パーキンソン病で夏の脱水と体調管理|原因と対策・自宅でできる工夫
渇きは、合図が来ないことがあります。
パーキンソン病では、汗のかき方が変わったり、のどの渇きに気づきにくくなったりして、夏に脱水や体調不良を起こしやすくなります。渇きを感じてから飲むのではなく、先回りして飲む仕組みを作ることが対策の軸になります。原因と、今日から自宅でできる工夫を整理します。

去年の夏、しんどかった理由。
本人はいつも通り過ごしているつもりでも、動きが硬くなり、受け答えがぼんやりして、汗のかき方もいつもと違う。慌てて水分をとらせると少し落ち着いた——。去年の夏、そんな経験をしたご家族は少なくありません。
これは、気の緩みや我慢強さの問題ではありません。パーキンソン病そのものが、暑さと水分バランスへの弱さを持っているということを、まず知っていただきたいのです。
気温と湿度が上がる夏は、誰にとっても体への負担が大きい季節です。パーキンソン病の方は、体温を調節するしくみそのものが乱れやすいため、暑さの影響をより強く受けます。まずは、なぜ弱くなるのかという原因から見ていきましょう。全体的なリハビリの考え方はリハビリ完全ガイドにまとめています。
暑さに弱くなる、5つの原因。
パーキンソン病の脱水・熱中症リスクは、一つの原因だけで起こるのではなく、いくつもの要因が重なって起こります。どれが自分に当てはまるかを知っておくと、対策の的が絞りやすくなります。

| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 発汗の乱れ | 自律神経の働きが乱れ、汗が出にくくなる方・逆に出すぎる方の両方がいる |
| 渇きに気づきにくい | 体の水分が減っていても、のどの渇きの自覚が遅れやすい |
| 薬の影響 | 一部の薬は汗を出す働きを弱め、熱がこもりやすくなることがある |
| 水分をとる動作の負担 | コップを持つ、飲み込むといった動作自体に時間や労力がかかる |
| 起立性低血圧との重なり | 脱水が進むと血圧が下がりやすくなり、立ちくらみが強まる悪循環になる |
実際、パーキンソン病の方を対象にした調査では、およそ8割の方が暑さへの感じ方の変化を報告し、半数以上が暑い時期に体を動かしづらくなると答えたと報告されています。感覚として困っている方が多いことは、まず知っておいてよい事実です。
STROKE LABの視点:「先に飲む」を仕組み化する。
のどの渇きに頼れないなら、渇きを待たずに、時間で先に飲む仕組みに変えるのが現実的です。「気をつけよう」という意識だけに頼らず、生活の中に自動的に思い出せる仕掛けを組み込みます。次の3ステップで、今日から始められます。

ステップ1:目盛り付きの水筒を用意する。1日の目標量を主治医と決め、水筒に目盛りやテープで区切りを入れておきます。「今どこまで飲めているか」が一目でわかる状態にします。
ステップ2:時間を決めてタイマーやアラームを鳴らす。起床後・午前・昼食時・午後・夕食時など、1〜2時間おきに鳴らし、鳴ったら少量でも口にする習慣にします。飲んだらチェックする表を作るのもおすすめです。
ステップ3:塩分と組み合わせておく。汗で失われるのは水分だけでなく塩分もです。経口補水液や塩あめなどを水筒とセットで置いておき、暑い日はどちらも一緒にとれるようにしておきます。
ご家族が声をかける場合も、「のどが渇いていない?」と聞くのではなく、「そろそろ飲む時間だよ」と時間を伝えるほうが伝わりやすいことがあります。合う量やタイミングは体調や薬によって違うので、作業療法士や主治医と一緒に自分専用のリズムを作ると長続きします。
水分・塩分・環境の、具体的な工夫。
仕組みができたら、中身と環境も整えていきます。合言葉は「こまめに・薄めに冷たすぎず・涼しい場所で」です。
飲み込みにくさがある方は、冷たすぎる水より常温に近い水のほうがむせにくいことがあります。とろみをつけた水分や、ゼリー状の水分補給食品も選択肢です。汗をかいた日は経口補水液で塩分も補い、逆に汗が少ない日は水分だけを控えめに調整するなど、汗のかき方に応じて量を変える視点も大切です。エアコンは我慢せず使い、室温は目安として26〜28度程度を保ち、通気性のよい服装にする、外出は気温の高い時間帯を避けるといった環境の工夫も、体への負担を減らします。体を動かしておくと自律神経の働きも安定しやすいため、体操・自主トレ大全も参考にしてください。

