冬の車椅子で外出が減る原因と対策|脳卒中リハの評価・介入
冬の車椅子は、なぜ患者を外出から遠ざけるのか。
雪や氷、冷えた座面、かじかむ手。冬の車椅子には、夏にはない障壁が重なります。カナダの調査では、冬に外出が減った人が42%いました。先輩から後輩への引き継ぎです。脳卒中の車椅子利用者を担当するPT・OT・STが押さえる評価・介入・連携を、根拠と数値つきでまとめました。

出典:Ripat JD, et al. Arch Phys Med Rehabil. 2015 [観察研究](横断調査)
要点5項目。
12月、車椅子の患者さんが「外に出たくない」と言い出した。
68歳男性。右片麻痺で、発症から8か月(生活期)です。BRS(ブルンストロームステージ)は上肢Ⅲ・手指Ⅲ・下肢Ⅳでした。BRSは麻痺の回復を6段階で示す指標です。移動は左手足で車椅子を駆動し、FIM(機能的自立度評価法)の移動は5点です。主訴は「座面が冷たくて、外出がつらい。右足も突っ張る」でした。
初回評価は、室温14℃の居室で行いました。右足関節底屈筋のMAS(修正Ashworth尺度:筋の抵抗感を0〜4で示す)は2(夏は1+)でした。右足底の表在感覚は10段階で5/10です。仙骨部には、圧迫を解くと消える発赤がありました。外出は週4回から週1回に減り、PHQ-9(うつ症状の質問票)は8点でした。
この場面に、新人のころ何度も出会いました。そのとき「寒いから仕方ない」で終わらせないでください。
原因は一つではありません。冷え、痙縮、皮膚、路面、気持ちが重なっています。
テーマは「冬場の車椅子使用の問題点と解決策を、多角的に理解して臨床に応用する」ことです。
冬の障壁は、5つの環境領域で整理する。
冬の車椅子障壁とは、寒さ・雪・氷が移動と社会参加を妨げる要因の総称です。
Ripatらは、障壁を5つの環境領域で整理しました。技術的、自然的、物理的、社会的・態度的、政策の5つです。
調査は、カナダの都市で手動・電動の車椅子ユーザーを対象に行われました。デザインは横断調査です。仮説は「冬の悪天候での地域参加は、歩行者より車椅子ユーザーで制限が大きい」です。

・冬の外出頻度が減った人は42%でした。年齢の増加、家族・友人の移動手段の欠如、車椅子の種類が関連していました。
・タイヤ・キャスターの問題がありました。雪で立ち往生し、氷で滑り、傾斜の制御が難しくなりました。
・駆動する手の冷えが、問題として挙がりました。
・99%が歩道・道路の問題を報告し、80%が冬は支援が必要と答えました。
・外出の減少は、孤立感と安全への恐怖・不安につながりました。
冬の路面は7タイプ。3つの視点で整理する
冬の路面リスクは、臨床で使いやすいよう3視点に整理しました。出典のない整理のため、[専門家合意]として扱います。
氷結路面:表面が滑りやすく、転倒・スリップの危険が高まります。薄い氷は見えにくく、乾いて見えることがあります。タイヤは空転し、歩行者は足を滑らせます。
シャーベット状の路面:雪が解けて泥状になり、滑りやすくなります。再凍結しやすく、夜間・早朝が危険です。靴底とタイヤのグリップが落ち、タイヤが詰まって操作性も悪化します。
濡れた路面の再凍結:日中に解けた雪が夜間に凍り、ブラックアイスになります。視認が難しく、車椅子も歩行者も滑る危険が急に高まります。
日陰・風通しの悪い場所:雪や氷が解けにくく、部分的に凍結が残ります。油断しやすく、事故が多い場所です。
積雪路面:新雪は圧縮されると固まり、タイヤや足元が滑りやすくなります。深い積雪では、車椅子の移動が著しく困難です。駆動力が足りず、歩行者は膝や足首が埋まって疲れがたまります。Ripatらの調査でも、雪での立ち往生が報告されました。
舗装の亀裂・凹凸:冷気と凍結でアスファルトが膨張・収縮し、亀裂や凹凸が生じます。雪に隠れて見えにくく、車椅子の振動で姿勢が崩れます。歩行者はつまずきやすくなります。
凍結防止剤・融雪剤:タイヤや靴底に付着し、溶けた水で滑りやすくなります。金属部品やブレーキが錆び、車椅子の点検頻度が増えます。
対策の基本は3本立てです。車椅子は、滑り止めタイヤ・チェーンと、適切なメンテナンスです。歩行者は、防滑シューズとトレッキングポールです。路面管理は、日常的な雪かきと凍結防止剤の散布です。
