2歳で走らない・走りたがらない子|歩行から走行へ進む発達の見方
速く歩けることから始まり、片脚で支える時間と両足が浮く瞬間が少しずつ育ちます
「同じ年の子は走っているのに、うちの子は歩くだけ」「走っているつもりのようだけれど、速歩きに見える」——2歳の走り方が気になるときは、できた・できないだけで比べないことが大切です。走行への移行を、加速・支える・足を切り替える・止まる・曲がるに分けると、今育っている力と相談したいサインが見えやすくなります。

2歳で走らないのは、遅いのでしょうか。
米国CDCの2歳の発達マイルストーンには「走る」が含まれています。CDCのマイルストーンは、その年齢までに多くの子ども、具体的には75%以上が行う行動を示すものです。一方で、これは診断や標準化された発達検査の代わりではありません。
したがって、2歳でまだ走らないことは発達を確認するきっかけにはなりますが、それだけで異常とは決められません。歩き始めた時期、現在の歩行の安定性、遊びの経験、体調、靴や床面などを合わせて見ます。
| おおよその時期 | 見えやすい変化 | 家庭で見るポイント |
|---|---|---|
| 12〜18か月頃 | 一人歩きの安定、しゃがむ・立つ、物を持って歩く経験が増える | 歩行そのものが安定してきているか |
| 18〜24か月頃 | 歩く速度を上げ、走行らしい足の切り替えが現れる子が増える | 好きなものを追うときに自分から加速するか |
| 24〜30か月頃 | 走るだけでなく、減速して止まる、緩く曲がる調整が育つ | 数歩走った後に転ばず止まれるか |
| 30〜36か月頃 | 遊びの中で速度や方向を変える経験が広がる | 追いかけ遊びや人を避ける場面で調整できるか |
「走れない」と「走りたがらない」を分けます。
走る能力がまだ十分でない子と、能力はありそうでも走る場面を選ばない子では、家庭での関わり方が異なります。まず、好きな人や玩具を追う自然な場面で、普段より速度を上げることがあるかを見ます。
走ろうとするが、速歩きのまま
前へ急ごうとするものの、足を床から素早く切り替えにくい、体が前へ倒れ続ける、数歩で転ぶなどが見られます。加速・支持・制動のどこが難しいかを見ます。
条件によって、走ることを選ばない
家では走るが外では歩く、裸足では速いが靴では止まる、転倒後から避けるなどです。能力だけでなく、床面・靴・音・人の多さ・怖さ・目的の分かりやすさを確認します。
加速すると転ぶ、止まれない、人にぶつかる、靴で足が動かしにくいなど、本人にとって走らない方が安全な理由が隠れていることがあります。本人の選択には、動作の結果が反映されています。
歩行から走行へ、何が変わるのでしょうか。
大人の走行は、両足が床から離れる飛行期を伴うことが代表的な特徴です。ただし、走り始めの幼児では、両足支持が残る速歩きと飛行期のある走行の特徴が混ざることがあります。飛行期の有無だけで、発達の良し悪しを決めないことが大切です。

CDCは2歳までに多くの子どもが走ることを示していますが、マイルストーン表は発達検査の代わりではないと明記しています。
歩行・走行の研究では、年齢と動きの成熟度が単純には一致せず、若い子どもには複数の移動戦略が見られました。また、2名を追跡した症例研究では、独歩開始からの期間だけでは走行パターンの成熟を十分に説明できませんでした。
家庭では、5つの変化を見ます。
自分から速度を上げるか
「走って」と指示した場面だけでなく、保護者や好きな玩具へ近づくときに、普通の歩行より速くなるかを見ます。
左右の足を交互に切り替えられるか
片側だけ歩幅が小さい、同じ足で何度もつまずく、片脚を引きずるなど、繰り返す左右差がないかを確認します。
数歩のあとに止まれるか
加速できても、前へ倒れ込むように止まる場合があります。停止位置を決めたときに、足を出し直して勢いを弱められるかを見ます。
緩く方向を変えられるか
直線では速く進めても、人や物を避けるときに転ぶ子もいます。最初は大きな円を描くような曲がり方で確認します。
条件と疲労で変わるか
裸足と靴、室内と屋外、開始直後と遊んだ後で比べます。疲労後だけ左右差やつま先立ちが強まる場合は、相談時に重要な情報になります。
速度を上げた瞬間に足の切り替えが止まる場合は、前方へ移る重さを次の一歩へつなぐ過程を見ます。一方、数歩は走れるのに最後に転ぶ場合は、推進よりも制動の課題が中心かもしれません。
この違いを見ずに「もっと走らせる」と、転倒経験が増えて走ること自体を避ける可能性があります。動作のどの局面で成功が途切れるかを見て、課題を小さくします。
走らせる練習より、走行を作る遊びへ。
家庭では、フォームを教えるより、子どもが目的に向かって自分で速度を変える場面を作ります。一回を短くし、できたところで終えると、転倒や拒否が続きにくくなります。

