集団療育では我が子に合わせきれない|マンツーマン個別リハという選択
集団で見えにくい困りごとを、個別評価で深く見つめます
集団療育には、同年代の子どもと関わる大切な意味があります。一方で、「うちの子だけ動きが止まる」「姿勢や手先の問題まで見てもらえない」「家庭で何をすればよいか分からない」と感じることもあります。そんなとき、お子さん一人の身体・感覚・生活課題に合わせて組み立てるマンツーマン個別リハが選択肢になります。

こんな違和感はありませんか。
集団療育では、先生が優しく関わってくれる。子どもも楽しそうな日がある。けれど、活動の流れについていけず、途中で座り込む。手先の課題になると嫌がる。運動遊びでは転びやすい。姿勢が崩れているように見えるけれど、時間内ではそこまで細かく見てもらえない。
「集団の場に慣れること」は大切です。しかし、もしお子さんの困りごとの中心が、姿勢・運動・感覚・手先・歩行・身体の使い方にあるなら、集団の中だけでは見えにくい課題が残っているかもしれません。
療育に通っているのに、家庭では困りごとが続く。集団の活動では楽しそうに見えるけれど、鉛筆・はさみなどの手先の課題、着替え・階段・ジャンプ・姿勢保持になると苦手さが目立つ。保護者としては「このまま集団に通っていれば変わるのか」「別の視点で見てもらった方がよいのか」と迷いやすいところです。
この記事では、集団療育の良さを大切にしながらも、なぜマンツーマン個別リハが必要になることがあるのかを整理します。STROKE LABが大切にしているのは、診断名だけではなく、その子が生活のどの場面で、なぜ困っているのかを身体と脳のしくみから見立てることです。
集団療育の良さと、限界。
集団療育には、家庭では得にくい大切な経験があります。同年代の子どもを見て真似る、順番を待つ、先生の指示を聞く、場面に合わせて活動する、友達と同じ空間で過ごす。これらは、社会性や生活リズム、コミュニケーションの育ちにとって大切な機会です。
一方で、集団療育では時間・人数・活動内容に制約があります。スタッフが全体を見ながら進行するため、一人の子どもの姿勢、筋緊張、感覚過敏、足部の使い方、手指の細かい操作まで、毎回細かく評価して調整することは難しい場合があります。

STROKE LABの視点:活動前の身体条件を見る。
集団の場で動きが止まる、座っていられない、手先の課題を嫌がる。こうした様子を見ると、「集中できない」「やる気がない」「集団が苦手」と説明されることがあります。しかし、STROKE LABでは行動だけで決めつけず、活動の前に身体が整っているかを見ます。
たとえば、足が床についているか。骨盤が後ろへ倒れていないか。机と椅子の高さが合っているか。手を使う前に体幹が崩れていないか。床に座る場面で、股関節や足部が安定しているか。こうした身体条件が整っていないと、子どもは課題に向かう前から疲れたり、不安になったり、動きが止まったりします。