自律神経の働きが乱れている患者を対象にした研究では、水を飲んでから1分後に立ち上がってもらったところ、水を飲まなかったときに比べて、立った直後の血圧の下がり方が小さく抑えられたと報告されています。水分をとることが、立ちくらみへの備えにもつながることを示す結果です。
限界:この研究の対象は重い自律神経障害のある患者で、パーキンソン病の方全員に同じ効果が出るとは限りません。効果の出方には個人差があり、水分量には心臓や腎臓の状態による制限がある場合もあります。量の調整は必ず主治医に確認してください。
自宅での水分・塩分・環境の工夫が、その日その日の対症的な備えだとすれば、専門施設で目指すのは、自律神経の反応そのものを整え、暑さや姿勢の変化に崩れにくい体を作る回復的アプローチです。夏の体調管理への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 姿勢変化への段階的な慣らし。寝た姿勢から座位、座位から立位へと、血圧が変動しやすい場面を段階的に練習し、体を慣らしていきます。
2. 全身運動による循環の底上げ。下肢を中心とした運動で血液を心臓に戻す力を養い、立ちくらみやふらつきが起こりにくい状態を目指します。
3. 生活動作の中での実践。実際に水分をとる動作、着替え、移動といった生活場面そのものを練習の題材にし、暑い時期でも自分で対処できる力を育てます。
STROKE LABが軸足を置くのは、体を動かして自律神経の反応を引き出しながら、生活の中で無理なく続けられる形に落とし込むという流れです。薬の調整や水分量の上限は主治医の役割であり、私たちは体の動きと生活の側から支えます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。
パーキンソン病の方247名を対象にした調査では、78.9パーセントが暑さへの感じ方が変わったと回答し、7割以上で運動症状が、8割以上で運動以外の症状が暑さで悪化すると答えたと報告されています。歩きにくさやこわばり、めまい、集中しづらさなどが挙げられており、暑さの影響が体感として広く共有されていることがわかります。
限界:これは本人の感じ方をたずねた調査であり、体温や発汗量を直接測定したものではありません。感じ方の強さや内容には個人差があります。暑さの影響を強く感じる方は、我慢せず環境調整や受診の相談をしてください。
脳リハ.comのYouTubeでは、下肢を中心に血の巡りを助ける体操を配信しています。暑さで動く機会が減りやすい時期こそ、無理のない範囲で続けてみてください。
危険なサインと、受診の目安。
パーキンソン病の症状と、脱水や熱中症の初期サインは似ていて、見分けにくいことがあります。「いつもと違う」という変化に気づくことが何より大切です。いつもより動きが硬くなる、ぼんやりして反応が鈍い、立ちくらみやめまいが強い、汗のかき方が急に変わった、こうしたサインに気づいたら、まず涼しい場所に移動し、水分と塩分をとって休みます。それでも改善しない、意識がはっきりしない、けいれんがあるといった場合は、ためらわず医療機関を受診してください。
専門のリハビリでは、実際の生活場面をもとに、水分をとるタイミングや動作、涼しい環境での過ごし方を一緒に組み立てます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは体の動きと生活の側から支えます。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. パーキンソン病だと、なぜ夏に脱水や熱中症になりやすいのですか?
Q. 汗が全然出ない人と、逆に汗だくになる人がいるのはなぜですか?
Q. のどが渇いていないのに、水分をとる必要はありますか?

Q. 水分をとると、ふらつきが軽くなることはありますか?
Q. 水分をとりすぎるのも良くないと聞きました。どのくらいが目安ですか?
Q. 熱中症になりかけているとき、どんなサインに気をつければよいですか?

夏の体調管理の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。水分をとる動作や姿勢の変化への慣らし、暑い時期に無理なく体を動かす運動を、その人の生活に合わせて組み立てます。薬の調整や水分量の上限は主治医を尊重し、私たちは体の動きと生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
「決めた時間に飲む」へ。

夏になると、「本人はけろっとしているのに、後から体調を崩す」というご家族の声をよく聞きます。パーキンソン病の方は、渇きのサインを頼りにできないことがあるからこそ、周りが「そろそろだよ」と時間で声をかける仕組みが力を発揮します。
お伝えしたいのは、意識ではなく仕組みで守るほうが、本人にもご家族にも負担が少ないということです。水筒とタイマー、塩分のセット。小さな工夫の積み重ねが、暑い夏を安心して過ごす力になります。
夏の体調管理でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。生活の場面そのものを題材に、その方に合うリズムを一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。体調の変化には持病・薬による個人差があります。水分量の調整や気になる症状は、必ず主治医にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Shannon JR, et al. Water drinking as a treatment for orthostatic syndromes. Am J Med. 2002;112(5):355-360.(自律神経障害患者において水分摂取が起立時の血圧低下を軽減したと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Hunt J, et al. Evidence of heat sensitivity in people with Parkinson’s disease. Disabil Rehabil. 2024.(パーキンソン病患者247名の調査で約8割が暑さへの感じ方の変化を報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)