冬季の障壁[観察研究]:Ripat JD, Brown CL, Ethans KD. Arch Phys Med Rehabil. 2015;96(6):1117-1122。カナダの都市での横断調査で、対象は手動・電動の車椅子ユーザーです(n:要確認)。42%が外出頻度の減少、99%が歩道・道路の問題、80%が支援の必要を報告しました。原著はこちら。
脳卒中の規模[観察研究]:Feigin VL, et al. Int J Stroke. 2022;17(1):18-29。2019年の世界推計で、新規脳卒中は年間1,220万人、脳卒中とともに生きる人は1億100万人でした(GBD推計)。
— ご本人・ご家族の状況を丁寧にお伺いします
STROKE LABは、脳卒中などの神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。ご本人の状態と生活環境を丁寧に評価し、冬の間も続けやすい形をご提案します。訪問・オンラインにも対応しています。
脳卒中患者は、なぜ冬に困りやすいのか。
冬の問題は、脳卒中後の症状と寒さが掛け合わさって強まります。押さえる機序は3つです。感覚障害、痙縮、駆動の制限です。

感覚障害(触れる・冷たい・熱いを感じにくい状態)があると、体の冷えに気づきにくくなります。座位のずれや皮膚の摩擦にも、気づきにくくなります。
低体温(深部体温35℃未満)の入り口として、冷えの自覚が乏しいことに注意します。
痙縮:寒さで筋緊張が高まりやすい
寒さで筋緊張が増え、痙縮が悪化しやすいと、臨床ではよく言われます。特に麻痺側で目立ちます。
ただし、環境の寒さと痙縮悪化の関係を直接検証した質の高い研究は限られます。臨床観察として扱い、必ず再評価で確かめます。
局所の寒冷療法は、一時的に筋緊張を下げるとされます。環境の寒さとは別物として区別します。[専門家合意]
駆動:冷えた手と、雪でつまるキャスター
片麻痺の方は、健側の手足で駆動することが多くなります。冷えたハンドリムは、その手を直撃します。Ripatらの調査でも、駆動する手の冷えが問題に挙がりました。雪でキャスターが詰まり、傾斜の制御が難しくなる点も同じです。
感覚障害と皮膚リスク[専門家合意]:NPIAP/EPUAP/PPPIA国際ガイドライン(2019)は、知覚の障害を褥瘡のリスク因子に位置づけています。
寒さと痙縮[専門家合意]:直接検証は限られ、臨床観察に基づく理解です。痙縮治療の全体像は、脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]を参照してください。
手の冷えと駆動[観察研究]:Ripat JD, et al. Arch Phys Med Rehabil. 2015。駆動する手の冷えと、タイヤ・キャスターの問題が報告されました。
冬の「動けない」は、寒さのせいとは限らない。
冬に活動が落ちた患者さんを見たら、寒さだけを原因にしないでください。別の病態が隠れていることがあります。

| 鑑別疾患 | 共通点 | 鑑別ポイント | 参考検査 |
|---|---|---|---|
| 寒冷による痙縮悪化 | 動きにくい、足が突っ張る | 保温・室温上げで軽減する。新しい神経症状はない。 | MAS(修正Ashworth尺度)。室温を変えた前後の再評価。 |
| 脳卒中の再発・神経症状の悪化 | 動きにくい、麻痺側の脱力 | 急に起きた。顔のゆがみ、呂律、視野の異常、麻痺の急な変化がある。 | FAST(顔・腕・言葉の異常に気づき、すぐ通報する合言葉)。疑えば救急要請。 |
| 低体温・寒冷ストレス | 動きが鈍い、反応が悪い | 震え、意識レベルの低下、寒冷曝露の直後。深部体温35℃未満。 | 体温(鼓膜・深部)、バイタル、意識レベル(JCS/GCS)。 |
| 冬季の抑うつ(脳卒中後うつを含む) | 外出しない、意欲がない | 気分の落ち込み、睡眠・食欲の変化が、日照の少ない時期に出る。 | PHQ-9(9項目の質問票。10点以上で精査を検討)。 |
| 廃用・活動量低下 | 筋力低下、疲れやすい | 外出・活動量の減少が先に起きる。全身の筋力低下がある。 | 握力、上肢・下肢の徒手筋力検査、活動量の記録。 |
