パーキンソン病で夜眠れない・途中で起きる|原因と対策・自宅でできる工夫
眠れないのは、気合いのせいではありません。
寝返りが打てない。何度も目が覚める。夢のとおりに体が動いてしまう——パーキンソン病の夜間の困りごとは、原因が一つではなく、タイプによって効く工夫が違います。ご本人とご家族が、今夜から試せる整理と工夫をまとめました。

「夜がつらい」と、言えなかった。
ベッドの中で寝返りが打てず、何度も目を覚ましては天井を見つめている。トイレに何度も起き、そのたびに気持ちが焦る。ときには、隣で眠るご家族が、夢の内容そのままに動く手足に驚いて目を覚ます——。夜の困りごとは人に話しにくく、「歳のせいだろう」「気の持ちようだろう」と、一人で抱え込んでいる方が少なくありません。
でも、知ってほしいのです。夜眠れない・途中で起きるという症状には、パーキンソン病に特有のいくつもの原因があり、原因に合った工夫で変わることがあるということを。
パーキンソン病をお持ちの方の多くが、病気の進行のどこかの段階で睡眠の困りごとを経験するといわれています。夜間の症状は、日中の動きにくさとは違う特有のしくみで起こることが多く、対策も一様ではありません。まずはどんな原因があるのかを整理し、そのうえでご自身に近いタイプを見つけていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
夜眠れない、様々な原因。
「眠れない」とひとことで言っても、パーキンソン病では背景にある原因がいくつも考えられます。代表的なものを整理すると、次のようになります。
| 原因 | どういうことか |
|---|---|
| 夜間無動・寝返り困難 | 薬の効果が弱まる夜間に、体が動かしにくくなり寝返りが打てない |
| レム睡眠行動障害(RBD) | 夢の内容のままに体が動いたり、声が出たりする |
| 頻尿 | 自律神経の乱れで膀胱の働きが不安定になり、何度もトイレに起きる |
| むずむず脚・周期性の脚の動き | 脚の違和感で寝つけない、眠っている間に脚が繰り返し動く |
| 夜間の痛み・こむら返り | 筋肉のこわばりや、足がつる症状で目が覚める |
| 不安・気分の落ち込み | 寝つきが悪くなったり、夜中に不安で目が覚めたりする |
| 睡眠時無呼吸・いびき | 呼吸が止まったり浅くなったりして、眠りが浅くなる |
これらは、一つだけでなく、複数が重なって起こることも珍しくありません。だからこそ「眠れない」を十把一絡げにせず、自分の困りごとがどれに近いかを見ていくことが、対策の第一歩になります。

STROKE LABの視点:まず「3つのタイプ」を見極める。
先ほどの原因は数が多く、一度に対策しようとすると混乱してしまいます。そこでSTROKE LABでは、夜の困りごとを「動けない夜」「目覚める夜」「夢と闘う夜」の3タイプに整理してお伝えしています。ご自身やご家族が、どのタイプに近いか思い浮かべながら読んでみてください。次の章で、タイプごとの具体的な工夫を紹介します。
タイプA:動けない夜。寝返りが打てず、同じ姿勢のままつらくなって目が覚める。体が固まったような感覚があり、朝方に特に強く出ることもあります。
タイプB:目覚める夜。頻尿、むずむず脚、痛みやこむら返りなど、何らかの刺激で途中に何度も目が覚めてしまう。原因は複数のことも多いタイプです。
タイプC:夢と闘う夜。夢の内容そのままに手足が動いたり、声が出たりする。本人より先に、そばで寝ているご家族が気づくことが多いタイプです。
複数のタイプが重なっている方もいますし、時期によって強く出るタイプが変わることもあります。「今夜どのタイプが一番つらいか」を意識するだけでも、次に紹介する工夫が選びやすくなります。

タイプ別・自宅でできる工夫。
ここからは、タイプごとに今日から試せる工夫を紹介します。すべてを一度に取り入れる必要はありません。自分に近いタイプから、できそうなものを一つずつ試してみてください。
・シーツやパジャマを、摩擦の少ないサテンや絹に近い素材に変える。体が滑りやすくなり、寝返りの負担が減ります。ただしシーツとパジャマの両方をサテンにすると滑りすぎることがあるため、どちらか一方から試すのがおすすめです。
・かけ布団は、絡まりやすい厚手のものより、軽くて動かしやすいものに。ベッド柵をつかまり手代わりに使うのも有効です。
・就寝前の薬の効き方に波がある場合は、薬の種類やタイミングの調整で改善することがあります。自己判断で量を変えず、主治医に「夜間、体が動かしにくい」と具体的に伝えてください。

・頻尿が気になる方は、就寝の2〜3時間前から水分を控えめにし、寝る直前にトイレを済ませておきます。夜間の移動が不安なときは、足元をやわらかい光で照らす、ベッド脇にポータブルトイレを置くといった工夫も助けになります。
・むずむず脚には、就寝前の軽い脚のストレッチや、ぬるめのお風呂での温めが助けになることがあります。カフェインの摂取は日中も含めて控えめにするとよいでしょう。
・こむら返りや痛みには、ふくらはぎを軽く伸ばすストレッチや、温めたタオルでの局所的なケアが役立つことがあります。頻繁に続く場合は、原因の確認のため受診をおすすめします。

