脳性麻痺の子どもの経過の見方|乳児期から学童期まで年代別の関わり
乳児期から学童期まで、成長に合わせて支援の焦点を変える
「この先、どんなふうに成長していくのだろう」。脳性麻痺と診断されたあと、保護者の方が最も知りたいのは、今日の状態だけでなく、これからの見通しです。脳性麻痺は非進行性の脳の損傷に由来しますが、成長に伴って、姿勢・手・歩行・学校生活で困りごとの見え方が変わることがあります。だからこそ、年代ごとに「今育てる動き」を見直す視点が大切です。

この先どうなるのか、不安な保護者へ。
脳性麻痺の経過を考えるとき、保護者の方は「将来歩けるのか」「手は使えるようになるのか」「学校生活は大丈夫か」と、先のことを一度に心配します。その不安は自然なものです。
ただ、経過は一直線ではありません。乳児期には姿勢や左右差が中心でも、幼児期には移動や遊び、学童期には疲労や参加が目立つことがあります。大切なのは、年齢ごとに評価の焦点を変え、目標を更新し続けることです。
脳性麻痺は、胎児期から乳幼児期の発達の早い時期に起きた脳の損傷により、姿勢や運動に影響が出る状態です。損傷そのものが年齢とともに進行していく病気ではありません。一方で、成長に伴って体重、身長、活動量、学校生活、友人関係が変わるため、困りごとの見え方は変わります。
たとえば、乳児期には「抱っこで反り返る」「片手を握りこむ」が気になっていた子が、幼児期には「つま先立ち」「転びやすさ」「片手を使わない」として見えてくることがあります。さらに学童期には、授業中の姿勢、書字、体育、通学時の疲れやすさ、痛み、装具や靴の合いにくさが問題になることもあります。

経過は「進行」ではなく、見え方の変化。
脳性麻痺の説明で混乱しやすいのが、「非進行性」と「症状が変わる」という2つの言葉です。非進行性とは、原因となる脳の損傷そのものが進行していくわけではない、という意味です。ただし、運動の使い方、筋緊張、関節の硬さ、疲れやすさ、活動量は、成長とともに変化します。
そのため、「前より歩き方が硬く見える」「小学校に入ってから疲れが目立つ」「身長が伸びて装具が合わなくなった」といった変化は、脳の損傷が進んだというより、成長した体と生活環境の中で、運動課題が変わった結果として見えることがあります。
発達のチェックでは、月齢や年齢に対して何ができるかも大切です。しかし脳性麻痺のお子さんでは、疲れたとき、急いだとき、片手で物を持ったとき、床が変わったときなど、条件が変わったときの動きも重要です。そこに、次に支えるべき動きのヒントがあります。
乳児期に見ること。姿勢・左右差・支え方。
乳児期は、診断名だけを見る時期ではありません。首すわり、寝返り、うつ伏せ、座位といった運動発達を見ながら、どの姿勢で安心して体を使えるかを確認します。抱っこで反り返る、片側ばかり向く、片手を握り込みやすい、うつ伏せで肘が前に出にくい、といった小さなサインが、後の動きにつながることがあります。
この時期の関わりで大切なのは、強く矯正することではなく、赤ちゃんが安心して体を預けられる姿勢をつくることです。骨盤や胸郭が安定すると、肩甲骨や手が前に出やすくなり、見る、触る、口に運ぶといった探索が増えます。探索が増えることは、運動だけでなく認知やコミュニケーションの土台にもなります。
| 見るポイント | 家庭での関わり |
|---|---|
| 反り返り・抱きにくさ | 頭だけを押さえず、骨盤と胸郭が丸くまとまる抱き方を探します |
| 手の左右差 | 使いにくい側を無理に開かせず、肩甲骨が前に出る姿勢で手を見せます |
| うつ伏せの支え | 肘が体の下に入りすぎないよう、胸の下に薄いタオルを入れて支えを助けます |
幼児期に見ること。移動・手・遊び。
幼児期になると、寝返りや座位だけでなく、立つ、歩く、階段、遊具、着替え、食事など、生活の中で求められる動きが一気に増えます。この時期は、できるかできないかだけでなく、どの姿勢ならできるか、どこで力が入りすぎるか、どの動きで片側が参加しにくいかを見ることが大切です。
歩行では、つま先立ち、膝の突っ張り、はさみ足、体幹の傾き、転びやすさが見えてくることがあります。手では、使いやすい側ばかり使う、両手で支えにくい、袖通しやスプーン操作で片側が参加しにくいといった形で現れます。ここで必要なのは、苦手な筋肉だけを鍛えることではなく、姿勢の土台から動作全体を組み立てる視点です。