「できない」の前に、「できる姿勢になっているか」を確認します
同じ「はさみが苦手」でも、指先だけの問題とは限りません。体幹が不安定で両手が自由にならない、肩がすくんで手首が動かしにくい、見る位置と手の位置が合わない、紙を持つ手が安定しない。背景が違えば、必要な支援も変わります。
個別リハでは、課題の難易度をただ下げるのではなく、その子が成功しやすい姿勢、道具、距離、声かけ、介助量を探します。これが分かると、家庭や園・学校でも「何を変えれば参加しやすいのか」を共有しやすくなります。
研究でわかっていること。
発達性協調運動症(DCD)や運動の不器用さがある子どもへの支援では、ただ運動量を増やすだけでなく、生活で困っている動作に合わせた課題を組み立てることが重要です。
DCDのある子どもを対象にした研究をまとめた報告では、運動ベースの介入が運動技能、身体機能、活動遂行の改善に役立つことが示されています。特に、生活で困っている動作に合わせて練習する課題志向型の介入は、運動技能やバランス、活動のしやすさに有効とされています。
この研究は、すべての子どもに同じ練習をすればよいという意味ではありません。むしろ、個別リハでは「その子がどの生活場面で困っているのか」を出発点にし、姿勢・感覚・運動・環境を合わせて調整することが大切です。
個別リハで見る、5つの視点。
個別リハでは、「何ができないか」だけではなく、「なぜできないか」を見ます。たとえば、はさみが苦手な子どもでも、原因は手先だけとは限りません。体幹が不安定で手を細かく動かせない場合もあれば、手首の向きが保てない場合、視線が線を追えていない場合、感覚過敏で紙や道具を嫌がっている場合もあります。
| 評価視点 | 見るポイント | 生活での困りごと |
|---|---|---|
| 姿勢・体幹 | 座位、立位、重心移動、体幹の安定性 | 座っていられない、机上課題で崩れる、疲れやすい |
| 運動・バランス | 歩行、階段、ジャンプ、転びやすさ、左右差 | 走ると転ぶ、片足立ちが苦手、階段が怖い |
| 感覚 | 触覚、固有感覚、前庭感覚、音や光への反応 | 触られるのを嫌がる、強く握りすぎる、回転を怖がる |
| 手先・道具操作 | 鉛筆、はさみ、箸、ボタン、両手協調 | 字が乱れる、はさみが苦手、着替えに時間がかかる |
| 参加・行動 | 課題理解、見通し、不安、集団での止まり方 | 参加できない、切り替えが難しい、失敗を怖がる |
個別リハが合いやすいケース。
以下のような様子がある場合、集団療育だけでなく、個別リハの視点を入れることで支援の方向性が整理しやすくなることがあります。診断名の有無だけではなく、実際の生活でどのように困っているかを大切にします。
歩く、走る、階段、ジャンプ、ボール遊びなどが苦手。転びやすい、姿勢が崩れやすい、左右差がある場合は、身体の使い方を個別に見ることが重要です。
鉛筆、はさみ、箸、ボタン、ファスナーなどで困る場合、指先だけでなく、体幹・肩・手首・目と手の協調を含めて評価します。
音、光、触られること、揺れ、足裏感覚などで活動が止まりやすい場合、刺激の量や環境を調整しながら成功体験を作ります。
診断名が同じでも、課題は一人ひとり異なります。筋緊張、姿勢、感覚、運動計画を見ながら、その子に必要な練習を考えます。
「家で何をすればよいか分からない」「練習させると嫌がる」という場合、遊びや生活の中で自然に取り入れられる方法を一緒に整理します。
集団療育と個別リハの違い。
集団療育と個別リハは、対立するものではありません。役割が違うため、目的に応じて使い分けたり、併用したりすることが大切です。
| 項目 | 集団療育 | マンツーマン個別リハ |
|---|---|---|
| 主な目的 | 集団参加、社会性、ルール、生活リズム、経験の拡大 | 姿勢・運動・感覚・手先・歩行など個別課題の評価と練習 |
| 支援の進め方 | 全体の活動の流れに合わせて進む | その子の反応に合わせて、その場で課題を調整する |
| 評価の深さ | 全体参加の様子を把握しやすい | 身体・感覚・運動の背景まで見やすい |
| 保護者支援 | 集団の中での様子を知る | 家庭での姿勢・遊び・練習方法を具体化する |
| 向いている場面 | 友達との関わり、集団参加、社会性を育てたい | 身体の使い方、運動、感覚、手先などを個別に整えたい |
相談前に整理したいメモ。
相談の場では、「集団についていけません」だけでなく、どの場面で、どんな姿勢や動きになっているかを伝えられると、支援の方向性が具体的になります。下のチェックリストは、個別リハや健診・医療相談の前に使えます。
年齢・生活場面別に、見方を変えます。
小児の困りごとは、年齢や生活場面によって見え方が変わります。年齢は目安です。乳幼児では修正月齢を確認することもあり、早産や既往歴がある場合は主治医・健診での見方も合わせて確認してください。
| 年齢・場面の目安 | よく見える困りごと | 個別リハで見る視点 |
|---|---|---|
| 乳幼児期 | 寝返り、座位、立ち上がり、歩き始め、抱っこや遊びの姿勢が気になる | 筋緊張、左右差、姿勢反応、感覚への反応、保護者の抱っこや遊び方 |
| 未就園〜未就学 | 転びやすい、ジャンプが苦手、手先が不器用、集団活動で止まる | 足部支持、体幹安定、手と目の協調、感覚過敏、課題の難易度 |
| 園生活 | 着替え、食事、制作、運動遊び、集団参加で困る | 椅子・机・足台、道具操作、見通し、疲労、先生との共有方法 |
| 学齢期 | 字を書く、体育、階段、姿勢保持、授業中の集中が難しい | 筆記姿勢、肩甲帯・手首、バランス、注意の切り替え、環境調整 |
※年齢は目安です。乳幼児では修正月齢を確認することがあります。診断や発達段階は家庭で断定せず、必要に応じて小児科・健診・専門職へ相談してください。
家庭・園・学校へつなげる。
個別リハで大切なのは、セッション中だけできることではありません。家庭、園、学校、集団療育の場面で、少しでも参加しやすくなることが目標です。そのためには、保護者が「この子は何が苦手で、どんな手がかりがあると動きやすいのか」を理解できることが重要です。

