発達相談で見せる動画の撮り方|赤ちゃんの姿勢・動きを伝えるコツ
上手に動けた瞬間だけでなく、普段の様子を複数の方向から短く撮影することが役立ちます
「カメラを向けると動かない」「どこまで映せばよいか分からない」——発達相談の動画は、作品のようにきれいに撮る必要はありません。大切なのは、普段の条件と、動作の始まりから終わりまでが分かることです。スマートフォンで安全に撮り、相談時に伝わりやすくするポイントを整理します。

動画は、相談を補う「普段の記録」です。
相談室では、眠い、緊張する、周囲が気になるなどの理由で、家庭と同じ動きが出ないことがあります。家庭動画には、いつもの床、遊び、支え方、時間帯の中で起きている姿勢や動きを共有できる利点があります。
ただし、動画は発達検査や診察そのものではありません。動画から分かるのは、ある場面で見えた動きです。発達の経過、保護者の心配、対面での観察、必要に応じた標準化された評価を組み合わせて、はじめて全体像を整理できます。CDCも、発達マイルストーンの資料は標準化された発達スクリーニングの代替ではないと明記しています。
1.5〜19か月の乳児48名を対象に、保護者が撮影した家庭動画と対面観察でAlberta Infant Motor Scaleを比較した研究では、評価得点に高い一致が示されました。保護者の94%は、撮影が行いやすかったと回答しています。
この研究から言える範囲:撮影手順が定められ、訓練を受けた評価者が尺度を用いた条件での結果です。自由に撮影した短い動画だけで、病名や発達の遅れを診断できることを示すものではありません。
伝わりやすい撮影は、7つの基本で整います。
姿勢・動作ごとに、画角を変えます。
基本は横向き撮影ですが、スマートフォンの向きよりも、確認したい身体と周囲の条件が画面に収まることを優先します。転落や転倒の可能性がある姿勢では、撮影者とは別に見守る大人を置くか、カメラを固定してください。
| 姿勢・動作 | おすすめの画角 | 映したいポイント |
|---|---|---|
| 仰向け | 斜め上または足側から、頭から足まで。 | 頭の向き、両手が中央へ来るか、左右の手足、骨盤や脚の動き。スマートフォンを顔の真上で手持ちし続けない。 |
| うつ伏せ | 床と同じくらいの高さから側面を中心に。 | 頭、胸、肘、手、骨盤、脚が一続きで見えるようにする。起きている時間に、大人が見守る。 |
| 寝返り・姿勢変換 | 動き始める前の姿勢から、移った後まで。 | 視線、手足のきっかけ、体幹と骨盤の回旋、左右差、戻り方。成功した瞬間だけを切り取らない。 |
| 座位 | 正面と側面を別々に。床と支える手も含める。 | 骨盤、背中、足の位置、手をつく場所、傾いたときの反応。後ろに倒れる危険がある場合は見守りを優先。 |
| つかまり立ち・立位 | 正面または斜め側面から、支持物全体を入れる。 | 支持物の高さ、保護者の手、股関節・膝・足裏、左右の荷重。片手で赤ちゃんを支えながら片手撮影しない。 |
| ずりばい・ハイハイ・歩行 | 広めに固定し、開始、方向転換、停止まで。 | 移動距離だけでなく、左右の手足、速度、疲れた後、家具や床面による違い。 |

動画と一緒に、条件を短く残します。
同じ赤ちゃんでも、眠気、空腹、授乳直後、床の硬さ、服装、おもちゃの位置、支え方で動きは変わります。動画だけでは分からない条件を、1本につき1〜2行で添えると相談が進みやすくなります。
動画を送る方法は、相談先の案内に従ってください。他のお子さんの顔、氏名、園名、住所、診察券などが映り込まないよう確認し、SNSや公開設定のクラウドへ不用意に投稿しないことも大切です。
専門家は「できたか」だけを見ません。
家庭動画を見たとき、私たちは動作の結果よりも、その動作がどのように始まり、どの部分で止まり、どの条件で変化したかを整理します。動画は答えを出すためではなく、対面で確かめる仮説を立てるために使います。
たとえば、座位で右へ倒れる動画があっても、体幹の弱さだけとは限りません。左側のおもちゃへ視線が向きにくい、右手を支持に使えない、骨盤が片側へずれる、床が柔らかい、疲れた時間帯だけ起こるなど、複数の可能性があります。
対面では、支持面、視線、おもちゃの位置、支え方を一つずつ変え、その場で動きが変わるかを確認します。さらに、筋緊張、関節の動き、感覚、痛み、呼吸、全身状態は直接確認します。動画だけで病名を推測せず、何を確かめるべきかを具体化することが専門評価の役割です。

