは、手先の不器用さが原因ですか?
Q. 先生にはどのように伝えるとよいですか?
Q. ボタン練習だけをすればよいですか?
Q. スモックを着られないとDCDなのでしょうか?
Q. 専門施設では、どんなことを見てもらえますか?
育ちに寄り添う関わりへ。

子どもの生活の困りごとは、「できない」という一言だけでは見えません。どの工程で止まり、どんな条件ならできるのかを丁寧に見つけることで、園での支援はより具体的になります。
私たちは、できる力を、生活で使える力へつなぐ視点を大切にしています。家庭と園の両方で無理なく続けられる方法を、一緒に整理していきます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。生活動作を「できる/できない」で終わらせず、姿勢・感覚・運動の連鎖として見る視点は、お子さんの生活支援を考えるうえでも土台になります。
- 小児リハビリ本体
- 初回相談の流れ
- 園・学校での困りごとと配慮
- 体育が苦手・運動会がつらい子へ|学校生活でできる配慮と支援
- 地域別の小児相談記事
本記事は、国内の公的DCD情報、厚生労働省の支援資料、関連する国際的な介入研究と、STROKE LABの生活動作分析の枠組みをもとに構成しています。スモック着脱そのものへの直接的な高品質研究は限られるため、疾患固有の効果を断定せず、園での実際の困りに即して評価する構成としています。
- 発達障害ナビポータル:発達性協調運動症(DCD)について。
- 厚生労働省:発達性協調運動症(DCD)支援マニュアル。
- Jackman M, et al. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- Novak I, et al. Occup Ther Int. 2019;2019:7057084.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)