パーキンソン病で電車・バスでの移動が不安|原因と対策・自宅でできる工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で電車・バスでの移動が不安|原因と対策・自宅でできる工夫

TRANSIT & PD

扉も改札も、待ってくれない。だから、先に一歩を練習します。

改札や電車の扉の前で、急に足が動かなくなった。満員のバスで揺れてふらついた。そんな経験から、電車やバスに乗ることそのものが怖くなっていませんか。その不安の多くは、自宅でできる小さな練習と準備で、和らげることができます。しくみと、今日からできる備え方を整理します。

UPDATED2026
READ約10分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。不安の強さや性質が気になるときは自己判断せず、主治医・神経内科に相談してください。

Quick Reference
まず知ってほしい6つのこと。
01
乗るのが嫌なのではなく、体の反応が場面と合わせにくいだけです
02
原因は一つではなく、すくみ足・動作緩慢・バランスなどが重なります
03
改札や扉は、すくみ足が出やすい条件がそろう場所です
04
自宅の戸口を使った目印またぎ練習が、対策の第一歩になります
05
動きやすい時間帯に合わせて外出計画を立てると安心感が増します
06
不安が強く生活範囲が狭くなってきたら、自己判断せず主治医へ
01
Frozen At The Gate

乗り換えで、固まってしまった。

A Patient’s Voice
「改札を通ろうとした瞬間、足が動かなくなって、後ろに人が並んでしまった」

電車の扉が閉まりそうで焦って、かえって足が出なくなった。満員のバスで揺れて、とっさに体を支えられなかった。券売機の前で操作に手間取り、後ろに並ぶ人の視線が気になった——。一度そんな経験をすると、次に乗るのが怖くなり、行き先を狭めてしまう方は少なくありません。

でも、知ってほしいのです。その多くは、自宅でできる練習と、乗る前のちょっとした準備で、備えられるということを。

パーキンソン病では、足がその場で止まってしまうすくみ足、動作が小さく・遅くなる動作緩慢、体のバランスを立て直す反応が遅れる姿勢反射障害など、複数の運動症状が移動の場面で一気に表に出やすくなります。改札や電車・バスの扉は、まさにそれらが起こりやすい条件がそろう場所です。まずはどんな原因が重なっているのかを整理し、そのうえで具体的な備え方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
Why It Feels Unsafe

立ちすくむ、6つの原因。

「電車・バスが怖い」という一つの気持ちの裏には、複数の運動症状と非運動症状が重なっていることがほとんどです。どれか一つに当てはめようとせず、自分に当てはまるものを探してみてください。

原因 どういうことか
すくみ足(改札・扉・段差) 狭い出入り口や時間制限のある場面で、足がその場で止まりやすくなる
動作緩慢(きっぷ操作・支払い) 券売機や運賃箱の操作に時間がかかり、焦りがさらに動きを小さくする
姿勢反射障害(バランス) 姿勢を立て直す反応が遅れやすく、揺れや接触でふらつきやすい
症状の波(オン・オフ) 薬の効き方には時間帯による波があり、外出中に動きにくくなる不安がある
疲れやすさ・立ちっぱなしのつらさ 短時間で体力を使い切りやすく、座れないまま長く立つことがつらい
不安感(非運動症状) パーキンソン病そのものに伴う不安感が、乗り物への抵抗感をさらに強める

こうして並べてみると、「気が弱くなった」わけでも「乗り物が嫌いになった」わけでもないことがわかります。原因ごとに対処の糸口があるので、次の章から一つずつ整理していきましょう。

03
Turn Home Into A Station

STROKE LABの視点:自宅を「駅」に見立てる。

すくみ足の対策でいちばん取り組みやすいのが、自宅の戸口を「駅の改札や扉」に見立てて、目印をまたぐ練習をしておくことです。狭い出入り口を落ち着いて通過する感覚を、あらかじめ体で覚えておくと、実際の場面でも思い出しやすくなります。次の3ステップで進めます。

Three Steps

ステップ1:戸口にテープで「扉の幅」の目印をつくる。玄関や部屋の戸口の床に、養生テープなどで左右の線を引き、実際の改札や扉幅に近い間隔にします。

ステップ2:目印の中を、リズムをとって歩く。心の中で「いち・にい」と数えながら、あるいは家族に声をかけてもらいながら、線の中をまたいで歩きます。急がず、いつもの一歩より少し大きくがコツです。

