パーキンソン病と運転免許の更新|診断書と手続き
診断は、それだけで免許を奪いません。
更新のお知らせに同封された質問票を見て、手が止まった。そんな方は少なくありません。パーキンソン病と診断されたことだけを理由に、免許が自動的に取り消されることはありません。症状が運転にどう影響するかを、一人ひとり個別に確認する制度です。しくみと手続きの流れ、今日から準備できることを整理します。

更新のお知らせが、届いた。
免許更新のはがきに同封された質問票。「一定の病気にかかっていますか?」という欄を見て、正直に書けば免許を取り上げられるのではないか、と不安になった——そんな声を、診療の現場でもよく耳にします。運転は通院や買い物、仕事など、生活そのものを支えている方が多く、免許という言葉だけで気持ちが大きく揺れるのは自然なことです。
でも、まず知ってほしいのです。パーキンソン病という診断名だけで、免許が自動的に取り消されることはないということを。
現在の運転免許制度は、特定の病名によって一律に免許を拒否するしくみではなく、症状が実際に安全な運転を妨げるかどうかを、一人ひとり個別に確認するしくみになっています。まずはこの制度の全体像を整理し、そのうえで、更新のときに実際に何をすればよいかを具体的に見ていきましょう。パーキンソン病のリハビリ全体についてはリハビリ完全ガイドにまとめています。
「一定の病気等」制度の、しくみ。
道路交通法では、自動車の安全な運転に必要な認知・予測・判断・操作のいずれかを欠くおそれがある症状を呈する病気を「一定の病気等」と位置づけています。パーキンソン病はここに含まれる可能性がある病気の一つですが、診断名そのものではなく、実際の症状の程度で可否が判断されるのがポイントです。制度の骨組みを整理します。

| 制度のポイント | 内容 |
|---|---|
| 質問票 | 免許の取得・更新時に、病気の症状などについて申告する書類 |
| 該当時の対応 | 安全運転相談窓口で、職員が症状などについて具体的に聞き取る |
| 追加の確認 | 症状によっては、検査(ドライブシミュレータ等)や診断書の提出を求められることがある |
| 虚偽申告の罰則 | 質問票に虚偽の記載をした場合、罰則(道路交通法第117条の4)が定められている |
もう一つ知っておきたいのが、医師による任意の届出制度です。主治医が診察の中で、患者さんが一定の病気等に該当し、運転に支障があると判断した場合、本人の同意がなくても公安委員会に届け出ることができる制度で、これは守秘義務違反にはあたりません。つまり、更新のタイミングだけでなく、日々の診療の中でも安全運転に関する話題が出ることがある、ということです。特別なことではなく、制度としてそう定められている、と理解しておくと気持ちが楽になります。
STROKE LABの視点:相談から診断書までの3ステップ。
制度を理解したところで、実際に更新が近づいたときの動き方を整理します。いきなり診断書を用意する必要はありません。順番を踏んで進めることで、無用な不安や手戻りを減らせます。
ステップ1:自分の状態を、更新前にメモにしておく。震えや動作の遅さがいつ強くなるか、日中の眠気の程度、幻視や物忘れが気になるかどうかなど、日頃の様子を簡単に書き出しておきます。主治医に相談する際も、このメモがあると話がスムーズです。
ステップ2:質問票には、正直に記入する。該当する症状がある場合は、更新窓口の当日を待たず、事前に警察の安全運転相談窓口(安全運転相談室)に電話で相談することもできます。落ち着いて話せる環境で聞き取りを受けられます。
ステップ3:診断書が必要と案内されたら、指定様式を主治医へ。公安委員会指定の診断書様式が渡される場合は、それを持参し、日頃の症状や困っている場面を具体的に伝えたうえで作成してもらいます。自己判断で先に一般の診断書を用意する必要はありません。
相談窓口や検査の詳しい持ち物・予約方法は、都道府県ごとに異なります。お住まいの都道府県警察のホームページで「安全運転相談」を検索し、事前に電話で確認しておくと、当日慌てずに済みます。

診断書と、受診時に伝えること。
診断書の作成にあたって、主治医は日頃の外来の中で運転についてじっくり話す時間を取りにくいこともあります。運転に関わる情報を、こちらから具体的に伝えることが、実態に沿った診断書につながります。伝えておきたい項目を整理します。

