パーキンソン病の痛み|肩・腰・ジストニアの痛みへの運動アプローチ
その痛み、我慢しなくていいものです。
肩が上がらない、腰が抜けるように痛い、朝は足の指が丸まって痛む——。パーキンソン病では、こうした痛みがめずらしくありません。痛みの発生源によって、選ぶべき運動は違います。肩・腰・ジストニア、それぞれのしくみと、今日からできる運動アプローチを整理します。

その痛み、我慢していませんか。
肩が上がらない、腰が抜けるように痛む、朝起きると足の指が丸まって歩けない——。整形外科をいくつも回っても原因がはっきりせず、痛み止めを飲んでもすっきりしない。そのつらさを、何年も一人で抱えている方に、私たちはたくさん出会ってきました。
でも、知ってほしいのです。その痛みには、パーキンソン病特有のしくみがあり、動かし方を変えることで和らぐ場合があるということを。
パーキンソン病の症状というと、震えや動きにくさが知られていますが、実は痛みを訴える方は非常に多いことが分かっています。しかも、痛みの場所や時間帯によって、起こっているしくみが違います。まずはその違いを知り、そのうえで肩・腰・ジストニアそれぞれに合った運動アプローチを見ていきましょう。リハビリの全体像はリハビリ完全ガイドにまとめています。
痛みのしくみと、3つのタイプ。
パーキンソン病の痛みは、専門的には原因によっていくつかのタイプに分けられます。ここでは、ご本人・ご家族が理解しやすいように、「筋肉・関節の痛み」「ジストニアの痛み」「神経そのものの痛み」の3つに整理してお伝えします。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 筋肉・関節の痛み | こわばりや前かがみ姿勢で、肩・腰・股関節などが硬くなって起こる。最も多いタイプ |
| ジストニアの痛み | 筋肉が勝手に強くつっぱる。足の指が丸まる、足首がねじれるなど。薬の効果が薄い時間帯に出やすい |
| 神経そのものの痛み | じんじん、ピリピリといった、しびれに近い痛み。原因の特定に専門的な診察が必要 |
このうち、運動アプローチが特に力を発揮しやすいのが、筋肉・関節の痛みと、ジストニアの痛みです。次の章から、代表的な「肩」「腰」「ジストニア」の3つに絞って、それぞれのしくみと対処を具体的に見ていきます。

STROKE LABの視点:肩・腰・ジストニア、それぞれの運動アプローチ。
肩の痛みは「硬さ」から、腰の痛みは「姿勢」から、ジストニアの痛みは「時間帯」から起こる。発生源が違えば、選ぶべき運動も違います。3つの代表的な痛みを、それぞれ見ていきましょう。
パーキンソン病では、筋肉のこわばりで肩がじゅうぶんに動かなくなり、そこに炎症が重なって、四十肩・五十肩に似た痛みや動かしにくさが起こることがあります。腕をぶらぶら揺らす、肩を大きく回す、腕を前や横にゆっくり上げるといった、肩関節の可動域を保つ運動が基本です。痛みが強いときは無理に上げようとせず、動かせる範囲で毎日続けることを優先してください。
パーキンソン病では、体幹が前かがみになりやすく、その姿勢を支え続けるために腰や背中の筋肉に負担がかかり続けます。仰向けで両膝を抱える、うつ伏せで軽く上体を反らす、立って背筋を伸ばし胸を開くといった、丸まった姿勢を戻す運動が助けになります。痛みが強いときは反らす動きを小さくし、まず伸ばす感覚を確認してから進めてください。
足の指が丸まる、足首がねじれるといったジストニアの痛みは、薬の効果が薄い早朝や、効果が切れかけた時間帯に出やすいという特徴があります。まず主治医に相談し、薬の量やタイミングを見直してもらうことが基本です。そのうえで、痛む場所を温める、つっぱった指をゆっくり反対方向へ伸ばす、といった対症的な工夫が助けになることがあります。無理に力で伸ばしたり、つっぱった状態で体重をかけたりしないよう注意してください。

パーキンソン病の方30名・60肩を調べた研究では、約半数の肩に四十肩・五十肩に似た症状があり、その程度は運動症状の重さ(こわばりや動作の遅さの指標)と関係していたと報告されています。肩の痛みが、パーキンソン病そのものの症状と結びついていることを示す結果です。
限界:対象人数の多くない単施設の研究で、因果関係を証明したものではありません。肩の痛みには、パーキンソン病以外の整形外科的な原因が重なっていることも多く、診断は医師の評価が必要です。
自宅でできる運動と、注意点。
共通して大切なのは、「痛みが出ない範囲で、毎日少しずつ動かし続ける」ことです。一度にたくさん動かすより、短い時間でも毎日続けるほうが、こわばりの進行を防ぎやすくなります。ウォーキングのような全身運動を習慣にすることも、痛みの軽減につながることが分かっています。具体的な体操の種類は体操・自主トレ大全もあわせてご覧ください。
一方で、注意も必要です。痛みを我慢して無理に大きく動かすことは、かえって逆効果になることがあります。特にジストニアでつっぱっている最中に、力任せに伸ばそうとするのは避けてください。急に強くなった痛みや、これまでと違う痛みが出たときは、運動を続けずに医療機関に相談することが大切です。