幼児期のリハビリでは、単調な運動をくり返すより、積み木、ボール、ままごと、着替え、遊具など、本人が意味を感じる活動の中で動きを引き出すことが大切です。遊びの中に、立つ、手を伸ばす、両手を使う、体をひねる、待つ、選ぶといった要素を入れていきます。
学童期に見ること。疲労・参加・環境。
学童期では、運動だけでなく、生活と社会参加の視点が強くなります。授業中に姿勢を保てるか、給食で手を使えるか、トイレや着替えをどうするか、体育や通学で疲れすぎないか、友達との遊びに参加できるか。学校生活は、脳性麻痺の経過を見直す大きな場面です。
また、体が大きくなることで、筋肉や関節への負担も変わります。以前は合っていた装具や靴が合わなくなる、椅子や机の高さが合わない、長距離歩行で痛みが出る、夕方になると歩き方が崩れる、といった変化もあります。学童期のリハビリでは、体の機能だけでなく、学校・家庭・移動手段・休憩の取り方を含めて組み立てます。
| 学童期に出やすい悩み | 見る視点 |
|---|---|
| 授業中に姿勢が崩れる | 机・椅子の高さ、足底の接地、骨盤の支え、疲労の時間帯を確認します |
| 体育や通学で疲れやすい | 距離、速度、坂道、階段、荷物、装具の適合、休憩の取り方を見直します |
| 手を使う課題が増える | 書字、はさみ、給食、ランドセル、着替えで、両手の役割分担を整理します |

