パーキンソン病で便秘がつらい|原因と対策・自宅でできる工夫
便秘は、意志の弱さではありません。
水を飲んでも、繊維をとっても、なかなか出ない。パーキンソン病の便秘は、腸を動かす神経そのものが影響を受けて起こる、体のしくみの問題です。原因は一つではありません。しくみを知り、今日から自宅でできる立て直し方を整理します。

「出ない」が、毎日つらい。
繊維の多い食事を心がけ、市販の便秘薬も試した。それでもお腹の張りが取れず、トイレでいきんでも出ない。食べる量が減り、気持ちまで沈んでしまう——。便秘は「食生活の乱れ」と思われがちですが、パーキンソン病の便秘は、それだけでは説明できないことがあります。
お伝えしたいのは、便秘は意志の弱さではなく、腸を動かす神経のはたらきが変化することで起こる、体のしくみの問題だということです。
実際に、パーキンソン病では60〜80%の方が便秘を経験するとされ、しかも運動症状が出るより10〜20年ほど前から、便秘だけが先に始まっていることも報告されています。つまり便秘は、活動量が減ったから起こる二次的な症状というだけでなく、病気そのものと深く結びついた症状のひとつなのです。まずはそのしくみを知り、そのうえで今日からできる工夫を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
便秘の原因は、ひとつではない。
パーキンソン病の便秘は、いくつもの要因が重なって起こるのが特徴です。原因を一つに決めつけず、自分にあてはまるものを整理してみましょう。
| 原因のタイプ | どういうことか |
|---|---|
| 通過遅延型 | 腸を動かす神経のはたらきが変化し、便が大腸を進む速さそのものがゆっくりになる |
| 出口通過障害型 | いきむときに肛門まわりの筋肉がうまく連携せず、便が出口まで来ても出にくい |
| 水分・食事の要因 | 飲み込みへの不安から水分を控えがちになる、食事量そのものが減ることがある |
| 薬剤の影響 | 治療薬やあわせて使う薬の中に、便秘を起こしやすいものが含まれることがある |
| 活動量・姿勢の要因 | 動く機会が減って腹圧をかける力が弱まる、円背などで腹部が圧迫されやすくなる |
ここで大切なのは、「通過遅延型」と「出口通過障害型」では、有効な工夫の方向性が違うという点です。ゆっくり進む便を促すには生活リズムや水分・運動が助けになり、出口で詰まる感覚が強い場合は姿勢やいきみ方の工夫が助けになります。両方が重なっている方も少なくありません。次の章から、それぞれに対応する立て直し方を見ていきましょう。

STROKE LABの視点:腸を動かす3つのスイッチ。
腸は、一日じゅう均等に動いているわけではありません。動きやすいタイミングに、体の側から働きかけると、無理なく便通を促しやすくなります。1日のリズムに沿った3つのスイッチを押していきましょう。
スイッチ1:朝、起きてすぐの水と体幹ひねり。起床後にコップ1杯の水を飲むと、胃に食べ物が入った刺激で腸が動き出す反応(胃結腸反射)が起こりやすくなります。そこに座ったまま体幹を左右にゆっくりひねる動きを10回ほど加えると、より腸への刺激になります。
スイッチ2:日中、座りっぱなしを崩す。1時間に一度は立ち上がる、テレビを見ながら足踏みをする、といった小さな動きの積み重ねが、腸の動きを保つ助けになります。腹部や骨盤を軽く動かす体操も効果的です。
スイッチ3:トイレで、前傾姿勢といきみのタイミング。便座に座ったら、かかとを少し上げた足台の上に足を乗せ、上半身を前に倒します。この姿勢は肛門から直腸までの角度がまっすぐに近づき、出口の通過障害があっても出しやすくなるとされています。息を止めて力むより、息を吐きながら下腹部に力を入れるいきみ方のほうが、体への負担が少なく済みます。
3つとも完璧にやろうとする必要はありません。まずは自分の生活に取り入れやすいものからひとつ、続けてみてください。合う方法や強度は人によって異なるため、体調に合わせて作業療法士と一緒に調整するのがおすすめです。

自宅でできる、生活の工夫。
3つのスイッチに加えて、日々の積み重ねが便通を左右します。無理のない範囲で、できるものから取り入れてみてください。
水分は目安をもって。1日の目安として900ml以上の水分摂取を意識してみましょう。飲み込みに不安がある方は、とろみをつける、少量を回数多く摂る、といった工夫も有効です。食物繊維は種類を意識して。野菜・海藻・きのこ・全粒穀物などをバランスよく。水分が不足した状態で不溶性の繊維だけを増やすと、かえってお腹が張ることもあるため、水分とあわせて摂ることが大切です。お腹のマッサージ。仰向けで、おへそを中心に「の」の字を描くように、時計回りに手のひらでやさしくさすります。腸の走行に沿ったこの方向で行うのがポイントです。