ステップ3:一度立ち止まってから踏み出す練習も加える。足が出にくいと感じたら、その場でいったん足踏みをしてから一歩を出す方法も試してみます。自分に合う目印やリズムを見つけておくと、外出先でも同じ感覚を思い出しやすくなります。

床の線やタイルの継ぎ目、点字ブロックなど、実際の駅にもさまざまな目印があります。自宅での練習は、そうした目印を「歩き出しのきっかけ」として使う感覚を、あらかじめ養っておくためのものです。合う目印の種類やリズムは人それぞれなので、作業療法士や理学療法士と一緒に調整すると近道です。

04
Crowds, Sway & Fare Gates

混雑・揺れ・きっぷ操作のコツ。

自宅での練習に加えて、当日その場でできる工夫があります。「車内での立ち方」「きっぷ・支払いの準備」「体力の配分」の3つに分けて整理します。

車内での立ち方。乗車したら早めに手すりやつり革につかまり、進行方向を向いて、足を前後に少し開いて立つと安定しやすくなります。揺れそうな瞬間を予測して、あらかじめ重心を低くしておくのも有効です。可能であれば優先席の利用や、座れる位置を探すことも選択肢に入れてください。

きっぷ・支払いの準備。ICカードやタッチ決済を使うと、券売機での細かい操作が減り、焦りを減らせます。乗り換えは、余裕を持った時間で計画し、エレベーターやエスカレーターの位置を事前に調べておくと安心です。焦ると動きがかえって小さくなりやすいので、一つずつの動作を意識しましょう。

体力の配分。外出前後に休む時間を計画に入れておく、混雑する時間帯を避ける、途中下車できる駅を把握しておく、といった「逃げ道」を用意しておくと、気持ちが軽くなります。歩行や体力づくりの体操は体操・自主トレ大全もあわせてご活用ください。

Evidence
太極拳のバランス練習で、ふらつきと転倒が減った研究

パーキンソン病の方を対象に、太極拳を用いたバランス練習を検証した無作為化比較試験では、練習を行った群で姿勢の安定性が高まり、転倒の回数が少なかったと報告されています。継続的なバランス練習が、揺れや不安定な場面への備えにつながることを示す結果です。

限界:数か月にわたる継続的な練習を行った研究で、効果には個人差があります。バランス練習は転倒のリスクを伴うため、専門家の指導のもとで安全に行うことが前提です。

出典:Li F, et al. Tai chi and postural stability in patients with Parkinson’s disease. N Engl J Med. 2012;366(6):511-519
扉を怖がるのではなく、目印を先に、味方につける。

ここまでは、自宅と当日でできる工夫でした。専門施設では、その先の動作そのものを立て直すアプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
目印を「使う」段階から、とっさの場面でも崩れにくい体づくりへ。

自宅や当日の工夫がその場をしのぐための代償だとすれば、専門施設で目指すのは、すくみ足・バランスそのものが崩れにくくなるよう、体の使い方を立て直す回復的アプローチです。移動への不安への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. キューイングによる歩行練習。視覚・聴覚・体性感覚のキューを使い、狭い場所や時間制限のある場面でも歩き出しやすい体の使い方を、繰り返し練習します。

2. とっさの姿勢反応の練習。予測できない揺れや接触に対して、素早く重心を立て直す練習を、安全な環境で段階的に行います。

3. 体力と持久力の底上げ。立ちっぱなしや乗り換えという「まとまった活動」に耐えられる体力を、その人の生活リズムに合わせて少しずつ積み上げます。

STROKE LABが軸足を置くのは、「よく使う路線」「よく通る改札」という具体的な場面から逆算して、必要な動作を専門的に組み立てるという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
自宅でのキューイング練習が歩行の質を高めた研究

視覚・聴覚・体性感覚のキューを使った自宅での歩行トレーニングを検証した大規模な無作為化比較試験(RESCUE試験)では、歩行速度や歩幅など、生活に関わる移動能力の指標が改善したと報告されています。目印を使った練習を積み重ねることで、実生活の移動場面にも変化が広がることを示す結果です。

限界:これは歩行を中心とした研究で、すくみ足そのものを完全に解消するものではありません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。練習には専門的な評価と指導が前提です。

出典:Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140
Watch & Practice
歩行とバランスの体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、歩行やバランスにつながる体操を配信しています。移動の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

歩行・バランスの体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、よく使う駅や路線を題材に、歩き出しの練習、車内でのバランス練習、きっぷ操作の動作、当日の体力配分までを一緒に組み立てます。「実際に困っている場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活の側から支えます。

受診の目安は、移動への不安が強く生活範囲が狭くなってきた、転倒やふらつきが増えてきた、すくみ足が急に強くなった、といったときです。不安の原因はパーキンソン病以外の要因が関わることもあります。自己判断せず、主治医・神経内科に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 電車やバスに乗るのが怖くなったのは、パーキンソン病のせいですか?