WHOは1〜2歳児について、一日を通して合計180分以上、多様な強度の身体活動を行うことを推奨しています。ただし、これは走行練習を180分行うという意味ではありません。歩く、登る、しゃがむ、投げる、屋外で探索するなど、生活と遊び全体の活動量です。
避けたい関わり
| 避けたいこと | 理由 | 代わりに |
|---|---|---|
| 手を強く引いて速度を上げる | 本人が重心と足を調整する機会が減り、転倒時も危険です | 短い距離に目的物を置き、自分から進むのを待ちます |
| 転ぶたびに走ることを止める | 安全な試行錯誤の機会がなくなります | 平坦で広い場所、短距離、低速から試します |
| きょうだいや同年齢児と競わせる | 不安や失敗が増え、走ることを避けやすくなります | 昨日の本人と比べ、加速や停止の小さな変化を見ます |
| 疲れや痛みを「やる気」の問題にする | 身体的なサインを見逃す可能性があります | 顔色、呼吸、痛み、休憩後の回復を記録し相談します |
様子を見る条件と、相談したい条件。
- 一人歩きは安定し、転倒が徐々に減っている
- 好きな遊びでは自分から速度を上げる
- 左右差が目立たず、痛みや強い疲労がない
- 数週間単位で加速や停止に変化がある
- 走行以外の発達は大きく気にならない
- 2歳で一人歩き自体がまだ安定しない
- 繰り返す明らかな左右差、片脚の引きずりがある
- 床から立つとき手で脚を押す、段差を極端に避ける
- 転倒が非常に多く、頭や顔を繰り返しぶつける
- 疲れ方が強い、痛み、腫れ、跛行がある
- 複数の発達領域で気になることがある
運動発達の退行、急な片側の動かしにくさ、強い痛みや腫れ、呼吸・顔色・意識の変化、けいれん様の動きを伴う場合は、運動遊びを試す前に医療機関へ相談してください。
- 一人歩きを始めた時期と、その後の変化
- 走ろうとする場面と、走りたがらない場面
- 普通歩行から速度を上げたときの様子
- 転び方、止まり方、方向転換の様子
- 左右差、つま先立ち、足の引きずりの有無
- 靴・裸足、室内・屋外、遊び始め・疲労後の違い
- 全身が映る短い動画。開始前から停止後まで、床面と靴も分かるように撮影
専門評価で、走らない理由を分けます。
家庭では、安全に遊べる条件を作り、変化を記録します。専門施設では、同じ「走らない」を複数の要因へ分け、条件を一つ変えたときの反応を確認します。診断・画像検査・投薬・装具処方などの医学的判断は主治医や医療機関が担い、私たちは生活の動きの側から併走します。
専門的な評価は、筋力やバランスを一律に測ることではありません。実際の目標場面で、どの局面から成功が崩れるかを見ます。たとえば「公園で家族を追いかけたい」という目標なら、室内の直線走だけで終えず、靴、屋外、停止、人を避ける条件まで段階的に確認します。
| 観察される困りごと | 確認すること | 臨床仮説 | 条件調整と反応 | 生活で再確認 |
|---|---|---|---|---|
| 速歩きのまま走行へ移らない | 歩幅、足の回転、体幹前傾、片脚支持、腕振り | 前方への勢いを次の一歩へ切り替えにくい | 距離を短くし、目的物を近づけたとき足の切り替えが速くなるか | 好きな遊びで自発的な加速が増えるか |
| 数歩走ると前へ転ぶ | 加速局面と停止局面を別々に観察 | 推進は可能だが制動と足の出し直しが追いつかない | 停止位置を広くし、速度を下げたとき転ばず止まれるか | 人や遊具の前で安全に減速できるか |
| 家では走るが屋外で走らない | 靴、床面、視覚刺激、音、人の多さ、転倒経験 | 能力より、環境の不確実さや怖さが選択を変える | 静かな屋外、慣れた靴、短距離へ条件を減らしたとき走るか | 園庭や公園で自分から移動する場面が増えるか |
| 遊びの後半だけ左右差が増える | 開始直後と疲労後の歩行・走行、呼吸、顔色、回復時間 | 負荷が上がると代償が表面化する可能性 | 休憩、回数、距離を変え、質を保てる範囲を確認 | 外出後の疲れ方、抱っこ、翌日への影響を記録 |
走行は「脚力があるか」だけでは説明できません。前へ進む力を作ること、短い時間に片脚で支えること、次の足を間に合わせること、勢いを止めることが、環境に応じて連続する課題です。
評価では、最初に普通歩行と速い歩行を比べます。次に、直線、停止、大きなカーブの順で条件を足します。条件を一つ加えた瞬間に何が変わるかを見ることで、ボトルネックの仮説を絞ります。その場で動きが改善しても、訓練室だけの変化とは限らないため、家庭や園で同じ条件を再現できる観察点へ変換します。
再評価では「両足が浮いたか」だけでなく、本人が走ることを選ぶ回数、転ばず止まれる場面、公園で家族を追える距離、遊び後の疲労まで確認します。能力が上がったことと、生活で使えるようになったことを分けて見ます。

