目で追わない・追視が少ない赤ちゃん|視線と運動発達のつながり
見る力は目だけの機能ではなく、頭を保ち、体の向きを変える力とも結びついています
「顔は見るのに、おもちゃは追わない」「右には追うけれど、左は見失う」「目は動くけれど、頭がついてこない」――こうした様子があると、見えているのか、発達に影響はないのかと不安になります。追視は、目だけの働きではなく、頭を保つ力、体の安定、手の動きと一緒に育つものです。この記事では、追視の月齢の目安、家庭で見たいポイント、相談の目安を、運動発達とのつながりに絞って整理します。

追視とは何か
追視とは、見つめたものが動いたときに、目でその動きを追いかけることです。ただし、家庭で見ているときに大切なのは、「目が動いたか」だけで終わらせないことです。赤ちゃんの追視には、顔やおもちゃを見つめる力、目を左右に動かす力、頭を向ける力、体を安定させる力が関わります。
また、「目が合う」「顔を見る」「おもちゃを数秒見る」「ゆっくり動くものを追う」は似て見えても少しずつ違う反応です。追視だけが少ないのか、全体として見る反応が乏しいのかで、考えるポイントは変わります。
赤ちゃんが眠い、泣いている、頭を支えるのに精一杯という条件では、追視が少なく見えることがあります。反対に、落ち着いて起きていて、頭と体が支えられ、刺激がゆっくり見えている条件では、追視が見えやすくなります。
追視はいつから見られるか
追視は、生後2か月頃から少しずつ見られることが多いとされています。3〜4か月児健診では、視線の反応や追視がひとつの確認ポイントになります。ただし、月齢は目安であり、修正月齢で見る必要があるお子さんもいます。反応がその日によって変わることも珍しくありません。

| 月齢の目安 | 見えやすい反応 | 一緒に見たい運動面 |
|---|---|---|
| 0〜1か月ごろ | 顔に気づく、近くのものを短く見る、ゆっくりした刺激に反応する | 顔を正中へ向けやすいか、手足が落ち着いて動くか |
| 2〜3か月ごろ | 顔やおもちゃを数秒見る、左右へゆっくり追う、正中付近で見続ける | 頭を少し保てるか、両手が真ん中に集まり始めるか |
| 4〜6か月ごろ | 広い範囲を追いやすくなる、見たものへ手を伸ばす、腹ばいでも視線が動きやすい | 首の安定、腹ばいでの前腕支持、手を口へ運ぶ動き |
月齢は目安です。早産のお子さんは修正月齢で確認します。できる・できないの二択ではなく、どの条件なら反応が出るかを見ることが大切です。
追視が少なく見える5つの理由
追視は、赤ちゃんが起きていて落ち着いているときに見えやすくなります。眠気や泣きが強いと、視線の反応は落ちやすくなります。
おもちゃを速く動かしすぎる、距離が遠い、複数の刺激を同時に見せると、追視しにくく見えることがあります。まずは顔や単純な玩具をゆっくり見せます。
目では追えていても、頭を向けるのが難しいと、途中で見失いやすくなります。腹ばいでの追視が難しいときは、前腕支持や首の負荷が関係していることもあります。
右には追うのに左は追いにくい、といった様子は、向き癖や首の回しにくさ、体の使い方の左右差と関係する場合があります。
どの条件でも顔や物を見る反応が乏しい、目が揺れる、目のずれが続く場合には、小児科や眼科での評価が大切です。

視線と運動発達のつながり
赤ちゃんは、見たものに合わせて体を動かしていきます。顔やおもちゃを見つめることは、頭を向けることにつながり、頭を向けやすくなると、両手を真ん中に集めやすくなります。さらに、見たものへ手を伸ばすことや、手を口へ運ぶことにもつながっていきます。
ここで大切なのは、「追視が少ないから運動発達が遅れる」と単純に結びつけないことです。視線と運動発達には関連がありますが、眠気や姿勢によっても反応は大きく変わります。だからこそ、視線の反応を、頭・体・手の動きと一緒に見ていきます。

