子どものもやもや病|手足の脱力発作とリハビリで大切なこと
もやもや病の症状を、生活場面と運動発達の両面から支える
「泣いたあと、片方の手足の力が抜けた」「リコーダーや熱い麺をふーふーしたあと、ろれつが回りにくかった」——もやもや病では、子どもの日常の中にある呼吸の変化が、手足の脱力や言葉の出にくさにつながることがあります。診断・手術・薬は主治医の領域です。STROKE LABは、呼吸・脳血流・姿勢・手足の出力をつなげて見ながら、生活と運動の側から併走します。

子どものもやもや病とは、脳血流が足りなくなりやすい病気。
もやもや病は、脳へ血液を送る太い血管が少しずつ狭くなり、その不足を補うために細い血管が発達する病気です。血管の写り方が煙のように見えることから「もやもや」と呼ばれます。子どもでは、脳の血流不足による一過性脳虚血発作、脳梗塞、けいれんなどで見つかることがあります。
大切なのは、症状が一度戻っても「治った」と判断しないことです。泣いたあと、熱い食べ物を冷ますあと、楽器を吹いたあと、走ったあとなどに手足の脱力や言葉の出にくさが出る場合は、主治医に具体的な場面を伝えることが大切です。
もやもや病では、MRI・MRA・脳血流検査、薬、手術、運動制限などの医学的判断が重要です。STROKE LABはその代わりをする場所ではありません。医療機関の判断を大切にしながら、手足の使い方、姿勢、疲れやすさ、学校や家庭で困る動作を、リハビリの視点で整理します。

手足の脱力発作は、なぜ起こるのか。
もやもや病の子どもでは、脳の血流が足りなくなりやすい部分があります。そこへ、泣く・吹く・走るなどで呼吸が速くなる状況が重なると、体の二酸化炭素が下がり、脳の血管がさらに縮みやすくなります。その結果、片方の手足の力が抜ける、しびれる、言葉が出にくい、ろれつが回りにくいといった症状が出ることがあります。
この症状は数分から短時間で戻ることもあります。しかし、戻ったから安全とは限りません。「いつ、何をしたあと、どちら側に、どれくらい続いたか」を記録して、主治医に伝えることが大切です。動画が撮れる状況であれば、症状が落ち着いたあとに安全を確保したうえで、記録として残すことも役立ちます。
| 観察すること | 主治医に伝えたい内容 |
|---|---|
| きっかけ | 泣いた、楽器を吹いた、走った、熱いものを冷ました、入浴後、疲労後など |
| 症状の出方 | 右手、左足、顔、言葉、しびれ、頭痛、ぼんやりする、ふらつくなど |
| 時間 | 何分続いたか、すぐ戻ったか、休むと改善するか、繰り返すか |
| 前後の状態 | 睡眠不足、発熱、暑さ、水分不足、強い疲れ、学校行事のあとなど |
泣く・吹く・走る・熱いもの。日常の中のきっかけ。
もやもや病の難しさは、症状が生活の中の自然な場面で出ることです。泣く、吹く、走る、熱いものを冷ます。どれも子どもにとって普通の行動です。だからこそ、禁止を増やすだけではなく、どの場面で何が起きやすいかを観察し、主治医と相談しながら安全な参加の仕方を整えることが大切です。

学校生活では、音楽のリコーダーやピアニカ、吹奏楽器、体育の持久走、鬼ごっこ、暑い日の運動、給食で熱いものを冷ます場面などが関わることがあります。ここで必要なのは、「全部やめる」ではなく、症状が出やすい条件を小さく分けて、参加できる形へ調整することです。
ただし、運動や楽器をどこまで許可するかは医学的判断です。STROKE LABでは、主治医からの方針を前提に、姿勢、呼吸、疲労、手足の使い方を見ながら、家庭や学校で続けやすい方法を一緒に考えます。
見逃さないサイン。迷ったら医療優先。
もやもや病では、症状が一時的に戻ることもあります。しかし、急な片麻痺や言葉の変化は、脳血流の問題を示す重要なサインです。特に、顔色や呼吸の異常、けいれん様の動き、意識がぼんやりする、強い頭痛や繰り返す嘔吐、急な片側の手足の動かしにくさがある場合は、リハビリ相談よりも先に医療機関へつないでください。
| すぐ医療機関へ相談 | 主治医・学校と共有して観察 |
|---|---|
| 急に片側の手足が動かない、顔がゆがむ、ろれつが回らない | 疲れると姿勢が崩れる、片手を使いにくい、活動後にだるさが強い |
| けいれん、意識がぼんやりする、呼吸や顔色の異常がある | 楽器・体育・給食など、特定場面のあとに一時的な違和感が出る |
| 強い頭痛、繰り返す嘔吐、いつもと違う強い眠気がある | 症状は戻るが、同じ条件で繰り返す。動画やメモを主治医に共有する |

