9か月でつかまり立ちしない赤ちゃん|足裏・股関節・体幹の見方
引き上げる腕の力ではなく、足へ体重を預け、骨盤を持ち上げられるかが鍵になります
「同じ月齢の子は立っているのに、うちの子は立とうとしない」——9か月でつかまり立ちをしていないことだけでは、発達の遅れとは判断できません。大切なのは、立ったかどうかではなく、床から立位へ向かう準備が増えているかを見ることです。足裏・股関節・体幹だけでなく、家具へ近づく動きや、安全に降りる動作まで整理します。

9か月で立たなくても、それだけでは遅れではありません。
令和5年乳幼児身体発育調査では、9〜10か月未満で「つかまり立ちができる」と回答された割合は81.3%でした。反対に見ると、約18.7%、およそ5人に1人はまだできていません。90%以上となるのは11〜12か月未満です。
CDCの9か月マイルストーンには「自分で座位になる」「支えなしで座る」が含まれますが、「つかまって自分で立ち上がる」は1歳のマイルストーンです。月齢は締め切りではなく、つかまり立ちだけを切り取って診断することもできません。
つかまり立ちは、一つの動きではありません。
家具の前に大人が立たせた状態を保てることと、床から自分でつかまり立ちへ移れることは別の能力です。自分で立ち上がるには、興味のある場所へ近づき、手で支持し、重心を前上方へ移し、脚へ体重を受け渡す必要があります。
どこまで進んでいるかを見ると、「まだ立たない」という不安を、具体的な観察へ変えられます。完成したつかまり立ちを繰り返し補助するより、前段階の動きが自分から出ているかが重要です。

足裏・股関節・体幹を、分けずにつなげて見ます。
「足の力が弱いから立たない」と一つの原因にまとめることはできません。手へ体重を預けすぎる、胸を家具へ押しつける、片側へ重心を移せない、足を体の下へ運べないなど、立位準備は全身と環境の組み合わせで変わります。
| 見る領域 | 家庭で見るポイント | 解釈の注意 |
|---|---|---|
| 足裏 | 自分で立とうとしたときに左右の足を置くか。踵から足趾まで接地が変化するか。 | 一度つま先になっただけで異常とは判断しません。家具の高さや体幹位置でも変わります。 |
| 股関節・膝 | 膝立ちから骨盤が上がるか。片足を前へ運べるか。左右を入れ替えることがあるか。 | 「股関節が弱い」と家庭で決めず、開始姿勢や支持面との関係を見ます。 |
| 体幹・上肢支持 | 胸を家具へ預け続けないか。片手を一瞬離せるか。左右・斜めへ重心を移せるか。 | 背中の形や腕の力だけで「体幹が弱い」と断定しません。 |
| 姿勢変換 | 座位や四つ這いから自分で家具へ近づき、手をつき、膝立ちを試すか。 | 立たせれば立てることと、自分で立ち上がることを分けます。 |
| 降りる動作 | 膝を曲げる、お尻を下ろす、手を床や家具の低い位置へ移す動きがあるか。 | 立位保持と、安全に重心を下げる能力は別に観察します。 |
| 左右差 | いつも同じ脚だけを前へ出す、片足を浮かせる、片側の手足を使わない状態が続くか。 | 一時的な好みはあります。複数の場面でも固定する左右差かを見ます。 |
高い家具では腕にぶら下がり、胸を家具へ預け、つま先へ体重が偏ることがあります。低く安定した支持面に変えると膝立ちや足裏接地が現れるなら、身体機能だけでなく課題設定が動きを難しくしていた可能性があります。
また、腕で引いて立てても、膝と股関節を曲げてゆっくり降りられないことがあります。立ち上がる能力と、重力に合わせて安全に座る能力を分けて見ることが、転倒を減らし次の探索につながります。

