高次脳機能障害のリハビリ完全ガイド|症状の見取り図と家庭でできる対策 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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高次脳機能障害

高次脳機能障害のリハビリ完全ガイド|症状の見取り図と家庭でできる対策

HIGHER BRAIN DYSFUNCTION

見えない障害には、地図が要ります。

身体は回復したのに、退院したら以前と様子が違う。さっきのことを忘れる、すぐ怒る、段取りができない——それは高次脳機能障害かもしれません。まず必要なのは、あわてて治そうとすることより、どの力が苦手かを知るための地図を持つことです。症状の全体像と、家庭でできることを、順に整理します。

UPDATED2026
READ約16分
FORご本人・ご家族へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。症状の現れ方には個人差があります。気になる変化は自己判断せず、必ず主治医・専門機関にご相談ください。

高次脳機能障害をやさしく解説する写真

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
高次脳機能障害は、外から見えにくい「見えない障害」です
02
性格や気持ちの問題ではなく、脳の傷による症状です
03
まず、どの力が苦手かを地図で知ることが出発点です
04
回復には時期があり、取り戻す訓練と、補う工夫を使い分けます
05
家族が一人で抱え込まないことも、大切な支援です
01
The Invisible Change

退院してから、気づくこと。

A Family’s Voice
「命が助かって、よかった。そう思っていたのに」

身体はほとんど元通りになった。歩けるし、話せる。それなのに、退院して家に戻ると、以前とはどこか違う。同じことを何度も聞く、些細なことで怒り出す、予定通りに動けない——。まるで別人のようで、どう接すればいいのか分からない。そんな戸惑いを抱える方が、少なくありません。

でも、知ってほしいのです。それは性格が変わったのでも、怠けているのでもなく、脳の傷による症状だということを。名前は、高次脳機能障害といいます。

高次脳機能障害は、脳卒中や頭のケガ、低酸素脳症などで脳が傷ついた後に、考えたり行動したりする力に不自由が出る状態です。手足の麻痺のように外から見えないため、見えない障害とも呼ばれます。話す・歩くはできても、生活や仕事の場面で困りごとが表れるのが特徴です。この記事は、その全体像を1枚の地図にまとめ、あなたのご家族がどの部屋に当てはまるかを見つけ、次の一歩へ進むための入口です。

02
A Map Of Symptoms

STROKE LABの視点:症状を、6つの部屋で捉える。

高次脳機能障害の症状は多彩で、名前を並べられても、家族はかえって混乱します。そこでSTROKE LABでは、症状を6つの部屋がある1枚の見取り図として捉えます。上の階に、注意や記憶といった全般的な力の4部屋。下の階に、言葉や行為という特定の窓口の2部屋。この地図があれば、今どこで困っているかが見えてきます。

高次脳機能障害の見取り図

大切なのは、部屋は1つとは限らないということです。多くの方は複数の部屋にまたがり、その組み合わせで困りごとの形が変わります。だからこそ、まず地図の上で、どの部屋に当てはまるかを一緒に確認していきましょう。

03
Each Room

それぞれの部屋と、進む先。

6つの部屋を、順に見ていきます。それぞれに、家庭で気づきやすいサインと、詳しく解説した個別の記事があります。当てはまりそうな部屋から読み進めてください。

部屋(苦手になる力) 家庭で気づきやすいサイン
気づく力(注意障害・半側空間無視) ぼんやりする、集中が続かない、左側を見落とす、左にぶつかる
覚える力(記憶障害) さっきのことを忘れる、同じ話や質問を繰り返す、約束を覚えられない
段取る力(遂行機能障害) 料理や家事の手順が組み立てられない、予定通りに動けない
感情の力(社会的行動障害ほか) すぐ怒る、我慢がきかない、意欲が出ない、障害を自覚しにくい
言葉の部屋(失語症) 言葉が出てこない、相手の話が理解しにくい、読み書きがしづらい
行為・認識の部屋(失行症・失認症) 手足は動くのに道具が使えない、見えているのに何かわからない

上段の4部屋は、注意・記憶・段取り・感情という全般的な認知の力の障害です。国の診断基準でも中核とされる症状群で、それぞれ注意障害の記事記憶障害の記事遂行機能障害の記事社会的行動障害の記事で詳しく解説します。半側空間無視は気づく力に含まれ、半側空間無視の記事があります。

下段の2部屋は、性質が少し異なります。言葉や行為という、特定の窓口に出る障害です。失語症は話す・聞く・読む・書くのどれかが崩れる状態、失行症は手足が動くのに道具がうまく使えない状態、失認症は見えているのにそれが何か分からない状態を指します。これらは失語症の記事失行症の記事失認症の記事で、それぞれの関わり方を解説します。

04
Why It Is Misunderstood

なぜ、誤解されてしまうのか。

高次脳機能障害がつらいのは、症状そのものだけではありません。周りに理解されにくいことが、本人と家族をさらに苦しめます。手足の麻痺なら、杖や車いすで誰もが障害と気づき、手助けをしてくれます。けれど、見た目が変わらない高次脳機能障害は、そうはいきません。

