パーキンソン病で梅雨時に調子が崩れる|原因と対策・自宅でできる工夫
雨のたびに、動けなくなる。
「梅雨に入ると、なぜか毎年動きが重くなる」。パーキンソン病のある方から、よく聞く言葉です。それは気のせいではなく、気圧・湿度・日照・運動量・睡眠という複数の要因が、同時に体に影響している状態です。しくみと、自宅でできる立て直し方を整理します。

「今年も、この時期がきた。」
6月に入ったころから、朝の起き上がりが辛い。歩幅が小さくなり、いつもの薬が効いている時間も短く感じる。台風が近づく前日は、決まってだるさとふらつきが強くなる——。毎年この時期に同じことを繰り返す方は、たくさんいらっしゃいます。
大切なのは、それが気のせいではなく、いくつかの要因が重なって起きている現象だと知ることです。しくみがわかれば、備え方も見えてきます。
パーキンソン病は、症状が一日の中でも、季節の中でも波を持つ病気です。梅雨の時期は、その波が大きくなりやすいタイミングのひとつ。まずはその理由を、原因ごとに分けて見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
なぜ梅雨に崩れるのか。5つの原因。
梅雨時の不調は、ひとつの原因だけで説明できるものではありません。気圧・湿度と体温調節・日照・運動量・睡眠という、複数の要因が同時に重なっているのがこの時期の特徴です。ひとつずつ整理します。
| 原因 | 体に起きていること |
|---|---|
| ①気圧の変動 | 気圧の変化を感じ取る自律神経の働きが乱れやすく、だるさやこわばりとして感じられることがある |
| ②湿度・気温と自律神経 | 血圧を保つ働きが弱くなっているため、立ち上がったときのふらつき(起立性低血圧)が強まりやすい |
| ③日照不足 | 日に当たる時間が減ることで気分が沈みやすくなり、それが動きの重さとして感じられることがある |
| ④運動量の低下 | 外出を控えることで体を動かす機会が減り、こわばりやすり足、すくみ足が出やすくなる |
| ⑤睡眠の乱れ | 蒸し暑さで寝つきや眠りの深さが乱れ、翌日の動きや集中力に影響することがある |
こう見ていくと、「天気のせい」でひとくくりにせず、自分にとってどの要因が大きいかを知ることが、対策への近道だとわかります。とくに④の運動量低下は、天候に関わらず自分でコントロールしやすい要因です。次の章では、そこに焦点をあてます。

STROKE LABの視点:雨の日こそ、室内に「動きのキュー」を作る。
外を歩けない日が続くと、歩幅が小さくなり、すり足やすくみ足が出やすくなります。そこで有効なのが、屋外の景色の代わりに、室内に「歩くための目印(キュー)」を用意するという考え方です。目印は、次の3ステップで、自宅にあるもので用意できます。

