四つ這いにならない赤ちゃん|手で支える力と股関節の発達
腕・膝・おなかの三つが協力し、重心を床から持ち上げられる条件を整えていきます
「お座りはできるのに、手と膝をつくとすぐ崩れる」「お尻は上がるけれど、四つ這いにならない」——四つ這いは、腕の力だけで完成する姿勢ではありません。手のひらと膝の間で体重を受け、胸郭と骨盤を小さく調整できるかが大切です。月齢だけで判断せず、準備となる動き、家庭での安全な関わり、相談目安を整理します。

四つ這いにならないことだけで、遅れとは決められません。
同じ月齢の赤ちゃんが手と膝で動いていると、わが子だけ遅れているように見えることがあります。ただ、赤ちゃんの移動方法と発達の順序には幅があります。ずりばい、寝返り、座ったままの移動、つかまり立ちへ進むなど、経過は一つではありません。
大切なのは、四つ這いの形だけを合格点にすることではなく、両側の手足を使う動きが増えているか、床上で姿勢を変えようとしているかを合わせて見ることです。
四つ這いにならない理由を、すぐに「腕が弱い」「股関節が硬い」と一つに決めることはできません。覚醒状態、床面、玩具の位置、うつ伏せ遊びの経験、身体の大きさ、これまで選んできた移動方法などによっても姿勢は変化します。
一方で、四つ這い以外の動きもほとんど増えない、片側だけを使う状態が続く、以前できていた動きが減る場合は、月齢だけで待ち続けないことが大切です。「できる・できない」ではなく、どの条件なら動きが変わるかを記録すると、健診や専門相談で状況を伝えやすくなります。
四つ這い姿勢と、ハイハイで前へ進むことは別の課題です。
四つ這い姿勢は、両手と両膝を支持面にして、お腹を床から離した状態です。ハイハイは、その姿勢を保ちながら手足を順番に動かし、重心を前方へ運ぶ移動課題です。止まった姿勢を数秒保てても前へ進まない赤ちゃんもいれば、四つ這いを長く保たず別の方法で移動する赤ちゃんもいます。
四つ這い姿勢
手と膝で体重を受け、頭・胸郭・骨盤を支える。前後左右へ小さく揺れても戻れることが次の動きにつながります。
手膝ばい・ハイハイ
片手・反対側の膝など支持する場所を入れ替えながら、身体を前へ運ぶ。姿勢保持に加えて、片側への体重移動が必要です。

四つ這いを支える5つの条件。
腕の筋力だけを見ると、骨盤が後ろへ流れて手に体重が集まっていることや、柔らかい床へ手が沈み力の方向をつかみにくいことを見落とします。次の5条件を一つの連鎖として観察します。
手のひらと肘で床を押せる
手のひら全体が接地し、肘を伸ばした位置で体重を受けられるかを見ます。拳のまま、肘が外へ広がる、手首を強く反らす場合は、姿勢を保つための代償かもしれません。
肩甲帯と胸郭が頭を支える
頭を上げたときに肩が耳へ近づきすぎないか、胸が床へ落ち続けないかを見ます。肩甲骨が胸郭に沿い、胸の前面を床から保てると、視線や片手リーチへ余裕が生まれます。
お腹が床から離れ、骨盤を保てる
腹部を浮かせるには、背中を強く反らすだけでなく、胸郭と骨盤の間を保つ必要があります。お尻だけが高くなる、腰が大きく反る、腹部が落ちる様子を区別します。
股関節を曲げ、膝を骨盤の下へ置ける
膝が後ろへ流れ続けず、骨盤の下へ近づくかを見ます。股関節は単に柔らかいことより、曲げた位置で膝からの力を骨盤へ伝えられることが重要です。
前後左右へ体重を移して戻れる
前へ進む前に、骨盤を踵側へ少し引き、再び手の方向へ戻れるかを観察します。揺れること自体ではなく、呼吸を止めずに姿勢を修正できるかが大切です。

