乳児期の運動遊びまとめ|月齢別にできる家庭での関わり
練習として繰り返すより、赤ちゃんが自分から動きたくなる環境を用意しましょう
赤ちゃんの運動遊びは、発達を早めるための訓練ではありません。大切なのは、今できる姿勢の中で、見る・触れる・体重を移す・向きを変える経験を少しずつ増やすことです。この記事では、0〜12か月頃の赤ちゃんに向けて、月齢別に遊びの選び方を整理しながら、家庭での工夫と相談の目安をまとめます。

運動遊びは、発達を早める訓練ではありません
赤ちゃんの遊びは、寝返りやお座りを早く完成させるためのノルマではありません。家庭で大切なのは、赤ちゃんが自分から「見たい」「触りたい」「向きを変えたい」と思える場面をつくることです。遊びの中で、目線が動き、手が届き、片側へ体重が移り、姿勢が少し変わる。その積み重ねが、のちの寝返り、ずりばい、お座り、つかまり立ちの土台になります。
だからこそ、月齢だけで完成動作を練習させるのではなく、今できる姿勢の中で選択肢を増やす視点が大切です。医療・健診が先に必要なサインは見逃さず、そのうえで日常の遊びを安心して続けられるように整理していきます。
覚醒時・見守り下での腹ばい遊びは、寝返りや床上移動を含む粗大運動発達と正の関連を示しました。特定の運動を行えば発達時期が必ず早まる、という意味ではありませんが、床で自由に動く経験そのものが大切だと考える根拠になります。
出典:Hewitt L, et al. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
限界:このレビューの多くは観察研究で、腹ばい時間の測定も保護者申告でした。座位・立位・歩行を早める効果を直接示した研究ではなく、個人差や生活環境の影響も受けます。医療的判断の代わりにはなりません。
遊びを選ぶ5つの観察点
STROKE LABでは、「何を練習するか」より前に、「どの条件なら赤ちゃんが動きやすいか」を見ます。次の5つを見ながら遊びを選ぶと、月齢表をただなぞるよりも、わが子に合った関わりになりやすくなります。
保護者が「遊びに反応しない」と感じる場面でも、実際には玩具が遠すぎる、床が滑りやすい、腹ばいで頭を支えるのに精一杯、ということがあります。遊びを変えるより、一条件だけ変えて反応を見るのがコツです。

