高ばいしない赤ちゃん|ハイハイとの違いと運動発達の見方
その姿勢を経験するかより、手足を伸ばして重心を移せる力が育っているかがポイントです
「普通のハイハイはするけれど、高ばいをしない」 「高ばいを飛ばして、つかまり立ちを始めた」――発達の順番が違うように見えると、心配になりますよね。 ただ、 高ばいをしないことだけで、運動発達の遅れや将来の問題を判断することはできません 。 大切なのは、高ばいの形ではなく、自分で移動し、支持する場所を手・膝・足へ切り替え、立つ動きへつながっているかを見ることです。

高ばいとは?手膝ハイハイとの違い
「高ばい」は、家庭や施設によって指している姿勢が少し異なることがあります。 本記事では、 膝を床から離し、手のひらと足で体を支えて移動する姿勢 を高ばいとして扱います。熊ばいと呼ばれることもあります。
| 比較 | 手膝ハイハイ | 高ばい |
|---|---|---|
| 床につく場所 | 手のひらと膝 | 手のひらと足 |
| 骨盤の高さ | 比較的低い | 高くなりやすい |
| 主な特徴 | 低い姿勢で安定して移動しやすい | 足裏を使い、膝を浮かせて移動する |
| 発達上の扱い | 獲得時期には大きな幅がある | 必ず経験する動作とは限らない |
高ばいは、手膝ハイハイより優れた動作でも、歩く前に必ず完成させるべき課題でもありません。 赤ちゃんは、そのとき最も動きやすい方法を選びながら、座位、四つ這い、膝立ち、つかまり立ちへ姿勢を広げていきます。

高ばいをしない赤ちゃんもいます。
発達は、ずりばい、手膝ハイハイ、高ばい、つかまり立ちという一つの順番だけで進むわけではありません。 手膝ハイハイから直接つかまり立ちへ進む赤ちゃんや、お尻移動など別の移動方法を使う赤ちゃんもいます。
高ばいをしないときは、膝が浮くかだけを確認するのではなく、次のような発達の広がりを見ます。
- 自分の行きたい場所へ移動できる
- 座位から四つ這い、四つ這いから座位へ姿勢を変えられる
- 両手両足を使って支えたり、方向転換したりできる
- 足裏を床につけ、低い台へ手を伸ばせる
- 膝立ちやつかまり立ちなど、立位へ向かう動きが増えている
「膝が浮くか」より、支持面を切り替えられるか。
四つ這いでは手と膝が支持面になり、高ばいでは手と足へ支持面が変わります。 つかまり立ちでは、手で台を支えながら、膝や足裏へ体重を移します。 つまり重要なのは、特定の姿勢を一つ作ることより、 目的に合わせて支持する場所を変えられること です。
高ばいをしなくても、四つ這いから低い台へ手を伸ばし、膝立ち、片膝立ち、つかまり立ちへ移れるなら、足裏支持へ向かう経験は別の動作の中で育っています。 反対に、高ばいの姿勢だけ一度作れても、自分で移動や姿勢変換へつなげられなければ、形だけでは発達を十分に説明できません。
1. 手膝支持から足裏支持へ移れるか
低いクッションをまたぐときや、台へ手を伸ばすときに、一時的に片膝が浮き、足裏へ体重が移るかを見ます。
2. 骨盤を上げたまま前へ重心を移せるか
お尻が上がるだけでなく、前方へ手を一歩出せるか、元の姿勢へ自分で戻れるかを確認します。
3. 左右で支持する役割を交代できるか
いつも同じ足だけを立てる、片方の手を支えにくいなどの左右差が、方向を変えても続くかを見ます。

