片麻痺の子どもの歩き方と装具・靴|脚長差と見直しのタイミング
片麻痺の歩行を、脚長差・装具・靴の変化から支える
「片足だけつま先になる」「装具が合っているか分からない」「脚の長さが違うと言われた」。片麻痺の歩き方は、足首だけで決まりません。体幹・骨盤・膝・足部と、装具・靴の組み合わせを一つの連鎖として見ることが大切です。代償を悪い癖と決めつけず、安全に歩き、遊び、学校生活へ参加するための戦略として整理します。

片麻痺の歩き方を「悪い癖」で終わらせない。
片麻痺のある子どもは、使いにくい側へ体重を乗せにくい、足先が引っかかる、膝を曲げにくいなどの条件の中で、転ばず前へ進む方法を探します。体を横へ傾ける、骨盤を持ち上げる、脚を外から回す、つま先で接地する動きは、今の身体で成立させた代償戦略です。
大切なのは代償をすべて消すことではありません。疲れにくいか、痛くないか、転びにくいか、生活の活動が広がるかを基準に、必要な代償と負担の大きい代償を分けます。
形だけを整えるのではなく、なぜその動きが必要になっているのかを考えます。できることを奪わず、より安全で参加しやすい方法へ更新していきます。
足首だけでなく、体幹から足部までを見る。
片麻痺の歩行では、足首の内反や尖足が目立ちやすい一方、その背景には体幹と骨盤の使い方があります。麻痺側へ体重を移せないと、骨盤を引き上げて足を振り出したり、非麻痺側へ体を残したまま歩いたりします。
麻痺側へ乗れるか、骨盤が横や後ろへ逃げないかを見ます。
立脚中に伸びすぎるか、曲がったままか、振り出しで曲がるかを見ます。
踵接地、内反、つま先の引っかかり、足底の接地面を見ます。
腕の位置や視線がバランスの取り方にどう関わるかを見ます。

装具と靴は、歩くための「環境設定」。
短下肢装具(AFO)には、足首の位置を整える、つま先の引っかかりを減らす、立脚時の安定を助ける、変形や拘縮の進行を抑えるなど、複数の目的があります。目的が違えば、必要な硬さや形も変わります。
さらに、装具は靴に入れて初めて歩行環境として完成します。靴が浅い、踵が不安定、幅が狭い、靴底が左右で違うと、装具が合っていても歩きにくくなることがあります。
| 確認点 | 見直しのヒント |
|---|---|
| 踵 | 装具内で浮く、靴の中で動く、踵周囲に赤みが残る |
| つま先 | 指が曲がる、靴先へ当たる、装具から足が前へ滑る |
| 靴底 | 片側だけ強く減る、外側・内側へ傾く |
| 歩行 | 速度低下、転倒増加、膝の伸びすぎ、疲れや痛みの増加 |

脚長差は「骨の差」と「見かけの差」を分ける。
片麻痺では、麻痺側の脚が実際に短い場合があります。一方で、骨の長さが同じでも、つま先立ち、膝の伸びすぎ、股関節や骨盤の位置によって、歩くときだけ短く見えることがあります。
大腿骨・脛骨など、骨の長さそのものに左右差がある状態。画像や計測で確認します。
骨盤の傾き、膝、尖足などにより、立位や歩行で短く、または長く見える状態です。
補高やインソールが助けになる場合もありますが、自己判断で高さを加えると、膝や骨盤の動きが別の方向へ崩れることがあります。計測だけでなく、補高した状態で実際に歩行を確認して決めます。