すくみ足や動作緩慢、姿勢を保つ働きの低下(姿勢反射障害)など、パーキンソン病の運動症状が重なって、乗り物への不安が強くなることがあります。これに加えて、パーキンソン病そのものに伴う不安感が影響することもあります。ただし不安の原因は人によってさまざまなため、気になるときは自己判断せず、主治医・神経内科に相談してください。

Q. 改札や扉の前で足が動かなくなることがあります。なぜですか?

足がその場で止まってしまうすくみ足は、狭い出入り口や、扉が閉まるまでの時間制限があるような場面で起こりやすいとされています。改札や電車・バスの扉は、まさにこの条件がそろう場所です。心の中で数を数える、床の線を目印にまたぐといった工夫で、歩き出しやすくなることがあります。

Q. 混雑した車内でふらつくのが怖いです。対策はありますか?

パーキンソン病では、姿勢を立て直す反応が遅れやすくなること(姿勢反射障害)があり、揺れや人との接触でバランスを崩しやすくなります。手すりに早めにつかまる、進行方向を向いて立つ、足を前後に開いて立つといった工夫が助けになります。バランス練習を継続することで、日常の安定感が高まったという報告もあります。

Q. 切符を買ったり乗り換えたりする動作に時間がかかって焦ります。

動作が小さく・遅くなる動作緩慢のために、券売機の操作や乗り換えに時間がかかることがあります。焦るとかえって動きが小さくなりやすいため、事前にICカードを使う、乗り換え時間に余裕を持たせる、といった準備が助けになります。急がず、一つずつの動作を意識することが大切です。

Q. 外出前、薬のタイミングはどう考えればいいですか?

薬の効き方には時間帯による波があります。1週間ほど動きやすい時間帯を記録し、その時間帯に合わせて外出の予定を組むと、当日を安心して迎えやすくなります。大事な外出があるときは、事前に主治医に伝えておくと助言をもらえることもあります。薬の量や飲み方の変更は、必ず主治医の判断のもとで行ってください。

Q. 自宅でできる練習はありますか?

あります。自宅の戸口にテープで扉の幅の目印をつくり、その中を歩いて通過する練習は、すくみ足の対策として取り組みやすい方法です。あわせて、足を前後に開いて立つ練習や、立ったまま体重を左右に移す練習も、車内でのふらつき対策に役立ちます。無理のない範囲で、毎日少しずつ続けるのがおすすめです。
07
STROKE LAB

移動の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。よく使う駅や路線を一緒に確認し、歩き出しの練習、車内でのバランス練習、体力の配分を、その人に合わせて組み立てます。実際に困っている場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
扉の前の一歩は、
自宅で練習できます。
STROKE LAB代表 金子唯史

「改札で固まってしまってから、電車に乗るのが怖くなった」と、行き先を狭めてしまう方に、たくさん出会ってきました。よく話を聞いてみると、体力や気力がなくなったのではなく、狭い出入り口や時間制限のある場面で、足がとっさに出にくくなっているだけだったということが少なくありません。

お伝えしたいのは、自宅の戸口に線を1本引いて、そこをまたぐ練習をしておくだけで、扉の前での一歩は変わることがあるということです。目印を先に味方につけ、慣れた場所で体に覚えさせておく。ちょっとした準備で、行ける場所はまだまだ広がります。

移動でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。よく使う駅や路線そのものを題材に、その方に合う備え方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。不安の強さや性質が気になるときは、必ず主治医・神経内科にご相談ください(最終確認日:2026年8月31日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Nieuwboer A, et al. Cueing training in the home improves gait-related mobility in Parkinson’s disease: the RESCUE trial. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78(2):134-140.(自宅でのキューイング練習が歩行関連の移動能力を改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
  • Li F, et al. Tai chi and postural stability in patients with Parkinson’s disease. N Engl J Med. 2012;366(6):511-519.(太極拳によるバランス練習が姿勢の安定性を高め、転倒回数を減らしたと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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