研究でわかっていること
視覚機能と運動発達の関係をまとめた系統的レビューでは、見る機能と動きの発達の間に関連があることが示されています。つまり、視線の反応は、頭を向ける、手を伸ばす、姿勢を保つといった運動面と無関係ではありません。
一方で、研究ごとに対象年齢や背景、評価方法が異なるため、「追視が少ないことが、そのまま運動発達の遅れを引き起こす」とまでは言えません。 家庭では、追視だけを切り出さず、全体の発達の中で見ていくことが大切です。
出典:Sánchez-González MC, et al. Acta Ophthalmologica. 2022;100(7):e1356-e1369.
研究には対象年齢、背景、評価方法の違いがあります。個人差が大きく、この記事は診断や治療の代替ではありません。気になるときは健診や医療機関でご相談ください。
様子見と相談の目安
| 様子を見ながら関わりを工夫しやすい状態 | 健診・小児科・眼科へ相談したい状態 |
|---|---|
| 起きていない時間が多く、条件によって反応が変わる | 3〜4か月頃でも顔や物を見る反応が乏しい |
| 顔は見るが、おもちゃの見せ方で差が出る | どの姿勢・時間帯でも追視がほとんど見られない |
| 仰向けでは見やすいが、腹ばいでは少し難しい | 右左どちらか一方だけ毎回見失う |
| 刺激をゆっくり見せると反応が出る | 目の揺れ、目のずれ、顔の傾きが続く |
| ほかの発達面は大きく気にならない | 一度できていた反応が減った、哺乳不良やけいれんなどを伴う |
瞳が白く見える、黒目が濁る、目のずれが強い、目が細かく揺れる、けいれんのような動き、哺乳不良、急な反応低下、意識の変化がある場合は、家庭だけで様子を見ずに、小児科や眼科などの医療機関へご相談ください。
家庭でできる関わり
家庭で大切なのは、「追わせること」ではなく、赤ちゃんが見やすい条件をつくることです。起きていて落ち着いている時間に、まずは保護者の顔を見せ、見つめたらゆっくり少しだけ動かします。見失ったら止めて待ち、また見つめたら再開します。
仰向けだけでなく、抱っこや見守り下の腹ばいでも反応を見てみると、姿勢による違いがわかりやすくなります。なお、睡眠時は必ず仰向けを守り、腹ばいは起きていて大人が見守れる時間だけにします。
| やってみたい関わり | 避けたい関わり |
|---|---|
| 起きていて機嫌のよい時間に行う | 泣いているのに続ける |
| 顔や単純な玩具をゆっくり見せる | 速く何度もおもちゃを振る |
| 見失ったら止めて待つ | 無理に追わせ続ける |
| 姿勢を変えて反応の違いを見る | 頭や首を押さえて向かせる |
| 気になる様子を短く動画に残す | スマートフォン動画だけで長時間刺激する |
専門家の評価でわかること
専門家は、「追視できるかどうか」だけではなく、どの条件なら反応が出るのかを分けて見ていきます。たとえば、顔では見られるけれどおもちゃでは難しいのか、仰向けでは追えるけれど腹ばいでは難しいのか、目だけ追うのか、頭もついてくるのか、といった違いです。
ここで重要なのは、追視を「練習不足」と決めつけないことです。姿勢を少し支えると反応が広がるなら、視線だけでなく頭や体の安定が関係しているかもしれません。一方で、どの条件でも反応が乏しい、目の揺れやずれがある場合には、医療機関での評価が優先です。
| 見られる様子 | 分けて考えるポイント | 専門家が変えて見る条件 |
|---|---|---|
| 顔は見るがおもちゃを追わない | 興味、刺激の見せ方、コントラスト | 顔、単純な玩具、音の有無を分ける |
| 仰向けでは追うが腹ばいで難しい | 頭頚部の負荷、前腕支持、疲労 | 胸の下の支え、肘の位置、短時間化 |
| 右には追うが左は難しい | 向き癖、首の回旋、左右差 | 頭部の正中、刺激方向、姿勢の変更 |
| 目は追うが頭がついてこない | 頭部追従、姿勢の安定、頚部の使い方 | 速度や範囲を小さくし、姿勢を支える |

健診や相談で伝えたいメモ
よくある質問
追視の有無だけでは判断せず、どの条件で反応が出るかを一緒に見ていくことが、不安を観察へ変える第一歩です。


発達や動作を、機能解剖と動きのつながりから捉える視点を、一般の方にもわかりやすく届けるためのベースとなっている書籍です。
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参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention. Important Milestones: Your Baby By Two Months. Accessed 2026.
- American Academy of Pediatrics. Developmental Milestones: 3 Months. HealthyChildren.org. Accessed 2026.
- 国立成育医療研究センター. 乳幼児健康診査身体診察マニュアル. 2024.
- Sánchez-González MC, et al. Visual system and motor development in children: a systematic review. Acta Ophthalmologica. 2022;100(7):e1356-e1369.
- 医学書院. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)