家庭では、立たせるより「立ちたくなる条件」をつくります。
完成した立位を大人が作るのではなく、床遊びから家具へ近づき、自分で手をつき、姿勢を変える余地を残します。短時間でも、赤ちゃんが自分から試した動きの方が、次の動作へつながりやすくなります。
避けたい関わり
| 避けたい関わり | 代わりに行うこと |
|---|---|
| 脇を持って何度も立たせる | 床から自分で家具へ近づける時間をつくります。 |
| 足裏を床へ強く押しつける | 家具の高さと足の位置を変え、自然に体重が移るかを見ます。 |
| 両手を引っ張って立たせる | 自分の手で支持面を探し、姿勢を選べるようにします。 |
| 車輪付き歩行器で練習する | 安全な床面と固定された家具で探索します。米国小児科学会は車輪付き歩行器を推奨していません。 |
| 長時間、立位で固定する | 座る、移動する、膝立ち、立つ、降りるを自由に行き来できるようにします。 |
| 靴や中敷きを自己判断で使う | 足の硬さ、左右差、痛みが気になる場合は医療機関で確認します。 |

月齢データは、締め切りではなく全体像を知るために使います。
| 月齢 | つかまり立ち通過率 | 読み方 |
|---|---|---|
| 8〜9か月未満 | 61.2% | できる子と、準備中の子が混在する時期です。 |
| 9〜10か月未満 | 81.3% | 約5人に1人はまだつかまり立ちをしていません。 |
| 10〜11か月未満 | 88.1% | つかまり立ちの有無と、ほかの発達を合わせて見ます。 |
| 11〜12か月未満 | 96.3% | 国内調査で90%以上となる月齢帯です。 |
出典:こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査」表9。回答時点で「できる」とされた割合であり、個々の赤ちゃんの診断基準や期限を示すものではありません。早産の場合は修正月齢を踏まえます。
つかまり立ちだけでなく、発達全体と変化を見ます。
| 経過を見ながら記録しやすい状態 | 健診・小児科へ相談したい状態 |
|---|---|
| つかまり立ちはまだでも、支えなしで座り、自分で姿勢を変えている | 9か月で支えなしの座位が難しい、または自分で座位へ移れない |
| 寝返り、方向転換、ずりばいなどで興味のある物へ近づく | 床上で姿勢をほとんど変えず、移動や探索が非常に少ない |
| 膝立ちや家具への手伸ばしなど、新しい試みが増えている | 片側の手足をほとんど使わない状態が複数の場面で続く |
| 一時的につま先になるが、家具の高さや足位置で変わる | 足へ体重をかけることを極端に嫌がる、痛がる、片足を接地しない |
| 左右の使い方に好みはあるが、状況により反対側も使う | 全身が非常に硬い、または抱くと抜けるように柔らかい状態が続く |
| 保護者が動画を残し、次の健診で相談できる | 保護者の不安が強い、複数の発達領域が気になる、早産や既往がある |
専門評価では、「立たない」を観察できる要因へ分けます。
専門施設で行うのは、つかまり立ちを何度も完成させることではありません。開始姿勢、家具の高さ、手の位置、玩具の方向を変え、動きが条件によって変化するかを確認します。身体の問題と決めつけず、姿勢変換・支持面・興味・疲労・左右差を分けて考えます。
| 観察される状態 | 確認する条件 | 評価で分ける方向 |
|---|---|---|
| 座れるが家具へ近づかない | 床上移動、玩具への興味、家具までの距離、向き | 立位能力より前の移動・環境課題か |
| 膝立ちはできるが骨盤が上がらない | 手で引く割合、片側への体重移動、家具の高さ | 脚力だけでなく重心移動と支持条件か |
| 立たせれば立てるが自分では立たない | 開始姿勢、手の位置、片膝立ち、動機づけ | 立位保持と立ち上がりの違い |
| つま先だけになる | 家具の高さ、胸の支持、足の位置、左右差 | 環境依存か、持続する運動パターンか |
| 毎回同じ脚だけを使う | 反対側の支持、関節の動き、手足の左右差 | 一時的な好みか、条件を変えても続く差か |
| 立てるが降りられない | 膝・股関節の曲げ、後方への重心移動、恐怖 | 立位獲得と安全な姿勢変換の違い |
つかまり立ちは「筋力をつければ解決する動作」ではありません。たとえば、低い家具では膝立ちから骨盤を上げられるのに、高い家具では胸を預けてつま先になる場合、まず支持面と重心の条件を調整します。反対に、条件を変えても片側の手足を使わない、足を接地しない状態が続く場合は、医療・健診との情報共有を優先します。
その場で立てたかだけでなく、手の支持を減らしたとき、玩具を斜めへ移したとき、数回試した後に疲れたとき、降りる場面で動きがどう変わるかを確認します。評価結果は家庭で再現できる家具の高さや遊び方へ変換し、短い動画で同じ動作を再評価します。