研究が示す幅と、月齢表の読み方。
WHOが5か国で816人を追跡した研究では、手と膝を使うハイハイの獲得時期は約5.2〜13.5か月、中央値は8.3か月でした。また、35人、4.3%は手膝ばいを示しませんでした。令和5年乳幼児身体発育調査では、保護者等の回答による「はいはい」は10〜11か月未満で91.0%でした。
この研究から言える範囲:健康な乳幼児でも手膝ばいの時期と順序には幅があるため、四つ這いをしないという一点だけで異常とは判断できません。
限界:WHOの「手膝ばい」と国内調査の「はいはい」は、静止した四つ這い姿勢そのものの基準ではありません。調査方法や定義も異なります。数値は診断や治療の代わりにはならず、左右差、ほかの発達、健康状態を合わせて判断します。出典:Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95/こども家庭庁 令和5年乳幼児身体発育調査。
CDCの9か月の発達チェックでは、支えなしで座ることや自分で座位へ移ることが示されていますが、ハイハイは必須項目として置かれていません。マイルストーンは診断票ではなく、発達を話し合うための手がかりです。四つ這いだけでなく、姿勢を変える意欲、両手の使用、座位、うつ伏せでの支持を組み合わせて見ます。
| 月齢の目安 | 見られやすい準備の例 | 観察したい変化 |
|---|---|---|
| 6〜8か月ごろ | うつ伏せで肘から手の支持へ移る、寝返りや方向転換、支えながら座る | 手のひらが開く、胸を持ち上げる、左右へ手を伸ばす |
| 7〜10か月ごろ | ひとり座り、ずりばい、腹ばいでの片手支持、膝を曲げる動き | 腹部が一瞬浮く、膝が骨盤へ近づく、前後へ揺れる |
| 8〜11か月ごろ | 四つ這いを試す、手と膝で揺れる、別の姿勢へ移ろうとする | 支える時間より、姿勢の出入りと重心移動の種類が増える |
| 10〜13か月ごろ | 手膝ばい、つかまり立ち、伝い歩きなど複数の移動方法 | 四つ這いを経ない場合も、両側使用と移動・姿勢変換の広がりを見る |
月齢は目安です。早産で生まれた場合は、医療者と相談しながら修正月齢で見ます。この表は正常・異常を分ける期限ではなく、準備動作の例です。
家庭では、完成姿勢より「自分から支える時間」をつくります。
睡眠時は仰向けを守り、四つ這いにつながる遊びは、起きていて大人が見守れる時間に行います。柔らかい布団では手や膝が沈みやすいため、滑りにくく安定した床面を選びます。練習時間の長さより、呼吸と表情を保ちながら自分で試せることを優先します。
安定した床で、短いうつ伏せ遊び
胸の近くに玩具を置き、両手で床を押したり、片手を離したりする動きを待ちます。疲れる前に仰向けや抱っこへ戻します。
玩具を近い斜め前へ
遠くへ置きすぎず、少し体重を移せば届く位置から始めます。手を伸ばせないときは、玩具を近づけ成功しやすくします。
大人の太ももをまたぐ
赤ちゃんの胸やお腹を大人の太ももで軽く支え、手と膝を床へ置きます。持ち上げるのではなく、体重の一部を預けられる条件をつくります。
数秒支えたら、一度休む
肩すくみ、息止め、手の握り込みが強くなる前に姿勢を解きます。長時間保つより、質を保った短い成功を重ねます。

避けたい関わりと、相談したいサイン。
| 避けたい関わり | なぜ避けるか | 代わりに行うこと |
|---|---|---|
| 四つ這いへ長時間固定する | 息止めや肩すくみを使って耐える姿勢になりやすい | 数秒の自発的支持で休み、条件を簡単にする |
| 大人が手足を交互に動かす | 本人が重心を移して選ぶ経験になりにくい | 玩具位置を調整し、自分から手を離すのを待つ |
| 柔らかい寝具で行う | 手と膝が沈み、床を押す方向がわかりにくい | 滑りにくい安定したマットや床を選ぶ |
| 嫌がっても繰り返す | 床遊びそのものを避けるきっかけになる | 覚醒と機嫌のよい時間に短く行う |
| 睡眠中にうつ伏せを練習する | 睡眠の安全原則と異なる | 睡眠は仰向け、床遊びは覚醒時・見守り下で行う |
遊びながら経過を見やすい様子
- ひとり座りや床上の移動が少しずつ増えている
- 左右の手足を使い、姿勢や玩具で動きが変わる
- うつ伏せで手をつく、胸を上げる動きがある
- 四つ這い以外の方法でも行きたい場所へ移動する
健診・小児科へ相談したい様子
- 四つ這い以外の床上動作も増えにくい
- 片方の手や足をほとんど使わない
- 手を強く握り続ける、体が極端に硬い・支えにくい
- 股関節を動かすと痛がる、左右の動きが大きく違う
- 以前できていた動きが減った
専門評価では「なぜ支えにくいか」を、条件ごとに分けます。
専門評価の役割は、四つ這いを無理に完成させることではありません。保護者の「手をつくと崩れる」「お尻だけ上がる」という言葉を、手の接地、肩と胸郭、骨盤、股関節、膝、重心移動、左右差へ分けます。そのうえで、支持の場所や床面を少し変え、どの条件なら本人の動きが良くなるかを確認します。
| 困りごと | 確認する条件 | その場で見る反応 | 家庭へつなぐ視点 |
|---|---|---|---|
| 手をつくと肘が曲がる | 骨盤・腹部の支持量、手の位置、床の硬さ | 手が開く、肘が伸びる、頭を上げやすくなるか | 短く支えやすい高さと床面を選ぶ |
| お尻だけ高くなる | 膝と骨盤の距離、胸郭の支持、視線 | 腹部を保ち、前後へ小さく揺れて戻れるか | 玩具を近く低い位置に置く |
| すぐ座位へ戻る | 姿勢の難易度、成功率、疲労、興味 | 支持時間より、自分からもう一度試すか | 嫌がる前に終え、試行回数を分散する |
| 片側へだけ崩れる | 視線、片手支持、胸郭・骨盤回旋、左右の膝 | 玩具方向や支持条件で左右差が変わるか | 左右それぞれの短い動画と環境差を記録する |
腕力だけの問題ではない。支持条件を変えた瞬間の反応を見ます。
たとえば、骨盤をわずかに支えた瞬間に手が開き、肘が伸び、頭を上げやすくなるなら、単純な上肢筋力不足ではなく、手と膝への荷重配分が主なボトルネックである可能性を考えます。硬い床では支えられるが柔らかい床では崩れる場合は、支持面から力を受け取る条件が影響しているかもしれません。
もう一つ見るのは、前へ進む前に骨盤を後ろへ引き、再び前へ戻れるかです。前方へ倒れるだけでは、片手を離す準備が整いません。また、形が保てても呼吸が止まる、肩がすくむ、手を握り込む場合は、余裕のある支持とは分けて考えます。
評価結果は、家庭で長時間の訓練を課すためではなく、短く成功しやすい床面、玩具位置、支え方へ翻訳します。一定期間後に同じ動画場面を見直し、支持時間だけでなく、姿勢の出入り、左右の使用、遊びの広がりを再評価します。
早期評価の研究は、特に脳性麻痺のリスクがある乳児では、月齢を待つだけでなく、標準化された評価や画像所見などを組み合わせて早く状況を把握する重要性を示しています。ただし、四つ這いにならない健康な赤ちゃん全員に、疾患リスクがあるという意味ではありません。
出典:Novak I, et al. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907. 対象と目的が本記事の一般的な発達相談とは異なるため、疾患の診断根拠として直接当てはめず、「心配が重なるときは適切な評価につなぐ」という範囲で引用しています。