脱力を、呼吸・血流・姿勢・手足の出力の連鎖で見る。
もやもや病の脱力発作を「症状があるか、ないか」だけで見ると、生活上の困りごとが見えにくくなります。STROKE LABでは、呼吸が速くなる場面、姿勢が崩れる場面、片側の手足の出力が落ちる場面、疲労が重なる場面をつなげて観察します。
たとえば、走ったあとに左手が使いにくくなる子では、走る量だけでなく、体幹の支え、肩甲帯、手の開き方、休憩後の戻り方も見ます。楽器のあとに言葉や手の動きが変わる子では、吹く強さ、息継ぎ、姿勢、疲労、授業の流れまで含めて考えます。日常の「困った」を、評価で見える形に翻訳することが、専門リハの入口です。

研究でわかっていること。
2021年の日本のもやもや病管理ガイドラインでは、診断、画像・血流評価、薬物療法、血行再建術、周術期管理などが整理されています。症状がある小児では、脳血流を補う治療が重要な選択肢になります。これは、リハビリが病気そのものを治すという意味ではありません。医療機関での判断を土台に、生活と運動の支援を組み合わせることが大切です。
限界注記:ガイドラインは診断や治療方針の代替ではありません。症状、血流状態、手術歴、年齢、発達段階、学校環境によって必要な支援は変わります。診断・投薬・手術・運動制限は主治医に相談してください。出典:Fujimura M, et al. Neurol Med Chir (Tokyo). 2022;62(4):165-170.
AHA/ASAの小児脳卒中ステートメントでは、急性期だけでなく、発症後の機能、参加、生活の支援を長く見ていく必要性が整理されています。もやもや病でも、脳梗塞や一過性脳虚血発作のあとに、片側の手足の使いにくさ、疲れやすさ、学校生活の困りごとが残ることがあります。
限界注記:小児脳卒中の経過は、病変の場所、範囲、年齢、治療内容、家庭・学校環境で大きく異なります。リハビリは治療の代替ではなく、主治医の管理と並行して生活・運動を支えるものです。出典:Ferriero DM, et al. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.
専門リハで取り組めること。
STROKE LABでは、もやもや病そのものを治療するのではなく、主治医の治療方針を前提に、運動麻痺、姿勢、疲労、家庭・学校で困る動作を評価します。特に、発作のきっかけと生活場面を分けて見ながら、無理なく続けられる支援を設計します。
診断・投薬・ボツリヌス療法・手術・血流評価・運動制限などの医学的判断は主治医の領域です。リハビリの効果や経過には個人差があり、発達、成長、疲労、手術前後の状態で変動します。STROKE LABは、医療機関での管理と並行して、お子さんの生活と動きの側から併走します。
片側の手足の使いにくさがある子どもでは、目標に合わせた課題練習、十分な練習量、家庭で続けられるプログラムが重要です。片麻痺の上肢介入では、CIMTや両手動作練習などの有効性が整理されています。ただし、もやもや病の医学的治療とは別の話であり、主治医の許可と安全管理が前提です。
出典:Sakzewski L, et al. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204. Jackman M, et al. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549. 限界注記:対象、年齢、麻痺の程度、血流状態、術前後の時期により適応は異なります。