その結果、周囲からは「性格が変わった」「怠けている」「わがままになった」と受け取られてしまうことがあります。本人も自分の変化を自覚しにくく、うまくいかない場面が続くと、自信をなくし、落ち込んだり、いらだったりします。これは本人のせいでも、家族のせいでもありません。障害を正しく知ることが、その悪循環をほどく最初の一歩になります。

見える障害と見えない障害

05
The Timeline Of Recovery

回復の時間軸と、リハの考え方。

「治るのか」は、家族が最も知りたいことだと思います。正直にお伝えすると、すべてが元通りになるとは限りません。ですが、リハビリで改善が期待できる部分があり、時期によってやり方が変わります。ここを知っておくと、あせらず取り組めます。

発症からしばらくは、失われた機能そのものを取り戻す訓練が中心です。時間が経つと、それに加えて、メモや道具、環境の工夫で苦手を補う代償手段の練習に重点が移っていきます。取り戻すことと、補うこと。この2つを時期に応じて使い分けるのが、リハビリの基本的な考え方です。

Evidence
認知リハビリには、時期に応じた段階があるとする総説

脳卒中・脳外傷後の認知リハビリの研究を総括した代表的な総説では、注意・記憶・遂行機能などへの認知リハビリに効果を裏づける根拠があり、失われた機能を取り戻す訓練と、代償手段を身につける訓練を組み合わせることが推奨されています。国内のモデル事業でも、訓練を受けた方の多くに、発症から1年ほどのあいだで一定の改善がみられたと報告されています。

限界:効果の程度は症状や重症度、時期によって異なり、すべての機能が元通りになるとは限りません。リハビリは薬や医療的な治療の代わりではなく、組み合わせて行うものです。

出典:Cicerone KD, et al. Evidence-based cognitive rehabilitation: recommendations for clinical practice. Arch Phys Med Rehabil. 2000;81(12):1596-1615/国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害者支援の手引き

高次脳機能障害の回復軸

治すことだけを目標にしない。取り戻す訓練と、補う工夫を、時期で使い分ける。
06
Three Pillars At Home

家庭でできる、3つの柱。

病院や施設でのリハビリと同じくらい、家庭での過ごし方が回復を支えます。難しく考えなくて大丈夫です。家庭でできることは、環境を整える・道具で補う・関わり方を工夫するの3つの柱に整理できます。

Three Pillars

柱1:環境を整える。刺激を減らして集中しやすくする、物の定位置を決める、危ない場所に目印をつける。苦手な力に合わせて、暮らしの場を調整します。

柱2:道具で補う。メモ帳やスマホのリマインダー、カレンダー、チェックリスト。覚える・段取ることを、頭の中だけに頼らず、外に置いて助けます。

柱3:関わり方を工夫する。ゆっくり一つずつ伝える、責めずに待つ、できたことに目を向ける。家族の接し方そのものが、本人の安心と回復を支えます。

それぞれの症状に合わせた具体的なやり方は、各症状の記事で図解とともに紹介します。まずはこの3つの柱を頭に置き、できそうなことから一つ、始めてみてください。合う工夫は人それぞれなので、専門職と一緒に調整すると近道です。

高次脳機能障害で過程でできる3つの柱

Learn More
脳のしくみから、動画で学ぶ。

脳リハ.comのYouTubeでは、脳の部位ごとの働きと、症状とのつながりを解説しています。見えない障害の背景にある脳のしくみを知りたい方は、あわせてご覧ください。

脳のしくみの解説を見る

07
Protect The Family

家族を守り、制度を頼る。

忘れてはいけないのが、支える家族自身のことです。高次脳機能障害の支援は長い道のりになることがあり、家族が役割を肩代わりする場面も増えます。家族が倒れないことも、本人にとって大切な支援です。一人で抱え込まず、家族会や相談窓口、レスパイトサービスを頼ってください。同じ立場の人とつながることは、大きな支えになります。

制度の面では、高次脳機能障害は、条件によって精神障害者保健福祉手帳や障害年金などの対象になることがあります。ただし手続きには診断書などの準備が必要で、対象になるかは状況によります。まずは病院のソーシャルワーカーや、市区町村の窓口に相談してください。全国の高次脳機能障害支援拠点や、国立障害者リハビリテーションセンターの情報も役立ちます。制度は複雑なので、専門の窓口に頼るのが確実です。家族が抱える負担とその和らげ方は、家族のセルフケアの記事でも詳しく扱います。

08
When To Seek Help

受診と、専門リハの目安。

脳卒中や頭のケガのあとで、記憶・注意・感情・段取りに「以前と違う」変化を感じたら、早めに神経内科・脳神経外科・リハビリテーション科に相談してください。高次脳機能障害の診断や、認知症など他の原因との見分けは専門的な判断が必要で、この記事は診断の代わりにはなりません。気になる変化があれば、自己判断せず医療機関で確かめることが第一歩です。

