ハイハイの左右差が気になる赤ちゃん|片側だけ使う理由と対応
前へ出す手足よりも、床に残って体重を受け止める側に原因が隠れていることがあります
「片足だけ立てる」「いつも同じ側ばかり使う」「これって大丈夫?」――ハイハイの左右差は、保護者にとって気になりやすいテーマです。ただ、形が左右対称かだけでは判断できません。大切なのは、両手両膝を使う場面があるか、速さや方向で変わるか、ほかの姿勢にも同じ左右差が続いていないかを見ることです。この記事では、様子を見られる左右差と、相談が安心な左右差を整理します。

ハイハイの左右差は、すぐ異常とは言えません。
ハイハイには、手と膝で進む形だけでなく、片足を立てる形、熊ばい、腹ばいに近い移動など、いくつかのバリエーションがあります。始めたばかりの時期は、とくに動き方がまだ定まらず、左右のタイミングがそろわないこともあります。
大切なのは、見た目だけで「異常」と決めつけないことです。両側を使う場面があるか、条件を変えると動き方が変わるかを見ていくと、試行錯誤の途中なのか、相談した方が安心な左右差なのかが整理しやすくなります。

左右差を見るときは、次の3つを意識します。
1. 両手両膝を使う場面があるか
いつも片側だけでなく、ゆっくり進むときや方向を変えるときに両側を使う場面が見られるなら、動き方の幅が残っていると考えやすくなります。
2. 速さや方向で変わるか
玩具へ急ぐと片足を立てるのに、ゆっくりだと両膝をつく赤ちゃんもいます。左右差が「固定」なのか、「効率を優先した動き」なのかを見るために、速さや方向を変えて比較します。
3. ほかの姿勢にも同じ左右差があるか
寝返り、座位、つかまり立ち、玩具へ手を伸ばす動きにも同じ左右差があるなら、ハイハイだけの問題ではないかもしれません。ハイハイだけを切り取らず、全身の使い方の流れで見ることが大切です。
STROKE LABは、「形」より「役割の交代」を見ます。
ハイハイでは、片方の手と膝に体重を預け、そのあいだに反対側の手や膝を前へ出します。つまり、右と左は交互に「支える役割」と「動く役割」を入れ替えています。
片側だけ使っているように見える赤ちゃんでも、よく見ると反対側に体重を預けにくいのか、前へ出すのが苦手なのか、速くなると崩れるのかで意味が変わります。私たちは、その違いを観察して整理します。
たとえば、直進では目立たないのに、左へ向きを変えると止まってしまう赤ちゃんがいます。この場合は、片手支持や重心移動、胸郭と骨盤の回旋に差があるかもしれません。逆に、玩具を置く位置を変えると反対側も使えるなら、固定的な問題ではなく、まだ動き方を選んでいる途中とも考えられます。
ここで大切なのは、医療や健診が先ということです。急な動かしにくさ、痛み、腫れ、元気のなさなどがあるときは、様子を見ずに医療機関へ相談してください。そのうえで、私たちは動画や日常場面から、保護者が見ている違和感を具体的な観察ポイントへ翻訳します。

研究でわかっていること
- WHOの運動発達研究では、手膝ハイハイの獲得時期には大きな幅があり、経験しない赤ちゃんも一部いると報告されています。
- 保護者向けの小児科情報では、ハイハイの形にはさまざまなバリエーションがあり、左右を同じように使えているかをあわせて見ることが勧められています。
- ハイハイを始めたばかりの時期には、動き方の試行錯誤が見られることがあります。ただし、片側不使用が続く場合は、個別に評価する価値があります。
限界として、研究は健康な乳児全体の傾向を示すもので、個々の赤ちゃんの左右差をこれだけで判断することはできません。診断や治療の代わりにはならず、痛みや急な変化がある場合は医療機関での確認が必要です。
様子を見られる左右差と、相談が安心な左右差
| 様子を見ながら観察しやすい状態 | 健診・小児科で相談が安心な状態 |
|---|---|
| ハイハイを始めて間もない | 1か月ほど同じ側ばかり使う状態が続く |
| 速さや方向を変えると動き方が変わる | 玩具の位置や環境を変えても左右差がほとんど変わらない |
| 両手両膝を使う場面もある | 片方の手をつきにくい、膝をつかない、足を引きずる |
| 寝返りや座位などでは強い左右差がない | 寝返り、座位、つかまり立ちなど他の動きにも同じ左右差がある |
| 少しずつ移動の幅が増えている | 痛がる、元気がない、腫れがある、以前できた動きが減った |
急に片側が動かしにくくなった、痛みで泣く、触ると嫌がる、腫れや赤みがある、元気がない、けいれんのような動きがある場合は、様子見ではなく医療機関へ相談してください。
家庭でできる関わり
家庭で大切なのは、形をそろえる練習ではなく、赤ちゃんが自分で試しやすい環境をつくることです。
- 滑りにくく、平らな床で遊ぶ
- 玩具を正面だけでなく、左右斜め前にも置く
- 最初は数歩で届く距離から誘う
- 衣服や靴下が引っかかっていないか確認する
- 速い場面とゆっくりした場面を見比べる
- 嫌がるときは無理に続けず、短時間で切り上げる
大人が手足を交互に動かして「正しい形」を作る必要はありません。むしろ、自分で動きを選ぶ機会の方が大切です。
健診や相談で伝えると役立つメモ
- 左右差に気づいた時期
- 片足を立てる、片手をつかないなど、気になる具体的な形
- まっすぐ進くときと方向転換するときの違い
- 速いときとゆっくりのときの違い
- 寝返り、座位、つかまり立ちにも左右差があるか
- 痛み、元気のなさ、機嫌、疲れやすさの有無
- 正面・横・後ろから撮った短い動画
月齢の目安
| 月齢の目安 | 見ておきたいポイント |
|---|---|
| 7〜8か月頃 | 四つ這いになろうとする、前後へ体重移動する、移動の準備が見られるか |
| 8〜10か月頃 | 手膝ハイハイ、熊ばい、腹ばい移動など、自分で移動方法を広げているか |
| 10〜12か月頃 | 移動の安定、方向転換、つかまり立ちなど次の動きへつながっているか |
月齢はあくまで目安です。早産のお子さんでは修正月齢で見ることがあります。
避けたい関わり
| 避けたい関わり | 理由 |
|---|---|
| 手足を大人が交互に動かして形を作る | 赤ちゃん自身の試行錯誤や重心移動の練習になりにくい |
| 片足や膝を押さえて矯正する | 嫌がりや痛みにつながることがあり、原因確認にもなりません |
| 嫌がる姿勢を長く続けさせる | 疲労や不快感が強くなり、動きの質がかえってわかりにくくなります |
| 自己判断で強いストレッチやマッサージを続ける | 痛みや違和感の原因が別にある場合、対応がずれてしまうことがあります |
よくある質問
STROKE LABの小児リハ
STROKE LABでは、赤ちゃんの動きを月齢だけで判断せず、支持、重心移動、左右差、環境との関係から見ています。医療・健診が先という前提を守りながら、保護者の不安を、相談しやすい情報へ整理するお手伝いをします。

小児から成人まで、脳血管障害・発達支援に長く携わってきた臨床経験をもとに、STROKE LABでは保護者の不安を「今、何を見ればよいか」に翻訳する記事づくりと支援を行っています。
- Centers for Disease Control and Prevention. Important Milestones: Your Baby By Nine Months. CDC.
- HealthyChildren.org. Movement: Babies 8 to 12 Months. American Academy of Pediatrics.
- HealthyChildren.org. Crawling Styles. American Academy of Pediatrics.
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)