片足立ちが短い子|バランス反応と足部支持を育てる遊び
止まって耐える力ではなく、小さな揺れへ足首や体幹で対応できることが大切です
長く立つ前に、まず見るべきなのは支える足へ体重を預けられるかです。片足立ちの秒数は結果の一つにすぎません。足を上げる直前の重心移動、足部の支え、骨盤と体幹の立て直し、視線や不安まで分けて見ると、短くなる理由は少しずつ整理できます。この記事では、家庭でできる関わりと、専門施設でどこまで細かく見立てるのかを、保護者にも専門家にも伝わる形で整理します。

片足立ちは、秒数だけで見ない。
「何秒立てるか」は分かりやすい指標ですが、それだけで発達の問題や病気を判断することはできません。年齢が上がるにつれて片足立ちは長くなる傾向がありますが、同じ年齢でも幅があります。裸足か靴か、硬い床か柔らかい床か、視線の使い方、説明の理解、やる気や不安によっても結果は変わります。
だから大切なのは、何秒だったかより、どの局面で崩れたかを見ることです。足を上げる前に重心を移せているか、支える足の裏で小さく調整できているか、骨盤や体幹を立て直せているか。片足立ちは一つの動作に見えて、実はたくさんの要素が重なっています。
定型発達児を対象とした研究では、片足立ち時間は年齢とともに伸びる傾向が報告されています。ただし、同年齢でもばらつきがあり、測定条件でも結果は変わります。
この研究から言える範囲は、平均値は目安になるということです。何秒未満なら異常と一律に断定するものではありません。出典:BMC Pediatrics相当の年齢別バランス研究、2024年。
短くなる理由を、動きの流れに分けて考える。
片足立ちが短いとき、原因をすぐに「体幹が弱い」「足の力が弱い」と決めつけないことが大切です。片足立ちは、次のような流れで成り立っています。
たとえば、足を上げた瞬間にすぐ着いてしまう子は、足を浮かせた後よりも、浮かせる前の重心移動がうまくいっていないことがあります。逆に、数秒は立てても、足指を強く丸めたり、骨盤を横へ突き出したりして時間を延ばしている子もいます。この場合は、秒数は伸びていても、実際の生活で使える片足支持になっていないことがあります。

| よくある見え方 | 分けて考えたいこと |
|---|---|
| 足を上げるとすぐ着く | 支持脚へ体重が移る前に足を上げている、不安が強い、課題が難しすぎる |
| 足指を丸めて頑張る | 足裏の中での荷重調整が難しく、指で固定して支えている |
| 骨盤が大きく横へずれる | 骨盤と体幹の立て直しが遅い、反対脚を高く上げすぎている |
| 静かな場所ではできるが園では崩れる | 注意、疲労、周囲の刺激、課題の多さで実力が発揮しにくい |
家庭では、長く立たせるより「支える・触れる・運ぶ」。
家庭で取り組むときは、いきなり「10秒立とう」と求めない方がうまくいくことがあります。片足立ちは生活の中では、ズボンに足を通す、靴を履く、ボールを止める、段差をまたぐ、ケンケンやスキップの準備などに含まれています。まずは、生活に近い課題から始めてみましょう。
| 段階 | 家庭での遊び例 |
|---|---|
| 支える | 壁や椅子に指先で軽く触れながら、片足へ体重を移す。両足の間で左右にゆっくり揺れる |
| 触れる | 反対の足で床の丸シールや小さな目印にタッチする。前、横、斜め前など位置を変える |
| 運ぶ | ボールを足で止める、低い障害物をまたぐ、ズボンに足を通す、片足で靴を履く練習へつなげる |
変えるのは一度に一つだけにします。手の支えを減らす、目印を遠くする、足を高くする、会話をしながら行う、回数を増やす、のような要素を同時に増やさないことが、成功を積みやすくするコツです。
最初から目を閉じる、不安定なクッションの上で長く立たせる、高く足を上げることを競う、といった方法は転倒や代償を増やしやすく、家庭ではおすすめしません。

