パーキンソン病でベッドから起き上がれない|原因と対策・自宅でできる工夫
起きようとするから、動けなくなる。
朝、布団の中で体が固まったように動かない。パーキンソン病では、寝返りや起き上がりが難しくなることがあります。一気に起きようとせず、動作を区切ると体は動き出しやすくなります。しくみと、今日から自宅でできる工夫を整理します。

布団の中で、動けなくなる。
目は覚めているのに、寝返りが打てない。腕や脚に力が入らず、ベッドの上でもがくうちに時間だけが過ぎていく。家族を呼ぶのも申し訳なく、一人で何とかしようとして、余計に疲れてしまう——。特に朝は、その大変さが強く出やすい時間帯です。
でも、知ってほしいのです。これは珍しいことではなく、動作の順序と環境を少し変えるだけで、動き出しやすくなるということを。
パーキンソン病では、寝返りや起き上がりが難しくなることがあります。ある研究では、パーキンソン病の方の約66%が、ベッドからの起き上がりに困難を感じていると報告されています。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
起き上がりにくくなる、しくみ。
寝返りや起き上がりは、体幹をひねりながら、腕・脚・体幹を順番に協調させる複雑な動作です。パーキンソン病でみられる症状は、この動作の一つひとつに影響します。特徴を整理しておきましょう。
| 要因 | 起き上がりへの影響 |
|---|---|
| 動作緩慢 | 動き始めるまでに時間がかかり、一連の動作がゆっくり・小さくなる |
| 体幹・体の固縮 | 体幹をひねる動きが特にこわばりやすく、寝返りが打ちにくくなる |
| 朝のオフ症状 | 睡眠中は服薬できず、朝は薬の効果が切れやすい時間帯にあたる |
| 寝具の摩擦 | 体を滑らせにくい寝具では、ただでさえ小さい動きがさらに止まりやすい |
米国の研究では、パーキンソン病の方は、健常な高齢者に比べて、横向きに転がるように寝返る「ロールオフ」という起き上がり方をあまり使わず、代わりに両脚を同時に持ち上げる動き方をとる傾向があると報告されています。体幹をひねる動きが苦手になり、体を一枚板のように起こそうとしてしまうということです。ここに、立て直しのヒントが隠れています。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

STROKE LABの視点:動作を「3つの区切り」に分ける。
起き上がりでいちばん止まりやすいのは、仰向けから一気に体を起こそうとする瞬間です。一つの大きな動作ではなく、小さな動作の連続だと捉え直すことで、動き出しやすくなります。次の3ステップに分けてみましょう。
ステップ1:ひざを立てて、横向きに転がる。両ひざを立て、その勢いを使って、起き上がりたい側へ体をゴロンと横に転がします。腕を先に横へ伸ばしておくと、体がついてきやすくなります。
ステップ2:脚をベッドの外に下ろす。横向きのまま、両脚をベッドの端から外に下ろします。脚の重みが、上体を起こす助けになります。
ステップ3:腕で押して、上体を起こす。下側の腕でマットレスを押しながら、脚が下がる重みに合わせて上体を起こします。起きた後は、すぐに立たず、端に座って一呼吸おきましょう。
それぞれの区切りで、動き出す前に「1・2・3」と声に出して数えると、体が動くきっかけになります。慣れてきたら、区切りを意識しなくても一連の流れでできるようになっていきます。合う手順や声かけの言葉は人それぞれなので、作業療法士と一緒に自分に合う形に調整すると近道です。

ベッド周りの、環境整備。
動き方を変えるだけでなく、ベッド周りの環境を整えると、さらに起き上がりやすくなります。今日から見直せるポイントを挙げます。
寝具や寝間着は、サテンなどすべりやすい素材にすると、体を転がす動きが小さな力でできるようになります。シーツだけをすべりやすい生地に変える方法もあります。ベッドの脇には手すりやベッド柵を設置し、腕で引き寄せたり押したりする支えにしましょう。ベッドの高さは、端に座ったときに足の裏がしっかり床につく高さに調整すると、立ち上がりまで安定します。夜間はセンサーライトなどで手元が見えるようにしておくと、動作の見通しが立ちやすくなります。日中に体や体幹を動かしておくことも、寝返りのしやすさにつながるので、体操・自主トレ大全もあわせて活用してください。