0〜2か月頃の遊び
この時期は、顔を見つめる、声の方向へ少し注意が向く、手足をばたばた動かす、短時間の腹ばいで頭を少し持ち上げるなどが中心です。遊びは「動かす」よりも、「反応を待つ」ことが主役になります。
- 保護者の顔を正面や少し横から見せる
- ゆっくり話しかけて、目線の変化を待つ
- 仰向けで手足を自由に動かせる時間をつくる
- 胸の上や床で、ごく短い腹ばい遊びを始める
- 両手が胸の前に集まりやすい姿勢をつくる
WHOは、まだ移動しない乳児について、1日の中で複数回に分けた腹ばい遊びを勧めています。腹ばいが苦手なときは、胸の上や保護者の身体に寄りかかる形から始めても構いません。
3〜4か月頃の遊び
前腕で少し支えながら腹ばいで顔を上げる、手を口へ持っていく、両手を胸の前に合わせる、玩具へ腕を動かすなどが見られやすい時期です。遊びでは、正面だけでなく左右への興味を引き出していきます。
- 腹ばいで保護者の顔や玩具を見る
- 仰向けで両手を合わせる、手を口へ持っていく
- 左右の玩具へ頭を向ける
- 横向き姿勢で両手を前に集める
- 軽い音のする玩具へ手を伸ばす
この時期に腹ばいを嫌がる場合でも、短時間で終える、顔が見える位置に入る、玩具を少し高めに置くなどの工夫で反応が変わることがあります。うまくいかないときは、長く続けるより条件を変えることを優先します。
5〜6か月頃の遊び
寝返りや寝返り返り、腹ばいで片手を伸ばす、足へ手を伸ばす、支えのある座位で前の物へ触れるなど、姿勢の変化が増える時期です。ここでは完成形を練習させるのではなく、重心移動や方向転換のきっかけをつくる遊びが向いています。
- 玩具を正面から少し横へ移し、目と頭の向きを変える
- 腹ばいで片手を少し浮かせて玩具へ伸ばす
- 仰向けで足や膝へ手を伸ばす
- 横向きで玩具に触れ、体幹のひねりを引き出す
- 短時間の支えあり座位で正面の玩具へ触れる
寝返りしない、戻れないなど特定の姿勢課題が気になる場合は、関連記事へ分岐して詳しく見るのが安心です。この記事では、寝返りそのものを教えるのではなく、その前段階の遊びにとどめます。
7〜9か月頃の遊び
座る、手をつき直す、床上を移動する、座位と腹ばいの間で姿勢を変えるなど、選べる姿勢が増える時期です。目的は「はいはいの形を教える」ことではなく、玩具へ近づく方法を赤ちゃん自身が試せるようにすることです。
- 座位で正面・左右・床へ手を伸ばす
- 玩具を左右の手で持ち替える
- 少し離れた玩具へ移動を試す
- ボールを転がして追いかける
- 座位から腹ばい、腹ばいから座位の動きを見守る
床の材質や衣服の滑りやすさで、移動のしやすさは変わります。動きにくいときは、能力そのものより、環境条件が合っていない可能性もあります。
10〜12か月頃の遊び
つかまり立ち、家具に沿った横移動、座る・立つの往復、容器に入れる・出す、つまむ動きなどが増えます。ここでも、歩かせることを急ぐより、自分で立つ、降りる、横へ移る、手を使う遊びを重ねる方が自然です。
- 安定した低い家具でのつかまり立ち
- 家具に沿って玩具を移動させ、横方向の移動を促す
- 立位からしゃがみ、また立つ遊び
- 箱や容器に玩具を入れる・出す
- 大きめのボールを転がし、やりとりを楽しむ
歩行器や大人が手を強く引く歩行練習は使いません。床と安定した家具の環境で、自分で試す経験を増やします。
月齢別の早見表
月齢は目安です。早産のお子さんでは修正月齢で考えます。表は「できるかどうか」を判定するものではなく、遊びの入口を探すための一覧です。
| 月齢の目安 | 遊びの中心 | 見たい反応 |
|---|---|---|
| 0〜2か月 | 顔を見る、声を聞く、短い腹ばい | 目線の変化、頭を少し持ち上げる、手足を動かす |
| 3〜4か月 | 前腕支持、手を合わせる、左右への注意 | 頭を左右へ向ける、両手を前に集める |
| 5〜6か月 | 横へのリーチ、重心移動、寝返りの入口 | 片手を伸ばす、体を少しひねる、向きを変える |
| 7〜9か月 | 座位リーチ、持ち替え、床上移動 | 座位で手をつく、移動を試す、姿勢を切り替える |
| 10〜12か月 | 立位、横移動、つまむ、入れる・出す | 立つ・しゃがむ、つかまって移る、手を細かく使う |
同じ遊びを4条件で調整する
遊びのレパートリーをたくさん覚えるより、今ある遊びを条件調整して使える方が実用的です。たとえば「玩具を見る・触る」だけでも、次の4つを変えると動きが変わります。
| 調整する条件 | 具体例 | 見たい変化 |
|---|---|---|
| 姿勢 | 仰向け→横向き→腹ばい | 目線、頭の向き、手の出しやすさ |
| 玩具の位置・距離 | 正面、少し横、近い、少し遠い | 手を伸ばす、向きを変える、重心移動する |
| 支持面 | 硬い床、滑りにくい服、プレイマット | 支えやすさ、移動しやすさ |
| 保護者の支え方 | 胸、骨盤、肘の前方などを軽く支える | 自発性が増えるか、嫌がりが減るか |
一度に全部変えると、何が効いたのか分からなくなります。一条件だけ変えて観察すると、家庭でも十分に意味のある記録になります。

避けたい関わりと安全な環境
遊びは安全が前提です。床で自由に動けることが大切ですが、高さのある場所、柔らかく沈み込む寝具、小さな部品のある玩具は避けます。消費者庁も、0歳児の転落事故や誤飲事故に注意を促しています。
| 避けたい関わり | 理由 |
|---|---|
| 腕を引いて何度も起こす | 肩や肘に負担がかかり、自分で頭や体幹を使う過程が省略されます。 |
| 寝返りやお座りを大人が完成させる | 自分で重心を移す経験が減り、「できた」ように見えても学習につながりにくくなります。 |
| 膝の上で立位・ジャンプを反復する | 足の突っ張りを成功と誤認しやすく、月齢先取りの練習になりやすいからです。 |
| 歩行器を使う | 発達上の必要性がなく、事故リスクも知られています。 |
| ベッド・ソファの上で床遊びをする | 寝返りや移動の変化で転落の危険が高まります。 |
| 小さい部品、磁石、ボタン電池のある物を使う | 誤飲・窒息や重篤な消化管障害の危険があります。 |