相談の目安は、秒数より「生活で困っているか」。
片足立ちの短さだけですぐに問題と判断する必要はありません。ただし、生活や遊びの中で困りごとが重なっている場合は、相談して整理する価値があります。特に、左右差、転びやすさ、痛み、以前できていたことができなくなった変化には注意します。
| 様子を見ながら遊びで経験を増やしたい場面 | 相談が安心な場面 |
|---|---|
| 初めてでやり方がよく分からない | 5歳頃を過ぎてもほとんど片足を浮かせられない |
| 片足立ちは短いが、着替えや遊びではあまり困らない | 左右差が大きい、転びやすい、階段や遊具で困る |
| 練習すると少しずつ安定してくる | 痛み、跛行、急な変化、発熱、けいれん、急な脱力がある |
専門施設では、片足立ちが短い理由を分けて評価し、育てたい機能と生活参加の両方へ働きかけます。診断、投薬、手術、装具処方などの医学的判断は主治医の領域です。私たちは、その子の動きを生活で使える力へつなぐ役割を担います。
専門施設で、さらに期待できること。
専門施設で目指すのは、片足立ち時間を延ばすことだけではありません。家庭の工夫で失敗を減らしつつ、専門施設では回復的に育てたい部分、代償を上手に使う部分、環境を変えて参加を守る部分を分けて考えます。目標は、本人と家族が困っている実際の場面、たとえば着替え、階段、ボール遊び、体育、遊具、外出先での移動に戻していくことです。
正常な形に近づけることだけを目標にせず、本人が選んだ課題をできるようにすること、成功経験を増やすこと、園や学校でも再現できること、親子の負担が増えすぎないことまでを含めて設計します。
| 観察される困りごと | 確認する評価・観察 | 選択する介入系統 |
|---|---|---|
| 足を上げるとすぐ着いてしまう | 支持脚へ重心が移る前に足を上げていないか、骨盤が支える足の上へ移るか、手の支持で変わるか | 重心移動の準備練習、反対足で低い目印へ触れる課題、安心して失敗できる環境づくり |
| 足指を丸めて頑張る、踵が揺れる | 裸足と靴、床面の違い、足裏の荷重位置、足部アライメント、疲労後の変化 | 足裏を感じながらのリーチ、支持面を絞った課題、足部支持と体幹制御をつなぐ課題 |
| 骨盤が落ちる、体を大きく傾ける | 正面と側面動画、自由脚の高さ、腕の使い方、速度を上げたときの代償 | 骨盤と体幹の立て直し課題、低い足上げ、またぐ動作、ボールを止める実課題 |
| 静かな場所ではできるが、園や体育では崩れる | 会話や課題を同時に行ったとき、午前と午後の差、繰り返したときの成功率、環境差 | 二重課題、疲労管理、生活課題そのものの練習、家庭や園での再現条件の調整 |
| 介入系統 | なぜ選ぶか | 生活で期待する変化 |
|---|---|---|
| 目標志向の課題練習 | 片足立ちそのものより、着替え、階段、ボール、遊具など本人の目標課題に直結しやすいから | 日常場面で片足支持を使う回数が増える |
| 支持脚の準備とバランス反応づくり | 足を上げた後ではなく、その前の重心移動と小さな立て直しがボトルネックになることが多いから | 足を浮かせる前の不安定さが減る |
| 足部支持と体幹の連動づくり | 足部だけ、体幹だけでは説明しきれないため、連動の中で使えるようにする必要があるから | 片足で立ったまま次の動作へ移りやすくなる |
| 家庭・園・学校への般化設計 | 訓練室でできても、生活に自動的には移らないため、環境と手順を一緒に調整する必要があるから | 体育、着替え、遊び場面での成功率が上がる |
片足立ちが短い子を、私たちは「筋力不足」だけでは見ません。筋力があっても、支持脚へ体重を移す準備が不十分であれば、足を上げた瞬間に着いてしまいます。逆に、少し支えを入れるだけで急に安定するなら、問題は筋力よりも、課題設定や不安、重心移動の学習にあるかもしれません。
機能解剖で見ると、足部の支持、足関節での微調整、骨盤と体幹の立て直しは、一つずつ独立しているわけではありません。どこか一つだけを整えるのではなく、支える足の上に頭と体幹が乗り、反対脚を動かしても崩れない流れを課題の中で作ることが重要です。
臨床では、まず支持の準備を作り、その場でどの支えなら成功率が上がるかを見ます。次に、足の高さ、目印の距離、速度、会話などの条件を少しずつ変え、どの負荷で崩れるのかを確認します。ここで大切なのは、時間を延ばすことよりも、崩れた理由が分かる課題を選ぶことです。
そして最後は、ズボンを履く、段差をまたぐ、ボールを止める、体育で待つなど、生活の目標へ戻します。一定期間後には、同じ目標場面で、必要な介助、成功率、疲労後の変化、園や学校での再現性を再評価します。訓練室で伸びた秒数が、生活で使える力に変わったかを必ず見直します。
発達性協調運動症に対する研究では、課題志向の運動介入が、バランスや活動遂行の改善に役立つ可能性が示されています。
この研究から言える範囲は、片足立ちが短いすべての子に同じ介入が必要ということではなく、生活課題に近い練習が有効な候補になり得るという点です。
小児リハでは、本人と家族が選んだ目標、課題そのものの練習、年齢や能力に応じた難易度調整、十分な反復と成功経験が重要とされています。
この研究から言える範囲は、片足立ちだけを切り出すより、着替えや体育など実場面へつながる課題設計が大切だということです。
訓練室での改善が、そのまま家庭や学校での参加に結びつくとは限りません。家庭プログラムや生活場面への般化設計が必要です。
この研究から言える範囲は、保護者に多くの宿題を渡すことではなく、続けやすい形で生活へつなぐ支援が重要だということです。
限界:対象年齢、診断、重症度、介入量には研究ごとの差があります。ここで紹介する内容は、医学的治療の代替ではなく、生活と遊びに戻すための評価と支援の考え方です。