家庭では、座る環境、遊び方、道具の選び方、声かけ、練習量を調整します。苦手な動作を長時間反復するのではなく、成功しやすい形に変えて経験を積みます。
園や学校では、姿勢を支える椅子や足台、活動前の見通し、視覚的な手がかり、作業量の調整などが役立つことがあります。
集団療育を続ける場合も、個別リハで分かった身体の特性を共有することで、集団場面での支援が具体的になりやすくなります。
避けたい関わり。
子どもの苦手さが見えると、つい「もっと練習しよう」「頑張ればできる」と考えたくなります。しかし、背景に姿勢・感覚・運動計画の難しさがある場合、同じ課題を長く続けるだけではうまくいかないことがあります。
| 避けたい関わり | なぜ注意したいか | 代わりにできること |
|---|---|---|
| 苦手な課題を長時間くり返す | 失敗体験が増え、課題そのものを嫌がりやすくなる | 短く区切り、成功しやすい条件から始める |
| 「集中しなさい」と行動だけを注意する | 姿勢や感覚の負担が見落とされることがある | 足台、椅子、机、道具の位置を整える |
| 周囲の子と同じ量・同じ方法を求める | その子の身体条件や疲労が反映されにくい | 課題量・時間・介助量を個別に調整する |
| 家庭で全部解決しようとする | 保護者の負担が大きくなり、関わりが続きにくい | 園・学校・療育先・専門職と共有する |
STROKE LABでは、姿勢・運動・感覚・手先・歩行などを総合的に評価し、お子さんに合ったリハビリと家庭での関わり方をご提案します。
よくある質問。
どちらが上というものではありません。集団療育には、同年代の子どもと関わる経験、順番を待つ経験、場面に合わせる経験などの良さがあります。一方で、姿勢・運動・感覚・手先・歩行など、その子の身体的な背景を細かく見て調整したい場合は、マンツーマン個別リハが合うことがあります。
併用を検討することは可能です。集団療育で社会性や生活経験を積みながら、個別リハで姿勢・運動・感覚・手の使い方などの土台を整えることで、集団場面で参加しやすくなることがあります。現在利用している支援機関や主治医がいる場合は、情報共有しながら進めると安心です。
姿勢、筋緊張、バランス、感覚の受け取り方、手足の使い方、目と手の協調、歩行、遊び方、課題への向き合い方、家庭や園・学校での困りごとを総合的に見ます。そのうえで、お子さんに合った難易度、介助量、声かけ、家庭での練習方法を組み立てます。
診断名だけで判断するのではなく、実際に困っている動作や生活場面を見て支援を考えます。姿勢が崩れやすい、転びやすい、手先が不器用、はさみや鉛筆が苦手、感覚過敏が強い、集団で動きが止まるなどの困りごとがある場合、運動と感覚の視点から支援できることがあります。
苦手な動きを長時間くり返すより、生活の中で成功しやすい条件を作ることが大切です。椅子や足台で姿勢を整える、道具の高さや距離を変える、課題を短く区切る、できた動きを遊びに入れるなど、その子の反応に合わせて調整します。無理に頑張らせるより、続けやすい形にすることが安心です。
集団療育で伸び悩んでいる、同じ課題をくり返しても変化が少ない、姿勢・歩行・手先・感覚面の困りごとが生活に影響している、家庭でどう関わればよいか分からない場合は相談の目安です。早めに相談することで、支援の方向性を整理しやすくなります。
STROKE LABの小児リハ。
STROKE LABでは、脳性麻痺、発達が気になるお子さん、運動のぎこちなさ、手先の不器用さ、感覚面の困りごとなどに対して、神経リハビリの視点から個別に評価・支援を行います。
集団療育は、お子さんにとって大切な経験の場です。一方で、集団の中では見えにくい身体の使い方や感覚の特性が、生活の困りごとの背景になっていることがあります。私たちは、その背景を一緒に整理し、家庭・園・学校へつながる形に落とし込むことを大切にしています。
一緒に探していきます。

集団療育での経験は、子どもの成長にとって大切です。そのうえで、姿勢・運動・感覚・手先・歩行など、集団の中では見えにくい課題が残っているときには、個別に深く評価する意味があります。
STROKE LABでは、脳、感覚、姿勢連鎖、生活環境を一つの流れとして捉え、お子さんに合った支援を保護者の方と一緒に組み立てます。
「このままでよいのか」「家庭では何をすればよいのか」と迷われている方は、まず今の困りごとを整理するところからご相談ください。
代表取締役 金子 唯史

脳の領域別の働きから、臨床で行うリハビリテーション方法を提案する専門書です。小児の支援でも、姿勢・感覚・運動の背景を丁寧に見ることで、家庭や集団場面での支援が具体化しやすくなります。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断・治療に代わるものではありません。お子さんの状態についての判断は、かかりつけの小児科医や専門職にご相談ください(最終確認日:2026年7月4日)。
- こども家庭庁:児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)詳細版①
- こども家庭庁:児童発達支援ガイドライン(令和6年7月)詳細版②
- CDC: Early Intervention
- CDC: Why Act Early if You’re Concerned about Development?
- WHO, UNICEF, World Bank Group: Nurturing Care Framework for Early Childhood Development
- Gao J, Yang Y, Xu X, et al. Motor-Based Interventions in Children with Developmental Coordination Disorder: A Systematic Review and Meta-analysis of Randomised Controlled Trials. Sports Medicine – Open. 2025;11:59.
- Novak I, Morgan C, Adde L, et al. Early, Accurate Diagnosis and Early Intervention in Cerebral Palsy: Advances in Diagnosis and Treatment. JAMA Pediatrics. 2017;171(9):897-907.
- 金子唯史:脳の機能解剖とリハビリテーション.医学書院,2024,408頁。

1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024) パーキンソン病の機能促進:医学書院 (2025)