体力がないと言われる子|持久力・姿勢・呼吸から見る運動発達
すぐ疲れる・座りたがる子へ|動き続ける負担を、からだ全体から見る
少し走ると「疲れた」と言う。散歩の途中で座りたがる。園や学校で最後まで活動が続かない。そんな様子から、「体力がない」と言われることがあります。しかし、見えている疲れやすさには、持久力だけでなく、姿勢を支える負担、動き方の効率、呼吸と回復、集団でのペースが重なります。大切なのは、頑張らせる前に、どこでエネルギーを使いすぎているかを分けて見ることです。

「体力がない」を、一つの言葉で終わらせない。
園庭遊びの途中でしゃがむ。散歩で抱っこを求める。体育の後半になると姿勢が崩れる。こうした様子は、努力不足や気持ちの弱さだけでは説明できません。
子どもが活動を続けるためには、エネルギーを生み出す力だけでなく、姿勢を効率よく支え、呼吸し、速度を調整し、休んだ後に戻る力が必要です。
同じ距離を歩いても、体幹や足元を支えるために余分な力を使う子は負担が大きくなります。反対に、好きな遊びなら長く続くものの、集団の速さや指示が加わると疲れる子もいます。まずは「何分できたか」だけでなく、どの場面で、何が先に変わったかを見ます。
活動量の公衆衛生上の目安は健康づくりに役立ちますが、達成できないことだけで発達や病気を判断する基準ではありません。年齢、体調、睡眠、経験、環境を含めて考えます。
持久力・姿勢・呼吸の3つに分けて見る。
「体力」を細かく分けると、家庭で観察する点と専門施設で選ぶ支援が明確になります。以下の3領域は互いに独立しているわけではなく、一つが崩れるとほかの負担も増えることがあります。
| 見る領域 | 家庭で見られる様子 | 支援を変える手がかり |
|---|---|---|
| 持久力と回復 | 何分で止まるか、休むと戻るか、翌日まで疲れが残るか | 活動と休憩の比率、時間・距離・速度の進め方を変える |
| 姿勢と動作効率 | 頭が前へ落ちる、反り返る、腕振りが消える、歩幅が狭くなる | 姿勢を整えるだけでなく、目標動作の中で無駄な力を減らす |
| 呼吸と負荷調整 | 肩が上がる、息を止める、会話しにくい、休憩後も戻りにくい | 症状を確認し、活動強度、リズム、休憩、医学的評価の必要性を見直す |

見た目が同じ「息切れ」でも、変化の順序によって介入の優先順位は変わります。活動前から呼吸症状がある場合、負荷に対して急に強くなる場合は医学的評価を優先します。姿勢変化の後に呼吸が乱れる場合は、目標動作の中で動作効率とペースを見直します。
最初と数分後を比べ、最初に崩れる場所を見る。
立った瞬間や走り始めだけを見ても、疲れやすさの仕組みは分かりにくいことがあります。開始時、活動中、休憩直後、再開後を同じ課題で比べます。時間は診断の基準ではなく、変化の順序を確認するための目印です。
| 観察する時点 | 見るポイント | 支援にどう使うか |
|---|---|---|
| 開始前 | 睡眠、顔色、痛み、呼吸、参加意欲、最初の姿勢 | その日の体調と運動発達上の特徴を混同しない |
| 活動を続けた後 | 頭・胸郭・骨盤・足元、腕振り、歩幅、呼吸、表情のうち何が先に変わるか | 負荷を上げる前に、効率を妨げるボトルネックを仮説化する |
| 休憩直後 | 呼吸、会話、姿勢、表情がどの順で戻るか | 休憩の長さと再開条件を決める |
| 再開後 | 同じ質で戻れるか、短時間で再び崩れるか | 総量を増やすか、1回量をさらに小さくするかを判断する |

