パーキンソン病で電話の声が聞き取れないと言われる|発声の工夫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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パーキンソン病

パーキンソン病で電話の声が聞き取れないと言われる|発声の工夫

HYPOPHONIA

声は、出ています。届き方を、変えるだけです。

電話で「え?」と聞き返される。家族から「もっと大きな声で」と言われる。それはパーキンソン病の音声低下かもしれません。ご本人は普通に話しているつもりでも、呼吸と声の出し方を少し変えるだけで、届く声を取り戻せます。しくみと、今日から自宅でできる発声の工夫を整理します。

UPDATED2026
READ約9分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで)』(2025年・448頁)の著者が執筆しています。声の変化には他の原因もあります。気になる変化は自己判断せず、神経内科で確認してください。

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
音声低下は、声が小さく・こもって聞き取りにくくなる症状です
02
声を出す筋肉や呼吸の動きが小さくなる動作緩慢の一種で、震えとは別物です
03
自分の声の大きさを感じる感覚も変化しやすく、本人は自覚しにくいことがあります
04
大きく息を吸う・口を大きく開ける・短く区切る。この3つが基本です
05
声の変化は他の原因もあります。気になるときは神経内科へ
01
Can You Hear Me

「聞こえない」と、言われた。

A Patient’s Voice
「自分では普通に話しているのに、電話だと何度も聞き返されて」

孫からの電話で「もしもし」と言っても、何度も「え?」「もう一回言って」と聞き返される。家族との会食でも、声が通らず会話に入りづらい。自分では大きな声で話しているつもりなのに——。声が届かなくなる経験は、外出や人と話す気持ちそのものを萎縮させてしまいます。

でも、知ってほしいのです。これは音声低下という症状で、呼吸と話し方を少し変えるだけで、声はぐっと届きやすくなるということを。

パーキンソン病では、声が小さく、こもって、単調になる音声低下(低活動性発声障害)がみられることがあります。声を出す動作は、呼吸と喉・唇の細かい動きが組み合わさった作業で、その動きが少しずつ小さく・弱くなるために起こるのが音声低下です。まずはしくみを知り、そのうえで具体的な立て直し方を見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。

02
What Is Happening

音声低下の、しくみと特徴。

音声低下は、声を出す筋肉や呼吸が小さく・弱くなる動作緩慢の一種です。震えとは別のしくみで起こる点が大切で、混同すると対処を間違えてしまいます。特徴を整理しておきましょう。

特徴 どういうことか
声量が下がる 息の量と声帯の閉じ方が弱まり、音量そのものが小さくなる
自覚しにくい 自分の声の大きさを感じ取る感覚も変化し、「いつも通り」と感じやすい
単調・こもった声になる 抑揚が少なく、かすれたりこもったりして聞き取りにくくなる
場面で強く出る 電話・雑音の中・長く話す場面など、負荷が高い状況で特に目立ちやすい

ここに、立て直しのヒントが隠れています。本人の感覚がずれているなら、外からの手がかりで補えばよい。声量が下がるなら、意図的に「大きめ」を目標にすればよい。次の章から、この考え方を具体的な手順にしていきます。

03
Bring Your Voice Back

STROKE LABの視点:「届く声」を取り戻す3つの工夫。

音声低下の対処でいちばん手早く効くのが、呼吸・目標・確認の3つを話す前後に組み込むことです。自分の感覚だけに頼らず、外からの手がかりを使うのがポイントです。次の3ステップで、今日から練習できます。

Three Steps

ステップ1:話す前に、大きくひと呼吸吸う。声は息が動力です。話し始める前に、いつもより大きく息を吸ってから話すだけで、声量が保ちやすくなります。

ステップ2:「大きめ」を具体的な目標にする。「大きな声で」ではなく、「隣の部屋にいる家族に聞こえる声で」のように、届かせたい相手や距離を具体的にイメージして声を出します。

ステップ3:録音して、自分の耳で確認する。スマートフォンで短い会話を録音し、聞き返します。自分の感覚とのズレを知ることが、次に大きな声を出す手がかりになります。

好きな歌を歌う、新聞を音読するなど、楽しく続けられる方法で声を出す機会を増やすのもおすすめです。大切なのは、外からの手がかりを使って「届く声」の感覚を体で覚え、少しずつ自分の中の基準を調整していくこと。合う工夫の種類や強さは人それぞれなので、言語聴覚士や作業療法士と一緒に調整すると近道です。

04
How To Speak

話し方と、電話でのコツ。

呼吸と目標を整えたら、話し方と電話の使い方でさらに聞き取りやすくなります。合言葉は「大きく吸って、口を開けて、短く区切る」。一文を長くしないことが何より大切です。