・ベッド周りの安全を優先します。枕元の鋭利なものを片づける、ベッドの角にクッション材を置く、必要であれば低いベッドや床に近いマットレスに変えるといった対策で、けがのリスクを減らせます。
・ご家族が一緒に寝ている場合は、無理に隣で寝続けるのではなく、一時的にベッドを分ける選択肢も安全のために検討してよいことです。
・この症状は、運動症状が目立つ前から現れることもある、パーキンソン病に関連が深い症状です。「ただの寝相」と見過ごさず、いつ・どんな様子だったかを記録し、神経内科や睡眠の専門外来に相談してください。

これらに加えて、日中に体をしっかり動かしておくことは、どのタイプにも共通して助けになる基本の工夫です。運動の具体的なメニューは、体操・自主トレ大全を参考にしてください。
パーキンソン病の方を対象に、筋力トレーニングと軽い運動を組み合わせた高強度の運動を週3回・16週間続けたグループと、睡眠に関する助言のみを受けたグループを比べた無作為化比較試験では、運動を続けたグループで、眠っている時間の効率や深い眠りの割合など、機器で測った客観的な睡眠の指標が有意に改善したと報告されています。
限界:対象人数は多くなく(各群27〜28名)、専門家による監督下での運動が前提です。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。運動は薬による治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。
自宅での工夫が、その場をしのぐための環境調整だとすれば、専門施設で目指すのは、動作分析にもとづく個別の運動処方と、生活場面に合わせた立て直しです。夜間の症状への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 動作分析にもとづく運動処方。寝返りや起き上がりの動作を分析し、その方に必要な筋力・柔軟性・動作パターンを見極めたうえで、日中の運動メニューを個別に組み立てます。
2. 生活場面に基づいた環境調整。実際の寝室・ベッド・動線を確認し、その方の体格や動作の癖に合わせて、寝具や配置を具体的に提案します。
3. ご家族を含めた安全教育。特にタイプCのような症状では、ご家族の理解と備えが安心につながります。ご家族への説明や、記録の取り方も一緒にお伝えします。
STROKE LABが軸足を置くのは、その方の動作と生活の両面から、夜の困りごとの原因に働きかけるという考え方です。薬の調整は主治医の役割であり、私たちは運動と生活の側から支えます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。
脳リハ.comのYouTubeでは、日中に体を大きく動かす体操を配信しています。夜の眠りやすさの土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、簡単な睡眠に関する質問紙や、ご本人・ご家族からの聞き取りをもとに、夜間の困りごとがどのタイプに近いかを整理します。そのうえで、日中の運動処方と、寝室の環境調整を組み合わせて提案します。薬の効き方に波がある場合は、主治医への情報提供も一緒に行い、チームで支える体制を大切にしています。

早朝の動きにくさが強いパーキンソン病の方を対象に、24時間持続する貼り薬タイプの薬剤を用いた無作為化比較試験では、プラセボと比べて夜間の運動症状の指標が改善し、あわせて睡眠に関する評価点も有意に改善したと報告されています。夜間の動きにくさそのものへの医学的な治療が、眠りにも良い影響を与えうることを示す結果です。
限界:これは薬剤治療の研究であり、薬の種類や使い方は主治医が個別に判断するものです。効果や副作用には個人差があります。自己判断で薬を変更・追加せず、夜間の症状の詳しい内容を主治医に伝えたうえで相談してください。
受診の目安は、夢のとおりに体が動いてけがの危険がある、いびきや呼吸の乱れが気になる、日中の強い眠気で生活に支障が出ているといったときです。これらは睡眠の専門的な検査で原因を確かめたほうがよいサインです。自己判断せず、神経内科や睡眠の専門外来に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. 夜に何度も目が覚めるのは、パーキンソン病のせいですか?
Q. 寝返りが打てず、体が固まったように動けないのはなぜですか?
Q. 夜中に大声を出したり、手足を激しく動かしたりすることがあります。心配ですか?
Q. 自宅でできる、夜間の工夫はありますか?
Q. 夜間の症状は運動やリハビリで良くなりますか?
Q. 夜眠れないことを、家族にどう伝えればよいですか?
夜の相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。夜間の困りごとを一緒に整理し、タイプに合わせた日中の運動と、寝室の環境調整を組み立てます。必要に応じて、ご家族への説明や主治医への情報提供もサポートします。薬の調整は主治医を尊重し、運動と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
一人で抱えなくて大丈夫です。

夜眠れないという相談は、診察のときにはつい後回しにされがちです。昼間の動きにくさに比べて、説明しづらいからかもしれません。でも、夜がつらいと、日中の意欲や体力にも影響します。決して軽い問題ではありません。
お伝えしたいのは、夜の困りごとには、パーキンソン病ならではの原因があり、タイプに合わせた工夫で変わることがあるということです。すべてを一度に解決しようとせず、できることから一つずつ。
夜のことでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面をそのまま題材に、その方に合う工夫を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。夜間の症状には複数の原因が重なることも多く、内容は一般的な情報です。ご自身の状態については、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月27日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Parkinson’s Foundation:Sleep Disorders(寝返り困難時のサテンシーツ等の環境調整に関する記載を参照)
- Amara AW, Wood KH, Joop A, et al. Randomized, Controlled Trial of Exercise on Objective and Subjective Sleep in Parkinson’s Disease. Mov Disord. 2020;35(6):947-958.(高強度運動が客観的な睡眠指標を改善したと報告。第4章エビデンスボックスの出典)
- Trenkwalder C, Kies B, Rudzinska M, et al. Rotigotine effects on early morning motor function and sleep in Parkinson’s disease: a double-blind, randomized, placebo-controlled study (RECOVER). Mov Disord. 2011;26(1):90-99.(薬剤による早朝の運動症状改善が睡眠評価点の改善と関連したと報告。第5章エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)