手術前後と学校生活。戻すのではなく、調整して参加する。
もやもや病では、血行再建術などの医学的治療が検討されることがあります。手術をするか、いつ行うか、術後いつから運動するか、どの活動に注意するかは、主治医の判断が最優先です。保護者が自己判断で運動を再開したり、反対に過度に活動を制限しすぎたりすると、どちらも生活の質に影響します。
学校生活では、担任、養護教諭、体育・音楽の先生に、症状が出やすい場面と対応を共有しておくことが安心につながります。たとえば、リコーダーや吹奏楽器の休憩、持久走の距離調整、暑い日の運動、水分補給、給食で熱いものを急いで冷まさない工夫などです。大切なのは、参加をあきらめる前に、安全な参加条件を具体化することです。
| 学校場面 | 共有したい配慮の例 |
|---|---|
| 音楽 | 吹く量、休憩、姿勢、息継ぎ、症状が出たときの中止基準 |
| 体育 | 持久走、暑さ、全力疾走、休憩の入れ方、水分補給、見学ではなく部分参加の方法 |
| 給食 | 熱いものを急いで冷まさない、時間に余裕を持つ、姿勢を安定させる |
| 日常活動 | 疲労時のサイン、保健室での休み方、保護者への連絡基準、友達への説明範囲 |
家庭でできる関わりと、避けたい関わり。
家庭では、発作を完全に防ぐことだけを目標にするのではなく、症状のきっかけを見つけ、無理のない生活リズムを整えることが大切です。睡眠、水分、暑さ、疲労、活動量、姿勢、食事場面、学校行事のあとなどを、保護者が一人で抱えず、主治医・学校・リハビリスタッフと共有できる形にしていきます。
| 家庭で大切にしたいこと | 避けたい関わり |
|---|---|
| 症状が出た場面を、時間・活動・左右差・持続時間でメモする | 短時間で戻ったから大丈夫と判断し、医療相談を先延ばしにする |
| 疲労や暑さが重なる日は、休憩と水分を先に計画する | 根性で続ける、周囲と同じ量をこなすことを優先する |
| 姿勢が崩れる場面を見つけ、座り方・机・足台・手の位置を調整する | 手だけ、足だけを強く練習し、全身の支えや疲労を見落とす |
| 子どもの「やりたい」を残しながら、参加条件を一緒に決める | 不安から活動をすべて禁止し、経験の機会を減らしすぎる |

もやもや病のお子さんのリハビリでは、症状の安全確認、活動量、手足の使い方、姿勢、学校生活を分けて見ていくことが大切です。医療機関での判断を尊重しながら、家庭・学校で続けられる支援を一緒に整理します。
よくある質問。
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。もやもや病のお子さんでは、診断・手術・薬の判断は主治医を尊重し、私たちは発症後や術後の手足の使いにくさ、姿勢、疲労、家庭・学校での困りごとを、機能解剖と動作分析の視点で整理します。医療機関でのリハビリとの併用も歓迎です。急な症状があるときは、まず医療機関へご相談ください。
生活につながる関わりへ。

わが子がもやもや病と診断されたとき、保護者の方は「何をしてよくて、何を避けるべきか」という不安を抱えます。私たちは、大学病院などで多くの脳血管障害のお子さんとご家族に出会ってきました。
お伝えしたいのは、症状を恐れて生活を小さくする前に、安全な参加条件を一緒に見つけられるということです。呼吸、姿勢、脳血流、手足の出力をつなげて見ながら、子どもの「したい」を生活の中で支えます。
医療機関での治療とあわせて、家庭・学校での関わりを整理したい方は、どうぞ一度ご相談ください。主治医の方針を尊重しながら、お子さんの育ちに寄り添って組み立てます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。手足の脱力や運動麻痺を「動かない」で終わらせず、姿勢・感覚・運動の連鎖として見る視点は、お子さんの生活支援を考えるうえでも土台になります。
- 子どもの手足の力が急に抜ける|見逃せない脱力発作ともやもや病のサイン
- 子どもの脳梗塞・脳出血|小児の脳卒中とその後のリハビリを専門家が解説
- 子どもの片麻痺|成人とは違う小児のリハビリの考え方
- もやもや病の手術後|バイパス術後のリハビリと日常の注意点
本記事は、国内外の公的情報・診療ガイドライン、小児脳卒中ステートメント、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、必ず主治医・小児科医にご相談ください(最終確認日:2026年7月7日)。
- 難病情報センター:もやもや病(指定難病22).2024年確認版。
- 日本小児神経外科学会:小児もやもや病。
- Fujimura M, Tominaga T, Kuroda S, et al. 2021 Japanese Guidelines for the Management of Moyamoya Disease. Neurol Med Chir (Tokyo). 2022;62(4):165-170.
- Ferriero DM, Fullerton HJ, Bernard TJ, et al. Management of Stroke in Neonates and Children: A Scientific Statement From the American Heart Association/American Stroke Association. Stroke. 2019;50(3):e51-e96.
- Sakzewski L, Ziviani J, Boyd RN. Efficacy of upper limb therapies for unilateral cerebral palsy: a meta-analysis. Pediatrics. 2014;133(1):e175-e204.
- Jackman M, Lannin N, Galea C, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)