小児の脊髄腫瘍・骨腫瘍と運動麻痺|まれな原因を見逃さない
小児の脊髄腫瘍・脊椎骨腫瘍と運動麻痺|進行する変化を見逃さない
「背中を痛がる」「歩き方が変わった」「最近よく転ぶ」。多くは別の原因ですが、変化が続き、少しずつ強くなるときは医療での確認が必要です。本記事では、脊髄や脊椎の腫瘍で起こりうる症状と、治療後の運動麻痺をどう支えるかを簡潔に整理します。

脊髄の内側か、外側か、骨からか。
脊髄腫瘍は、脊髄の中にできるもの、脊髄の外側から圧迫するものに分かれます。脊椎骨や周囲の組織から生じた腫瘍が、神経を圧迫する場合もあります。
重要なのは名称を覚えることではなく、痛み、筋力、感覚、排尿・排便の変化がどのように進んでいるかです。診断には医師の診察とMRIなどの画像検査が必要です。

「少しずつ悪くなる」は、受診の手がかり。
突然または急速に麻痺が進む、立てない、排尿できない、強い痛みがある場合は、通常のリハビリ予約を待たず医療機関へ連絡してください。脊髄圧迫は原因によって緊急対応が必要です。

筋力の合計ではなく、麻痺の分布を見る。
脊髄や神経根の影響では、すべての筋が同じように弱くなるとは限りません。股関節は動くのに足首が上がらない、片側から両側へ変化する、感覚だけが遅れて変わることもあります。
速く歩いたときだけ足が引っかからないか。午前は保てても、午後に左右差が広がらないか。
動作の崩れが出る条件まで確認すると、筋力不足、感覚低下、痛み、疲労、代償動作を分けやすくなります。
運動・感覚・排泄は、同じ速さで戻らない。
術後の経過は腫瘍の位置、治療前の症状、手術内容によって異なります。小児の髄内腫瘍を追跡した報告では、運動、感覚、排尿機能が長い経過で改善した例があり、運動の変化が感覚や排尿より先にみられることも示されました。
ただし、脊髄腫瘍に対する特定のリハビリ方法を比較した小児研究は限られています。研究結果をすべてのお子さんへ当てはめず、主治医の医学的管理と個別評価を優先します。
家庭では、変化を「時間軸」で残す。
無理なストレッチや筋力訓練を始めるより、痛みの場所、歩ける距離、転倒、排尿・排便、午前と午後の差を記録してください。短い動画は、診察時に変化を共有する助けになります。
治療後は、主治医の運動制限を家庭・学校・専門家で共有します。階段、長い廊下、トイレ、体育、座位時間など、負担が増える場面を具体的に伝えることが大切です。
画像、手術、薬、骨の安定性は主治医が判断します。専門施設は、その安全条件の中で動作と参加を再設計します。
専門施設で、さらに期待できること。
専門施設では「足が弱い」という一つの言葉を、神経高位、筋ごとの弱さ、感覚、反射、痛み、疲労、骨の安全性へ分けます。そのうえで、移動や学校生活に必要な方法を選びます。
| 評価で分ける | 介入を選ぶ | 生活で再評価する |
|---|---|---|
| 足首だけが弱い/感覚が不確か | 足部の位置を確認しやすい課題、装具・補助具の比較 | 廊下での引っかかり、階段、転倒 |
| 痛みや術後制限で体幹を固める | 支持面と動作手順を調整し、起き上がり・移乗を再学習 | ベッド、トイレ、授業中の座位 |
| 短時間は歩けるが疲労後に崩れる | 成功率を保てる距離と休憩を設定し、練習量を段階化 | 午後の移動、体育、翌日の疲労 |
評価所見から一つの方法を固定せず、課題を変えた直後の反応を確認します。速度を下げると安定するのか、視覚情報を増やすと足が運びやすいのか、補助具で痛みと代償が減るのかを比較します。
その場で良く見えても、学校で再現できなければ設計を見直します。施設内の能力ではなく、移動、排泄、授業、遊びへ使えることを最終指標にします。
小児がん領域では、リハビリへの紹介、疲労や痛みへの対応、身体活動を個別化する重要性が示されています。一方、運動の頻度・強度・内容を脊髄腫瘍へ一律に当てはめる根拠は十分ではありません。主治医の制限と、その日の症状に合わせて量を調整します。

よくある質問。
治療後の歩行、手足の使い方、疲労、学校での過ごし方を整理したい方は、小児リハビリのページをご覧ください。

脊髄や神経の症状は、筋力だけでは捉えきれません。感覚、痛み、疲労、排泄、学校環境まで含めて初めて、必要な支援が見えてきます。
医療機関での治療を土台に、その子が再び取り組みたい生活へつながるよう、評価と練習を丁寧に組み立てます。
代表取締役 金子 唯史

機能解剖と臨床観察を結び、症状を生活動作から読み解くための専門書です。
- National Cancer Institute. Childhood Ependymoma, Patient Version. Updated 2024.
- National Cancer Institute. Childhood Chordoma, Patient Version. Updated 2025.
- National Cancer Institute. Neuroblastoma Treatment PDQ, Health Professional Version. Spinal Cord Compression section. Updated 2025.
- McGirt MJ, et al. Resection of intramedullary spinal cord tumors in children: assessment of long-term motor and sensory deficits. J Neurosurg Pediatr. 2008;1(1):63-67.
- L’Hotta AJ, et al. Clinical practice guideline and expert consensus recommendations for rehabilitation among children with cancer: A systematic review. CA Cancer J Clin. 2023;73(5):524-545.
- Wurz A, et al. The international Pediatric Oncology Exercise Guidelines. Transl Behav Med. 2021;11(10):1915-1922.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院; 2024.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)