脳卒中後うつ[SR/MA]:Hackett ML, Pickles K. Int J Stroke. 2014;9(8):1017-1025。観察研究のSR/MA(61研究・n=25,488)で、脳卒中後うつの統合頻度は31%(95%CI 28–35)でした。「寒さのせい」と決めつけない根拠になります。
低体温・再発の切り分け[専門家合意]:深部体温35℃未満を低体温とする定義と、急性発症の神経症状は救急対応とする原則に基づく整理です。
冬季リスクは、Bradenスケールと5つの追加チェックで測る。
冬は、皮膚のリスクが変わる季節です。まず、Bradenスケール(褥瘡リスクを6項目で採点する尺度)で全体像をつかみます。
そのうえで、冬に特有の5項目を追加で確認します。

| 項目 | 採点基準 | カットオフ値 | 解釈 |
|---|---|---|---|
| 知覚の認知 | 1点:全く知覚なし 2点:重度の障害 3点:軽度の障害 4点:障害なし |
単独のカットオフなし(合計で判定) | 痛み・冷え・熱さを訴えられるかを見ます。冬は、加温グッズの熱さにも鈍い点に注意します。 |
| 湿潤 | 1点:常に湿っている 2点:たいてい湿っている 3点:時々湿っている 4点:めったに湿っていない |
単独のカットオフなし | 汗・尿・結露・雪解け水など、湿りの原因を分けて考えます。 |
| 活動性 | 1点:臥床 2点:座位可能(車椅子・椅子) 3点:時々歩行可能 4点:頻繁に歩行可能 |
単独のカットオフなし | 冬に外出が減ると、点数が下がりやすい項目です。前年同月と比べます。 |
| 可動性 | 1点:全く体動なし 2点:非常に限られる 3点:やや限られる 4点:自由に体動あり |
単独のカットオフなし | 座位での除圧動作(前傾・側方傾斜など)ができるかを見ます。 |
| 栄養状態 | 1点:不良 2点:やや不良 3点:良好 4点:非常に良好 |
単独のカットオフなし | 食事摂取量の変化を確認します。冬の食欲低下は、抑うつのサインのこともあります。 |
| 摩擦とずれ | 1点:問題あり 2点:潜在的に問題あり 3点:問題なし(3点満点) |
単独のカットオフなし | 車椅子座位でのずり落ちや、座面上での引きずりを観察します。 |
| 合計 | 6〜23点(低いほど高リスク) | 18点以下でリスクあり (19〜23点リスクなし/15〜18点軽度/13〜14点中等度/10〜12点高度/9点以下は極めて高度) |
リスクありと出たら、項目別に要因を分解します。クッション・除圧・皮膚確認の頻度を見直します。 |
原著[観察研究]:Bergstrom N, Braden BJ, Laguzza A, Holman V. Nurs Res. 1987;36(4):205-210。Bradenスケールの原著論文です(n:要確認)。
妥当性[SR/MA]:Pancorbo-Hidalgo PL, et al. J Adv Nurs. 2006;54(1):94-110。褥瘡リスク評価スケールを比べたSRです。Bradenは発生予測に一定の有用性を示す一方、尺度だけでは不十分で、臨床判断との併用が前提です(対象研究数・n:要確認)。
信頼性[専門家合意]:評価者間の一致は、訓練と判断基準の統一に左右されます。同じ患者を複数職種で採点し、ずれを確認するのが実践的です。
MCID(臨床的最小変化量)[専門家合意]:Bradenスケールでは確立していません。点数の増減より、項目別の変化と皮膚所見を優先します。
カットオフ値の出典:一般に用いられる区分(18点以下でリスクあり)を用いました。国内では14点以下を危険点とする運用の報告もあります。施設や対象で異なるため、自施設の基準に従ってください。[専門家合意]
冬の介入は、4つの柱と数値の目安で組み立てる。
雪国の冬は、寒冷環境と、雪・氷への対応が中心になります。介入を4つの柱に整理し、数値の目安を付けました。
エビデンスの強さは、タグで示します。出典のない目安は[専門家合意]です。自施設のプロトコルを優先してください。

室温は18℃以上を目安にします(WHO住宅と健康ガイドライン2018)。屋外では、重ね着、保温靴下、防寒具を組み合わせます。
ホットパックは、麻痺側に15〜20分が目安です。タオルを重ね、5分ごとに皮膚を確認します。電熱式クッションは、連続使用時間を決めて使います。
手足の冷えには、足部・手指のマッサージを1回5分ほど行い、血流を促します。