| 動画で整理しやすいこと | 対面で確認したいこと |
|---|---|
| 普段の姿勢、動作の順序、左右の使い方、支持物との距離、時間帯や床面での変化 | 筋緊張、関節可動域、触覚・固有感覚、痛み、呼吸、実際の介助量、安全性 |
| 家庭で起こる頻度、成功しやすい条件、疲れた後の変化 | 発達歴、診察所見、標準化された評価、医学的検査の必要性 |
撮影より、安全と普段の生活を優先します。
| 避けたい撮り方 | 安全な考え方 |
|---|---|
| 高い場所で撮る | ベッド、ソファ、台の上ではなく、原則として床上で撮影します。 |
| 大人が離れて固定撮影する | 転倒や転落の可能性がある姿勢では、赤ちゃんの近くに見守る大人を置きます。 |
| 泣いても何度も繰り返す | 嫌がる、疲れる、呼吸が乱れる場合は中止します。動画が撮れなかったことも相談情報です。 |
| できるように強く支える | 普段より強い介助や不自然な姿勢を加えると、いつもの動きが分からなくなります。 |
| 身体の一部だけを撮る | アップ動画は補足にし、まず全身と支持面が見える動画を残します。 |
| 撮影しながら片手で支える | 立位や歩行などは、固定カメラか別の撮影者を使います。 |
うつ伏せを撮る場合は、赤ちゃんが起きていて、大人が見守っている時間に行います。睡眠時は仰向けが基本であり、撮影のために眠っている赤ちゃんをうつ伏せにしないでください。

このようなときは、撮影や予約を待ちません。
動画を残そうとして受診が遅れてはいけません。次のような普段と違う急な変化があるときは、発達相談用の撮影を続けず、医療機関へ連絡してください。明らかに緊急の場合は119番、受診判断に迷う夜間・休日は全国共通の子ども医療電話相談「#8000」も利用できます。
上記はすべての緊急症状を網羅するものではありません。保護者が「いつもと明らかに違う」と感じる場合も、かかりつけ医、小児科、救急相談へ連絡してください。
動画は、相談の入口として使います。
初回相談では、動画だけを見て結論を出すのではなく、保護者が気になった場面、発達の経過、健診・医療情報を確認し、実際の姿勢と動きを見ます。そのうえで、条件を変えたときの反応を比べ、家庭で次に観察するポイントを整理します。
Listen
Observe
Assess
Compare
Share
よくある質問。
動画に映った不安を、観察できる情報へ。
STROKE LABでは、家庭動画を「できない証拠」として見るのではなく、普段の条件でどのように姿勢を作り、どこで止まり、何を変えると動きやすくなるかを整理する資料として活用します。健診や医療相談が先という前提のうえで、動きの見え方を詳しく確認したいご家族に併走します。
動きの前後から一緒に整理します。

相談の前に、「何を撮れば伝わるのか」「この動画でよいのか」と悩む保護者は少なくありません。けれど、完璧な記録は必要ありません。
私たちは、姿勢へ入る、保つ、戻るという流れと、支えや環境による変化を丁寧に見ます。動画で分からない部分は対面で確認し、ご家庭で次に見るポイントへつなげます。
急な異常や全身状態の変化は医療機関を優先してください。そのうえで、発達や姿勢の見え方を整理したいときはご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

動きを「できる・できない」で終わらせず、姿勢、感覚、運動のつながりとして見る視点は、赤ちゃんの家庭動画を読み解くときにも土台になります。
STROKE LABの小児リハビリについて→ 初めての相談から評価・プログラムまで→ 小児リハの初回相談で持っていくもの→ 首すわり・お座り・歩き始めが遅い→ 御茶ノ水・文京区で子どもの運動発達を相談したい方へ→
- Boonzaaijer M, van Dam E, van Haastert IC, Nuysink J. Concurrent Validity Between Live and Home Video Observations Using the Alberta Infant Motor Scale. Pediatric Physical Therapy. 2017;29(2):146-151. doi:10.1097/PEP.0000000000000363.
- Lipkin PH, Macias MM, Council on Children With Disabilities, Section on Developmental and Behavioral Pediatrics. Promoting Optimal Development: Identifying Infants and Young Children With Developmental Disorders Through Developmental Surveillance and Screening. Pediatrics. 2020;145(1):e20193449.
- Centers for Disease Control and Prevention. CDC’s Developmental Milestones. Updated February 16, 2026.
- American Academy of Pediatrics. Safe Sleep: Back is Best, Avoid Soft Bedding, Inclined Surfaces and Bed Sharing. 2022.
- 公益社団法人 日本小児科学会. こどもの救急(ONLINE-QQ). 2026年確認.
- 厚生労働省. 子ども医療電話相談事業(#8000事業). 2026年確認.
- 医学書院. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 2024.
本記事は一般的な情報提供を目的とし、発達の診断、医学的評価、治療の代替ではありません。赤ちゃんの状態については、健診担当者、かかりつけの小児科医、専門職へご相談ください。最終確認日:2026年7月31日。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)