走り方がぎこちない子|腕振り・骨盤・足の接地をどう見るか
脚だけを直すのではなく、視線から上半身、着地まで全身のつながりを観察します
「走れるけれど、腕を振らない」「ドタドタして重そう」「片方の足だけ外へ流れる」。走り方が周囲の子と違って見えると、不安になるものです。ただし、幼児の走行は発達の途中にあり、一つの正しい形に当てはめるより、速度・方向・疲労で何が変わるかを見ることが大切です。家庭で確認できるポイントと、相談したい変化を整理します。

走れるけれど、何となくぎこちない。
腕を身体の横に固める、胸の前を横切るように振る、骨盤が大きく揺れる、片側の脚だけ外へ回る、足音が大きい。見た目の特徴は一つでも、その背景は同じとは限りません。
大切なのは、腕を振らせることでも、足を真っすぐ置かせることでもなく、どの場面で動きが崩れるかを確かめることです。
走行は、身体を片脚で受け止め、前へ運び、空中へ押し出し、次の足で再び受け止める動作です。同時に、進行方向を見て、人や物を避け、速度を調整しなければなりません。幼児の遊びでは、直線を速く走る能力だけでなく、止まる、曲がる、再び走り出す能力が繰り返し求められます。
そのため「フォームがきれいか」よりも、転倒せずに遊べるか、速さを変えられるか、周囲を見ながら動けるか、疲れた後にも大きく崩れないかを見た方が、生活上の困りごとを捉えやすくなります。
「走り始めた」と「走り方が成熟した」は別です。
CDCの発達マイルストーンでは、2歳頃の運動項目に「走る」が含まれています。ただし、この項目は滑らかな腕振り、安定した方向転換、効率的な接地まで完成していることを示すものではありません。また、CDC自身もマイルストーン表は標準化された発達スクリーニングの代わりではないと説明しています。
2〜3歳頃は走り始めの安定性、3〜4歳頃は止まる・曲がる・再加速する変化、4〜6歳頃は友達やルールに合わせた速度調整など、遊びの要求が複雑になります。ただし、これは達成基準ではありません。同じ年齢でも、経験する遊び、身体の大きさ、靴、床面、本人の慎重さによって走り方は変わります。
したがって、年齢だけで「もう直すべき」と決めるのではなく、数か月の中で新しい速さや方向へ挑戦できているか、転倒後も遊びへ戻れるか、苦手な場面が限定されているかを記録します。
腕振り・骨盤・足の接地を、別々に直さない。
腕は、脚と体幹の回転を調整する
腕振りが小さいこと自体は異常ではありません。速度を上げた瞬間に両腕を固めるのか、片側だけ動かないのか、曲がる側で胸の前を横切るのかを見ると、バランスを守る戦略や左右差が見えます。
骨盤は、片脚で支えながら次の一歩を運ぶ
骨盤の揺れは「体幹が弱い」の一言では説明できません。支持脚へ体重を移す時間、反対側の脚を前へ運ぶ準備、カーブで身体を内側へ向ける調整が影響します。
足は、受け止める働きと押し出す働きを切り替える
接地音が大きいときは、接地部位だけでなく、足が身体より前へ出て強く減速していないか、その後に足首・膝・股関節で前へ押し出せているかを見ます。
腕が固いから腕を振らせる、足が外へ流れるから足先を正面へ向ける。このような直接修正で一時的に形が変わっても、速度や方向が変わると元に戻ることがあります。子どもがその形を選んだ理由が残っているからです。
私たちは、接地した瞬間だけでなく、その一歩前に身体がどちらへ移動していたか、視線がどこへ向いていたか、反対側の腕と胸郭がいつ動いたかまでつなげます。ぎこちなさは結果であり、評価では結果を生んだ条件を探します。
家庭では、3つの条件を比べます。
ゆっくり走る/速く走る
速度を上げたときだけ腕が固まる、歩幅が急に大きくなる、片側の接地音が強くなるかを見ます。ゆっくりでは保てるなら、単純な筋力不足だけでは説明できません。
直線/曲がる・止まる
直線は走れても、カーブで外側へ膨らむ、止まる直前に足が交差する、特定方向だけ転びやすい場合は、減速と横方向への重心移動を確認します。
最初/何度か走った後
最初は滑らかでも、反復後に骨盤が落ちる、脚が外へ流れる、転倒が増える場合は、疲労や持久性、集中の持続、休憩条件を含めて考えます。
比較するときは、できるだけ同じ靴・同じ床面で行います。すべてを一度に確認せず、今日は速度、別の日は方向というように一つだけ比べると、子どもを何度も走らせすぎずに済みます。