温熱の直後、10分以内に動的ストレッチを行います。10回を2〜3セットが目安です。
車椅子上でできる軽いストレッチとリラクゼーションを、1日2〜3回、各5分で指導します。
屋内トレーニングは、暖かい室内で持続的に行います。
ゴムバンドで、大腿四頭筋と股関節外転筋を鍛えます。週2日以上、8〜10種目、1〜3セット、各10〜15回が目安です(AHA/ASA 2014)。
有酸素運動は、週3〜5日、1回20〜60分、心拍予備能の40〜70%が目安です(同)。
段差を使ったステップ運動を行います。雪かきや買い物袋を想定したリーチングも練習します。凍結路の方向転換を想定したステップは、1回10分・週2〜3回から始めます。
歩行できる方には、すり足歩行を練習します。足を大きく上げず、足裏全体で接地し、重心を低く保ちます。スパイク付きシューズの着脱も指導します。
ビデオ通話でのオンライン交流と、訪問リハビリを組み合わせます。訪問・オンラインは、週1〜2回を目安にします。
室内で楽しめる趣味も、本人と一緒に選びます。
抑うつ傾向には、光療法を検討します。10,000ルクスで1日30分、朝に行うのが一般的な設定です。
呼吸は、横隔膜呼吸をウォームアップに入れます。屋外活動の前は、深呼吸を5回行います。
雪かきは「代替を探す」が原則
雪かきは、高い体力とバランスを要し、過負荷になりやすい作業です。まず、地域の除雪サービスの利用を勧めます。
行う場合は、背中を丸めず、足元をしっかり固定する姿勢を指導します。
心血管への負荷も無視できません。Franklinらの研究では、少数の健常男性で、重い雪かきの心血管負荷が非常に高いことが示されました。[観察研究]
冬の間は、2週間ごとに再評価し、プログラムを調整します。[専門家合意]
屋内運動と転倒予防[SR/MA]:Sherrington C, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2019;1:CD012424。108 RCT・n=23,407。運動介入で転倒率が23%低下しました(RaR 0.77, 95%CI 0.71–0.83)。対象は地域在住の高齢者で、脳卒中への外挿には注意が必要です。
運動処方(脳卒中)[専門家合意]:Billinger SA, et al. Stroke. 2014;45(8):2532-2553。AHA/ASAの科学的声明です。有酸素は週3〜5日・20〜60分・40〜70%HRR、筋力は週2日以上・1〜3セット・10〜15回・8〜10種目が示されています。
光療法[SR/MA]:Golden RN, et al. Am J Psychiatry. 2005;162(4):656-662。気分障害に対する光療法のメタ分析で、季節性うつでの有効性が示されました(n:要確認)。脳卒中後の集団での検証は限られ、脳卒中では[専門家合意]の扱いです。
遠隔・訪問[SR/MA]:Laver KE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2020;1:CD010255。22試験・n=1,937。遠隔リハは対面と同程度の日常生活活動の改善を示しましたが、エビデンスの確実性は限定的です。
室温[専門家合意]:WHO Housing and Health Guidelines(2018)は、寒冷期の居住室温として18℃を安全でバランスのとれた目安としています。
温熱・ストレッチ・呼吸のパラメータ[専門家合意]:臨床慣行に基づく目安です。対象者の状態に応じて調整してください。
雪かきの心血管負荷[観察研究]:Franklin BA, et al. JAMA. 1995;273(11):880-882。少数の健常男性での生理学的検討です(n:要確認)。

退院後も、回復の可能性が残されている方はいます。大切なのは、いまの状態を正しく見立てて、その方に合う方法を続けることです。STROKE LABは、保険の枠にとらわれず、時間・内容・頻度を一緒に設計します。
冬の困りごとは、チームと住環境で減らせる。
冬の問題は、一つの職種では解決できません。役割を分けて、情報を共有します。まずは道具から見ていきます。
冬の車椅子グッズ10選と、臨床での留意点
グッズは、車椅子ユーザーの快適さと安全性を高めます。ただし、患者さんごとに試用してから選びます。