軽度から中等度のパーキンソン病の方90名を、ストレッチ・ウォーキング・ノルディックウォーキングの3グループに分けて6か月間続けてもらった無作為化比較試験では、3グループすべてで痛みが軽減し、歩行を含むグループでは背中・手・脚の痛みがさらに強く軽減したと報告されています。
限界:週3回・70分という継続的な取り組みを前提とした研究で、効果には個人差があります。運動は薬や専門的な治療の代わりではなく、組み合わせて使うものです。始める強さや頻度は、体力や症状に合わせて専門職と相談してください。
脳リハ.comのYouTubeでは、肩や体幹の可動域を保つ体操を配信しています。痛みが出ない範囲で、無理のない習慣にしてみてください。
専門リハと、受診の目安。
自宅での運動が、肩や腰など痛む部位そのものへの対処だとすれば、専門施設で目指すのは、その痛みを生んでいる姿勢や動き方そのものを見直す、根本的なアプローチです。痛みへの働きかけは、大きく3つの方向から組み立てます。
1. 姿勢の分析と調整。前かがみの姿勢がどこから生まれているかを動作分析で確認し、体幹の伸展運動や座り方・立ち方の調整で、負担のかかる部位を減らします。
2. 関節可動域の維持と拡大。肩・股関節など硬くなりやすい関節を、専門的な手技とセルフエクササイズの両面から、動かせる範囲を保つように働きかけます。
3. 生活場面での動き方の工夫。着替えや立ち上がりなど、痛みが出やすい生活動作を確認し、負担の少ない動き方に置き換えていきます。
STROKE LABが軸足を置くのは、痛む部位だけでなく、その痛みにつながる姿勢や動作パターンごと見直していくという流れです。効果には個人差があり、進行に伴って変動します。薬の調整・ジストニアの治療方針は主治医の役割です。
パーキンソン病の方を対象に、体幹の柔軟性と機能を高める運動プログラムを検証した無作為化比較試験では、体幹の柔軟性と機能的な動作能力が、対照群と比べて有意に改善したと報告されています。前かがみ姿勢によって生まれる腰や背中への負担を、運動によって和らげられる可能性を示す結果です。
限界:発表から時間の経つ研究であり、対象人数も限られます。効果には個人差があり、姿勢の変化には運動以外の要因(骨や関節の変形など)も影響します。専門的な評価のもとで進めることが望まれます。

受診の目安は、急に痛みが強くなった、これまでと違う場所や性質の痛みが出た、痛みで生活に支障が出てきた、といったときです。痛みの原因はパーキンソン病だけとは限りません。自己判断せず、神経内科や整形外科で原因を確かめてください。専門的な費用や施設の選び方は自費リハビリの費用・施設の選び方にまとめています。
よくある質問。
Q. パーキンソン病で肩や腰が痛くなるのはなぜですか?
Q. 肩の痛みが「四十肩」「五十肩」と診断されました。パーキンソン病と関係ありますか?
Q. 朝、足の指が丸まって痛いのですが、これも症状ですか?
Q. 痛みがあるとき、動いた方がいいのか休んだ方がいいのか分かりません。

Q. 運動すれば痛みは良くなりますか?
Q. 痛み止めを飲んでも良くなりません。どうすればいいですか?
痛みの相談は、STROKE LABへ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中とパーキンソン病を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。痛む部位だけでなく、その痛みを生んでいる姿勢や動作のクセを動作分析で確認し、関節可動域の維持・体幹の姿勢調整・生活動作の工夫まで、その人に合わせて組み立てます。薬やジストニアの治療方針は主治医を尊重し、私たちは運動と生活動作の側から支えます。保険リハとの併用も歓迎です。

動作分析から自主トレーニングまで
運動を通じて心身の状態を整える考え方を、動作分析の視点から体系化。本文と連動するYouTube動画62本で、実際の動きも確認できます。
大切なサインです。

「歳のせいだろう」「パーキンソン病だから仕方ない」と、痛みをあきらめてしまう方に、たくさん出会ってきました。でも、痛みを我慢し続けることで、動く量がさらに減り、こわばりが進み、痛みが強くなるという悪循環に入ってしまうことも少なくありません。
お伝えしたいのは、痛みには理由があり、その理由に合わせて動かし方を変えれば、和らげられることがあるということです。肩には可動域を、腰には姿勢の見直しを、ジストニアには時間帯への配慮を。一つひとつ、丁寧に向き合っていきましょう。
痛みでお困りなら、どうぞ一度ご相談ください。痛む場所だけでなく、その痛みが生まれる姿勢や動きから、一緒に見直していきます。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、国内外の診療ガイドライン・公的情報と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。痛みの原因は一つとは限りません。気になるときは、必ず神経内科・整形外科・主治医にご相談ください(最終確認日:2026年8月5日)。
- 日本神経学会:パーキンソン病診療ガイドライン2018
- 難病情報センター:パーキンソン病(指定難病6)
- Chang MC, et al. Clinical Features Associated with Frozen Shoulder Syndrome in Parkinson’s Disease. Parkinsons Dis. 2015;2015:232958.(肩の痛み・可動域制限とパーキンソン病の運動症状の関係を調べた研究。第3動線・エビデンスボックスの出典)
- Reuter I, et al. Effects of a Flexibility and Relaxation Programme, Walking, and Nordic Walking on Parkinson’s Disease. J Aging Res. 2011;2011:232473.(継続的な運動が痛みの軽減につながったことを示した無作為化比較試験。第4動線・エビデンスボックスの出典)
- Schenkman M, et al. Exercise to Improve Spinal Flexibility and Function for People with Parkinson’s Disease: A Randomized, Controlled Trial. J Am Geriatr Soc. 1998;46(10):1207-1216.(体幹の柔軟性運動が機能改善につながったことを示した無作為化比較試験。第5動線・エビデンスボックスの出典)
- 金子唯史:パーキンソン病の機能促進(動作分析から自主トレーニングまで).医学書院.2025.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)