同じ遊びの開始時と終了前、休憩直後を短く撮影すると、姿勢と呼吸の順序、歩幅や腕振りの変化を共有しやすくなります。子どもが嫌がる場合や安全が確保できない場合は撮影を優先しません。
家庭では、疲れ切る前に終え、戻れる量をつくる。
家庭での役割は、専門的な負荷試験を行うことではありません。好きな遊びを使い、動きの質と親子の楽しさを保てる量を見つけます。調整するのは、時間、距離、速度、傾斜、道具、周囲の刺激のうち一つずつです。
| 避けたい関わり | 置き換え方 |
|---|---|
| 「体力がないから」と毎回限界まで行う | 質が崩れ始める前後を確認し、再現できる量へ戻す |
| 休憩を失敗や甘えとして扱う | 戻るための技能として、休む場所と再開の合図を決める |
| 姿勢だけを強く直し続ける | 姿勢、速度、道具、課題の難しさを一緒に調整する |
| 年齢の活動量目安と毎日比較する | 本人の参加、回復、生活への影響を継続して記録する |
疲れやすさが生活へ広がる時は、相談を考える。
疲れ方には個人差があります。相談の判断では、同年齢との一回の比較より、以前との変化、複数場面への広がり、回復のしにくさ、健康上の症状を重視します。
- 数週間以上続き、遊びや外出への参加が減っている
- 園・学校で頻繁に活動を離れる
- 姿勢や動きの崩れが毎回同じ順序で起こる
- 休憩しても再開しにくい
- 本人が失敗を予測して活動を避ける
- 胸痛、運動中の失神、強い動悸
- 呼吸困難、喘鳴、唇や顔色の変化
- 夜間の咳や呼吸症状、安静時にも続く息苦しさ
- 急な発達の後退、進行する筋力低下や左右差
- 体重減少、食欲低下、著しい倦怠感
研究は「体力」と「参加」を分けて考える。
この検索テーマに完全に一致する研究は多くありません。以下は主に発達性協調運動症(DCD)を対象とした近接領域の研究です。診断のない、すぐ疲れるすべての子どもへ直接当てはめることはできません。
WHOやCDCの活動量ガイドラインは、健康づくりの公衆衛生上の目標です。子ども一人ひとりの病気や発達を診断する閾値ではありません。数値へ合わせるために無理をさせるのではなく、安全で楽しく、年齢に合った活動へ参加できる環境をつくります。
疲れやすさを分け、参加へ戻す負荷を設計する。
専門施設の目標は、「疲れない身体」に正常化することではありません。本人と家族が選んだ活動を、安全に試し、途中で調整し、必要な休憩を使いながら参加し続けられることです。診断、投薬、心肺疾患の管理、検査は主治医が担い、リハビリは生活機能を併走します。
| 評価領域 | 確認する現象 | 介入選択への影響 |
|---|---|---|
| 身体・運動 | 体幹の揺れ、支持脚、腕振り、歩幅、速度を上げた時の代償 | 基礎運動だけでなく、歩行・走行・遊びの中で効率を変える |
| 疲労・回復 | 崩れ始め、休憩後の回復、再開後の維持、午前と午後の差 | 1回量、休憩、総量、実施時間帯を変える |
| 呼吸・自律調整 | 呼吸数、肩の挙上、息止め、会話、顔色、回復の遅れ | 医学的確認、強度、リズム、休憩条件を見直す |
| 注意・感覚・遂行 | 指示が増えた時、音や人が増えた時、二重課題での変化 | 運動負荷だけでなく、情報量と集団条件を調整する |
| 環境・参加 | 靴、荷物、階段、移動距離、待ち時間、休む場所、先生の声かけ | 機能改善を待たず、参加可能な環境へ同時に変える |
| 介入系統 | 対象となるボトルネック | 代表的な設計 | 生活で確認する変化 |
|---|---|---|---|
| 1. 動作効率 | 姿勢保持に余分な力を使う、疲労後に歩容が崩れる | 目標活動内で支持、重心移動、腕と体幹の協調を変え、その場で負担を比較する | 遊びの中断、階段後のもたれ、移動後の姿勢変化が減る |
| 2. ペーシングと回復 | 最初に飛ばしすぎる、休憩後に戻れない | 活動と休憩を可視化し、本人が止まる・戻る合図を選ぶ | 最後まで同じ速さでなくても、活動へ再参加できる |
| 3. 目標活動の持久性 | 動きの質は保てるが継続時間が短い | 本人が選んだ遊び・移動課題を反復し、時間・距離・速度の一要素を段階化する | 園庭遊び、散歩、体育で参加可能な時間が広がる |
| 4. 環境般化 | 施設ではできるが集団・移動・外出で崩れる | 刺激、待ち時間、荷物、動線、休憩場所、先生の合図を調整して実場面で試す | 帰宅後の疲弊、活動離脱、家族の介助負担が変わる |
「筋力が弱い」「体力がない」と単純化すると、子どもが高い運動コストで動いている理由を見逃します。私たちは同じ課題を開始時と疲労後で比べ、頭部・胸郭・骨盤・足元・腕振り・呼吸のどれが最初に変わるかを仮説化します。
たとえば、速度を少し落とすだけで腕振りと呼吸が保たれるなら、最初に長時間練習を追加するのではなく、効率を保てる速度で目標活動を反復します。姿勢を支える条件を変えても呼吸症状が強い場合は、負荷を止め、医学的評価との連携を優先します。
その場での反応を確認した後、園や家庭で同じ条件を短く試します。一定期間後には、訓練用の別課題ではなく、最初に困っていた散歩、園庭遊び、階段、体育を同じ観察項目で再評価します。
研究から一律の時間や回数を決めることはできません。開始時と終了時の動きの質、症状、成功率、回復、翌日の生活への影響を確認し、変える条件は一度に一つとします。休憩は練習の中断ではなく、再参加するための学習として扱います。