高ばいをしない背景は、一つではありません。
高ばいをしない理由を「筋力がない」と単純化することはできません。 次のような条件が組み合わさって見えることがあります。
| 考えられる背景 | 家庭で確認できること |
|---|---|
| 手膝ハイハイの方が速く、本人が高ばいを選ぶ必要がない | 移動範囲や方向転換が広がっているか |
| 高ばいを経由せず、つかまり立ちへ進んでいる | 四つ這いから膝立ち、つかまり立ちへ自分で移れるか |
| 足裏接地や膝を伸ばす姿勢に慣れていない | 裸足や床材の違いで足のつき方が変わるか |
| 骨盤を上げると前方へ重心を移しにくい | 低い障害物を越えるときに手を前へ出せるか |
| 床が滑る、衣服が動きを妨げる | 床面や衣服を変えると動きが変わるか |
| 左右で支持のしやすさが異なる | 方向転換や台へつかまる足がいつも同じか |
これらは家庭観察から考えられる仮説であり、原因を確定するものではありません。 痛み、関節の動かしにくさ、筋緊張、神経学的な要因などの判断は、医療機関や専門職の評価が必要です。
研究と公的情報からわかっていること
- WHOの多国間研究では、手膝ハイハイの獲得時期には大きな幅があり、健康な乳児の4.3%は手膝ハイハイを示しませんでした。
- WHOが示す6つの粗大運動マイルストーンに、高ばいは独立項目として含まれていません。
- CDCは、玩具へ近づく方法として、ハイハイだけでなく、いざり移動や寝返りなど複数の方法を挙げています。
この情報から、高ばいを経験しないことだけで異常と判断することはできません。 一方、WHO研究が直接検討したのは手膝ハイハイであり、日本語でいう高ばいの有無や効果を比較した研究ではありません。 個々の月齢、早産歴、左右差、痛み、筋緊張、基礎疾患は別に評価する必要があり、医学的な判断の代わりにはなりません。
家庭でできるのは、高ばいの矯正ではなく環境づくり。
高ばいの形を大人が作るより、赤ちゃんが遊びの中で自分から手、膝、足へ支持を移せる環境を用意します。
- 滑りにくい平らな床: 裸足で、手のひらと足裏が安定しやすい環境にします。
- 低く柔らかい障害物: 薄いクッションや丸めたタオルを安全にまたぐ遊びを取り入れます。
- 低い台へのリーチ: 四つ這いから、安定した低い台の玩具へ手を伸ばせるようにします。
- 短く楽しく: 疲れる前に終え、赤ちゃんが選んだ遊びの中で繰り返します。
避けたい関わり
| 避けたい関わり | 理由 |
|---|---|
| 膝を大人が持ち上げ、高ばいの姿勢を固定する | 本人の重心移動や試行錯誤になりにくく、嫌がりにつながることがあります |
| 手足を交互に動かして反復させる | 自分で支持面を選ぶ練習になりにくいからです |
| 嫌がっても長時間続ける | 疲労や不快感が強い状態では、動きの質を確認しにくくなります |
| 高ばいをしないことを理由に、立つ遊びを止める | 本人が自然に広げている次の姿勢経験を妨げる可能性があります |
見守りと相談の目安
| 見守りながら観察しやすい状態 | 健診・小児科で相談が安心な状態 |
|---|---|
| 手膝ハイハイや別の方法で自分から移動している | 自力移動や姿勢変換の種類が長く増えていない |
| 座位、四つ這い、つかまり立ちなどの動きが増えている | 片方の手足をほとんど使わない、左右差が強い |
| 両手両足を使い、左右へ方向転換できる | 足裏を床につけると強く嫌がる、痛がる |
| 足裏を床につける場面がある | 体が極端に硬い、または体を支えにくい |
| 高ばいをしなくても、立位へ向かう動きがある | 以前できていた動きが減った |
急に片側の手足を使わなくなった、触れると強く痛がる、腫れや赤みがある、発熱やぐったりがある、呼吸・顔色・哺乳に変化がある、けいれんのような動きがある場合は、高ばいの相談より医療機関を優先してください。
健診や相談へ持っていくメモ
- 高ばいが気になり始めた時期
- 現在使っている移動方法
- 座位、四つ這い、膝立ち、つかまり立ちへの移り方
- 足裏を床につけるか、嫌がりや痛みがあるか
- 右と左で使い方に差があるか
- 床材、裸足、玩具の高さで動きが変わるか
- 正面・横・後ろから撮った短い動画
月齢ごとの見方
| 月齢の目安 | 高ばいより確認したい発達の広がり |
|---|---|
| 7〜9か月頃 | 腹ばい・座位・四つ這いなどで、支持や重心移動の種類が増えているか |
| 8〜11か月頃 | 手膝ハイハイ、いざり移動などで自分から探索し、姿勢を変えているか |
| 9〜12か月頃 | 膝立ち、つかまり立ち、伝い歩きなど、足裏支持へ向かう動きが増えているか |
月齢は目安であり、獲得には幅があります。 早産のお子さんは修正月齢で確認する場合があります。 特定の月齢で高ばいをしないことだけを、発達の遅れとは判断できません。
専門家の評価でわかること
専門家の評価は、高ばいをできるようにするためだけのものではありません。 「なぜ高ばいを選ばないのか」「別の姿勢で必要な経験が得られているか」「医療的な確認が必要な所見があるか」を分けることに価値があります。
| 気になる動き | 条件を変えて確認 | 評価で整理できること |
|---|---|---|
| 手膝ハイハイはするが、膝が浮かない | 低いクッションや大人の脚をまたぐ | 高ばいを選ばないだけか、足裏支持への移行が難しいか |
| お尻は上がるが前へ進めない | 玩具の距離と高さ、手の支持位置を調整する | 姿勢を作る能力と、前へ重心を運ぶ能力の違い |
| 足裏をつけたがらない | 裸足、床材、足の位置、体重の量を変える | 環境による変化か、痛み・可動性など医療確認が必要か |
| 片側だけ膝や足を浮かせる | 左右への方向転換と、台へ近づく方向を比較する | 片側支持、体幹回旋、手足の役割交代の左右差 |
施設で支えを加えると膝が浮いたとしても、それだけを高ばいの獲得とは考えません。 自宅で台へつかまりやすくなったか、自分で立とうとする回数が増えたか、左右への方向転換が広がったかなど、実際の生活で確認します。
評価は、所見を集めて診断を決めるためだけではなく、保護者の「何となく気になる」を、家庭で見直せる具体的な情報へ変換するために行います。

