ダウン症の子の運動発達|低緊張を踏まえた関わり – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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ダウン症の子の運動発達|低緊張を踏まえた関わり

DOWN SYNDROME & MOTOR DEVELOPMENT

ダウン症の子の運動発達|低緊張を踏まえた関わり

「歩くのが遅い」「座ると崩れる」——運動発達は月齢だけでは見えません。ダウン症のお子さんでは、低緊張、関節のゆるさ、支持性、重心移動、疲労が重なります。何が弱いかではなく、どの条件なら安定して動けるかを整理します。

UPDATED2026
READ約11分
FORダウン症のお子さんの保護者へ
BYSTROKE LAB
本記事は、医学書院『脳の機能解剖とリハビリテーション』(2024年・408頁)の著者が執筆しています。診断、心疾患・甲状腺・頸部症状などの医学的管理は主治医が担います。リハビリは医療と連携しながら、姿勢・運動・生活参加を支えます。

ダウン症訓練場面

Quick Reference
まず知ってほしい5つのこと。
01
運動発達はゆっくりでも、同じ子どもの中で変化を追うことが大切です
02
低緊張は筋力だけでなく、姿勢を保つ準備と関節の安定に関わります
03
座れる・立てるだけでなく、両手が使えるか、重心を移せるかを見ます
04
家庭では長時間の訓練より、短く成功しやすい遊びを繰り返します
05
専門施設では、支持性・重心移動・疲労を分け、生活で使える条件を探します
01
Development Continues

ゆっくりでも、発達は続きます。

ダウン症のお子さんの運動発達には幅があります。大切なのは、ほかの子との月齢比較だけでなく、先月より支えが少なくなったか、手が自由になったか、移動が続くようになったかを見ることです。

歩行の開始は一つの節目です。歩き始めが遅いときの相談目安も確認しながら、時期だけでなく立つ前の準備を見ていきます。ただし、歩けても転びやすい、疲れやすい、両手が使いにくい場合があります。獲得時期と、生活で使える動きは分けて考えます。

02
Hypotonia

低緊張は、「弱さ」だけではありません。

低緊張の詳しいしくみを理解すると、単なる筋力不足ではないことが見えてきます。低緊張があると、姿勢を保つための張りをつくり続けることが難しくなります。関節が柔らかい場合は、肘や膝を伸ばし切る、足を広げる、背中を丸めるなど、安定しやすい形へ逃げることがあります。

支持性
頭・胸・骨盤・足裏で体を支えられるか
重心移動
安定を失わず、左右や前方へ動けるか
持続性
疲れる前後で姿勢や歩き方がどう変わるか
03
Movement Quality

座る・立つ・歩くときに見ること。

場面 見るポイント 生活とのつながり
座位 手を床から離して左右へ動けるか 食事や遊びで両手を使う
立位 膝を反らず、足裏で支えられるか 着替えや手洗いで立つ
歩行 速度・方向転換・疲労で崩れないか 園内移動や家族との外出

「できる姿勢」だけを一瞬見るのではなく、遊びながら手を伸ばしたとき、速度を上げたとき、疲れたときの変化を確認します。

04
Home Support

家庭では、短く、成功しやすく。

家庭の役割は、専門的な評価を再現することではありません。抱っこ・遊び・声かけを含む家庭での関わりを、機嫌のよい時間に短く取り入れ、動きやすい環境をつくって生活の中で試すことです。

座位
足がつく高さにし、骨盤を軽く支えます。両手で遊べたら支えを少し減らします。
立位・歩行
膝を伸ばし切らない高さで支え、短い距離を繰り返します。疲れたら終了します。

首を強く引いて起こす、歩行だけを急ぐ、疲れている時間に反復することは避けます。体調や心疾患について主治医から指示がある場合は、そちらを優先してください。

05
Evidence

研究でわかっていること。

Evidence
運動発達は、同じ子どもの変化を追うことで見えやすくなります

ダウン症児を対象にした粗大運動の成長曲線では、発達の速度と到達時期に大きな幅が示されています。月齢だけで結論を出さず、経時的に評価する根拠になります。

出典:Palisano RJ, et al. Arch Phys Med Rehabil. 2001;82(4):494-500.
限界:成長曲線は集団の目安であり、合併症や生活環境を含む個別の予測ではありません。
Evidence
課題に合わせた練習は、歩行獲得を支える可能性があります

乳児期のトレッドミル練習では、歩行開始を早めた報告があります。重要なのは機器そのものではなく、今育てたい動作を、適切な量と難易度で反復することです。

出典:Ulrich DA, et al. Pediatrics. 2001;108(5):E84.
限界:対象数は大きくなく、すべての子どもに同じ方法や頻度を勧める研究ではありません。
06
Specialist Clinical Reasoning