話すときは、いつもより口を大きく開け、はっきりと動かすことを意識します。文章は短く区切り、区切りごとに息を吸い直すと、後半で声が消えるのを防げます。電話では、受話器やスマートフォンのマイク部分に口を近づけ、話し始める前に一度大きく息を吸ってから「もしもし」と言うと、最初の一声が届きやすくなります。姿勢を正して座ると、呼吸が入りやすくなり声も出しやすくなるので、体操・自主トレ大全で紹介している姿勢づくりの体操もあわせて活用してください。周囲のご家族は、聞こえないときに「え?」と繰り返すより、「もう少し大きな声で、お願いします」と具体的に伝えると、本人も調整しやすくなります。

Evidence
自分の声の大きさを、正しく感じ取りにくいという報告

パーキンソン病の方を対象にした研究では、実際の声の音量と、本人が感じている声の大きさとの間にズレがみられ、自分では十分な声量で話していると感じやすいと報告されています。これが、周囲から「聞こえない」と言われても本人が気づきにくい理由のひとつと考えられています。

限界:感覚のズレの程度には個人差があり、全ての方に同じように当てはまるわけではありません。声の変化の原因は音声低下以外にもあるため、気になる場合は専門家に確認してください。

出典:Fox CM, Ramig LO. Vocal sound pressure level and self-perception of speech and voice in men and women with idiopathic Parkinson disease. Am J Speech Lang Pathol. 1997;6(2):85-94
大きく吸って、口を開けて。声は、短く区切って届ける。

ここまでは、自宅でできる工夫でした。専門施設では、その先の回復的アプローチまで踏み込めます。
+

Second Track — At STROKE LAB
専門施設で、さらに期待できること
工夫を「使う」段階から、意識しなくても届く声が出せる段階へ。

自宅での工夫が、その場で声を届きやすくする代償的な方法だとすれば、専門施設で目指すのは、意識しなくても十分な音量が出せる状態に近づける回復的アプローチです。音声低下への働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。

1. 感覚の再調整。録音や機器を使った客観的なフィードバックで、本人の「大きい」の基準そのものを、実際の音量に近づけていきます。

2. 大きな発声の運動学習。あえて大きな声を繰り返し出す集中的な訓練で、脳が小さくしてしまう発声の幅を、呼吸・声帯・共鳴の全体から立て直します。

3. 姿勢と呼吸の土台。声を支える座位や体幹の姿勢、呼吸の深さを整え、発声が崩れにくい身体の下地をつくります。

STROKE LABが軸足を置くのは、大きな声を出す練習を集中的に繰り返し、フィードバックで本人の感覚を調整しながら、日常会話にも定着させていくという流れです。電話でも、雑踏でも届く声に近づけていく、その設計を専門的に組み立てます。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整は主治医の役割です。

Evidence
集中的な発声訓練で音量が改善し、2年後も効果が続いた研究

声の大きさに焦点をあてた集中的な発声訓練(LSVT LOUD)を受けた方を長期間追跡した研究では、訓練後に声の音量(音圧レベル)が有意に高まり、その効果の多くが2年後の評価でも維持されていたと報告されています。その場の工夫だけに頼らず、集中的に発声を繰り返し学習することで、持続的な変化をねらう考え方です。

限界:対象人数は多くなく、効果の程度や持続期間には個人差があります。集中的な訓練には決められた頻度や条件があり、専門的な評価と指導が前提です。発声訓練は薬の代わりではなく、組み合わせて使うものです。

出典:Ramig LO, Sapir S, Countryman S, et al. Intensive voice treatment (LSVT) for individuals with Parkinson disease: a 2 year follow up. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;71(4):493-498
Watch & Practice
姿勢と呼吸を整える体操を、動画で。

脳リハ.comのYouTubeでは、姿勢や呼吸を整える体操を配信しています。発声の土台づくりとして、無理のない範囲で習慣にしてみてください。

姿勢を整える体操を見る

05
Rehab & When To See A Doctor

専門リハと、受診の目安。

専門のリハビリでは、その人の話し方の癖や困る場面を一緒に確認し、呼吸の深さ、声を出す目標、録音などのフィードバックの方法を、その人に合わせて調整します。電話や家族との会話など「実際に困っている場面」を練習の題材にすると、生活にそのまま活きます。薬の調整は主治医の役割で、私たちは発声動作と生活の側から支えます。

受診の目安は、声の変化で生活に支障が出てきた、声だけでなく飲み込みにくさや動きにくさも出てきた、といったときです。声が小さくなる原因は音声低下だけとは限りません。自己判断せず、神経内科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。