| アイテム | 用途・特徴 | 臨床での留意点 |
|---|---|---|
| 1. 電熱式クッション | 冷たい座面から守り、腰回りを温めます。USBやバッテリーで動き、温度調整ができます。 | 感覚障害があれば低温熱傷の危険があります。温度の上限と連続使用時間を決めます。 |
| 2. フットマフ(足元保温カバー) | 足元全体を覆います。撥水加工とフリースの裏地で防寒性を高めます。 | フットレストからのずれや、足部の圧迫がないか確認します。 |
| 3. 滑り止め付き車椅子タイヤ | 雪や凍結路のスリップを防ぎます。スパイクタイプやチェーンタイプがあります。 | 着脱の手順と、片手で扱えるかを確認します。屋内の床を傷めないよう注意します。 |
| 4. 手袋ホルダー付きハンドリムカバー | ハンドリムの冷たさを防ぎ、操作性を高めます。耐寒素材で滑り止め効果があるものが向きます。 | 厚みで握りにくくならないか、健側の把持を確認します。 |
| 5. 車椅子用レインカバー(防寒タイプ) | 雪や雨から全身を守ります。透明窓で視界を確保します。 | 視野と、介助者からの声かけのしやすさを確認します。 |
| 6. 保温ボトルホルダー | 温かい飲み物を持ち運べます。アームレストやフレームに固定できます。 | 転倒時にこぼれて火傷しないよう、ふたの固さを確認します。 |
| 7. USB充電式ハンドウォーマー | 駆動時や外出中に手を温めます。ポケットに入るサイズで、繰り返し使えます。 | 感覚障害のある手には、長時間使いません。 |
| 8. シートクッション(防水・断熱仕様) | 冷たい座面や湿りを防ぎ、座位姿勢を安定させます。 | 断熱を優先して、体圧分散の性能が落ちていないか確認します。 |
| 9. 背もたれ用ヒートパッド | 背中を温めて、全身の冷えを軽くします。温度調整機能がつきます。 | 背部の感覚を確認し、低温熱傷に注意します。 |
| 10. サイドバッグ(保温ポケット付き) | 荷物の収納と保温ができます。フレームに固定でき、温かいスープや小物を運べます。 | 片側に重さが偏り、車椅子が傾かないか確認します。 |
最近は、電動ヒーター付きシートや、除湿機能付きの背もたれカバーもあります。リハビリ用アプリで進捗を共有する方法も、注目されています。効果の検証は限られるため、[専門家合意]の範囲で使います。
住環境の調整
玄関や浴室には、滑り止めマットを敷きます。片手で使える靴の脱ぎ履き補助具も提案します。室温は18℃以上を目安に、暖房設備を見直します。
滑って転倒したときの応急処置は、家族と共有しておきます。
「座位のずれや皮膚の摩擦は、感覚障害のある方ほど気づきません。位置直しと皮膚チェックの担当を、チームで決めておきます。」— リハビリテーション医師
「屋外に出にくい時期こそ、訪問リハビリを使います。車椅子の調整とトレーニングを、続けられるからです。」— リハビリテーション医師
職種別の役割分担
| 職種 | この症状における評価項目 | 主な介入内容 | 他職種との連携ポイント |
|---|---|---|---|
| PT | 麻痺側の筋緊張(MAS)、関節可動域、移乗・駆動能力、バランス、歩行(可能な場合) | 温熱後の動的ストレッチ、駆動練習、屋内の筋力・ステップ運動、すり足歩行の練習 | 座位のずれや痙縮の悪化を、OT・看護師へ共有します。 |
| OT | 座位姿勢、クッションの適合、手指の冷えと把持、更衣・靴の脱ぎ履き | 車椅子・クッション調整、防寒グッズの選定、住環境調整、雪かき代替の生活設計 | 加温機器の使用条件を、PT・看護師と統一します。 |
| ST | 意思疎通、注意・遂行機能、嚥下 | 外出時の要求伝達の練習、緊急連絡手段の練習、オンライン訓練の環境設定 | 失語症などがあれば、緊急連絡の手段を家族・MSWと共有します。 |
| 看護師 | バイタル、体温、皮膚(仙骨部・坐骨部)、栄養、排泄、湿り | 皮膚ケア、除圧・体位変換の指導、加温機器使用中の皮膚確認、血圧管理 | 皮膚や体温の変化を、その日のうちにPT/OT・医師へ伝えます。 |
| 医師 | 新しい神経症状の有無、痙縮の医学的管理、血圧、抑うつ | 痙縮の治療の検討(内服・注射)、二次予防、抑うつの評価と治療 | 急な神経症状は救急対応とし、家族と全職種で共有します。 |