園・学校では、活動量だけでなく戻りやすさを支える。
園や学校での目標は、全員と同じ速度で休まず続けることだけではありません。本人が活動の始まりを理解し、必要な休憩を使い、再び集団へ戻れることも参加の一部です。
家庭と園・学校で共有する指標は一つか二つに絞ります。たとえば「園庭遊びの中断回数」「休憩後に戻れたか」「階段後に会話できるか」「帰宅後に横になる時間」など、生活で確認できる変化を選びます。保護者が療法士になる必要はありません。短く、続けやすく、親子関係を損なわない方法にします。

よくある質問。
Q. 体力がないと言われたら、病気や発達の問題なのでしょうか?
Q. 毎日たくさん走らせれば、体力はつきますか?
Q. 運動すると息が上がるのは、どこまで普通ですか?
Q. 姿勢の崩れと、疲れやすさは関係しますか?
Q. 家では元気なのに、園や学校でだけ疲れるのはなぜですか?
Q. どのような様子があれば相談した方がよいですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。小児リハでは、「体力がない」という結果だけを見て負荷を増やさず、活動中の姿勢、動作効率、呼吸、回復、注意、園・学校の環境を分けて評価します。そのうえで、本人と家族が大切にする遊び、体育、移動、外出へつながる支援を組み立てます。医学的な評価が必要な症状は医療機関を優先し、医療・教育との併用を前提に生活と動きの側から併走します。
参加へつながる手がかりに。

子どもがすぐ座り込む姿を見ると、保護者は「もっと体力をつけなければ」と焦ります。しかし、同じ活動時間でも、姿勢を保つ負担、動きの効率、呼吸、集団の情報量によって消耗は変わります。
私たちが大切にするのは、疲れ切るまで反復するのではなく、最初に崩れる現象を見つけ、動きの質を保てる条件から参加時間を広げることです。機能解剖と動作分析を土台に、身体機能と生活の成果を分けて確認します。
園や学校、家族との外出まで含めて疲れ方と関わり方を整理したい方は、ご相談ください。お子さんとご家族が続けられる形を、一緒に組み立てます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。疲れやすさを一つの能力として扱わず、姿勢制御、呼吸、運動の選択、感覚、環境との関係から動作を分析する視点は、小児の活動支援にもつながります。
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 歩くとすぐ疲れる子|足部・姿勢・歩行効率の見方
- すぐ抱っこを求める子|疲れやすさ・安心・移動の負担を考える
- 体操教室で伸びない子|練習量以外に見るべき運動発達
- STROKE LABの小児リハビリ
本記事は、公的ガイドライン、研究論文、STROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。DCD研究は近接領域として参照しており、診断のない疲れやすい子ども全体へ直接適用できるものではありません。医学的な診断・治療の代替ではありません(最終確認日:2026年8月7日)。
- World Health Organization. Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. Geneva: WHO; 2019.
- Centers for Disease Control and Prevention. Child Activity: An Overview. Updated December 4, 2025.(年齢別の公衆衛生上の活動量。診断基準ではない)
- Cavalcante Neto JL, et al. Physical Fitness in Children With Developmental Coordination Disorder: A Systematic Review. Physical & Occupational Therapy in Pediatrics. 2024;44(5):626-655. doi:10.1080/01942638.2024.2327354.
- Gao J, et al. Motor-Based Interventions in Children with Developmental Coordination Disorder: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Controlled Trials. Sports Medicine – Open. 2025;11(1):59. doi:10.1186/s40798-025-00833-w.
- Demers I, et al. A Clinical Practice Guide to Enhance Physical Activity Participation for Children with Developmental Coordination Disorder in Canada. Physiotherapy Canada. 2023;75(3):293-307. doi:10.3138/ptc-2021-0071.
- Beliche TWO, et al. Participation of Children With Developmental Coordination Disorder: A Scoping Review. Child: Care, Health and Development. 2025;51(2):e70059. doi:10.1111/cch.70059.
- Blank R, et al. International clinical practice recommendations on the definition, diagnosis, assessment, intervention, and psychosocial aspects of developmental coordination disorder. Developmental Medicine & Child Neurology. 2019;61(3):242-285.
- American Academy of Pediatrics. HealthyChildren.org Symptom Checker: Fainting.(運動中の失神、胸痛、呼吸困難などの受診目安)
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)