06
FAQ

よくある質問。

Q. 電話で「聞こえない」と言われるのは、パーキンソン病のせいですか?

声が小さく、こもって聞こえにくくなる症状は、パーキンソン病でみられる音声低下(低活動性発声障害)のことがあります。声を出すための筋肉や呼吸の動きが小さく・弱くなる、動作緩慢と同じしくみで起こります。ただし声の変化には他の原因もあるため、気になるときは自己判断せず、神経内科で確認してください。

Q. 自分では大きな声のつもりなのに、なぜ聞こえないと言われるのですか?

パーキンソン病では、自分の声の大きさを感じ取る感覚そのものが変化しやすいことが分かっています。本人にとっては「いつも通り」でも、実際の音量は下がっていることが多く、これが自覚しにくい理由です。だからこそ、録音や周囲からの声かけといった外からの手がかりが役立ちます。

Q. 電話でも聞こえやすくするために、自宅でできる工夫はありますか?

あります。話す前にひと呼吸大きく吸う、口を普段より大きく開けて話す、短い区切りで話す、といった工夫が助けになります。電話では受話器やスマートフォンのマイクに口を近づける、話し始める前に一度大きく息を吸うのも効果的です。声の大きさを自分で確認しづらいため、録音して聞き返す練習もおすすめです。

Q. 音声低下は訓練で良くなりますか?

声の大きさに焦点をあてた集中的な発声訓練(LSVT LOUDなど)で音量が改善し、その効果が長期間維持されたという報告があります。ただし効果には個人差があり、進行に伴って変動することもあります。発声訓練は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。取り組み方は言語聴覚士や作業療法士に相談すると、自分に合う方法が見つかりやすくなります。

Q. 声の変化と、飲み込みにくさ(嚥下)は関係がありますか?

声を出す器官と、飲み込みに使う器官の一部は重なっているため、無関係ではありません。ただし全ての方に両方が同時に出るわけではなく、程度もさまざまです。むせやすさや食べにくさが気になる場合は、発声の相談とあわせて、嚥下の専門家(言語聴覚士や医師)に確認することをおすすめします。

Q. 音声低下は震えと同じものですか?

いいえ、別のものです。音声低下は声を出す筋肉や呼吸の動きが小さく・弱くなる動作緩慢の一種で、震え(振戦)は、じっとしているときに手などが震える症状で、しくみが異なります。両方が出ることもありますが、対処の考え方は違います。それぞれに合った工夫を、専門家と一緒に見つけましょう。
07
STROKE LAB

発声の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。困っている発声の場面を一緒に確認し、呼吸・目標設定・フィードバックの方法を、その人に合わせて組み立てます。電話や家族との会話など、実際の場面を題材にするので、練習がそのまま生活に活きます。薬の調整は主治医を尊重し、発声動作と生活の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

書籍『パーキンソン病の機能促進 動作分析から自主トレーニングまで』(医学書院)の表紙
Book
パーキンソン病の機能促進
動作分析から自主トレーニングまで
医学書院/2025年/448ページ

運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。

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Message from CEO
大きく息を吸うだけで、
声は変わります。
STROKE LAB代表 金子唯史

声が届かなくなると、電話に出るのが億劫になり、人と話す機会そのものを避けるようになってしまいます。「聞き返されるのがつらくて、外に出たくない」とおっしゃる方に、たくさん出会ってきました。

お伝えしたいのは、大きく息を吸うだけで、声は驚くほど届きやすくなることがあるということです。外からの手がかりを味方につけ、大きく吸って、口を開けて、短く区切る。ちょっとした工夫で、話せる場面はまだまだ広がります。

発声でお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。困っている場面そのものを題材に、その方に合う話し方を一緒に見つけます。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

無料相談を予約する

References

本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。声の変化には他の原因もあります。気になるときは、必ず神経内科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月7日)。

  • 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
  • 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
  • Fox CM, Ramig LO. Vocal sound pressure level and self-perception of speech and voice in men and women with idiopathic Parkinson disease. Am J Speech Lang Pathol. 1997;6(2):85-94.(実際の声量と本人の自己評価にズレがみられたと報告。第1動線・エビデンスボックスの出典)
  • Ramig LO, Sapir S, Countryman S, et al. Intensive voice treatment (LSVT) for individuals with Parkinson disease: a 2 year follow up. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;71(4):493-498.(集中的発声訓練により音量が有意に改善し、2年後も効果の多くが維持されたと報告。第2動線・エビデンスボックスの出典)
  • 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.
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