足の接地だけで、走り方の良し悪しは決まりません。
3〜6歳の定型発達児48人を調べた研究では、裸足、薄い靴、一般的なランニングシューズという条件によって接地パターンが変化しました。年齢による違いも、靴の条件によって現れ方が異なりました。
子ども・青年415人を対象にした別の研究でも、靴を履くか、走る速度、踵の高さが接地パターンに影響していました。踵接地も対象集団では多く見られています。
そのため、痛みのない子に「踵から着いているから、つま先で走ろう」と繰り返し指示したり、接地を変える目的だけで急に裸足へ変更したりすることは勧められません。接地の前後で、身体が減速できているか、次の一歩へ押し出せているか、左右で大きく異ならないかを見ます。
DCDのある子どもの歩行・走行をまとめた研究では、持久性や走行の力学に違いが報告されていますが、研究数や対象にはばらつきがあります。走り方の見た目だけからDCDを判断することはできません。着替え、食事、描画、ボール遊び、階段など、複数の日常課題で困りごとが続くかを含めて評価します。
家庭では、フォーム指導より「走る課題」を遊びにします。
短い距離で追いかける
数歩先の目標まで走り、十分に休みます。距離を伸ばすより、走り出しと止まり方が保てる長さにします。
広いカーブを回る
目印を大きく離し、緩やかなカーブから始めます。左右両方向を試しますが、苦手側を何度も強制しません。
合図で止まる・再び走る
色や音の合図で停止します。急停止を競うのではなく、ぶつからず止まれる速度から始めます。
| 避けたい関わり | 理由 | 置き換え方 |
|---|---|---|
| 「腕を大きく振って」を繰り返す | 腕を固める理由が残り、走ることへの注意が身体の形だけに向きます | 目標物や合図へ注意を向け、自然なタイミングを観察します |
| 足先を正面へ強制する | 骨盤や支持脚の動きを変えず、足先だけを修正しても再現しにくいためです | 速度と方向を下げ、左右差が減る条件を探します |
| 疲れても何度も走らせる | 崩れた動きを反復し、走る遊びを避けるきっかけになることがあります | 質が大きく崩れる前に休み、短い成功を重ねます |
| 兄弟や友達の形と比較する | 体格、経験、慎重さ、遊びの環境が異なります | 本人の数か月前の動画や参加場面と比べます |

様子見・専門相談・医療受診を分けます。
家庭で変化を見やすい状態
- 痛みや跛行がない
- ゆっくりなら安定して走れる
- 左右差が場面によって変わる
- 少しずつ曲がる・止まる動きが増えている
- 走る遊びを楽しみ、参加を避けていない
健診・小児科・発達相談へ伝えたい状態
- 数か月見ても走り方や参加に変化が乏しい
- 特定方向で繰り返し転ぶ
- 速度を上げると片側だけ大きく崩れる
- 疲れやすく、走る遊びを避ける
- 階段、ジャンプ、ボール遊びなど複数課題にも困る
発熱や関節の腫れを伴う、夜間も痛がる、急に片側を使わなくなった、以前できた階段や床からの立ち上がりが難しくなった場合も、フォーム練習を中止して受診してください。診断、画像検査、投薬、装具、医学的治療の判断は医療機関の領域です。
- いつ頃から、何をきっかけに気づいたか
- ゆっくりと速くで、どのように変わるか
- 直線、右回り、左回り、停止で違いがあるか
- 最初と反復後で、転倒・左右差・足音が変わるか
- 歩行や階段でも同じ左右差があるか
- 痛み、跛行、疲労、転倒、遊びの回避があるか
- 全身が入る動画を、走り出す前から止まった後まで撮る。靴、床面、時間帯も記録する
専門評価では、不安を「条件と仮説」に変えます。
専門評価の目的は、走り方へ診断名を付けることではありません。「腕を振らない」という一つの見え方を、速度への対応、体幹と骨盤のタイミング、片脚支持、減速と推進、疲労、視線・注意、靴や床面、本人の不安などに分けます。
| 評価所見 | 臨床仮説 | その場で変える条件 | 確認する反応 | 生活で見る変化 |
|---|---|---|---|---|
| 速くした瞬間に腕と胸郭を固める | 速度に対するタイミング調整が追いつかず、固定して安定を作っている | 距離を短くする、目標を近づける、速度を段階化する | 言葉で腕を直さなくても、腕と骨盤のタイミングが変わるか | 鬼ごっこの加速時に転倒や停止が減るか |
| 左カーブだけ外へ膨らみ、右脚が外へ流れる | 内側へ重心を移す準備と、外側脚で押し出すタイミングの左右差 | カーブ半径を広げる、目印の位置を変える、速度を下げる | 足先の指示なしで進行方向と骨盤の向きがそろうか | 園庭で遊具や友達を避けて走れるか |
| 反復後だけ接地音と左右差が増える | 技術の理解より、持久性・休憩・注意の持続が制限になっている | 短い反復と休憩を組み、総量ではなく質を保つ | 休憩後に初期の走りへ戻るか、回復に時間がかかるか | 公園や体育で参加できる時間と回復時間が変わるか |
| 靴や床面で接地と転倒が大きく変わる | 身体機能だけでなく、摩擦・靴の適合・感覚情報との相互作用 | 靴を一度に矯正せず、同じ課題で条件を比較する | 痛みなく制動・方向転換が行いやすい条件を確認する | 園と家庭で転びやすさに差がある理由を共有できるか |
たとえば、腕を大きく振るよう言葉で指示しても変わらず、目標物を近づけて速度を少し落とすと自然に腕が動く場合、主な課題は腕の筋力より、速度と姿勢制御を同時に組み立てることかもしれません。逆に、すべての速度で片側の腕が動かず、歩行や日常動作にも左右差があるなら、走行だけに限定せず医学的・発達的な評価へつなぎます。
その場で変化した条件を、園庭や公園で再現できる遊びへ変換します。評価室で一度きれいに走れたことを成果とはせず、転倒回数、方向転換の成功、遊びへの参加時間、疲労後の回復、本人が「またやりたい」と選べるかを確認します。
一定期間後は、同じ速度・同じ方向・同じ距離で再評価します。身体機能が変わっても生活で使われなければ、課題や環境の設計を見直します。家庭では失敗と負担を減らす工夫を。専門評価では、複数の仮説を比較し、できる力を遊びで使える力へつなぎます。
2026年の米国理学療法協会小児部門の診療ガイドラインは、DCDの診断過程への関与、評価、他職種への紹介、本人・家族と決める意味のある目標、家庭プログラム、課題志向型アプローチ、地域での身体活動、進捗確認を扱っています。