どこへ相談する?目的に合わせた選び方
高ばいをしないことだけで、必ず専門施設を利用する必要はありません。 心配の内容に合わせて相談先を選びます。
| 相談先 | 向いている状態 | 主に確認できること |
|---|---|---|
| 乳児健診・小児科 | 発達全体、痛み、体調、左右差、医療的な原因が心配 | 全身状態、発達、神経・整形外科的な確認、必要な紹介 |
| 自治体の発達相談・療育 | 地域で継続的に発達相談や支援を受けたい | 発達相談、個別・集団支援、地域制度との連携 |
| 病院リハビリ | 診断や医学的管理が必要で、医師からリハビリが案内されている | 医学的状態を踏まえた評価とリハビリ |
| 自費リハビリ | 動作を詳しく整理し、家庭での見方や環境を具体化したい | 条件変更による動作分析、家庭課題、動画による経過比較 |
利用条件や費用は、自治体、医療保険、診断、施設、地域によって異なります。 まず医療的な確認が必要な状態では、小児科や健診を優先してください。

よくある質問
STROKE LABの小児リハビリ
STROKE LABでは、高ばいだけをゴールにするのではなく、保護者が気にしている動きを、支持面、重心移動、左右差、足裏接地、姿勢変換、環境との関係へ分けて確認します。 医療・健診が先という線引きを守りながら、ご家庭で何を見ればよいかを一緒に整理します。
次に育つ動きの見方へ。

発達を見ていると、できていない一つの動きが大きく感じられることがあります。 しかし、赤ちゃんの運動発達は、一つの順番だけで進むものではありません。
高ばいをしないことを無理に修正するのではなく、 今どのように支え、どこへ体重を移し、次の姿勢へつながろうとしているか を見つけることが大切です。
ご家庭だけでは見分けにくいときは、動画や日常場面をもとに整理します。 必要な医療相談を見逃さず、見守れる変化は安心して見守れるよう、育ちに寄り添って併走します。
代表取締役 金子 唯史

動きを「できる・できない」で終わらせず、支持、姿勢、感覚、運動の連鎖として見る視点は、乳児期の発達を理解するうえでも土台になります。
- STROKE LABの小児リハビリについて
- 初回相談・予約の流れ
- ハイハイの左右差が気になる赤ちゃん|片側だけ使う理由と対応
- 四つ這いにならない赤ちゃん|手で支える力と股関節の発達
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 療育・病院リハ・自費リハの違いと使い分け|どれを選べばいい?
本記事は、国内外の公的情報とSTROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。 診断・治療に代わるものではありません。 お子さんの状態についての判断は、健診・小児科・主治医へご相談ください (最終確認日:2026年7月28日)。
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95.
- World Health Organization. Child growth standards: motor development milestones.
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 9 Months. Learn the Signs. Act Early. Updated 2026.
- American Academy of Pediatrics. Movement Milestones in Babies 8 to 12 Months Old. HealthyChildren.org.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)