| MSW | 支援体制、家族の交通手段、経済面、地域資源 | 除雪サービス・移動支援・訪問リハ・通所の調整 | 外出できない状態が続けば、地域資源へつなぎます。 |
チーム医療[専門家合意]:脳卒中リハビリを多職種チームで行う考え方は、脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023](日本脳卒中学会)でも基本とされています。
支援の必要性[観察研究]:Ripat JD, et al. 2015。80%が冬は支援が必要と報告しました。連携で支える根拠になります。
室温[専門家合意]:WHO Housing and Health Guidelines(2018)の18℃の目安を、住環境調整の基準にしました。
新人がつまずくのは、「良かれと思った対策」だ。
冬の対策には、善意のつもりが逆効果になるものがあります。3つに絞ってお伝えします。
弾性ストッキングは、適応を確認してから
冷え対策として、弾性ストッキングによる圧迫療法が使われることがあります。ただし、脳卒中では慎重さが必要です。
CLOTS trial 1(n=2,518)では、大腿丈の弾性ストッキングは、脳卒中後の深部静脈血栓症を減らしませんでした。皮膚障害は増えました。[単独RCT]
対象は急性期の臥床例で、冷えの改善とは目的が異なります。それでも、感覚障害があり皮膚確認が難しい方には、使用前に医師へ相談します。
「対策を足す前に、感覚と皮膚を確認する。冬の指導は、この順番です。」— リハビリテーション医師
「冬に困っている患者さんを1人思い浮かべてください。道具と手順を含めて、プランを一度書き出してみることをすすめます。」— リハビリテーション医師
弾性ストッキング[単独RCT]:CLOTS Trials Collaboration, Dennis M, et al. Lancet. 2009;373(9679):1958-1965。n=2,518。大腿丈の弾性ストッキングは、脳卒中後の深部静脈血栓症を減らさず、皮膚障害を増やしました。急性期の臥床例が対象です。
褥瘡予防[専門家合意]:NPIAP/EPUAP/PPPIA国際ガイドライン(2019)は、座位の褥瘡予防として、体圧再分配クッションの使用と、座位時間・姿勢の管理を挙げています。
外出減少の影響[観察研究]:Ripat JD, et al. 2015。外出の減少が、孤立感と安全への恐怖・不安につながりました。
冬のゴールは、「春に元の生活へ戻れる状態」に置く。
冬は、回復が止まる季節ではありません。維持と準備の季節と捉えます。
ただし、外出が減ると、リハビリ自体が停滞するおそれがあります。訪問リハビリを使い、車椅子の調整とトレーニングを続けましょう。
①外出頻度:前年同月の8割以上を維持します(例:週4回なら週3回以上)。
②皮膚:Bradenスケールを維持し、非消退性発赤(押しても白くならない赤み)をゼロにします。
③運動:屋内運動を週3日以上行います。
④再評価:2週間ごとに行い、プログラムを調整します。
数値は臨床の目安です(専門家合意)。個別に設定してください。
半年以降の回復も、視野に入れます。Hatemらは、上肢のリハビリ技術を整理した複数のSRを報告しました。[SR/MA]
発症6か月以降でも、FMA(Fugl-Meyer評価:運動機能を点数化する尺度)やARAT(Action Research Arm Test:上肢の動作能力の検査)が改善する報告が含まれます。
二次予防の血圧管理は、冬も続けます。AHA/ASA 2021ガイドラインは、脳卒中・TIA(一過性脳虚血発作)後の血圧目標を130/80mmHg未満としています。[専門家合意]
国内の脳卒中治療ガイドラインも、降圧治療を推奨しています。
6か月以降の回復[SR/MA]:Hatem SM, et al. Front Hum Neurosci. 2016;10:442。上肢のリハビリ技術を整理した複数のSRです(対象研究数・n:要確認)。
二次予防[専門家合意]:Kleindorfer DO, et al. Stroke. 2021;52(7):e364-e467。脳卒中・TIA後の血圧目標を130/80mmHg未満としています。国内は、脳卒中治療ガイドライン2021[改訂2023]を参照してください。