ステップ1:床にまたぐ目印を貼る。養生テープなどで、廊下やリビングの床に一定間隔で線を貼ります。線をまたぐことを意識すると、歩幅が小さくなりにくくなります。
ステップ2:音のリズムで歩く。メトロノームアプリや「いち、に」の号令に合わせて足を出します。音のリズムがあると、すくみ足が出にくくなることがあります。
ステップ3:梅雨専用のルーティンを決めておく。「雨の日は、朝食後にこの目印を10往復」など、天気に左右されない自分の型を先に決めておくと、迷わず続けやすくなります。
目印は、視覚的なキューイングと呼ばれる工夫のひとつです。外を歩くときに使っている目印(並木道や横断歩道の白線など)を、室内で再現するイメージを持つと、応用しやすくなります。合う目印の間隔や音のテンポは人によって異なるため、理学療法士・作業療法士と一緒に見つけるのが近道です。
視覚・聴覚・体性感覚のキューを用いた歩行訓練を検証した無作為化比較試験(RESCUE試験)では、キューを使った訓練を受けた群で歩行速度やすくみ足の頻度が改善したと報告されています。屋外に限らず、室内でも目印や音を使うことが、歩行の立て直しにつながる可能性を示す結果です。
限界:この研究は屋外・屋内を区別した検証ではなく、効果には個人差があります。訓練を中止すると効果が薄れる項目もあり、継続が前提です。運動療法は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
梅雨時の不調は原因が重なっているぶん、「今日の不調が、どの要因によるものか」を見極める評価が立て直しの近道になります。専門的な関わりでは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 個別のキューイング設計。視覚・聴覚・体性感覚のどのキューが最も効果的かを評価し、その人の生活動線に合わせた目印の配置を提案します。
2. 起立性低血圧への対応。血圧の変動パターンを確認しながら、立ち上がり方や水分・塩分のとり方など、生活動作の側から転倒リスクを減らします。
3. 運動量を落とさない仕組みづくり。天候に左右されない室内運動のメニューを一緒に組み、外に出られる日との差を小さくしていきます。
STROKE LABが大切にしているのは、「天気のせい」で終わらせず、複数の要因をひとつずつ切り分けて対応するという姿勢です。効果には個人差があり、体調の波は季節以外の要因でも変動します。薬の調整は主治医の役割です。
自宅でできる対策。
前の章で紹介した「室内キュー」に加えて、体調を崩す要因を減らす環境づくりも大切です。難しいことをする必要はなく、決めておくだけで続けやすくなる工夫を紹介します。
水分を時間で区切ってとる。のどが渇く前に、朝・昼・夕とタイミングを決めて水分をとると、ふらつきの予防につながります。除湿と床の安全を保つ。除湿機や換気で室内の湿度を保ち、濡れた床や玄関マットのめくれなど、転倒につながる箇所を先に片づけておきます。窓際で日に当たる時間を作る。外に出られなくても、カーテンを開けて窓際で過ごす時間を持つだけで、日照不足の影響を和らげられます。気圧の変化を先読みする。気圧予報アプリなどで低気圧が近づくタイミングを確認し、その日は予定を詰め込みすぎず、休む時間を先に確保しておきます。寝る前の環境を整える。寝室の温度と湿度を快適に保ち、蒸し暑さで眠りが浅くならないようにします。運動で体を動かしておくと、環境調整の効果も出やすくなるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

脳リハ.comのYouTubeでは、狭いスペースでもできる体操を配信しています。雨の日専用のルーティンとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、季節による波を含めて生活の困りごとを一緒に確認し、キューの種類や配置、室内運動の頻度、起立時の動き方を、その人の生活に合わせて調整します。「今年の梅雨は去年より辛い」など、変化そのものを相談の材料にすることができます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活の側から支えます。
受診の目安は、ふらつきや転倒が増えた、意識が遠のく感じがある、気分の落ち込みが長く続く、といったときです。「梅雨だから仕方ない」で済ませず、いつもと違う変化は神経内科で確認してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 梅雨の時期に調子が悪くなるのは、気のせいではありませんか?
Q. 気圧の変化で薬の効き目が変わることはありますか?
Q. 雨で外に出られない日は、運動をお休みしてよいですか?
Q. 梅雨時にめまいやふらつきが増える気がします。なぜですか?

Q. 気分が沈みやすいのも、梅雨のせいでしょうか?
Q. 除湿や換気は、本当にそんなに大事なことなのでしょうか?
季節の波の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。「梅雨になると崩れる」という感覚を、気圧・自律神経・運動量・睡眠といった要因に分けて確認し、その人に合ったキューの使い方や室内運動、生活動作の工夫を組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
動ける工夫はあります。

「今年も梅雨がきたか」と、ため息をつく方に、たくさん出会ってきました。毎年繰り返す不調は、天気のせいだと諦めてしまいがちです。
お伝えしたいのは、原因を分けて見れば、天気に振り回されない過ごし方は必ず見つかるということです。室内に目印を置き、水分と睡眠を整え、体を動かす。ひとつずつの積み重ねが、雨の日の重さを和らげます。
季節の波でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。その方の生活に合わせて、一緒に対策を組み立てます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。体調の変化には他の原因が隠れていることもあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(視覚・聴覚・体性感覚のキューによる歩行訓練が、歩行速度やすくみ足の頻度を改善したと報告。sec3エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)