様子見と相談の目安
月齢が少し前後すること自体は珍しくありません。一方で、動きの増え方が乏しい、左右差が続く、体の硬さや柔らかさが強い、一度できた動きをしなくなったなどは、相談のきっかけになります。
| 様子見しながら遊びを続けやすい状態 | 相談が安心な状態 |
|---|---|
| 日によって反応が違う | 数週間みても動きの種類が増えない |
| 姿勢や玩具を変えると反応が変わる | いつも同じ方向しか見ない・動かない |
| 左右両方を使う場面が少しはある | 一方の手足をほとんど使わない |
| 疲れる前はよく動く | 腹ばいで頭を上げる様子が増えない |
| 遊びや声かけに表情の反応がある | 極端に硬い・柔らかい、または一度できた動きをしなくなった |
急に片側の手足を動かさない、呼吸が苦しそう、顔色が悪い、けいれんのような動きがある、哺乳や反応が急に変わった場合は、様子見ではなく医療を優先してください。
- いつから気になっているか
- どの姿勢で困るか(仰向け、腹ばい、座位など)
- どの遊びでは反応しやすいか
- 左右差があるか
- 疲れると変わるか
- 哺乳、睡眠、機嫌、呼吸で気になることがあるか
- 普段の遊び動画を、動作の前後も含めて撮れているか
評価でわかること|STROKE LABの視点
モードAの記事なので、ここで大きく治療を勧めることはしません。ただ、家庭だけでは「何が難しいのか」が分かりにくいことがあります。たとえば玩具に手を伸ばさない場合でも、見えていないのか、興味が続かないのか、頭を支えるのに力を使っているのか、片側への重心移動が難しいのかで、関わり方は変わります。
評価では、家庭動画を確認しながら、姿勢、玩具の位置、支え方、支持面を一つずつ変えて、どの条件で自発性が増えるかを見ます。私たちの役割は、保護者の「遊び方が分からない」を、観察できる要素に翻訳することです。診断や投薬などの医学的判断は医療機関の役割であり、必要時には健診、小児科、発達相談へつなぐ前提で併走します。
早期の観察と必要時の介入は、その後の発達支援につながる可能性があることが、乳幼児の発達リスクに関する研究でも示されています。今すぐ治療が必要と断定するためではなく、「今どの姿勢と遊びが入り口になるか」を見つける価値があります。
乳幼児の発達リスクでは、早期の正確な評価と早期介入が予後に関わることが報告されています。家庭の遊びを続ける中でも、「様子見でよいのか」「相談した方が安心か」を早めに整理することには意味があります。
出典:Novak I, et al. JAMA Pediatrics. 2017;171(9):897-907.
限界:この研究は主に脳性麻痺など発達リスク児の早期診断・介入に関するレビューであり、一般乳児のすべての運動遊びにそのまま当てはめるものではありません。診断的断定ではなく、早期の観察と相談の価値を示す根拠として扱います。
よくある質問
家庭での遊びは、赤ちゃんが安心して試せる環境づくりが中心です。もし迷いが続くときは、専門施設では姿勢、左右差、重心移動、環境条件を分けて見ながら、今どの遊びが入口になるかを整理できます。診断や治療の代わりではなく、医療や健診とつながりながら生活の中の観察を深めることが、STROKE LABの役割です。

「何か違う気がするけれど、どこを見ればよいか分からない」段階でも大丈夫です。遊びの動画や普段の様子をもとに、観察ポイントを一緒に整理します。

医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』。大人の脳卒中だけでなく、小児を含む姿勢・運動の見方を深める基盤として活用されている一冊です。
- 小児リハビリについて
- 初回相談の流れ
- 乳児健診で「様子見」と言われたら
- 発達相談で見せる動画の撮り方
- 首すわり・お座り・歩き始めが遅い|運動発達の遅れを神経の視点で見る
- 寝返り返りができない赤ちゃん
- Centers for Disease Control and Prevention. Milestone Moments Checklist. 2 months, 4 months, 6 months, 9 months, 1 year. Accessed 2026.
- HealthyChildren.org. Back to Sleep, Tummy to Play. American Academy of Pediatrics. Accessed 2026.
- World Health Organization. Guidelines on physical activity, sedentary behaviour and sleep for children under 5 years of age. 2019.
- Hewitt L, et al. Tummy Time and Infant Health Outcomes: A Systematic Review. Pediatrics. 2020;145(6):e20192168.
- Novak I, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy. JAMA Pediatrics. 2017;171(9):897-907.
- 厚生労働省. 保育所保育指針解説. 2018.
- 消費者庁. 子どもの事故防止に関する注意喚起資料. Accessed 2026.
- 金子唯史. 『脳の機能解剖とリハビリテーション』医学書院, 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)