生活や園・学校へのつなげ方。
片足立ちが少し伸びたとしても、それだけでは生活が変わったとは言えません。確認したいのは、ズボンや靴下を履くときのふらつきが減ったか、階段や段差で怖がりにくくなったか、ボール遊びや体育の参加時間が増えたか、外出後の疲れ方が変わったかです。
保護者コーチングも、親が療法士になることではありません。短く、続けやすく、失敗を減らし、親子関係を壊さない形で、生活に自然に組み込める工夫を一緒に考えることが大切です。家庭では生活を守る工夫を、専門施設では評価にもとづく設計を。両者は対立するものではなく、連続した支援です。
片足立ちだけでなく、他の単一課題との違いも気になる方は、関連テーマもご覧ください。
よくある質問

動作分析でつなぎます。
STROKE LABでは、子どもの動きの困りごとを、姿勢だけ、筋力だけでなく、課題、環境、生活参加まで含めて見立てます。医療機関や健診の役割を大切にしながら、家庭や園・学校で実際に使える方法へつなぐ支援を行っています。

『脳の機能解剖とリハビリテーション』では、機能解剖と動作分析を土台に、臨床での見立てを整理しています。保護者向けの記事で紹介した視点を、専門家向けにも体系的に学びたい方におすすめです。
Blank R, Barnett AL, Cairney J, et al. International clinical practice recommendations on the definition, diagnosis, assessment, intervention, and psychosocial aspects of developmental coordination disorder. Dev Med Child Neurol. 2019;61(3):242-285.
Jackman M, Sakzewski L, Morgan C, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with developmental coordination disorder and motor difficulties: a systematic review and meta-analysis. 2025.
厚生労働省. 発達性協調運動症(DCD)の理解と支援のために. 2024.
Centers for Disease Control and Prevention. Important Milestones: Your Child By Five Years. 2024.
金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)