パーキンソン病患者の生活習慣とリスクを調べた研究では、水分摂取量が少ないことと便秘の重さとの間に関連がみられたと報告されています。パーキンソン病の方は、飲み込みへの不安などから水分を控えがちになりやすい傾向があることも指摘されています。
限界:観察研究であり、水分摂取だけが便秘の原因とは限りません。心臓や腎臓の状態によって水分摂取量に制限がある方もいるため、水分を増やす際は主治医に確認してください。
発酵食品・プロバイオティクスを試す。ヨーグルトや発酵乳など、乳酸菌・ビフィズス菌を含む食品を日常的に取り入れることも選択肢のひとつです。次のような研究報告もあります。
パーキンソン病に伴う便秘のある方を対象にした無作為化比較試験では、複数の乳酸菌・食物繊維を含む発酵乳を4週間摂取した群で、プラセボ群より完全な排便の回数が有意に増えたと報告されています。
限界:対象は120名の一施設研究で、効果には個人差があります。便の硬さそのものへの効果は明確ではありませんでした。特定の製品や菌株を推奨するものではなく、体質に合わない場合もあるため、続ける場合は体調の変化をみながら行ってください。
水分・食事・姿勢を整えても改善が乏しい場合、出口の筋肉がうまく連携できていない「出口通過障害型」が関わっていることがあります。専門リハビリでは、原因のタイプを見極めながら、大きく3つの方向から組み立てます。
1. いきみ方の再学習。息を止めて力むのではなく、呼吸と下腹部の力の入れ方を連動させ、出口の筋肉が自然にゆるむいきみ方を、体で覚え直していきます。
2. 体幹・骨盤の運動療法。体幹の回旋や骨盤の動きを引き出す運動を通じて、腸そのものへの物理的な刺激と、腹圧をかける力の両方を高めていきます。
3. 生活リズムの調整。その方の1日の過ごし方を確認し、水分・食事・活動のタイミングを、腸が動きやすいリズムに近づくよう一緒に組み立てます。
STROKE LABが軸足を置くのは、原因のタイプを見極めたうえで、生活の工夫と体の使い方の両輪で立て直すという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活の側から支えます。
脳リハ.comのYouTubeでは、体幹や骨盤まわりを動かす体操を配信しています。腸のスイッチのひとつとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、その方の便秘が通過遅延型・出口通過障害型のどちらに近いか、生活のどの場面が引き金になっているかを一緒に確認し、姿勢・いきみ方・運動・生活リズムを、その人に合わせて調整します。薬の調整は主治医の役割で、私たちは体の使い方と生活の側から支えます。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
次のような場合は、工夫を試す前に医療機関を受診してください。血便がある。体重が急に減る。お腹が強く痛む、または張って苦しい。吐き気や嘔吐がある。これまでと明らかに違う便通の変化が続く。これらは便秘以外の原因が隠れている可能性があるため、自己判断は禁物です。それ以外の慢性的な便秘についても、市販薬に頼り続ける前に神経内科や主治医、薬剤師に相談することをおすすめします。

よくある質問。
Q. パーキンソン病だと、なぜ便秘になりやすいのですか?
Q. 水をたくさん飲めば、便秘は良くなりますか?

Q. いきんでも出ないのですが、これも便秘の一種ですか?
Q. 薬のせいで便秘になることはありますか?
Q. 運動やリハビリは便秘に効果がありますか?
Q. 便秘で、すぐに受診したほうがよいのはどんなときですか?
便秘の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。便秘のタイプや生活場面を一緒に確認し、水分・姿勢・いきみ方・運動を、その人に合わせて組み立てます。薬の調整は主治医を尊重し、体の使い方と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
一緒に立て直せるものです。

便秘は、口にしにくい悩みです。食事に気をつけているのに出ない、いきんでも出ない——そのつらさを「自分の頑張りが足りないせいだ」と抱え込んでしまう方に、たくさん出会ってきました。
お伝えしたいのは、パーキンソン病の便秘は、腸を動かす神経のはたらきの変化からくる、体のしくみの問題だということです。原因のタイプを見極め、水分・姿勢・運動という生活の側から、少しずつ立て直していくことができます。
便秘でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う立て直し方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。血便・体重減少・強い腹痛などがある場合は、必ず医療機関を受診してください(最終確認日:2026年8月27日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Ueki A, Otsuka M. Life style risks of Parkinson’s disease: association between decreased water intake and constipation. J Neurol. 2004;251(Suppl 7):vII18-23.(水分摂取量の少なさと便秘の重さとの関連を報告。第1エビデンスボックスの出典)
- Barichella M, Pacchetti C, Bolliri C, et al. Probiotics and prebiotic fiber for constipation associated with Parkinson disease: An RCT. Neurology. 2016;87(12):1274-1280.(プロバイオティクス・食物繊維を含む発酵乳で完全な排便回数が有意に増加したことを報告した無作為化比較試験。第2エビデンスボックスの出典)
- Pedrosa Carrasco AJ, Timmermann L, Pedrosa DJ. Management of constipation in patients with Parkinson’s disease. NPJ Parkinsons Dis. 2018;4:6.(便秘の原因が水分摂取・薬剤・疾患由来の機序など複合的であることを整理したシステマティックレビュー)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)