パーキンソン病の方39名の起き上がり動作を撮影して分析した研究では、健常な高齢者と比べて、横向きに転がる「ロールオフ」という起き上がり方を使う頻度が有意に低く、代わりに両脚を同時に持ち上げる動き方をとる傾向がみられたと報告されています。
限界:観察研究であり、この動き方の違いが起き上がりの難しさの原因か結果かは、この研究だけでは断定できません。動き方には個人差があり、体格や関節の状態によっても異なります。
自宅での工夫が、環境を整えてその場で起き上がりやすくする代償だとすれば、専門施設で目指すのは、体幹をひねる動き自体を繰り返し練習し、少ない支えでも起きられる状態に近づける回復的アプローチです。起き上がりへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 短時間・高頻度の反復練習。一回を長く行うより、短い練習を1日に数回繰り返すほうが動作の改善につながりやすいという報告があり、それを踏まえて練習量を組み立てます。
2. 体幹の回旋を引き出す運動。体幹をひねる感覚そのものが乏しくなっている場合、寝返り以外の場面でも回旋を伴う運動を取り入れ、動きの幅を底上げします。
3. 動作開始のきっかけづくり。言葉のかけ声やリズムなど、その人に合った「動き出しの合図」を見極め、支えを段階的に減らしていきます。
STROKE LABが軸足を置くのは、短い練習を積み重ねて動作のパターンそのものを底上げしながら、環境の支えを少しずつ外していくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。
パーキンソン病の入院患者を対象に、1回30分の起き上がり練習を1日3回、7日間(計21回)行った研究では、寝返り・起き上がりの動作評価スコアが、練習前と比べて有意に改善したと報告されています。短時間の練習を、日中に繰り返し行うことの意義を示す報告です。
限界:対照群を置かない、少人数の一群のみの研究です。改善が練習そのものによるものかは、この研究だけでは断定できません。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。集中的な練習には専門的な評価と指導が前提です。
脳リハ.comのYouTubeでは、体幹をひねる動きを含む体操を配信しています。寝返りの土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
専門のリハビリでは、実際の寝室で困っている動作を一緒に確認し、寝具・ベッドの高さ・手すりの位置、そして動作の順序を、その人の体格や生活に合わせて調整します。「実際に困っている時間帯・場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは動作と生活環境の側から支えます。
受診の目安は、朝だけ特に起き上がれない、日中には問題なく動けるのに寝る前後だけこわばりが強いといった変化がある場合です。これは薬の効果が切れる時間帯とかぶっている、いわゆるオフの可能性があり、薬の種類やタイミングの調整で改善することがあります。また、急に起き上がれなくなった、転倒を繰り返すようになったといった変化も、自己判断せず主治医に相談してください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

よくある質問。
Q. パーキンソン病でベッドから起き上がれないのは、なぜですか?
Q. いきなり起き上がろうとすると動けなくなるのですが、コツはありますか?
Q. 自宅でできる工夫はありますか?
Q. 朝、特に起き上がりにくいのはなぜですか?

Q. 起き上がりの練習やリハビリで良くなりますか?
Q. 家族はどこまで手伝えばよいですか?

起き上がりの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている時間帯・場面を一緒に確認し、動作の手順・環境・体幹の運動を、その人に合わせて組み立てます。実際の寝室の状況を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、動作と生活環境の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
動き方が違うだけかもしれません。

朝、ベッドから起き上がれずに家族を待たせてしまう。そのたびに申し訳なさを感じ、自信をなくしてしまう方に、たくさん出会ってきました。「一人で何とかしなければ」と力任せに起きようとして、かえって動けなくなる姿も、よく見てきました。
お伝えしたいのは、一気に起きようとするから動けなくなるのであって、動作を区切れば体は動き出すということです。転がる、下ろす、押す。その順番と、ちょっとした環境の工夫で、起きられる朝は増やせます。
起き上がりでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている時間帯や場面そのものを題材に、その方に合う動き方を一緒に見つけます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。起き上がりの困難には他の原因が隠れていることもあります。急激な悪化や転倒の危険を感じる場合は、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月17日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Cole MH, et al. How People with Parkinson’s Disease Get Out of Bed. Physical & Occupational Therapy in Geriatrics. 2009;27(5):324-338.(ロールオフ戦略の使用頻度低下と、両脚同時挙上の傾向を報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
- Sankarapandian J, et al. Short Duration, Intensive Bed Mobility Training in Idiopathic Parkinson’s Patients—One Group Pre-post Test Study Design. Journal of Clinical and Diagnostic Research. 2019;13(10).(短時間・高頻度の起き上がり練習で動作評価スコアが改善したと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)