研究でわかっていること。
脳性麻痺の経過を考えるうえで、GMFCSは重要な手がかりになります。GMFCSは、座る、移動する、歩くといった粗大運動機能を5段階で整理する分類です。将来を一つに決めるものではありませんが、年齢ごとの見通しや支援内容を考える際の共通言語になります。
Rosenbaumらは、脳性麻痺児の粗大運動発達をGMFCS別に整理し、運動発達の見通しを考えるための曲線を示しました。これは「この子はここまで」と決めるためではなく、今の位置と次に支えるべき課題を家族と専門職が共有するための地図として役立ちます。
限界注記:研究は集団の傾向を示すもので、個々のお子さんの経過を一つに決めるものではありません。対象年齢、GMFCSレベル、合併症、治療歴、発達段階、家庭・学校環境によって変動します。医学的治療の代替ではありません。
介入については、目標志向の課題練習、家庭プログラム、環境調整など、生活の中の具体的な目標に沿った練習が重視されています。脳性麻痺のリハビリは、年齢とGMFCSレベル、本人と家族の希望、学校や家庭の環境を合わせて選ぶ必要があります。
Jackmanらのレビューでは、脳性麻痺の子ども・若者の身体機能を高める介入では、本人や家族が選んだ目標と、その目標に近い全体課題の練習を含めることが重要とされています。年代別に目標を見直すNo.79の考え方と相性がよいエビデンスです。
限界注記:研究は集団の傾向を示すもので、個々のお子さんの経過を一つに決めるものではありません。対象年齢、GMFCSレベル、合併症、治療歴、発達段階、家庭・学校環境によって変動します。医学的治療の代替ではありません。
専門リハで取り組めること。
1. 姿勢・運動の土台づくり。乳児期から幼児期にかけて、骨盤、体幹、胸郭、肩甲帯、足部の関係を見ながら、安心して体を支えられる姿勢を探します。反り返りや左右差を、単なる癖ではなく運動の入り口として見ます。
2. GMFCSと生活目標を合わせた設計。GMFCSは見通しの地図ですが、生活は一人ひとり違います。歩行、座位、手の使い方、移動手段、学校での参加を合わせて、その時期に必要な目標を具体化します。
3. 家庭・学校プログラムと保護者コーチング。リハビリの時間だけでなく、毎日の抱っこ、遊び、着替え、通学、休憩の取り方が経過に関わります。家庭や学校で無理なく続けられる形に落とし込みます。
STROKE LABが大切にするのは、機能解剖と動作分析で「今育とうとしている動き」を見極め、年齢と生活に合わせて目標を更新することです。効果や経過には個人差があり、発達の段階で目標も変わります。診断、投薬、ボツリヌス療法、手術、装具処方などの医学的判断は主治医の役割です。私たちは生活と動きの側から併走します。
脳性麻痺の介入エビデンスでは、目標志向、課題ベース、家庭プログラムなど、生活に近い練習が重視されています。年代別に「今の生活で何を増やしたいか」を決めることで、練習が日常に入りやすくなります。
限界注記:研究は集団の傾向を示すもので、個々のお子さんの経過を一つに決めるものではありません。対象年齢、GMFCSレベル、合併症、治療歴、発達段階、家庭・学校環境によって変動します。医学的治療の代替ではありません。
よくある質問。
Q. 脳性麻痺の経過は、年齢とともに悪くなっていくのですか?
Q. 乳児期は、何を見ておくとよいですか?
Q. 幼児期は、どんな関わりが大切ですか?
Q. 学童期になると、リハビリの目標は変わりますか?
Q. GMFCSは、経過を見るうえで必要ですか?
Q. STROKE LABでは、脳性麻痺の経過にどう関わりますか?
STROKE LABの小児リハビリ。
STROKE LAB(東京・大阪)は、脳卒中を中心とする神経疾患専門の自費リハビリ施設です。脳性麻痺のお子さんに対しても、診断名だけでなく、姿勢、手、歩行、生活動作、学校生活を機能解剖と動作分析の視点で見直します。医療・健診が先、私たちは併走する立場です。医療機関でのリハビリとの併用も歓迎です。
年代別の見通しへ。

脳性麻痺の経過は、保護者の方にとって見通しにくいものです。乳児期に気になったことが、幼児期には歩き方として、学童期には学校生活や疲労として見えてくることがあります。
私たちは、年齢ごとの変化を不安として終わらせず、次に育てる動きへ翻訳することを大切にしています。姿勢、手、歩行、学校生活を一つながりで見て、家庭で続けられる形に整えます。
医療機関での評価や治療と合わせて、今の生活で何を優先すべきかを整理したい方は、一度ご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

小児の運動発達を考えるうえでも、脳の機能解剖と動作分析の視点は重要です。STROKE LABでは、医学的な診断を尊重しながら、生活の中で動きをどう引き出すかを丁寧に見ていきます。

- 脳性麻痺のリハビリ全体像
- GMFCSとは|運動機能レベルと見通し
- 脳性麻痺の子どもの歩き方
- 脳性麻痺の子どもの装具と靴
- Centers for Disease Control and Prevention. About Cerebral Palsy. 2026.
- National Institute for Health and Care Excellence. Cerebral palsy in under 25s: assessment and management. NICE guideline NG62. 2017.
- Rosenbaum PL, Walter SD, Hanna SE, et al. Prognosis for gross motor function in cerebral palsy: creation of motor development curves. JAMA. 2002;288(11):1357-1363.
- Novak I, Morgan C, Fahey M, et al. State of the Evidence Traffic Lights 2019: Systematic Review of Interventions for Preventing and Treating Children with Cerebral Palsy. Curr Neurol Neurosci Rep. 2020;20(2):3.
- Jackman M, Sakzewski L, Morgan C, et al. Interventions to improve physical function for children and young people with cerebral palsy: international clinical practice guideline. Dev Med Child Neurol. 2022;64(5):536-549.
- 金子唯史. 脳の機能解剖とリハビリテーション. 医学書院. 2024. 408頁.

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)