外出減少と孤立[観察研究]:Ripat JD, et al. 2015。ゴールに「外出頻度の維持」を含める根拠になります。
よくある質問。
新しい神経症状の有無、感覚障害と皮膚の状態、室温と防寒の順に確認します。寒さを原因と決める前に、脳卒中の再発、低体温、抑うつを除外します。
条件つきで使えます。感覚鈍麻の部位は、熱さに気づけず低温熱傷の危険があります。温度と時間を決め、5分ごとに皮膚を確認し、終了後も皮膚を見ます。ホットパックは麻痺側に15〜20分が目安です(専門家合意)。
寒さで筋緊張が増え、痙縮が悪化しやすいことは臨床でよく観察されます。ただし、この関係を直接検証した質の高い研究は限られます。室温18℃以上を目安に、温熱後10分以内の動的ストレッチ(10回×2〜3セット)を行い、MAS(修正Ashworth尺度)で再評価します。
カナダの横断調査(Ripatら、2015年)では、42%が冬の外出頻度が減ったと報告しました。99%が歩道・道路の問題を、80%が冬の支援の必要を報告しています。
どちらか一方ではなく、部位ごとに判断します。褥瘡の主因は圧迫とずれです。座面の湿りには吸湿、乾燥した皮膚には保湿を使い、体圧分散クッションの適合確認を先に行います。リスクはBradenスケール(一般的な区分で18点以下がリスクあり)で確認します。
補う手段として有用です。Cochraneレビュー(Laverら、2020年、22試験・n=1,937)では、遠隔リハビリは対面と同程度の日常生活活動の改善を示しましたが、エビデンスの確実性は限定的です。訪問・オンラインは週1〜2回を目安に、2週間ごとに再評価します。
STROKE LABのプログラム。
退院後の回復を、保険の枠の外でも続けたい方へ。STROKE LABは、脳卒中などの神経疾患に特化した自費リハビリ施設です。公的保険のリハビリには、日数・時間の上限があります。自費リハビリは、時間・内容・頻度を自由に設計できます。

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麻痺や動作を集中的に改善したい。転倒や再発を予防したい。趣味や旅行を目標に、体力をつけたい。そんな前向きな希望を、制限なくサポートします。
脳卒中・パーキンソン病・脳性麻痺・脊髄損傷など、神経疾患全般に対応します。整形外科疾患のご相談も受けています。

「訪問先で、右片麻痺の方が「冬は座ると足が突っ張る」と話しました。室温は15℃ほどで、座面の冷たさも訴えていました。電熱クッションを勧めたくなりましたが、臀部の感覚が鈍いため、温度を低めにし、1回30分までとして、使用の前後に皮膚を確認する約束にしました。その冬は発赤なく過ごせ、外出も続けられました。感覚を確かめてから道具を足すことを学びました。」— 理学療法士・臨床経験[要入力]年・脳卒中リハビリ
「外来で、左手駆動の方が「ハンドリムが冷たくて握れない」と外出をやめていました。握力と手指の冷えを確認し、ハンドリムカバーと薄手の手袋を試して、滑りにくい組み合わせを選びました。ご家族には、駆動時間を短く区切るようお伝えしました。週1回の外出を再開でき、道具は本人と試して決めることが大切だと学びました。」— 作業療法士・臨床経験[要入力]年・上肢機能・車椅子調整
※ 初回20分の無料体験があります。
※ 1回ごとのお支払いで、やめたいときにやめられます。
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諦めないでください。

退院後にリハビリの回数や時間が減り、「これ以上は難しいのかな」と感じている方は少なくありません。冬は外に出づらくなり、その気持ちはさらに強くなります。
けれど、発症から時間がたっても、動きが変わる余地が残されていることがあります。大切なのは、いまの状態を丁寧に見立てて、その方に合った方法を続けることです。
STROKE LABは、時間・内容・頻度を自由に設計できる自費リハビリです。初回20分の無料体験があり、お支払いは1回ごとです。まずは、お悩みをお聞かせください。
代表取締役 金子 唯史
参考文献。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)