STROKE LABでは、手で支える力だけでなく、肩甲帯・胸郭・骨盤・股関節・膝・重心移動・左右差を確認します。診断や医学的管理は健診・小児科を優先し、私たちは家庭で無理なく続けられる床遊びと観察方法を一緒に整理します。
よくある質問。
Q. 9か月で四つ這いにならないのは遅いですか?
Q. ずりばいはしますが、四つ這いをしなくても大丈夫ですか?
Q. お座りはできますが、手と膝で支えられないのはなぜですか?
Q. 四つ這いの練習は毎日した方がよいですか?
Q. お尻を高く上げる姿勢は四つ這いの準備ですか?
Q. どのような様子があれば健診や小児科へ相談しますか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。乳児の発達相談では、一つの姿勢を完成させることを目的にせず、今ある動き、次に育とうとしている動き、家庭で続けられる関わりを整理します。診断・検査・医学的治療は主治医・小児科医の領域を尊重し、生活と動きの側から併走します。
今日見られる小さな変化へ。

「四つ這いにならない」という心配は、月齢表と見比べるほど大きくなることがあります。しかし、赤ちゃんの発達は一つの順序だけでは進みません。
私たちは、できない姿勢を繰り返すのではなく、どの条件なら本人の支える力が現れるかを丁寧に見ます。手、胸郭、骨盤、股関節のつながりをほどき、親子が無理なく続けられる遊びへ変換します。
健診や小児科と連携しながら、家庭で何を見ればよいか整理したいときはご相談ください。一度の評価で決めつけず、育ちながら変わる動きを一緒に追っていきます。
代表取締役 金子 唯史

身体の一部だけを切り取らず、姿勢・感覚・運動の連鎖として動きを見る視点を、臨床の評価と介入へつなぐ専門書です。乳児の発達を「できた月齢」だけでなく、動きが成立する条件から考える土台にもなります。
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 8か月でずりばいしない赤ちゃん|腹ばい移動の準備と家庭遊び
- ハイハイをしない赤ちゃん|前へ進むための重心移動と手足の協調
- 座位から四つ這いに移れない赤ちゃん|姿勢変換の見方
本記事は、国内外の公的情報と一次研究、STROKE LABの臨床経験、下記書籍の枠組みをもとに構成しています。診断・治療の代わりにはなりません。お子さんの状態についての判断は、健診・主治医・小児科医へご相談ください(最終確認日:2026年7月27日)。
- WHO Multicentre Growth Reference Study Group. WHO Motor Development Study: Windows of achievement for six gross motor development milestones. Acta Paediatr Suppl. 2006;450:86-95. PubMed
- こども家庭庁.令和5年乳幼児身体発育調査 調査結果の概要.2024年12月25日公表.公式ページ
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestones by 9 Months. Learn the Signs. Act Early. 公式ページ
- American Academy of Pediatrics. Movement Milestones in Babies 8 to 12 Months Old/Back to Sleep, Tummy to Play. HealthyChildren.org. 運動発達・睡眠と腹ばい遊び
- Novak I, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)