足裏・股関節・体幹だけでなく、姿勢変換と環境を含めて整理します。医療・健診での確認を尊重しながら、ご家庭で見える動きを一緒に観察します。
よくある質問。
Q. 9か月でつかまり立ちをしないのは遅いですか?
Q. ハイハイもつかまり立ちもしない場合は相談した方がよいですか?
Q. 足裏をつけず、つま先になるのは大丈夫ですか?
Q. 家で立たせる練習をした方がよいですか?
Q. 早産の場合は何か月を目安に見ればよいですか?
Q. どのような場合に小児科や発達相談へ行けばよいですか?
不安を、観察できる育ちの流れへ。
STROKE LABでは、「9か月なのに立たない」という言葉を、そのまま良い・悪いで判断しません。座位からの移動、手の支持、膝立ち、足裏への荷重、体幹の立ち直り、左右差、安全に降りる動きまで分けて観察します。診断や医学的判断は健診・医療機関が担い、私たちは生活と動きの側から併走します。
次に育とうとしている動きを見る。

赤ちゃんの発達には幅があります。一方で、「まだ時期ではない」と待つだけではなく、座る、近づく、支える、重心を移す、降りるという過程を丁寧に見ることで、相談した方がよい変化にも早く気づけます。
私たちは、保護者の不安を、家庭で観察できる具体的な所見へ変えることを大切にしています。無理に立たせず、その子が自分から動きたくなる条件を一緒に整理します。
発達の診断や治療は、主治医・小児科医の判断を優先します。健診で相談する内容を整理したい、ご家庭での関わり方を確認したい場合はご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

姿勢や動きを一つの筋肉だけで捉えず、感覚・姿勢・運動の連鎖として分析する視点をまとめています。乳児の動作を見る際にも、足裏・股関節・体幹を分断せず、姿勢変換として理解する土台になります。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 7か月でお座りが不安定|体幹・手の支え・バランスの見方
- 高ばいしない赤ちゃん|ハイハイとの違いと運動発達の見方
- 赤ちゃんの発達相談を検討するときに知っておきたいこと
本記事は、国内外の公的情報と一次研究、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、主治医・小児科医・健診担当者へご相談ください(最終確認日:2026年7月28日)。
- こども家庭庁:令和5年乳幼児身体発育調査 結果の概要.表9 一般調査による乳幼児の運動機能通過率.2024年12月25日公表。公式ページ
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 9 Months. Updated May 15, 2026. CDC
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 1 Year. Updated May 15, 2026. CDC
- American Academy of Pediatrics. Baby Walkers: A Dangerous Choice. Updated August 15, 2022. HealthyChildren.org
- American Academy of Pediatrics. Corrected Age For Preemies. Updated December 10, 2018. HealthyChildren.org
- Atun-Einy O, Berger SE, Scher A. Pulling to stand: common trajectories and individual differences in development. Dev Psychobiol. 2012;54(2):187-198. doi:10.1002/dev.20593.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)