手を開きにくい赤ちゃん|握りこみ・筋緊張・感覚の見方
指だけを広げるのではなく、肩や肘の位置、触られ方への反応まで含めて考えます
「手がいつもグーで大丈夫かな」「親指が中に入っているのが気になる」――赤ちゃんの手の握りこみは、よくある心配のひとつです。手だけを見て判断するのではなく、月齢、左右差、姿勢、覚醒状態、肩や手首との連動、手を使う広がりを一緒に見ることが大切です。この記事では、正常範囲の握りこみと、相談の目安、家庭でできる関わりを整理します。

手がグーなのは普通?
赤ちゃんの手がいつも握られているように見えると、不安になる方は少なくありません。ですが、新生児から生後早い時期には、手を握っている時間が長くても珍しくありません。手のひらに触れたときに握る把握反射もみられます。
大切なのは、手だけで判断しないことです。月齢が進むにつれて、落ち着いた時間に少しずつ手が開く、手を見る、口へ運ぶ、玩具へ触れるといった動きが広がっていきます。反対に、強い握りこみが続く、片側だけ開きにくい、ほかの発達も気になる場合は、健診や小児科へ相談する目安になります。
泣いているとき、眠いとき、うつ伏せで頑張っているときは、いつもより手が握りこみやすくなることがあります。落ち着いた状態で、仰向け・横向き・うつ伏せでどう違うかも見ていきましょう。
いつ頃から開いてくる?
月齢には個人差がありますが、2〜3か月頃になると、落ち着いたときに手が少し開く場面がみられやすくなります。3〜4か月頃には、手を見る、手を口へ持っていく、玩具に触るなど、手を使う広がりが少しずつ出てきます。
| 月齢の目安 | みられやすい手の様子 | 一緒に見たいこと |
|---|---|---|
| 0〜1か月 | 手を握っている時間が長い | 左右の動き、顔色、哺乳、全身の動き |
| 2〜3か月 | 落ち着いたときに少し手が開く | 両手を真ん中へ寄せる、手を見る |
| 3〜4か月 | 手を口へ運ぶ、玩具に触れる | 親指の位置、左右差、肩や手首の姿勢 |
| 5〜6か月以降 | 握るだけでなく、離す、持ち替える準備が進む | うつ伏せでの支持、両手の使い分け |
月齢はあくまで目安です。早産のお子さんでは修正月齢で考えます。ひとつの月齢だけで判断せず、前後の変化を見ていきましょう。

STROKE LABの視点|手だけでなく、体のつながりで見る
手を開きにくいとき、指だけを見ていると原因を単純化しやすくなります。STROKE LABでは、覚醒状態、体幹、肩、前腕、手首、手のひらへの感覚入力まで含めて見ます。次の5点は、家庭でも比較しやすい観察ポイントです。
うつ伏せでは腕で体を支える必要があります。肩がすくむ、前腕が安定しにくい、手首が曲がると、結果として指が握りこみやすくなることがあります。
このようなときは、指を無理に開くのではなく、体の支え方や姿勢を変えたときに手がどう変わるかを見ることが大切です。

研究でわかっていること
- 乳児期の運動の違いは、できるだけ早く見つけて評価することが大切とされています。ひとつの所見だけで決めつけるのではなく、複数の観察を組み合わせてみます。
- 高リスク乳児では、早期からの発達支援や家族へのサポートが推奨されています。手の握りこみが続く場合も、必要に応じて早めに相談する価値があります。
- 赤ちゃんの発達は手だけでは測れません。手を見る、口へ運ぶ、触る、支えるなど、活動の広がりを一緒に見ることが重要です。
出典:Novak I, et al. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907. / Morgan C, et al. JAMA Pediatr. 2021;175(8):846-858.
限界:これらの研究は、主に発達上のリスクや早期評価の重要性を示すもので、手の握りこみ単独で診断できることを意味しません。月齢、病歴、全身の動き、個人差を踏まえて判断されます。
家庭でできること
家庭での関わりは、無理に手を開かせることではありません。赤ちゃんが落ち着いた時間に、手を使いやすい環境をつくることが中心です。
- 起きていて落ち着いている時間に観察する
- 仰向けや横向きで両手を顔の前に寄せやすくする
- 軽い玩具に自然に触れられるようにする
- 手だけでなく肩、手首、姿勢も一緒にみる
- 両手が映る短い動画を記録しておく
- 指や親指を強く広げる
- 泣いているのに繰り返し続ける
- 片方の手を押さえて無理に使わせる
- 手のひらを何度も強く刺激する
- 1枚の写真だけで病気かどうか判断する
| 場面 | 見たいこと |
|---|---|
| 仰向け | 両手が真ん中へ寄るか、少しでも開く場面があるか |
| 横向き | 手を顔の前に持ってきやすいか、手を見るか |
| うつ伏せ | 手だけでなく、肩のすくみ、手首の曲がり、前腕で支えられるか |