専門のリハビリでは、どの部屋(どの力)が苦手かを評価し、その人の生活に合わせて、取り戻す訓練と補う工夫を組み立てます。保険のリハビリに期限がある場合や、退院後に続きのリハビリを探したい場合の受け皿として、自費リハビリという選択肢もあります。薬や診断は主治医の役割を尊重し、私たちは生活と動作の側から支えます。より専門的な評価やリハビリのアプローチを知りたい医療者の方は、医療者向けの解説記事もあわせてご覧ください。

09
FAQ

よくある質問。

Q. 高次脳機能障害とは、どんな障害ですか?

脳卒中や頭のケガなどで脳が傷ついた後に、注意・記憶・段取り・感情のコントロールといった、考えたり行動したりする力に不自由が出る状態です。手足の麻痺と違って外から見えにくいため、見えない障害とも呼ばれます。話す・動くはできても、生活や仕事の場面で困りごとが出るのが特徴です。気になるときは自己判断せず、神経内科やリハビリテーション科で相談してください。

Q. 退院したのに、以前と様子が違うのはなぜですか?

身体は回復しても、脳の見えない働きに不自由が残ることがあります。さっきのことを忘れる、すぐ怒る、段取りができないといった変化は、性格や気持ちの問題ではなく、脳の傷による症状のことがあります。家庭や社会に戻ってから初めて気づくことも多く、家族が戸惑うのは自然なことです。まずは主治医やリハビリの専門職に相談し、何が起きているかを一緒に整理しましょう。

Q. 高次脳機能障害は、リハビリで治りますか?

すべてが元通りになるとは限りませんが、リハビリで改善が期待できる部分があります。発症からしばらくは失われた機能を取り戻す訓練が中心で、時間が経つと、メモや道具を使って苦手を補う代償手段の練習に重点が移ります。治すことだけを目標にせず、どこが苦手かを把握して工夫を積み重ねることで、生活のしやすさは十分に高められます。続け方は専門職に相談してください。

Q. 家族は、まず何をすればよいですか?

まずは、本人のどの力が苦手かを知ることです。気づく力・覚える力・段取る力・感情の力、そして言葉や行為の障害のうち、どれに当てはまるかが分かると、対応の方向が見えてきます。そのうえで、環境を整える・代償手段を使う・関わり方を工夫する、の3つから始めます。一人で抱え込まず、専門職や家族会にも頼ってください。家族が倒れないことも、大切な支援の一つです。

Q. 認知症とは違うのですか?

違いがあります。高次脳機能障害は、脳卒中やケガなど原因がはっきりしていて、多くは進行せず、リハビリで改善が期待できる点が特徴です。一方、認知症の多くは徐々に進行します。ただし見分けは専門的で、年齢や原因によって判断が難しいこともあります。自己判断せず、必ず医療機関で診断を受けてください。この記事は診断の代わりにはなりません。

Q. 失語症や失行症も、高次脳機能障害に含まれますか?

医学的には含まれます。ただし、注意や記憶のような全般的な力の障害とは性質が異なり、言葉や行為という特定の窓口に出る障害です。失語症は話す・聞く・読む・書くのどれかが崩れ、失行症は手足が動くのに道具がうまく使えない状態を指します。この記事では、こうした障害も見取り図の中に位置づけ、それぞれの詳しい対応は個別の記事で解説していきます。
10
STROKE LAB

高次脳機能障害の相談は、STROKE LABへ。

STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。高次脳機能障害は、その多くが脳卒中を背景に起こります。どの力が苦手かを一緒に評価し、取り戻す訓練と、暮らしの中で補う工夫を、その人と家族の生活に合わせて組み立てます。診断や薬は主治医を尊重し、私たちは生活と動作の側から支えます。ご家族の不安や負担のご相談も歓迎です。保険リハとの併用もできます。

書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』(医学書院)の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408ページ

脳の部位ごとの働きと、症状とのつながりを、豊富なイラストで解説。本文と連動するYouTube講義動画で、脳のしくみを目と耳から学べます。症状の背景を知りたいご家族にも読みやすい一冊です。

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Message from CEO
見えない障害だからこそ、
まず地図を持ってほしい。
STROKE LAB代表 金子唯史

身体は回復したのに何かが違う。その戸惑いのなかで、多くのご家族が「性格が変わってしまった」と自分を責め、本人も理由の分からない不自由さに苦しんでいます。私はこれまで、そうしたご本人とご家族に、数多く出会ってきました。

お伝えしたいのは、まず、どの力が苦手かの地図を持てば、次の一歩が見えてくるということです。治すことだけにとらわれず、取り戻す訓練と、補う工夫を重ねていく。その積み重ねで、暮らしはずっとしやすくなります。

見えない障害と、一人で向き合わないでください。地図を広げるところから、一緒に始めましょう。どうぞ一度、ご相談ください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史

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References

本記事は、国内外の公的情報・診療ガイドラインと、STROKE LABの臨床経験および下記書籍の枠組みをもとに構成しています。症状の現れ方や回復には個人差があります。気になるときは、必ず主治医・専門機関にご相談ください(最終確認日:2026年7月6日)。

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