| 伝える項目 | 具体例 |
|---|---|
| 服薬の内容 | ドパミンアゴニストなど、眠気を誘発しやすい薬を使っているか |
| 眠気・突発的な睡眠 | 日中に強い眠気があるか、前触れなく眠り込んだことがあるか |
| 幻視・妄想 | 実際にはないものが見える、疑いや思い込みが強くなる場面があるか |
| 動作の変動 | 薬の効きが弱まる時間帯に、すくみ足や動作の遅さが強く出るか |
| 実際の運転場面 | 駐車や右折など、困りごとを感じた具体的な場面があるか |
パーキンソン病の自動車運転に関する専門家の資料では、運転の実技能力には、震えなどの運動症状よりも、注意や判断といった認知機能のほうが強く関連するとした研究が紹介されています。震えや動作の遅さが軽くても油断せず、逆に運動症状が目立っていても、それだけで運転が不可能と決めつけないという、両面の見方が大切です。
限界:運転能力の評価は年齢や合併症、個々の運転経験によっても左右され、一つの研究結果がすべての方にあてはまるわけではありません。最終的な可否は、専門的な検査と個別の診察によって判断されます。
また、レム睡眠行動障害(睡眠中に大きな声や身体の動きが出る症状)も、パーキンソン病でよくみられる非運動症状の一つです。直接運転に影響するものではありませんが、日中の眠気や睡眠の質と関わることがあるため、気になる場合は主治医に伝えておくとよいでしょう。運動症状だけでなく、こうした非運動症状も含めて総合的に見てもらうことが、実態に近い診断につながります。
STROKE LABは、免許の可否を判断する立場ではありません。私たちができるのは、主治医への相談や診断書作成の前段階で、ご本人の状態を客観的に整理するお手伝いです。具体的には、次のような視点で関わります。
1. 身体機能の評価。関節可動域、筋力、反応の速さ、姿勢の安定性など、運転動作に関わる基本的な身体機能を確認し、変化を記録します。
2. 生活場面の困りごとの整理。実際にどんな場面で不安を感じるか、ご本人・ご家族の話を丁寧に聞き取り、主治医への相談メモとして整理するお手伝いをします。
3. ご家族の心配への対応。「運転をやめてほしい」と感じているご家族と、運転を続けたいご本人との間で、感情的な対立になりやすいテーマです。第三者として、双方の思いを整理する場を持つこともできます。
運転の可否そのものは、あくまで警察と主治医の判断です。私たちは、その判断のための材料を、ご本人・ご家族と一緒に丁寧に整えていく役割を担っています。
[図解挿入位置:診断書のために医師に伝える5項目]
脳リハ.comのYouTubeでは、手足の反応や姿勢を保つための体操を配信しています。運転を続けるかどうかにかかわらず、日常の身体機能の維持として役立ちます。
専門リハと、受診の目安。
運転に関わる相談は、更新の時期だけに限りません。日常の中で「以前と違う」と感じた時点が、相談を考えるタイミングです。次のような様子があれば、更新のタイミングを待たずに主治医へ相談することをおすすめします。
| 気になる様子 | 相談の目安 |
|---|---|
| 運転中にヒヤリとした | ブレーキが遅れた、車庫入れで戸惑ったなど、具体的な場面があった |
| ご家族が心配している | 同乗した家族から運転の様子について指摘を受けた |
| 質問票の記入に迷う | 該当するかどうか自分で判断がつかない項目がある |
運動症状そのものへの体系的なアプローチは体操・自主トレ大全に、専門的な自費リハビリの費用や施設選びは自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。あわせてご覧ください。

よくある質問。
Q. パーキンソン病と診断されたら、運転免許はどうなりますか?
Q. 免許更新時の質問票には、正直に書くべきですか?
Q. 診断書はどこでもらえますか?何を書いてもらえばいいのですか?
Q. 診断書の提出を求められたら、必ず免許を失うのですか?
Q. 家族として運転をやめてほしいと思ったら、どうすればいいですか?

Q. 運転をやめた後の生活の足は、どう考えればいいですか?

運転の不安は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。免許の可否そのものは判断できませんが、身体機能の評価や日常の困りごとの整理を通じて、主治医への相談や診断書作成の前段階を丁寧にお手伝いします。ご本人おひとりでも、ご家族とご一緒でもご相談いただけます。薬の調整や運転可否の最終判断は主治医・公安委員会の領域として尊重し、生活の側から支えます。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
だからこそ、丁寧に向き合いたい。

運転免許の話になると、ご本人の表情がふっと曇ることがあります。免許は移動の手段であるだけでなく、これまでの生活や自尊心そのものと結びついているからだと感じます。だからこそ、感情的に「危ないからやめて」と伝えるだけでは、うまくいかないことが多いのです。
お伝えしたいのは、診断名で決まるのではなく、一つひとつの状態を確かめながら進む制度になっているということです。不安なまま質問票を前にするより、状態を整理し、主治医や相談窓口と一緒に考える。その準備を、私たちも支えたいと思っています。
運転のことでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。ご本人とご家族、双方のお気持ちに寄り添いながら、できることを一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、警察庁・各都道府県警察の公表情報、道路交通法の条文、および国内外の研究・専門家資料と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。運転免許の可否に関する最終判断は、必ずお住まいの都道府県警察(安全運転相談窓口)と主治医にご確認ください(最終確認日:2026年8月10日)。
- 警視庁:一定の病気等に該当する方の受験・更新、安全運転相談
- 警察庁:一定の病気等に係る運転免許制度の在り方に関する有識者検討会 資料
- 日本作業療法士協会 運転と作業療法委員会:押さえておきたい!運転再開支援の基礎
- 武田篤(国立病院機構仙台西多賀病院 脳神経内科)「パーキンソン病とは?その自動車運転との関連は?」法務省講演資料,2024年7月26日
- Uc EY, et al. Impaired navigation in drivers with Parkinson’s disease. Brain. 2007;130(9):2433-2440.(パーキンソン病の運転能力と認知機能の関連について報告。第4動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)