相談の目安と健診メモ
「少し様子を見てもよさそうか」「相談した方が安心か」を分ける目安を表にしました。ひとつ当てはまるだけで病気と決まるわけではありませんが、相談のきっかけになります。
| 少し様子を見やすい状態 | 相談したい状態 |
|---|---|
| 新生児〜生後早い時期で、落ち着くと少し緩む | 3〜4か月頃以降も、落ち着いていても強く握ったまま |
| 左右とも同じような握りこみで、少しずつ手を見る・触る広がりがある | 片方だけいつも開きにくい、片方だけ動きが少ない |
| 仰向けや横向きで手を真ん中へ寄せられる | 手を口へ運ぶ、玩具に触るなどの広がりが少ない |
| 全身の様子が安定している | 反り返り、足のつっぱり、首すわりなどほかの発達も気になる |
- 気になり始めた月齢
- 両手とも同じか、片方だけか
- 落ち着いたときに開く場面があるか
- 仰向け・横向き・うつ伏せで違いがあるか
- 手を見る、口へ運ぶ、玩具に触る様子があるか
- 首すわり、寝返り、反り返りなど、ほかに気になること
- 両手と顔が映る短い動画を1〜2本撮っておく
STROKE LABの小児リハ|評価でわかること
STROKE LABでは、手が開くかどうかだけで判断せず、月齢、姿勢、左右差、肩や前腕、手首との連動、手の使い方の広がりをみて整理します。医療・健診が先で、私たちは生活の中で見える困りごとを観察に翻訳し、必要に応じて相談しやすくする立場で併走します。
たとえば、仰向けでは開くのにうつ伏せで閉じる場合は、指だけでなく姿勢や支え方を一緒に確認します。片方だけ開きにくい場合は、左右の使い方や姿勢の差をより丁寧にみます。家庭では生活を守る工夫を、専門家は評価を通じて「何を見ればよいか」を明確にする役割を担います。
手の握りこみだけで病名は決まりません。一方で、月齢や姿勢、左右差を整理すると、次に何を見ればよいかがはっきりします。小児リハのご相談では、ご家庭での見え方を一緒に整理し、必要な受診や観察のポイントも含めてご案内します。
よくある質問
家庭では、落ち着いて観察できる時間をつくることを。専門家は、その見え方を月齢、姿勢、左右差、手の使い方へ分けて整理する役割を担います。気になるときは、ひとりで抱え込まず、健診や小児科、必要に応じて小児リハへ相談してください。

脳血管障害や発達支援に関わる臨床経験をもとに、子どもの動きを機能解剖と生活場面の両方から整理しています。保護者の不安を、観察できる情報へ翻訳することを大切にしています。

- 仰向けで両手が真ん中にこない赤ちゃん|正中位と手の発達 ※公開URL差し替え
- 手を口に持っていかない赤ちゃん|手と口の協調を育てる関わり ※公開URL差し替え
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る ※公開URL差し替え
- 小児リハ本体ページ /therapy/polio
- Centers for Disease Control and Prevention. Developmental Milestones.
- HealthyChildren.org. Developmental Milestones and Infant Development resources.
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy. JAMA Pediatr. 2017;171(9):897-907.
- Morgan C, Fetters L, Adde L, et al. Early Intervention for Children Aged 0 to 2 Years With or at High Risk of Cerebral Palsy. JAMA Pediatr. 2021;175(8):846-858.
- 国立成育医療研究センター 乳幼児健診関連資料.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)