専門施設で、さらに期待できること。

家庭では「動きやすい場面を増やす」ことが中心です。専門施設では、同じ困りごとを複数の要因へ分け、どの介入で、その場の反応が変わるかを比較します。

生活での参加

評価から介入を選ぶ3つの例
座位で両手が使えない
骨盤支持と左右の重心移動を比較し、手支持を減らす課題へ。食事・机上遊びで両手が使えるか再確認します。
立つと膝が反る
足部、股関節、台の高さ、靴を変えて反応を比較。手洗いや更衣で安定して立てるかを見ます。
午後に歩行が崩れる
速度、距離、休憩、呼吸・睡眠を確認。園内移動や外出で必要な休憩条件まで設計します。

練習量は多ければよいわけではありません。成功率が下がる、関節を伸ばし切る代償が増える、疲労が翌日に残る場合は、難易度・時間・休憩を調整します。機能が上がったことと、家庭や園で使えることは別に評価します。

疾患特異的な介入研究は限られています。そのため、ダウン症に直接示された研究と、小児リハに共通する目標志向・課題特異的練習の原理を分けて用います。特定の手技や機器を万能には扱いません。

07
FAQ

よくある質問。

Q. ダウン症の子は、なぜ運動発達がゆっくりなのですか?
A. 低緊張、関節のゆるさ、姿勢を保つ難しさ、感覚情報の使い方、心疾患などが重なります。発達の道筋がなくなるのではなく、姿勢を支える経験に時間が必要と考えると分かりやすくなります。
Q. 低緊張は、筋力が弱いという意味ですか?
A. 筋力だけの問題ではありません。体を支える適度な張りを保ちにくく、関節を安定させながら重心を動かすことが難しい状態を含みます。
Q. 歩き始めを早めることが目標ですか?
A. 歩行時期だけを急ぐことは勧めません。座位や立位で支えられること、重心を移せること、疲れにくく安全に移動できることを一緒に育てます。
Q. 家庭では何をすればよいですか?
A. 機嫌のよい時間に、短く成功しやすい姿勢で遊びます。うつ伏せ、横向き、支えた座位、足裏で床を感じる立位などを、お子さんの体調に合わせて行います。
Q. 装具やインソールは必要ですか?
A. 足部の崩れ、膝の反り、歩行の安定性、疲労、靴との相性を合わせて判断します。必要性や種類は医師・療法士・装具専門職と相談してください。
Q. 首や心臓に注意が必要ですか?
A. ダウン症では心疾患、甲状腺、聴覚・視覚、睡眠時の呼吸、頸部症状などが運動に影響することがあります。首の痛み、歩き方の急な変化、手足の使いにくさ、強い疲労がある場合は運動より医療相談を優先します。
Message & Clinical Backbone
不安を、
次の一歩へ。
STROKE LAB代表 金子唯史

発達がゆっくりに見えると、歩く時期ばかりが気になります。しかし、その前には支える、手を使う、重心を動かすという小さな準備があります。

私たちは、低緊張を一つの言葉で終わらせず、姿勢・感覚・関節・疲労を分けて見ます。お子さんが自分で試せる条件をつくり、生活の中で使える動きへつなげます。

主治医や地域の支援を大切にしながら、今の評価と家庭での関わりを整理したいときにご相談ください。

株式会社STROKE LAB
代表取締役 金子 唯史
書籍『脳の機能解剖とリハビリテーション』の表紙
Book
脳の機能解剖とリハビリテーション
医学書院/2024年/408頁|脳の領域別からリハビリテーション方法を提案する専門書

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。姿勢・感覚・運動を連鎖として見る視点は、お子さんの動きを評価する土台にもなります。

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References

本記事は医学的診断や治療の代替ではありません。心疾患、甲状腺、頸部症状、呼吸・睡眠、視聴覚などは主治医へご相談ください(最終確認日:2026年7月13日)。

  • Bull MJ, et al. Health Supervision for Children and Adolescents With Down Syndrome. Pediatrics. 2022;149(5):e2022057010.
  • Palisano RJ, et al. Gross motor function of children with Down syndrome: creation of motor growth curves. Arch Phys Med Rehabil. 2001;82(4):494-500.
  • Ulrich DA, et al. Treadmill training of infants with Down syndrome: evidence-based developmental outcomes. Pediatrics. 2001;108(5):E84.
  • Jackman M, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
  • 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。
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