医療機関での評価を大切にしながら、家庭動画や実際の遊び場面から、加速・停止・環境差を整理します。
よくある質問。
Q. 2歳で走らないと、発達が遅れているのでしょうか?
Q. 走っているつもりでも速歩きに見えます。様子を見てよいですか?
Q. 家では少し走るのに、公園では走りたがりません。なぜですか?
Q. 走る練習は、毎日何分すればよいですか?
Q. どのような走り方なら、早めに相談した方がよいですか?
Q. 専門施設では、2歳の走り方をどのように見ますか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)では、お子さんの「できない」を一つの身体機能だけに結びつけず、実際の遊びと生活の中で動作を分けて見ます。2歳の走行では、普通歩行から速度を上げる瞬間、足の切り替え、停止、方向転換、環境による違いを確認し、ご家庭で観察しやすい形へ整理します。診断や医学的治療は医療機関が担い、私たちは生活と動きの側から併走します。
今日から見られる動きへ。

2歳の運動発達は個人差が大きく、「まだ走らない」という一言だけでは、何を待ち、何を相談すべきか分かりにくいものです。
私たちは、走行を加速・支持・足の切り替え・制動・環境への適応に分けることで、不安を観察できる情報へ変えます。できない動きを繰り返させるのではなく、今成功している条件から次の課題を考えます。
健診や医療機関での相談とあわせて、ご家庭や園での動きを整理したい方はご相談ください。お子さんの意欲と親子の時間を守りながら、一緒に考えます。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。動きを「できる・できない」で終わらせず、姿勢・感覚・運動の連鎖として見る視点は、お子さんの発達を観察するうえでも土台になります。
- 動きがぎこちない・運動が苦手|運動制御の視点で「なぜ」を分析する
- よく転ぶ子ども|バランス・足の運び・環境の見方
- 2歳でジャンプしない子|両足で踏み切る発達の見方
- 階段を上りたがらない子|片脚で支える力と段差への不安
- 小児リハビリの初回相談の流れ
本記事は、公的な発達情報、身体活動ガイドライン、歩行・走行発達の研究と、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、主治医・小児科医・健診担当者へご相談ください(最終確認日:2026年8月3日)。
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 2 Years. Updated May 15, 2026.(2歳の発達マイルストーンと、スクリーニングの代替ではないという注意)
- American Academy of Pediatrics. Your Checkup Checklist: 24 Months (2 Years) Old.(2歳健診での発達スクリーニングと相談)
- American Academy of Pediatrics. Your Checkup Checklist: 2½ Years Old (30 Months).(走行と素早い減速・停止の発達)
- World Health Organization. Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. 2019.
- National Institute for Health and Care Excellence. Suspected neurological conditions: recognition and referral. NG127. 2019; reviewed 2023.(運動発達の退行、新規歩行異常の医療優先)
- Bach MM, Daffertshofer A, Dominici N. The development of mature gait patterns in children during walking and running. Eur J Appl Physiol. 2021;121(4):1073-1085. doi:10.1007/s00421-020-04592-2.
- Bach MM, Zandvoort CS, Cappellini G, et al. Development of running is not related to time since onset of independent walking, a longitudinal case study. Front Hum Neurosci. 2023;17:1101432. doi:10.3389/fnhum.2023.1101432.
- Whitall J, Getchell N. From walking to running: applying a dynamical systems approach to the development of locomotor skills. Child Dev. 1995;66(5):1541-1553. doi:10.1111/j.1467-8624.1995.tb00951.x.
- こども家庭庁:保育所保育指針解説 第2章 保育の内容.(1歳以上3歳未満児の個人差と、生活・遊びの中での発達)
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)