1歳半で歩かない子|様子見と相談の目安を専門家が解説
1歳半、まだ歩かない。
“待つだけでよいか”を動きから見極める
周りの子が歩き始めているのに、うちの子はまだ歩かない。つかまり立ちはするけれど、手を離すと座ってしまう。伝い歩きはするけれど、一歩が出ない。1歳半が近づくと、「もう少し様子を見てよいのか」「相談した方がよいのか」と不安になります。歩行は、脚の力だけで決まるものではありません。体幹・骨盤・足裏感覚・バランス・恐怖心・環境が重なって育つ動きです。

比べてしまうほど、不安になります。
つかまり立ちはする。伝い歩きも少しある。でも、手を離すと座り込んでしまう。立たせようとすると嫌がる。歩かせようと手を引くと、体を預けてしまう。周りの子が歩いている姿を見るたびに、「うちの子だけ遅いのでは」と心配になります。
歩き始めには個人差があります。ただし、1歳半という時期は、単に「そのうち歩く」と待つだけではなく、歩く前段階が育っているかを確認する大切なタイミングでもあります。
歩行は、足を前に出すだけの動きではありません。頭と体幹を起こし、骨盤の上に体を乗せ、左右の足へ体重を移し、足裏で床を感じ、倒れそうになったら体を戻す。これらの準備が重なって、はじめて一歩が出ます。
この記事では、「1歳半で歩かない」ときに、どこまで様子を見てよいのか、どんな場合に相談した方がよいのか、家庭ではどの動きを見ればよいのかを整理します。STROKE LABらしく、姿勢・筋緊張・感覚・運動学習の視点から、保護者の方が日常で確認しやすい形に落とし込みます。
歩き始めには幅があります。
歩き始めの時期には個人差があります。15か月頃に数歩ひとりで出る子もいれば、18か月頃に支えなしで歩き始める子もいます。早く歩くことが優れているわけではありませんし、少し遅いから将来の運動が必ず苦手になるわけでもありません。
一方で、18か月頃は「支えなしで歩く」ことが一つの確認目安になります。1歳半でまだ一人歩きがない場合は、不安を抱えたまま家庭だけで判断するより、乳幼児健診や小児科、必要に応じて理学療法士・作業療法士に相談し、歩く前段階がどこまで育っているかを確認すると安心です。
つかまり立ち、伝い歩き、手を離して数秒立つ、しゃがんでおもちゃを拾う、床から立ち上がろうとする。これらは、独歩の前に大切な準備です。歩くかどうかだけを見ると不安が大きくなりますが、前段階を分けて見ると、今必要な関わりが見えやすくなります。

一歩の前に、4つの準備が育ちます。
「歩く」と聞くと、足の筋力を想像しやすいかもしれません。けれど実際には、歩行は全身の協調運動です。体幹がふらつくと足を出す余裕がなくなり、足裏で床を感じにくいと立つこと自体が不安になります。手を離すことが怖ければ、一歩を出す前に座り込むこともあります。
立った姿勢で、体が前後左右に大きく崩れないことが必要です。体幹や骨盤が不安定だと、足を出すより先に体を支えることで精一杯になります。
一歩を出すには、片足へ体重を乗せ、反対の足を軽くする必要があります。伝い歩きは、左右への体重移動を学ぶ大切な段階です。
足裏に体重をかけ、床の硬さや傾きを感じることは、立位と歩行の安定に関わります。つま先だけに乗る、足を床につけたがらない場合は観察が必要です。
体が準備できていても、手を離すことへの怖さが強いと一歩が出にくいことがあります。安全な距離で成功体験を作ることが大切です。

