2016.12.15脳科学系
vol.61:プッシャー症候群における姿勢の知覚処理(グラビセプター)とは? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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カテゴリー
脳科学,姿勢制御
タイトル
Puser症候群の起源 The origin of contraversive pushing: evidence for a second graviceptive system in humans?PubMedへ Karnath HO et al:Neurology. 2000 Nov 14;55(9):1298-304
内 容
概 要
●脳卒中患者は非麻痺側側から積極的にPushして離れようとし,外側への姿勢不安定へと導かれ,麻痺側のほうへ転倒するといった奇妙な行為を示す ●前庭皮質(例えば後方の島)が障害を受けると,視覚のまっすぐの知覚が障害を受けるが姿勢までは崩れない(転倒などは起こらない) ●恐らくPusher患者は視覚による垂直軸とは異なる体幹からのGravity Receptorの入力を受けるシステムに障害を受けていると思われる ●この非麻痺側の四肢でのPushingは,Wallenberg Syndromeの患者と視床の障害後の起立不能患者とで区別できる ●このStudyでは,2つの姿勢制御システムを明らかにするために実験を実施
Fig.1:Pushing患者の画像所見(Karnath HO et al:2000)?
内 容
●主観的な姿勢の垂直軸(SPV)と主観的な視覚の垂直軸(SVV)は,シビアな反対側へのPushを示す5人の患者と正常人で比較 ●SPVの反応調整は,身体を真っ直ぐに方向付けてもらい,SVVは前庭系の損傷や末梢の測定に用いる空間での細かい評価と感覚を提供した ●モーターが組み込まれたイスにまっすぐに座ってもらい,側方は安定した状況で設定し,椅子の高さは患者の脚がしっかり吊るされるように調整 ●実験者によって前額面の運動にて最大35度まで傾くことができ,口頭指示にて左右に傾けられ,患者は真っ直ぐを保たなければならない ●開始の指示は与えられず,真っ直ぐかどうかのフィードバックも与えられない
結 果
●反対側にPushする患者は重力に関連する身体の方向付けの知覚が変換されていた ●真っ直ぐにしたつもりのPushingの患者は,同側がわに18度傾いていた ●反対に,視覚の知覚は影響を受けていなかった
Fig.2:Pusher患者と健常者の比較(Karnath HO et al:2000)? 周辺の物品がないとPusher患者は麻痺側に倒れてしまう. Aは周囲に物品がない部屋,Bは周囲に物品がある部屋 姿勢を真っ直ぐにするため,周辺の物品は障害を受けたGravity Receptor Systemの手助けをしてくれる.側方の安定は視覚による姿勢制御を援助してくれる
まとめ
●垂直軸の知覚は,解剖学的に2つのシステムに分かれている ①視覚や前庭系,頚部の固有感覚情報に基づく ②体幹からのGravity Receptor入力 ●姿勢において体性感覚情報はGravity Receptorに必須というわけではない ●下肢の固有感覚は姿勢の知覚へのアクセスには直結しない,末梢からの固有感覚入力は知覚の求心性情報ではあるが,姿勢のコントロールは体幹のGravity Receptorの出力による調整あるいは遂行による間接的なものだけである ●視覚で方向付ける知覚とは別に,重力で方向付ける感覚が人間には存在すると思われる ●この第2の重力システムは人間の真っ直ぐな姿勢のコントロールにおいて決定的なシステムとなる ●反対側のPushingは,このシステムの神経的再現の欠如に関連しているかもしれない
私見・明日への臨床アイデア
●周辺物品の重要性をこのStudyでは説いており,リハビリテーションにおいてのテーブルのセッティングや,物品の位置で姿勢制御を手助けしてくれるということである
●治療において,環境のセッティングにより注意を向けていく必要があることを周知のことだが窺わせる知見であると思われる
所属 STROKE LAB
氏名 金子 唯史
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