医療・健診を優先しながら、家庭や園で撮影した動画をもとに、速度・方向・疲労で変わる特徴を整理できます。
よくある質問。
Q. 腕を振らずに走るのは問題ですか?
Q. ドタドタ走るのは体幹が弱いからですか?
Q. かかとから着地する走り方は直すべきですか?
Q. 足が外へ流れる場合は相談した方がよいですか?
Q. 家庭ではどのような遊びができますか?
Q. 何歳まで様子を見てよいですか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。小児の運動相談では、見た目だけを矯正するのではなく、家庭・園・学校で困っている動作を起点に、機能解剖と動作分析から条件差を整理します。診断や医学的治療は医療機関が担い、私たちは生活と動きの側から併走します。急な症状、痛み、跛行、退行があるときは、まず医療機関へご相談ください。
観察できる変化へ。

子どもの走り方には、発達の幅があります。一方で、左右差、疲労、痛み、遊びへの参加のしにくさが、成長の中で見過ごされることもあります。
私たちは、一つの正解フォームへ近づけるのではなく、その子が安全に試行錯誤できる条件を探します。腕、骨盤、足をつなげ、できた動きを園庭や公園で使える形へ変換します。
家庭で撮影した動画や園での様子も大切な評価情報です。気になる変化を、責める言葉ではなく観察できる情報へ変えながら、一緒に整理します。
代表取締役 金子 唯史

身体の一部だけを直すのではなく、姿勢・感覚・運動の連鎖から動作を捉えるための臨床書です。本記事の「腕振り・骨盤・接地を連動で見る」という考え方の土台にもなっています。
- STROKE LABの小児リハビリ
- 2歳で走らない・走りたがらない子|歩行から走行へ進む発達の見方
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- 外でよく転ぶ子|足元だけでなく視線・体幹・注意から見る
- 走行・運動相談の比較記事と地域別相談記事
本記事は、公的な発達情報、査読研究、診療ガイドライン、STROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。走り方のみから診断を行うものではなく、医療機関での診断・治療に代わるものではありません(最終確認日:2026年8月3日)。
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 2 Years. Updated May 15, 2026.(2歳頃の運動マイルストーンと、マイルストーン表が標準化スクリーニングの代替ではないこと)
- Plesek J, Silvernail JF, Hamill J, Jandacka D. Running Footstrike Patterns and Footwear in Habitually Shod Preschool Children. Med Sci Sports Exerc. 2021;53(8):1630-1637. doi:10.1249/MSS.0000000000002629.
- Giacomini BA, et al. What is the foot strike pattern distribution in children and adolescents during running? A cross-sectional study. Braz J Phys Ther. 2021;25(3):336-343. doi:10.1016/j.bjpt.2020.10.001.
- Smith M, Ward E, Williams CM, Banwell HA. Differences in walking and running gait in children with and without developmental coordination disorder: A systematic review and meta-analysis. Gait Posture. 2021;83:177-184. doi:10.1016/j.gaitpost.2020.10.013.
- Sargent B, Mueller M, Iverson E, Frazier M, Kaplan SL. Physical Therapy Management of Children With Developmental Coordination Disorder: A 2026 Evidence-Based Clinical Practice Guideline From the American Physical Therapy Association Academy of Pediatric Physical Therapy. Pediatr Phys Ther. 2026;38(2):296-333. doi:10.1097/PEP.0000000000001284.
- Paediatric Musculoskeletal Matters. Gait and Motor Milestones. Newcastle University and Northumbria University. Accessed August 3, 2026.(持続する跛行、筋力低下、運動発達の退行などの相談目安)
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)