様子見と相談の分かれ目。
1歳半で歩かない場合、すべてが同じ意味ではありません。つかまり立ちや伝い歩きがあり、少しずつ手を離そうとしている子と、立つこと自体が難しい子では、見方が変わります。下の表は、家庭で観察するときの目安です。
| 観察ポイント | 様子を見ながら関われることが多い | 相談を考えたい |
|---|---|---|
| 立つ準備 | つかまり立ち・伝い歩きがあり、少しずつ距離が伸びている | つかまり立ちをしない、立たせても足をつかない |
| 手放し立ち | 一瞬でも手を離す、家具から保護者へ移ろうとする | 手を離すと常に崩れる、体を預けるだけで支えようとしない |
| 左右差 | 左右どちらにも伝い歩きする、両足へ体重をかけられる | いつも片足だけ使う、片側だけ引きずる、片手だけ使いにくい |
| 足のつき方 | 足裏全体を床につける時間がある | 常につま先立ち、足を床につけたがらない、痛がる |
| 変化の経過 | 数週間〜1か月単位で、立つ・移る・しゃがむ動きが増えている | できていた動きが減った、立たなくなった、全身状態が悪い |
歩かないことだけでなく、できていた動きが減った、立つと痛がる、片側だけ明らかに使いにくい、強い突っぱりや極端な柔らかさがある場合は、家庭で練習を増やすよりも医療機関や専門職へ相談してください。この記事は診断の代わりではなく、日常の観察を整理するためのものです。

歩かない理由を、分解します。
「1歳半で歩かない」といっても、背景はさまざまです。足の筋力だけではなく、立位の安定、足裏の感覚、左右差、慎重な性格、転ぶことへの怖さ、生活環境の中で立って遊ぶ機会が少ないことなどが関係します。
| 見られる様子 | 考えやすい背景 | 家庭で見るポイント |
|---|---|---|
| 伝い歩きはするが、一歩が出ない | 手を離す不安、前方への体重移動の不足、成功体験の少なさ | 家具から保護者へ、短い距離で移ろうとするか |
| 立つとすぐ座り込む | 立位保持の疲れ、骨盤・体幹の不安定さ、怖さ | どれくらい立っていられるか、疲れ方に変化があるか |
| つま先で立つことが多い | 足裏全体で床を感じにくい、ふくらはぎの緊張、姿勢の不安定さ | 足裏全体をつく時間があるか、片側だけ強くないか |
| 手を引くと体を預ける | 自分で重心を支える経験が少ない、上半身で引かれて歩いている | 手を高く引かなくても立位を保てるか |
| 片側に寄って立つ | 左右差、片足への荷重の偏り、体幹の回旋や骨盤の偏り | いつも同じ手・足で支えていないか、動画で確認する |
STROKE LABの視点:歩行は「足」ではなく「重心の移動」で見る
歩かないお子さんを見るとき、私たちは「足が弱いか」だけを見ません。立った姿勢で重心がどこにあるか、左右の足へ体重を移せるか、骨盤が後ろに引けていないか、足裏で床を押せているか、手を離したときに体を戻せるかを見ます。
伝い歩きができても、一歩が出ない子では、家具に体を預けたまま横へ移動していることがあります。この場合、脚を前に出す練習よりも、片足へ体重を乗せる、少しだけ手を離す、しゃがんで戻るなど、重心を自分で扱う経験が重要になります。
家庭で見る、6つのチェック。
相談時には、「歩きません」だけでなく、何ができていて何が難しいのかが分かると評価が進みやすくなります。スマートフォンで短い動画を残しておくと、健診や小児科、リハビリ専門職へ相談するときに役立ちます。
家具につかまって自分で立ち上がるか。片膝立ちを経由するか、腕だけで引き上げていないかを見ます。
右にも左にも動けるか。片方向だけ得意、片足だけ引き寄せるなどの偏りがないかを見ます。
一瞬でも手を離すか、すぐ座り込むか、保護者の方へ倒れ込むかを見ます。怖さが強い場合もあります。
立った状態からしゃがんでおもちゃを拾えるか、また立ち上がれるかを見ます。膝や股関節のコントロールに関係します。
足裏全体をつく時間があるか、つま先だけになりやすいか、片足だけ浮きやすいかを見ます。
眠い、空腹、疲れている時間は立位が不安定になります。できる時間帯・できない時間帯も観察します。
家庭でできる、歩く前の遊び。
家庭で大切なのは、無理に歩かせることではありません。歩く前に必要な「立つ」「横へ移る」「しゃがむ」「手を離す」「足裏で床を感じる」経験を、安全な環境で作ることです。