装具・靴を見直すタイミング。
成長期は、前回合っていた装具が数か月後にも合うとは限りません。サイズだけでなく、筋緊張、関節の動き、歩行能力、活動量も変化します。
- 赤みや水ぶくれが続く
- 痛み、しびれ、腫れがある
- 踵が浮く、足が装具の中で滑る
- 急に転びやすくなった
- 膝の伸びすぎや体の傾きが強くなった
- 歩行距離が短くなり、疲れを訴える
- 装具や靴を強く嫌がるようになった
顔色・呼吸・意識の異常、けいれん、急な片麻痺、急な強い痛みや腫れは、装具調整ではなく医療機関を優先してください。
研究でわかっていること。
脳性麻痺の子どもを対象にした系統的レビューでは、AFOの使用により歩行速度や歩幅、足首・膝の動きに改善がみられる可能性が報告されています。片麻痺を含む痙性脳性麻痺では、つま先の引っかかりや踵接地を支える効果が期待されます。
限界:研究対象は脳性麻痺全体を含み、装具の種類や評価条件も異なります。効果は成長、筋緊張、拘縮、痛み、靴との組み合わせで変わり、すべての子どもに同じ結果が出るものではありません。治療・処方の代替ではありません。出典:Aboutorabi A, et al. Ann Phys Rehabil Med. 2017;60(6):393-402. Lintanf M, et al. Clin Rehabil. 2018;32(9):1175-1188. Betancourt JP, et al. Am J Phys Med Rehabil. 2019;98(9):759-770.
痙性片麻痺の子ども44人を調べた研究では、11人で麻痺側下肢が15mmを超えて短いことが報告されました。ただし、脚長差の大きさや影響には個人差があり、見かけの差と分けて考える必要があります。
限界:単施設の小規模研究であり、数値をすべての片麻痺児へ当てはめることはできません。成長とともに変化するため、定期的な確認が必要です。出典:Riad J, et al. J Pediatr Orthop. 2010;30(8):846-850.
専門リハで取り組めること。
1. 目標志向の歩行・階段・遊び練習
通学、階段、公園、体育など、その子が実際にしたい活動から練習内容を組みます。
2. 体幹から足部、装具・靴までの動作分析
裸足、装具、靴を履いた状態を比較し、どこが助けられ、どこに負担が出るかを確認します。
3. 家庭・学校プログラムと保護者コーチング
動画の撮り方、見直しサイン、学校で共有するポイントを、実行できる形に整理します。
効果や経過は、原因疾患、麻痺の程度、感覚、成長、関節の状態によって変わります。装具の変更や補高は主治医・義肢装具士と連携して判断します。

家庭・学校で確認したいこと。
日常の動画は、診察室では見えにくい変化を伝える重要な情報です。前・後ろ・横から、10秒程度の歩行を安全な場所で撮影しておくと比較しやすくなります。
- いつから歩き方が変わったか
- 裸足・装具・靴で違いがあるか
- 転倒する方向と頻度
- 痛み、赤み、疲労の有無
- 歩ける距離や速度の変化
- 階段、体育、通学で困る場面
- 前・後ろ・横から撮影した歩行動画
学校では、装具の着脱場所、体育時の靴、長距離移動の休憩、転倒時の対応を共有します。できないことだけでなく、装具があるとできることも伝えると、参加方法を相談しやすくなります。
よくある質問。
Q. 装具は一日中つけたほうがよいですか?
Q. 装具を外して歩く練習も必要ですか?
Q. 片足だけつま先歩きになるのは装具が合っていないからですか?
Q. 脚長差があると、必ず靴底を高くする必要がありますか?
Q. 装具や靴を見直すサインは何ですか?
Q. 急いで受診したほうがよい変化はありますか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LABは、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。片麻痺の歩行を、足の形だけでなく、感覚、姿勢、体幹、骨盤、膝、装具、靴、生活課題まで含めて確認します。医療機関での診察・リハビリを尊重し、家庭や学校で続ける方法を一緒に整理します。

歩き方は、身体の条件に適応した結果です。形を直すことだけを目標にすると、子どもが持つ工夫や参加の機会を失うことがあります。
私たちは、今の歩き方を丁寧に読み解き、装具や靴を含めて、転びにくさ、疲れにくさ、活動の広がりへつなげます。
代表取締役 金子 唯史

- 子どもの片麻痺|成人とは違う小児のリハビリの考え方
- 脳性麻痺の子どもの歩き方|はさみ足・尖足を運動分析から支える
- 脳性麻痺の子どもの装具(AFO)と靴|成長に合わせた見直し方
- 片麻痺の子どもの学校生活|書字・体育・持ち物をどう支えるか
本記事は公的ガイドラインと研究をもとに構成しています。診断・処方・治療に代わるものではありません。最終確認日:2026年7月10日。
- NICE. Spasticity in under 19s: management. CG145. Updated 2016.
- NICE. Cerebral palsy in under 25s: assessment and management. NG62. 2017.
- Aboutorabi A, et al. Efficacy of ankle foot orthoses types on walking in children with cerebral palsy: A systematic review. Ann Phys Rehabil Med. 2017;60(6):393-402.
- Lintanf M, et al. Effect of ankle-foot orthoses on gait, balance and gross motor function in children with cerebral palsy: a systematic review and meta-analysis. Clin Rehabil. 2018;32(9):1175-1188.
- Betancourt JP, et al. Impact of ankle-foot orthosis on gait efficiency in ambulatory children with cerebral palsy: a systematic review and meta-analysis. Am J Phys Med Rehabil. 2019;98(9):759-770.
- Riad J, et al. Leg length discrepancy in spastic hemiplegic cerebral palsy. J Pediatr Orthop. 2010;30(8):846-850.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)