家具につかまった状態で、少し下のおもちゃを取る、また立ち上がる。しゃがむ・戻る動きは、歩行に必要な股関節・膝・足首の協調につながります。
家具と保護者の距離を近くし、1歩未満の距離から移る遊びを作ります。無理に歩かせるより、「届いた」「移れた」という成功で終えることが大切です。
安定した押し車を使う場合は、スピードが出すぎないものを選び、必ず保護者が近くで見守ります。押し車に体を預けすぎる場合は、使い方を見直します。
避けたい関わり。
「早く歩かせたい」という思いから、長く手を引いて歩かせたり、歩行器に頼ったり、嫌がっているのに立たせ続けたりしたくなることがあります。しかし、歩行発達に必要なのは、子ども自身が体重を支え、重心を移し、足裏で床を感じる経験です。
両手を上から引っ張って歩かせると、子どもが自分で重心を支えるより、上半身を預けて進む形になりやすいことがあります。手を支える場合は、できるだけ低い位置で、子どもが足で床を押しているかを確認します。

| 避けたいこと | 理由 | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 腕を上に引っ張る | 体を預けやすく、足で支える経験になりにくい | 低い位置で軽く支え、足裏で床を押せているか見る |
| 嫌がっても立たせ続ける | 立位や歩行への怖さが強くなることがある | 短く、成功で終える。座位・膝立ち・つかまり立ちから始める |
| 不安定な家具で練習する | 家具が動いて転倒しやすい | 倒れにくい低い家具、滑りにくい床、安全なマットを使う |
専門家は、どこを見るのか。
専門家は、「歩けるか・歩けないか」だけを見ているわけではありません。床から立ち上がるまでの流れ、つかまり立ちの姿勢、伝い歩きの左右差、足裏のつき方、手を離したときの反応、転び方、怖がり方まで含めて確認します。
体が硬すぎないか、柔らかすぎないか、立位で反り返るか、骨盤が後ろに引けるかを確認します。
左右の足に体重を移せるか、片足に乗ったときに体幹が崩れないか、伝い歩きが左右対称かを見ます。
足裏全体で床を押せるか、つま先立ちが強くないか、足首が硬くないか、靴や床環境が合っているかを確認します。
手を離すことを怖がっていないか、転倒経験の影響がないか、家庭環境で安全に立って遊べる場所があるかを確認します。

STROKE LABでは、立位姿勢、体幹・骨盤、左右差、足裏感覚、筋緊張、怖がり方、家庭環境まで含めて、お子さんの動きを丁寧に確認します。病院や健診での相談とあわせて、家庭でできる関わり方を整理したい方は、小児リハビリのページもご覧ください。
よくある質問。
Q. 1歳半で歩かないのは、すぐ受診が必要ですか?
Q. 伝い歩きはするので、もう少し待ってもよいですか?
Q. はいはいをあまりしなかったことは関係しますか?
Q. つま先立ちが多い場合はどう見ればよいですか?
Q. 家ではどんな動画を撮っておくとよいですか?
STROKE LABでは、歩く前の土台まで見ます。
STROKE LABの小児リハビリでは、「歩けるか」だけでなく、歩く前に必要な体の準備を丁寧に見ます。床から立つ、つかまり立ちをする、左右へ伝い歩きする、しゃがむ、手を離す、足裏で床を感じる。こうした一つひとつの動きから、お子さんに必要な支援を整理します。
1歳半で歩かないと、不安になるのは自然なことです。大切なのは、焦って歩かせることではなく、今のお子さんがどの段階でつまずいているのかを見つけ、安全に経験を積める環境を整えることです。健診や小児科での相談とあわせて、家庭でできる関わり方を具体的に整理したい場合は、専門評価をご検討ください。
動きの準備から一緒に整理します。

健診や病院で「もう少し様子を見ましょう」と言われることは、保護者にとって安心でもあり、不安が残ることでもあります。毎日見ているからこそ気づく小さな違和感は、決して軽く扱うものではありません。
私たちは、歩く時期だけを比べるのではなく、今のお子さんがどんな準備を積み重ねているのかを大切にしています。
「このまま様子を見てよいのか」「家庭では何をすればよいのか」と迷われている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
代表取締役 金子 唯史
本記事は、乳幼児の運動発達・歩行発達に関する一般的な情報と、STROKE LABの小児リハビリにおける臨床経験をもとに構成しています(最終確認日:2026年7月2日)。
- CDC: Milestones by 15 Months
- CDC: Milestones by 18 Months
- American Academy of Pediatrics / HealthyChildren.org: Your Checkup Checklist — 18 Months Old
- Oxford Health NHS: Gross motor skills — babies and toddlers
- Cambridgeshire & Peterborough Children’s Health: Learning to walk
- MyHealth Alberta: Get ready for first steps — When to get more help

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)